閉じる

34,947view

成年後見人とは|役割・費用・手続きの流れを解説

この記事で分かること

  • 成年後見人の3類型(後見・保佐・補助)の違いと適切な選択
  • 成年後見人の10の役割と選任手続きの流れ・費用(申立て〜審判確定2〜4ヶ月)
  • 親族後見人と専門職後見人の8観点比較
  • 任意後見との違いと相続における成年後見人の役割
  • 8つのケーススタディと2024年の最新動向(利用者約25万人)

成年後見人の3類型(後見・保佐・補助)の違い、10の役割、選任手続きの流れ(2〜4ヶ月)・費用(月額2万円〜6万円)、親族後見人と専門職後見人の比較、任意後見との違い、相続での役割(遺産分割協議の代理など)、8つのケーススタディまで網羅した実用的なガイドです。

成年後見人の基本と全体像

「親が認知症になったが、成年後見人ってどんな役割?」「成年後見人の選任手続きはどう進める?」「費用はいくらかかる?」――こうした疑問は、認知症の家族を抱える方や、相続で判断能力の低下した相続人がいる方が必ず抱える切実なものです。

成年後見人は、判断能力が不十分な成人(成年被後見人)の財産管理・身上監護を行う、家庭裁判所が選任した法定代理人です。3つの類型(後見・保佐・補助)があり、本人の判断能力の程度によって選択。相続の場面では、遺産分割協議への参加、財産管理、不動産処分の代理など、極めて重要な役割を担います。本記事では、成年後見制度の3類型、成年後見人の具体的役割、選任手続きの流れ、費用、専門職と親族後見人の比較、任意後見との違い、相続での役割、ケーススタディ、よくある質問まで、実用的な情報を弁護士目線で詳しく解説します。

成年後見制度とは

成年後見制度の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

成年後見制度の定義

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分な成人(成年被後見人)を、法定代理人(成年後見人など)が支援する制度です(民法7条以下)。

2000年4月施行で、それ以前の禁治産・準禁治産制度に代わる制度として導入されました。

法定後見と任意後見

成年後見制度は、(1)法定後見、(2)任意後見、の2種類があります。

本記事では、法定後見(家庭裁判所の審判による後見)を中心に解説します。

任意後見は、本人が判断能力があるうちに、将来の後見人と契約する制度。

法定後見の3類型

法定後見は、本人の判断能力の程度によって、(1)後見、(2)保佐、(3)補助、の3類型に分けられます。

類型 対象者
後見 判断能力を欠く常況(認知症重度など)
保佐 判断能力が著しく不十分
補助 判断能力が不十分

類型1 後見(最も判断能力が低い)

後見は、判断能力を欠く常況にある人(認知症の重度・重度知的障害など)を対象。

成年後見人が選任され、ほぼ全ての法律行為を代理。

類型2 保佐(判断能力が著しく不十分)

保佐は、判断能力が著しく不十分な人(認知症の中程度・中程度知的障害など)を対象。

保佐人が選任され、重要な法律行為への同意権・取消権を持つ。

類型3 補助(判断能力が不十分)

補助は、判断能力が不十分な人(認知症の軽度・軽度知的障害など)を対象。

補助人が選任され、特定の法律行為への同意権・代理権を持つ。

3類型の選択

3類型の選択は、本人の判断能力の程度に応じて、家庭裁判所が判断します。

医師の鑑定書・診断書が判断材料。

2024年の動向

日本では高齢化に伴い、成年後見制度の利用者が増加。

2023年末で、約25万人が成年後見制度を利用(後見・保佐・補助の合計)。

成年後見人の役割

成年後見人の具体的な役割を見ていきましょう。

役割1 財産管理

成年被後見人の財産(預貯金・不動産・有価証券など)を管理。

役割2 不動産・重要財産の処分

被後見人の不動産の売却・賃貸、その他重要財産の処分の代理。家庭裁判所の許可が必要なケースも(自宅処分など)。

役割3 預貯金の管理

被後見人の預貯金口座の管理。引き出し・送金などの代理。

役割4 遺産分割協議の代理

被後見人が相続人となった場合、遺産分割協議への参加・代理。

役割5 各種契約の代理

施設入所契約、介護サービス契約、医療契約、などの代理。

役割6 身上監護

被後見人の生活・療養看護の手配・管理。住居の確保、施設選び、医療機関の選定、など。

役割7 税金・公的手続き

被後見人の税金申告、各種公的手続き、を代理。

役割8 家庭裁判所への報告

被後見人の財産状況・身上監護状況を、家庭裁判所に定期的に報告。

役割9 不正防止と利益相反の回避

被後見人の利益を最優先に行動。利益相反の場合、特別代理人の選任が必要。

役割10 死亡時の対応

被後見人の死亡時、葬儀・火葬・財産の管理を含む後見終了の手続き。

役割の重要性

成年後見人は、被後見人の人生に深く関わる役割を担います。

高い倫理性と専門性が求められます。

成年後見人になれる人

成年後見人になれる人を整理しておきましょう。

要件

成年後見人の要件は、(1)行為能力者であること、(2)家庭裁判所が信頼できると判断する人、です。

親族後見人

配偶者・子・兄弟姉妹・親などの親族が成年後見人となるケース。

被後見人との関係が近いため、身上監護に長けやすい。

専門職後見人

弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門家が成年後見人となるケース。

財産管理の専門性、利益相反のリスクが低い。

法人後見人

社会福祉法人・NPO法人などの法人も、成年後見人になれます。

複数後見人

複数の成年後見人を選任することも可能(共同・分掌)。

たとえば、財産管理を専門職後見人、身上監護を親族、と分担。

成年後見人になれない人(欠格事由)

(1)未成年者、(2)家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、(3)破産者、(4)被後見人に対して訴訟をした人とその親族、(5)行方不明者、は成年後見人になれません。

親族後見人と専門職後見人の選択

選択は、(1)被後見人の財産規模、(2)親族間の対立の有無、(3)親族の信頼度、(4)被後見人の事情、を総合的に考慮。

近年の動向(専門職後見人の増加)

近年、専門職後見人の選任が増加。

特に、財産が大きい・親族間に対立がある場合、家庭裁判所が専門職を選任する傾向。

2023年では、約7割が専門職後見人(弁護士・司法書士・社会福祉士)。

成年後見人選任の手続き

成年後見人の選任手続きを詳しく見ていきましょう。

手続きの流れ

ステップ1:申立書・必要書類の準備。

ステップ2:家庭裁判所への申立て。

ステップ3:家庭裁判所による調査・面接。

ステップ4:医師の鑑定(必要に応じて)。

ステップ5:審判による成年後見人の選任。

ステップ6:後見開始の登記。

ステップ7:被後見人・後見人への通知。

申立てができる人

申立てができる人は、(1)本人、(2)配偶者、(3)4親等内の親族、(4)市区町村長、(5)検察官、です。

申立先

申立先は、本人(成年被後見人)の住所地を管轄する家庭裁判所です。

必要書類

必要書類:

(1)後見開始の審判申立書。

(2)申立書付票。

(3)本人の戸籍謄本、住民票。

(4)申立人の戸籍謄本、住民票。

(5)診断書(成年後見制度用の書式)。

(6)本人の財産目録・収支予定表。

(7)成年後見人候補者の戸籍謄本・身分証明書・登記されていないことの証明書。

(8)本人の登記されていないことの証明書(法務局)。

(9)後見人候補者事情説明書。

診断書の重要性

診断書は、本人の判断能力の程度を医師が判断したもので、3類型(後見・保佐・補助)の選択に重要。

家庭裁判所所定の書式があり、専門医に作成依頼。

申立て費用

申立て費用:

(1)申立て手数料(収入印紙):後見800円、保佐・補助800円。

(2)登記手数料(収入印紙):2,600円。

(3)郵便切手:約3,000円〜5,000円。

(4)医師の鑑定費用(必要に応じて):5万円〜10万円。

(5)診断書取得費用:5,000円〜1万円。

(6)弁護士・司法書士に依頼する場合の報酬:10万円〜30万円。

家庭裁判所での面接

家庭裁判所は、申立人・成年後見人候補者・本人と面接を行います。

本人の意思・能力、候補者の適格性、を確認。

医師の鑑定

本人の判断能力に疑義がある場合、家庭裁判所は医師の鑑定を命じます。

鑑定費用は5万円〜10万円。

審判による選任

家庭裁判所の審判で、成年後見人が選任されます。

本人や親族の希望と異なる成年後見人(専門職など)が選任されることもあります。

審判の確定までの期間

申立てから審判の確定まで、おおむね2〜4ヶ月。

複雑な事案ではさらに長引くことも。

後見開始の登記

審判確定後、自動的に法務局で後見開始の登記が行われます。

成年後見人は、登記事項証明書を取得して、各種手続きで活用。

即時抗告

審判に不服がある場合、2週間以内に即時抗告(上級審への不服申立て)が可能。

成年後見人の費用

成年後見人の費用を詳しく見ていきましょう。

費用1 申立て費用

前述の申立て費用(数万円〜10万円程度)。

費用2 成年後見人の報酬

成年後見人の報酬は、家庭裁判所が決定します。

被後見人の財産規模に応じた基本報酬:

財産1,000万円以下:月額2万円程度。

財産1,000万円〜5,000万円:月額3万円〜4万円。

財産5,000万円超:月額5万円〜6万円。

費用3 付加報酬

身上監護に特別な労力を要した場合や、訴訟・遺産分割など重要事項を扱った場合、付加報酬。

費用4 専門職後見人の報酬

専門職後見人(弁護士・司法書士など)の報酬も、上記基準に準拠。

費用5 親族後見人の報酬

親族後見人も報酬を受け取れますが、無報酬で務める場合も多い。

費用6 被後見人の財産からの支払い

成年後見人の報酬は、被後見人の財産から支払われます。

被後見人の財産が少ない場合、市区町村の助成金制度の活用が可能。

費用7 監督人の報酬(必要に応じて)

家庭裁判所が成年後見監督人を選任する場合、その報酬も発生(月額1万円〜3万円程度)。

費用8 後見業務の経費

後見業務に必要な交通費・通信費などの経費は、被後見人の財産から支払い。

費用の事前見積もり

費用の事前見積もりは、弁護士・司法書士に相談して行います。

費用の総額(年間)

年間費用の総額目安:

財産1,000万円以下:24万円程度(月2万円×12)。

財産1,000万円〜5,000万円:36万円〜48万円。

財産5,000万円超:60万円〜72万円。

これに加えて、申立て費用・付加報酬・経費が発生。

成年後見人の3類型の比較

成年後見人の3類型(後見・保佐・補助)を詳しく比較します。

比較1 対象者の判断能力

後見:判断能力を欠く常況(認知症重度・重度知的障害)。

保佐:判断能力が著しく不十分(認知症中程度・中程度知的障害)。

補助:判断能力が不十分(認知症軽度・軽度知的障害)。

比較2 代理権の範囲

後見:ほぼ全ての法律行為を代理。

保佐:重要な法律行為(借金・不動産取引など)への同意権・取消権。家庭裁判所の審判で代理権の付与も可能。

補助:特定の法律行為への同意権・代理権(本人の同意が必要)。

比較3 同意権・取消権

後見:本人の行為は原則として後見人が取消可能(日常生活費を除く)。

保佐:重要な法律行為について同意権・取消権。

補助:特定の法律行為について同意権・取消権。

比較4 本人の能力の制限

後見:本人の能力が大幅に制限。

保佐:本人の能力が一定程度制限。

補助:本人の能力の制限は最小限。

比較5 申立て時の費用

3類型とも、申立て手数料は800円(収入印紙)。

比較6 鑑定の必要性

後見・保佐:原則として医師の鑑定が必要。

補助:鑑定省略可(診断書のみ)。

比較7 後見人の負担

後見:後見人の負担が最も大きい。

保佐:中程度。

補助:本人の判断能力が比較的高いため、後見人の負担は比較的小さい。

比較8 適切な選択

本人の判断能力に応じた適切な類型を選択。医師の診断書・鑑定書が判断材料。

類型の選択

類型の選択は、本人の利益と尊厳を考慮した適切な判断が必要。

親族後見人と専門職後見人の比較

親族後見人と専門職後見人を詳しく比較します。

比較1 専門性

親族:財産管理の専門性は低い。

専門職:財産管理・法律的判断の専門性が高い。

比較2 身上監護

親族:本人との関係が近いため、身上監護に長けやすい。

専門職:身上監護の経験は事務所により異なる。

比較3 コスト

親族:無報酬または低額の報酬。

専門職:月額2万円〜6万円の報酬。

比較4 利益相反リスク

親族:被後見人の財産を相続する立場のため、利益相反リスクあり。

専門職:利益相反リスクが低い。

比較5 家族関係への影響

親族:家族関係に影響(対立の可能性)。

専門職:家族関係への影響は少ない。

比較6 信頼性

親族:本人との信頼関係が既にある。

専門職:職業倫理に基づく信頼性。

比較7 不正リスク

親族:不正リスクが指摘されることも。

専門職:職業倫理と監督機関により、不正リスクが低い。

比較8 家庭裁判所の判断

近年、家庭裁判所は、財産が大きい・親族間に対立がある場合、専門職後見人を選任する傾向。

適切な選択

親族後見人と専門職後見人の選択は、家庭裁判所の判断によりますが、本人と家族の事情を踏まえた申立てが重要。

任意後見との違い

任意後見制度との違いを整理しておきましょう。

任意後見とは

任意後見は、本人が判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合の後見人を契約で指定する制度(任意後見契約に関する法律)。

契約は公正証書で作成。

法定後見と任意後見の比較

項目 法定後見 任意後見
開始時期 判断能力低下後 判断能力低下後に発効
後見人 家庭裁判所選任 本人が事前指定
代理権 法律で定まる 契約で定める
本人の意向 限定的 最大限反映

比較1 開始時期

法定後見:本人の判断能力低下後、家庭裁判所の審判で開始。

任意後見:本人の判断能力があるうちに契約、判断能力低下後に発効。

比較2 後見人の選任

法定後見:家庭裁判所が選任(本人の意向は参考)。

任意後見:本人が事前に指定。

比較3 代理権の範囲

法定後見:法律で定まる範囲。

任意後見:契約で本人が定める範囲。

比較4 監督

法定後見:家庭裁判所が監督。後見監督人が選任される場合もある。

任意後見:家庭裁判所が選任する任意後見監督人が監督。

比較5 費用

法定後見:成年後見人の報酬(財産規模で異なる)。

任意後見:任意後見契約で定める報酬+任意後見監督人の報酬。

比較6 本人の意向の反映

法定後見:限定的。

任意後見:本人の意向を最大限反映。

任意後見のメリット

任意後見のメリット:(1)本人の意向の反映、(2)将来の選択肢の確保、(3)信頼できる人の指定、(4)代理権の柔軟な設計、です。

任意後見のデメリット

任意後見のデメリット:(1)契約時の判断能力が必要、(2)契約の手数料、(3)代理権の範囲の限定、です。

任意後見の活用

任意後見は、判断能力があるうちの事前対策として活用が広がっています。

特に、配偶者・子の高齢化、独居の場合に有効。

法定後見との組み合わせ

法定後見と任意後見の組み合わせ:任意後見契約があれば、それが優先される。判断能力低下時に任意後見が発効しない場合、法定後見も選択肢。

相続における成年後見人の役割

相続における成年後見人の重要な役割を整理しておきましょう。

役割1 遺産分割協議の代理

被後見人が相続人となる場合、成年後見人が遺産分割協議に参加。

被後見人の利益を最優先に行動。

役割2 法定相続分の確保

被後見人の取り分は、原則として法定相続分以上が必要。

それ未満の合意は、家庭裁判所が認めないことが多い。

役割3 相続放棄・限定承認の判断

被相続人(亡くなった方)の財産に債務が多い場合、相続放棄・限定承認の判断。

家庭裁判所の許可が必要なケース。

役割4 遺留分侵害額請求

被後見人が遺留分を侵害されている場合、成年後見人が遺留分侵害額請求の意思表示。

役割5 不動産の相続登記

被後見人が相続した不動産の登記。2024年4月から3年以内の義務化に対応。

役割6 相続税申告

被後見人の相続税申告を代理。税理士との連携。

役割7 家庭裁判所への報告

相続関連の重要事項について、家庭裁判所への報告。

役割8 利益相反の回避

成年後見人自身も相続人の場合、利益相反となるため、特別代理人の選任が必要。

特別代理人の選任

特別代理人は、家庭裁判所が選任。

相続専門の弁護士などが選任されることが多い。

費用は5万円〜15万円程度。

相続における成年後見人の重要性

判断能力が低下した相続人を含む遺産分割協議では、成年後見人の選任が不可欠。

適切な対応で、遺産分割を円滑に進められます。

成年後見制度のメリットとデメリット

成年後見制度のメリットとデメリットを整理しておきましょう。

メリット1 判断能力低下者の保護

判断能力が低下した本人を、不当な契約・財産処分から保護。

メリット2 財産管理の専門性

専門職後見人による、財産管理の専門性。

メリット3 法的代理人

法的に有効な代理人として、各種手続きが可能。

メリット4 家庭裁判所の監督

家庭裁判所の監督で、後見人の不正を抑止。

メリット5 不当な契約の取消

本人の不当な契約(訪問販売・悪徳商法など)を後見人が取消可能。

メリット6 相続手続きの円滑化

判断能力が低下した相続人を含む相続手続きを、円滑に進められる。

デメリット1 費用

成年後見人の報酬は、被後見人の財産から支払い(月額2万円〜6万円)。

デメリット2 本人の意思制限

本人の能力が制限されることで、本人の意思尊重が困難な場合がある。

デメリット3 手続きの複雑さ

申立て手続きから審判確定まで2〜4ヶ月、書類準備も複雑。

デメリット4 家族関係への影響

親族後見人の場合、家族関係への影響あり。

デメリット5 後見人の負担

後見人の業務負担(財産管理・身上監護・報告)が大きい。

デメリット6 取消困難

一度開始された成年後見は、本人の判断能力が回復しない限り、原則として取消困難。

デメリット7 制度の硬直性

3類型しかなく、本人の状況にきめ細やかに対応できない場合がある。

デメリット8 専門職後見人による不正

近年、専門職後見人による横領事案も発生。家庭裁判所の監督強化が進行中。

バランスの考慮

これらのメリット・デメリットを踏まえ、本人と家族にとって最適な選択を検討。

成年後見制度のケーススタディ

具体的なケーススタディで、成年後見人を見ていきましょう。

ケース1 認知症の親の財産管理

【ケース】

家族:70代男性A(認知症)、配偶者B(高齢)、子C・D
状況:財産管理が困難に

子Cが家庭裁判所に成年後見人選任の申立て。Cが成年後見人に選任(親族後見人)。

Cが、Aの預貯金管理・介護施設選び・医療契約を代理。

ケース2 専門職後見人の選任

【ケース】

家族:80代女性E(認知症)、子F・G(対立)
状況:夫死亡後の財産管理が困難

家庭裁判所が、専門職(司法書士)を成年後見人に選任。

親族の利益相反を回避し、客観的な財産管理を実現。

ケース3 遺産分割協議への参加

【ケース】

被相続人:H
相続人:配偶者I(認知症)、子J・K

Iが認知症のため、Iに成年後見人(専門職)が選任。

成年後見人がIの代理として遺産分割協議に参加。Iの法定相続分(1/2)を確保。

ケース4 任意後見契約の活用

【ケース】

家族:50代女性L、独居
対応:判断能力があるうちに、信頼できる甥Mと任意後見契約を締結(公正証書)

Lが認知症になった時点で、Mが任意後見人として発効。

Lの意向に沿った後見が実現。

ケース5 利益相反による特別代理人

【ケース】

被相続人:N
相続人:配偶者O(認知症)、子P。Pが既にOの成年後見人

Pは利益相反のため、家庭裁判所が特別代理人(弁護士)を選任。

特別代理人がOの代理として遺産分割協議に参加。

ケース6 保佐の活用

【ケース】

家族:70代男性Q
状況:軽度の認知症で判断能力が著しく不十分

保佐人を選任。重要な法律行為(借金・不動産取引)への同意権・取消権を保佐人が持つ。

Qの自己決定権を一定程度尊重しつつ、保護。

ケース7 補助の活用

【ケース】

家族:60代女性R
状況:軽度の認知症で判断能力が不十分

補助人を選任。特定の法律行為(不動産処分など)への同意権・代理権を持つ。

Rの自立を最大限尊重しつつ、必要な保護。

ケース8 成年後見人の不正事案

【ケース】

家族:被後見人S、成年後見人T(親族)
状況:Tが、Sの預金を横領

家庭裁判所の監督で発覚。Tは解任され、後任の専門職後見人が選任。

Tに対して、横領分の返還請求と刑事告訴。

ケーススタディから学ぶ点

複数のケースから、(1)早期の申立て、(2)親族と専門職の使い分け、(3)遺産分割協議への参加、(4)任意後見の活用、(5)利益相反への対応、(6)3類型の適切な選択、(7)監督機能の重要性、が確認できます。

成年後見制度の活用のポイント

成年後見制度の活用のポイントを整理しておきましょう。

ポイント1 早期の申立て

本人の判断能力が低下する前、または低下し始めた時点での早期申立て。

ポイント2 適切な類型選択

本人の判断能力に応じた、後見・保佐・補助の適切な選択。医師の診断書・鑑定書が判断材料。

ポイント3 後見人候補者の選定

親族後見人と専門職後見人のメリット・デメリットを考慮した選定。

ポイント4 任意後見の活用

判断能力があるうちの事前対策として、任意後見契約を検討。

ポイント5 家族会議の実施

家族間で後見の進め方を協議し、合意形成を図る。

ポイント6 専門家への相談

弁護士・司法書士・社会福祉士などへの早期相談。

ポイント7 家庭裁判所への対応

家庭裁判所の調査・面接に協力。書類の準備を丁寧に。

ポイント8 後見開始後の継続的サポート

後見開始後も、専門家との継続的な関係で、適切な後見を継続。

成年後見制度の最近の動向

2024年現在の成年後見制度の動向を整理しておきましょう。

動向1 利用者の増加

高齢化に伴い、成年後見制度の利用者が増加。2023年末で約25万人。

動向2 専門職後見人の増加

親族間の対立・財産規模を考慮し、専門職後見人の選任が増加(約7割)。

動向3 任意後見の普及

判断能力があるうちの事前対策として、任意後見契約が普及。

動向4 後見制度支援信託・支援預金の活用

被後見人の財産の一部を信託・預金として保護する制度の活用が増加。

動向5 不正事案の対策

専門職後見人の不正事案を受け、家庭裁判所の監督強化が進行中。

動向6 後見制度の改正議論

成年後見制度の硬直性への批判から、改正議論が継続中。

動向7 デジタル化の進展

家庭裁判所への申立てのデジタル化、後見業務のデジタル化が進展。

動向8 外国人の成年後見

日本居住の外国人への成年後見の事案が増加。国際的な要素への対応。

成年後見人に関するよくある質問

成年後見人について、よくある質問にお答えします。

Q1 成年後見人とは?

判断能力が不十分な成人(成年被後見人)の財産管理・身上監護を行う、家庭裁判所が選任した法定代理人です(民法7条以下)。

Q2 成年後見人の3類型は?

(1)後見(判断能力を欠く常況)、(2)保佐(判断能力が著しく不十分)、(3)補助(判断能力が不十分)、です。

Q3 成年後見人になれる人は?

行為能力者で家庭裁判所が信頼できると判断する人。親族・専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士)・法人など。

Q4 申立て期間は?

申立てから審判確定まで2〜4ヶ月。複雑な事案ではさらに長引くことも。

Q5 申立て費用は?

申立て手数料800円、登記手数料2,600円、郵便切手数千円、医師の鑑定費用5万円〜10万円、専門家への依頼費用10万円〜30万円、など合計で数万円〜数十万円。

Q6 成年後見人の報酬は?

被後見人の財産規模に応じて月額2万円〜6万円程度。家庭裁判所が決定。

Q7 任意後見とは?

本人が判断能力があるうちに、将来の後見人を契約で指定する制度(任意後見契約に関する法律)。公正証書で作成。

Q8 相続での成年後見人の役割は?

被後見人が相続人となる場合、遺産分割協議への参加、相続放棄の判断、遺留分侵害額請求、不動産の相続登記、相続税申告、などを代理します。

Q9 利益相反の場合は?

成年後見人自身も相続人など、利益相反の場合、家庭裁判所が特別代理人を選任。

Q10 成年後見人の解任は可能?

後見人に不正・不適切な行為があれば、家庭裁判所が解任。後任の後見人が選任されます。

成年後見制度のチェックリスト

最後に、成年後見制度のチェックリストを整理しておきましょう。

チェック1 本人の判断能力の確認

本人の判断能力の程度(認知症の進行度など)を医師に診断してもらいましたか?

チェック2 適切な類型の検討

後見・保佐・補助のいずれが適切か、検討しましたか?

チェック3 後見人候補者の選定

親族・専門職のいずれを候補者とするか、検討しましたか?

チェック4 申立て書類の準備

申立書・診断書・財産目録などの書類を準備しましたか?

チェック5 家庭裁判所への申立て

本人の住所地の家庭裁判所に申立てましたか?

チェック6 任意後見の検討

本人の判断能力があるうちなら、任意後見契約も検討しましたか?

チェック7 家族間の合意形成

家族間で後見の進め方について合意していますか?

チェック8 専門家への相談

弁護士・司法書士・社会福祉士に相談しましたか?

チェック9 相続への影響の検討

将来の相続への影響(遺産分割協議など)を検討しましたか?

チェック10 後見開始後の継続的サポート

後見開始後の継続的なサポート体制を整えていますか?

これらのチェックを通じて、適切な成年後見制度の活用が実現できます。

専門家のサポート

成年後見制度の活用では、専門家のサポートが極めて有効です。

弁護士の役割

弁護士は、(1)申立て手続きの代理、(2)成年後見人就任、(3)遺産分割協議の代理、(4)訴訟・紛争対応、を担当。

費用は、申立て代理10万円〜30万円、成年後見人就任で月額2万円〜6万円。

司法書士の役割

司法書士は、(1)申立て手続きの代理、(2)成年後見人就任、(3)登記事務、を担当。

費用は、弁護士に準拠。

社会福祉士の役割

社会福祉士は、(1)成年後見人就任、(2)身上監護に強み、(3)福祉サービスとの連携、を担当。

費用は、家庭裁判所が決定。

税理士の役割

税理士は、被後見人の税金申告(所得税・相続税)を担当。

無料相談の活用

法テラス・成年後見センターなどで、無料相談が可能。

成年後見人と関連制度の比較

成年後見人と関連制度を比較しておきましょう。

比較1 任意代理(委任契約)

任意代理は、本人が判断能力があるうちに、代理人を指定する制度。

判断能力が低下すると効力を失う(任意後見との違い)。

比較2 日常生活自立支援事業

社会福祉協議会が行う、軽度の判断能力低下者への日常的な金銭管理支援。

法的な代理権はない。

比較3 信託制度(家族信託・商事信託)

財産を受託者に託す制度。

本人の判断能力低下後も、受託者が財産管理を継続。

比較4 委託保護事業

特定の自治体が行う、高齢者の生活支援サービス。

比較5 介護保険制度との連携

成年後見人と介護保険のケアマネージャーが連携することで、本人の生活全般を支援。

比較6 遺言信託との関係

被後見人の財産管理に、遺言信託を活用するケースもある。

比較7 後見制度支援信託・支援預金

家庭裁判所の指示で、被後見人の財産の一部を信託・預金として保護する制度。

親族後見人による不正防止に効果的。

比較8 高齢者虐待防止法との関連

高齢者虐待防止法と連携し、本人の権利保護を実現。

これらの制度の組み合わせ

これらの制度を、本人の状況に応じて組み合わせることで、より効果的な権利保護が可能。

専門家のサポートで、最適な選択を実現します。

ワンポイントアドバイス
成年後見人は、判断能力が不十分な成人(成年被後見人)の財産管理・身上監護を行う、家庭裁判所が選任した法定代理人です(民法7条以下)。3類型は、(1)後見(判断能力を欠く常況)、(2)保佐(判断能力が著しく不十分)、(3)補助(判断能力が不十分)、です。成年後見人の主な役割は、(1)財産管理、(2)不動産・重要財産の処分、(3)預貯金の管理、(4)遺産分割協議の代理、(5)各種契約の代理、(6)身上監護、(7)税金・公的手続き、(8)家庭裁判所への報告、です。成年後見人の選任手続きは、(1)申立書・必要書類の準備、(2)家庭裁判所への申立て、(3)調査・面接、(4)医師の鑑定(必要に応じて)、(5)審判による選任、(6)後見開始の登記、で2〜4ヶ月。申立て費用は数万円〜数十万円、成年後見人の報酬は月額2万円〜6万円(財産規模に応じて家庭裁判所が決定)。親族後見人と専門職後見人の比較で、近年は専門職後見人の選任が増加(約7割)。任意後見との違いは、(1)開始時期、(2)後見人の選任、(3)代理権の範囲、(4)監督、(5)費用、(6)本人の意向の反映、で異なります。相続における役割は、遺産分割協議への参加、相続放棄の判断、遺留分侵害額請求、不動産の相続登記、相続税申告、です。利益相反の場合、特別代理人の選任が必要。複雑な手続きと長期的な責務のため、相続・成年後見に詳しい弁護士・司法書士・社会福祉士への早期相談が、本人の権利保護と適切な制度活用につながる最善策となります。

まとめ

成年後見人は、判断能力が不十分な成人(成年被後見人)の財産管理・身上監護を行う、家庭裁判所が選任した法定代理人です。

3類型は、(1)後見、(2)保佐、(3)補助、で本人の判断能力の程度に応じて選択。

成年後見人の主な役割は、財産管理、不動産処分の代理、預貯金の管理、遺産分割協議の代理、各種契約の代理、身上監護、税金・公的手続き、家庭裁判所への報告、です。

選任手続きは、申立てから審判確定まで2〜4ヶ月。申立て費用は数万円〜数十万円、成年後見人の報酬は月額2万円〜6万円。

親族後見人と専門職後見人の選択は、本人の状況・財産規模・親族関係を考慮。近年は専門職後見人の選任が増加(約7割)。

任意後見との違いは、開始時期・後見人の選任・代理権の範囲・本人の意向の反映、です。判断能力があるうちの事前対策として任意後見契約が普及。

相続における役割は、遺産分割協議への参加、相続放棄の判断、遺留分侵害額請求、不動産の相続登記、相続税申告、です。利益相反の場合、特別代理人の選任が必要。

ケーススタディから学ぶ点として、(1)早期申立て、(2)親族と専門職の使い分け、(3)遺産分割協議での代理、(4)任意後見の活用、(5)利益相反への対応、(6)3類型の適切な選択、(7)監督機能の重要性、が確認できます。

2024年現在、高齢化と利用者増加(約25万人)、専門職後見人の増加、任意後見の普及、後見制度支援信託の活用、不正事案対策、制度改正議論、デジタル化、外国人の成年後見、などの動向があります。

読者の方が「親が認知症になり成年後見人が必要」「相続で判断能力低下の相続人がいる」と考えているなら、まずは成年後見に詳しい弁護士・司法書士・社会福祉士に早めに相談することを強くおすすめします。早期の相談と計画的な手続きが、本人の権利保護と家族の負担軽減につながる最善策となります。

あなたの相続税はいくら?無料診断

5,000万円
2人

基礎控除額

4,200万円

課税対象額

800万円

相続税の総額(概算)

80万円

申告が必要です

※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。

遺産相続は弁護士に相談を
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
  • 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
  • 遺産分割協議で話がまとまらない
  • 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
  • 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
  • 相続について、どうしていいのか分からない
上記に当てはまるなら弁護士に相談