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自社ブランドの商標が侵害された!?〜ベストな対処法を解説!〜
この記事で分かること
- 商標権とは、自社ブランドの商品・サービスを排他的に独占使用できる権利のこと
- 商標権の侵害は、商品・サービスの名称だけでなく、取引状況からも判断されうる
- 救済措置として、「差止請求」「損害賠償請求」「信用回復措置請求」の3つがある
どの企業も、他社との差別化を図るために独自のブランドを展開しています。そのブランド名が侵害されれば、企業の存続自体に関わることもあります。商標権を侵害されたときの判断基準や対処方法について探っていきます。
商標権とは自社ブランドを守るための権利
社会に出回っている製品やサービスは、ロゴやマークを見ただけで「これはあの会社のブランドだ」と連想できるものが少なくありません。そのようなロゴやマークを他社が勝手に使うことのないように保護するために存在するのが、「商標権」と呼ばれる権利です。
商標権の特徴
商標権とは、自社が開発した製品やサービスであることを示すその会社独自の名称やマークを、指定役務または指定商品の範囲内で排他的・独占的に使用できる権利のことを言います。商標権には、以下のような様々な特徴があります。
- 類似商標も保護する
- 権利範囲は全国へ
- 半永久的に保持できる
- 侵害は許されない
- 先願主義
類似商標も保護する
商標権は、登録商標と全く同じ商標だけではなく、類似商標にまで及びます。自社製品と他社製品のネーミングやマークなどが似ていると、一般消費者がそれらの製品を見たときに混同してしまうおそれがあるため、類似商標も保護することになっています。
権利範囲は全国へ
商標権は、異なる営業地域であっても全国的に権利範囲が及びます。ただし、外国までは商標権は及ばないので、海外でも商標を排他的に独占使用したければ、その国で商標権を取得することが必要です。
半永久的に保持できる
商標権の有効期間は10年間と定められています。しかし、商標権は10年ごとに更新登録申請をすることにより、半永久的に保持することが可能です。更新登録申請は、登録機関満了日の6か月前から満了の日までとなっています。
侵害は許されない
商標権は、故意・過失を問わず侵害が許されない権利です。そのため、他社の商標権を侵害していることを知らずに使用している場合でも、「知らなかった」ではすまされません。商品のネーミングやマークを考案する際は、他社の権利を侵害することのないよう注意することが必要です。
先願主義
複数の企業等から同一の商標が特許庁に登録申請され、その商標の登録が認められた場合、先に出願した者に商標権が与えられます。これを「先願主義」と言います。そのため、商標登録出願は一刻を争うものであると言えるでしょう。
商標の4つの役割
商標には、「自他商品識別機能」「出所表示機能」「品質保証機能」「宣伝広告機能」の4つの役割があると言われています。それぞれがどのような機能なのかについて見ていきましょう。
- 自他商品識別機能
- 出所表示機能
- 品質保証機能
- 宣伝広告機能
自他商品識別機能
商標には、自社の商品・サービスと他人の商品・サービスを区別する機能があります。一般消費者から見て、容易にそれらの見分けがつくことが求められます。
出所表示機能
出所表示機能とは、同一の商標がついた商品やサービスが常に同じ会社から流通されていることを示す機能です。この機能を通じて、企業は業務上の信用や顧客吸引力を獲得できると言われています。
品質保証機能
同一の商標がついている商品・サービスは、一定の品質を有していることを示す機能です。「事業者は自らの商品・サービスの品質向上は目指してもそれを自ら低下させたり変更させたりすることはない」との考え方が前提となっています。
宣伝広告機能
商標によって自分の商品と他人の商品の差別化を図り、一般消費者に自社商品を買いたいと思わせる機能のことです。自社商品やサービスの認知が広まるほど、この宣伝広告機能が向上し、顧客獲得につながることが期待できます。
登録商標が侵害されたときの判断方法
ライバルの同業他社が、自社の登録商標によく似たネーミングの商品・サービスを開発し、販売するようになったらどうなるでしょうか?自社の顧客が、その商品・サービスを自社のものと勘違いして購入してしまうかもしれません。
商標権の侵害とは
商標権者でない第三者が、自社の登録商標と同一又は類似の商標を使用することを、「商標権の侵害」と言います。
商標権者でない者が、商品の包装につけて販売する目的で登録商標が描かれたラベルなど所持するだけでも商標権の侵害行為にあたります。また、商標権者でない者が侵害商標を使用するためにその商標を表示する製品を製造・輸入・取引することも禁止されていることもポイントです。
商標法上、そのような「侵害の予備的行為」も商標権の侵害行為と同一の行為であるとみなされています。このことから、商標権がいかに手厚く保護されているのかがわかるでしょう。
商標権侵害の判断基準
一般的に、商標が類似しているかどうかは,対比される2つの商標が同一又は類似の商品等に使用された場合に、その商品やサービスの出所について消費者が誤認したり混同したりするおそれがあるか否かによって判断されます。
①商標の類似性
見た目や呼称などだけを厳密に見れば類似しない商標でも、同じお店・同じ場所で販売されているなどの場合は、消費者に混乱を生じさせる可能性があると考えられます。過去の裁判例では、「南京町」と「南京町冷麺」の商標は類似しないとされた判例や、逆に「ウォークバルーン」と「Walking Balloon」の商標は類似するとされた判例があります。
②商品・役務の類似性
商標を登録する際には、どのような種類の商品・役務(サービス)に商標を使用したいのかを指定しなければなりませんが、その指定商品・役務と使用商品・役務とが同一または類似するケースもあります。過去には、「薬剤」と「健康食品」とが類似とされた判例などがあります)。
③商標的使用
基本的に、既存の登録商標を使用することは違法です。しかし、過去の判例から、商標登録されている名称を本のタイトルの一部に載せるなど、出所表示機能を有しない形で商標使用もしくは出所表示機能を有しない態様で表示されている商標の使用は登録商標の使用をする権利には含まれないとされています。
自社の登録商標が侵害されたときの対処法
自社の登録商標が他社によって勝手に使用されたら、競争力を奪われるばかりか、今まで築き上げてきた自社ブランドのイメージが損なわれる可能性もあります。そのため、商標権の侵害については法律で救済措置が設けられています。
商標権侵害について相手方へ抗議する前にすべきこと
自社の商標権を侵害している相手方に抗議するときには、まず事前準備としてすべきことがあります。具体的には、どのような準備が必要になるのでしょうか。
自社の商標権が存続しているか確認する
まず、自社の商標権が現在も有効であるかどうかを調べましょう。もし気づかないうちに登録商標の有効期限が切れていた場合は、相手方に正々堂々と抗議することはできないからです。
証拠資料集め
次に、他社の商品が自社の商品の商標を侵害していることを示すために、客観的な証拠を集めます。他社製品のカタログやウェブサイト、宣伝物、需要者層に関する資料・情報、販売地域・販売方法に関する資料・情報など、できるかぎり広範囲で探します。
商標権侵害について相手方へ抗議するときの手順
自社の商標権が今も無事に存続していることの確認ができて、相手方が自社商品の商標権を侵害している客観的な証拠をそろえることができたら、いよいよ相手方に対してアクションを起こします。まずは相手方に侵害行為をしていることを知らせることから始めます。
①警告書を送る
相手方が他人の商標を侵害している事実に気づかずに侵害している可能性もあるため、まずは相手方に警告書を送ります。書面のタイトルをつける際には、悪質と思われる場合には「警告書」、故意に使用しているとは考えにくく、話し合いで解決できそうな場合はもう少し表現を柔らかくしたタイトルにするとよいでしょう。弁護士名義で送れば、相手方に本気度が伝わり、こちら側の警告を無視したり軽視したりするのを防ぐことができます。
②差止請求
商標権を侵害する者や侵害する恐れがある者に対して、故意・過失の有無を問わず侵害の停止または予防を請求することができます。現在および将来に向けての侵害行為に対する、侵害行為を組成したもの(商品、カタログ)の廃棄や製造などに要した設備の除却を請求できることができます。しかし、ラベルをはがしたり表示を抹消したりすれば、商品自体の廃棄までは認められないと考えられています。
③損害賠償請求
商標権者は、侵害者に対して商標権を侵害されたことで被った損害について損害賠償請求することができます。一般的に、権利侵害行為があった場合は侵害されたほうが立証責任を負うことになっていますが、商標権の場合は侵害者の過失を立証する必要がなく、商標権者にとって立証の負担なく損害賠償請求がしやすくなっています。
④信用回復措置請求
商標権者は、故意または過失により業務上の信用を害した新会社に対して、その業務上のし尿を回復するのに必要な措置を請求することができるとされています。具体的には、侵害者が類似の粗悪品を製造・販売したときなどに、新聞や業界紙などに謝罪広告をのせるのが典型的です。
自社ブランドの商標が侵害されたときは弁護士に相談を
ライバル他社が自社ブランド商品のネーミングなどを勝手に使用しているのを発見した場合は、すぐに商標権に詳しい弁護士や弁理士などの専門家に相談しましょう。専門家に代理人として相手方に警告してもらえれば、相手方もこちらが本気であることがわかり、真摯に対応してくれる可能性が高まります。
法的リスクを低減し、安定したビジネス運用を実現
- ライバル企業や顧客から訴訟を起こされた
- 取引の中で法令違反が発覚した
- 契約書作成時の法務チェック
- ネット上での風評被害・誹謗中傷
- M&A・事業展開・リストラ時の法的リスクの確認