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英文契約書の書き方とは|国際・海外ビジネスに欠かせない!
この記事で分かること
- 英文契約書は日本語の契約書とは形式も考え方も異なる
- 自社が作成した契約書に、相手から一発OKが出ることはまずない
- 英文契約書の作成は英米法や英米法の商慣習に詳しい専門家に依頼すべき
英文契約書は、日本語で作成する契約書とはわけが違います。そのため、両者の違いについてしっかり理解することが大切です。実際に作成する際には、英米法の商慣習に詳しい弁護士などの専門家に依頼をして作成してもらったほうがよいでしょう。
目次[非表示]
海外ビジネスに欠かせない!英文契約書の基礎知識
ビジネスにはさまざまな場面で契約書を交わす機会がありますが、海外ビジネスでは契約書がさらに重要な役割を果たします。ただし、国内の企業と交わす契約書と海外の企業と交わす契約書とでは大きな違いがあるので、作成をする際には注意が必要です。
海外ビジネスで使用する英文契約書とは
英文契約書とは、外国の企業と国際取引を行うときなどに使用する、英文で書かれた契約書のことを指します。相手方が英語圏の企業などではなくとも、契約を交わすときには英文契約書が用いられることが一般的です。
しかし、「契約書」と言っても、日本国内で使用する「契約書」と同じようにとらえることはできません。なぜなら、英文契約書のほとんどは英米法の考え方に従って作成されており、日本法と考え方が異なっているからです。そのため、日本国内での取引と同じように考えていると、思わぬ解釈の違いに遭遇することがあります。
英文契約書の形式とは
英文契約書には、明確に決まった書式はありません。しかし、以下のような形式にするのが伝統的なスタイルとなっています。それぞれの条項について詳しく見ていきましょう。
- ①表題
- ②前文
- ③本文
- ④一般条項
- ⑤結語と署名
①表題
表題は、契約内容が一目でわかるよう「〇〇Agreement」とするのが一般的です。
Sales Agreement | 売買契約 |
Agency Agreement | 代理店契約 |
License Agreement | ライセンス契約 |
Joint Venture Agreement | 合弁契約 |
②前文
全文は頭書(Premises)と説明条項(Whereas)から構成されています。
頭書には、以下の事項が記載されます。
- 契約締結日(Execution date)
- 契約当事者(Parties)の氏名・住所
- 法人の設立準拠法 等
説明条項には、以下のような事項が記載されます。また、契約書として成立するために必要な約因(当事者のギブアンドテイクの関係を示すもの)もここで示されます。
- 当事者が契約に至った経緯
- 契約締結の動機・目的
③本文
本文は、定義条項と実質条項から成り立っています。
定義条項は、契約書の中で繰り返し使われる用語についての定義をまとめて本文の冒頭に示し、この段落以降の説明を省略することが目的で書かれています。また、実質条項には、当事者間で取り決めた権利義務や具体的な契約内容を記載します。そのため、実質条項は契約書の中核をなす部分であると言えます。
④一般条項
一般条項には、契約内容や種類を問わずすべての契約で共通して取り決めておくべきことが書かれています。具体的には、契約期間(Term)や秘密保持(Confidentiality)、不可抗力(Force Majeure)などの条項があげられます。どの契約書もたいてい同じようなことが書かれていますが、内容についてはその都度確認したほうがよいでしょう。
⑤結語と署名
結語(Closing)には、契約書を締めくくる文章と契約当事者の氏名や肩書が書かれており、それに続いて契約当事者が署名(Signature)をする欄があるので、署名をします。
海外との取引における英文契約書の作成ポイントとは
海外との取引で使用する英文契約書を作成するときには、細心の注意を払って抜け漏れがないように作成しなければなりません。英文契約書を作成する上で気をつけるべきポイントは3つあります。具体的には、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか。
英文契約書とは英米法の考え方をもとに作成するもの
英文契約書の作成とは、単に和文の契約書を英訳すればそれで済むわけではありません。英文契約書の多くが、英米法のルールに沿った構成になっているからです。そのため、英米法と日本法での考え方や商習慣の違いを知ることがまず必要です。
英米法では、古くからつみ重ねられてきた判例法に従って紛争を解決することが伝統的なスタイルとなっており、すべての法律が明文化されているわけではありません。そのため、起こりうるすべてのリスクについて契約書に盛り込んでおくことが、契約トラブルを生じさせないようにする秘訣です。
ひな形に頼りすぎない
突然海外との取引をすることになっても、英米法も日本法もよく知らない素人が英文契約書を作成することは非常に難しいでしょう。そのため、既存の英文契約書のひな形をそのまま、もしくは足りないところを穴埋めして流用するケースは少なくありません。
しかし、ひな形に書かれていることをよく理解しないまま使用しては、自社のビジネスにとって必要な条項が抜けて落ちてしまうおそれがあります。そのため、思わぬトラブルが生じるリスクも否定できません。自社が海外とのビジネスで不利な立場にならないためには、自社のビジネス内容や方法などがきちんと反映された契約書を一から作成したほうがよいと言えるでしょう。
作成しただけで契約業務が完了したと思わないこと
日本語でさえ、専門用語が多く出てくる契約書の作成は難しいもの。それを英語で作成するのはさらに手間暇も労力も費やすことになります。そのため、人によっては英文契約書の作成が完了しただけで、契約にかかる業務がすべて終わったかのように錯覚することもあるでしょう。
しかし、作成した契約書はあくまで交渉の土台にすぎず、この契約書をもとにしてこれから相手方と交渉をしなければならないことを忘れてはなりません。英文契約書の作成はあくまでビジネスの手段であり、目的ではないのです。
英文契約書の準備に必要以上の時間と労力を割かないようにするには、英文契約書に詳しい弁護士などの専門家に依頼して作成してもらったほうがよいでしょう。
海外ビジネスで使用する英文契約書作成の流れと費用の相場とは
英文契約書を作成するのであれば、日本語の契約書の知識にプラスして、英米法での商慣習に関する知識も必要です。そのため、英文契約書の作成は、英米法を熟知しており英文契約書の作成に手慣れている弁護士に依頼することをおすすめします。
作成の流れ
弁護士に英文契約書の作成を依頼するときは、以下のような流れとなりますので、それぞれのプロセスについて具体的に見ていきましょう。
- ①原案を送る
- ②作成
- ③内容説明
- ④修正
- ⑤完成
①相談
まずは自社のビジネスについて弁護士に話をするところから始めます。自社や契約先がどんな企業なのかわかる資料を準備しましょう。また、和文での契約案があればベストですが、和文契約案がなくとも弁護士が徹底的にヒアリングの上、作成してくれます。ヒアリングが終了したら、費用の概算と納期を見積もってもらいましょう。
②作成
見積もり内容に問題がなければ、英文契約書の作成を開始してもらいます。初稿が上がってくる納期は1~2週間後くらいになるので、余裕をもって作成依頼をすることが大切です。
作業途中で弁護士より質問が来ることもあるので、そのときはきちんと対応しましょう。
③内容説明
初稿が上がったら、弁護士から内容に関する説明を受けます。内容について適宜日本語で解説をつけてくれる弁護士もいますが、何か疑問点や心配なことがあればこのときに直接質問しましょう。特に修正点などがなければ、こちらで納品となって依頼は終了します。
④修正
完成した契約書をもとに海外の企業と交渉を行うことになりますが、一回の交渉で契約書にサインをもらえることはまずありません。たいていの場合、何度も何度も修正要求が来ます。そのようなときは、その都度弁護士に修正を依頼します。
⑤完成
完全に修正事項がなくなり、満足ができたら、終了となります。
弁護士に依頼するときの費用の相場
弁護士に英文契約書の作成や修正依頼をするときに気になるのが費用の相場です。英文契約書の作成にかかる料金と修正にかかる料金の相場は以下の通りです。ただ、顧問契約を結んでいない弁護士に委託する場合は、この他に相談料(1時間当たり2万円など)が別途プラスされることもあるので、依頼する際には別途かかる費用があるかよく確認しましょう。
英文契約書の作成
英文契約書の作成を依頼する場合、A4サイズ1ページあたり15,000円~40,000円が平均的な相場です。ただし、これは定型的な契約の場合であり、特殊な契約の場合は数十万円~100万円近くなるケースもあります。
英文契約書の修正
英文契約書の修正を依頼する場合、A4サイズ1ページあたり10,000円~30,000円ほどが費用の相場です。作成よりも修正のほうが若干安くなっているのがわかります。しかし、これも内容によって前後し、書き直しに近い場合は新規作成と同じくらい料金がかかることもあるのでその都度確認が必要です。
タイムチャージ制の場合
作成枚数や文字数単位ではなく、タイムチャージ制で料金を設定しているところもあります。タイムチャージ制の場合は、だいたい1時間当たり25,000~35,000円が目安です。ただし、パートナー弁護士やアソシエイト弁護士とで料金は異なります。
英文契約書の作成は弁護士に依頼してトラブルを回避!
英文契約書はいざ紛争が起こったときの証拠にもなるため、海外の企業とビジネスをする上で必要不可欠なものです。そのような重要な書類を法律知識のない素人が作ることは好ましくありません。そのため、英文契約書の作成が必要になったときには、英米法や英文契約書に詳しい弁護士などの専門家に依頼するようにしましょう。
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