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債権回収裁判はどう進む?訴訟手続きの流れ

この記事で分かること

  • 訴訟は債権回収の最終手段
  • 裁判には少額訴訟と通常訴訟がある。流れはどちらもだいたい同じ
  • 判決を得ても債務を履行しないなら強制執行をする

債権回収裁判は、民事訴訟として行われます。民事訴訟は原告と被告がどちらも民間人であるためお互いに弁護士を立てて争い、審理を重ねます。裁判が終わると判決が出されるのですが必ずしも判決通りに債務者がお金を払ってくれると限りません。そのような場合は判決を根拠に強制執行が可能です。

債権回収裁判を起こすのは他の手段で債権回収ができないとき

債権回収とは債務者が支払ってくれない売掛金や借金を支払ってもらうように働きかけることですが、どうやっても相手が支払う意思を見せないなら裁判を起こすしかありません。債権回収ができるということはその根拠となる契約が存在するわけですから、債務を支払う義務よりも契約の有効性や債務履行の条件などで争うことになるでしょう。

基本的には裁判に至らず終わる

法律問題といえば即裁判のイメージがあるかもしれません。しかし、実際に訴訟に発展する事案は少なくその多くは裁判に至ることなく解決しています。それだけ法律トラブルが多いということですね。

裁判をする前にできることといえば内容証明郵便で請求書を送り、弁護士を立てて交渉を行うことですが、裁判を恐れる債務者の場合は弁護士の名前が出た時点で諦めて支払いに応じてくれます。

裁判は時間とお金がかかる

裁判は法的争いに対して白黒つけられる手段ですが、時間と費用がかかるため積極的に用いられません。期間についてはだいたい数ヶ月から1年、本当に長い争いだと数年かかります。費用については印紙代などの裁判所に支払う費用の他に弁護士費用がかかります。弁護士費用は着手金だけでも10〜40万円ほど、成功報酬は回収できた債権の比率に応じて上乗せされます。

そのため、少額の債権を取り戻す場合は訴訟によって費用倒れになりかねません。

たとえ少額でも弁護士に相談すべき理由

それなら債権が少ない場合は弁護士に相談しない方が良いのか、と言うとそうでもありません。弁護士費用がかさむのはあくまでも訴訟の代理を頼んだ場合で請求書の送付や交渉の代理だけなら訴訟ほどの費用はかかりませんし本人訴訟をする場合も助言を受けながら闘えます。

そもそも訴訟を代理できるのは弁護士だけ

債権回収業務は司法書士や行政書士が対応することもありますが訴訟の代理ができるのは弁護士だけ。交渉の代理は弁護士と認定司法書士が可能ですが認定司法書士が担当できるのは訴額140万円未満までです。

知っておきたい支払督促のデメリット

裁判で判決を得ると法的に自分の正しさを主張することができます。債務者が頑としてお金を支払わないときは差し押さえも可能です。この時支払督促という手段を取れば訴訟を起こさずに強制執行できます。ところが支払督促に異議を申し立てられると「相手の住所を管轄する裁判所」で通常訴訟が行われます。

取引先が近ければ大したデメリットにならない一方、遠方の相手に対して支払督促するなら大きなデメリットになります。

支払督促は勝算が極めて高い場合に行ってください。事前に弁護士と相談することもオススメです。

ワンポイントアドバイス
訴訟は弁護士費用や相当の期間からあまり行われない選択肢です。本当は白黒つけられた方が良いのでしょうが、早期解決を図れるなら裁判でない手段の方が無難です。訴訟を起こす場合は費用倒れにならないよう、しっかり証拠と正論を用意してください。

債権回収裁判はどのような流れで行われるのか

債権回収裁判は民事訴訟という形で行われるので、民事訴訟一般の手続きを抑えれば問題ありません。民事訴訟の流れはこのようになっています。

  • 訴訟の種類や裁判所の確認
  • (仮差押)
  • 訴状の提出
  • 第一回口頭弁論
  • 準備書面の提出
  • ふたたび口頭弁論
  • 判決

訴訟の種類や裁判所の確認

訴訟は裁判所に訴えるからといってどこの裁判所でも良いわけではありません。訴えの内容に応じて担当する裁判所が異なります。また、債権の金額によっては少額訴訟になることもあります。

少額訴訟とは

少額訴訟とは訴額60万円以下の金銭を請求する場合に用います。少額訴訟は通常訴訟に比べて簡便で、基本的には1回の弁論で判決が出されます。少額訴訟を利用する場合は債務者の同意が必要で、それが得られなかった場合は通常訴訟を行います。

少額訴訟は判決が出るまで早ため、本人訴訟でも解決できるような場合に利用すると効果的です。

通常訴訟を行う裁判所は訴額によって異なる

通常訴訟の場合は1度あるいは数度の審理をへて判決が出されます。通常訴訟は訴額140万円未満の場合に簡易裁判所へ、訴額140万円以上の場合は地方裁判所へ申し立てます。簡易裁判所は裁判官でない人が判事をする場合もあるため、勝算の高い案件はあえて訴額を引き上げ地方裁判所で審理する方が良いです。

どこの裁判所に申し立てれば良いのか

裁判所の種類を確認したら次は管轄裁判所の確認です。例えば原告と被告が北海道に住んでいるのに沖縄の裁判所に申し立てることはできません。それぞれの裁判所には管轄する地域というものがあります。

契約書に定められている場合はその裁判所で、特に定めのない場合は原告の住所を管轄する裁判所で訴訟が行われます。

仮差押は裁判前でもできる

訴訟をして良かったという結果を得るためには債権回収の確実性を高めなければいけません。たとえ満足のいく判決を得られたとしても相手が無資力であればただの紙切れです。裁判を起こす前、そもそも債権回収を思い立った段階で相手の資産状況を調査しておきましょう。

そして、いよいよ裁判を起こして差し押さえるなら相手の資産を凍結する仮差し押さえをすると安全です。仮差し押さえとは正当な理由があれば一時的に資産を移動できなくする手続きで裁判中に財産を処分されないようにします。

仮差押は裁判前に申し立てることが可能です。

訴状の提出

裁判をするときは管轄の裁判所に訴状を提出します。訴状には原告と被告の氏名と住所、被告に対して請求するもの、請求の原因(紛争の要点)を記入しますが、難しい場合は弁護士に作成してもらいましょう。証拠がある場合はこの時点で出しておきます。

第一回口頭弁論

訴状が受理されたら第一回口頭弁論の日程が決まります。よくドラマで見る裁判の風景はこの口頭弁論ですね。開廷するまでに被告から答弁書が送られてきます。答弁書には債務を認めるかどうか、請求をどのような理由で拒否するかが書かれています。

答弁書が送られてこない場合もありますし、相手が口頭弁論に出廷しない場合もありますがその場合は原告の主張が正しいと扱われます。つまり交渉や調停と異なり訴訟は欠席した人が不利になるのです。

少額訴訟の場合は1回の口頭弁論で結審します。通常訴訟の場合は次回の口頭弁論があるのでそれに向けた準備が行われます。

準備書面の提出

次回の口頭弁論までに準備書面を提出します。準備書面には口頭弁論で陳述することを書き、証拠となる書類を添付します。証拠が不十分であるときは契約書や納品書、請求書など使える書類や記録を探してください。

ふたたび口頭弁論

口頭弁論は裁判によって回数が異なります。そのため、何回口頭弁論したら判決が言い渡されるという決まりはありません。ただ、裁判所が十分だと判断すれば弁論の終結が宣言されます。そして判決言渡期日が指定されます。

判決

判決は言い渡されてから2週間後に確定します。納得いかない場合は高等裁判所に控訴します。高等裁判所の判断にも納得できなければ最高裁判所へ上告します。

判決が出るとそれを根拠に強制執行できるようになります。

和解で解決することもある

裁判の途中で和解が成立すれば裁判上の和解として解決します。裁判が続くことはお互いにとって不利益なので満足な結論が得られるなら無理に判決まで争う必要はありません。ただ、闇雲に和解すると本来得られた利益を逸するかもしれないので慎重に行動してください。

ワンポイントアドバイス
債権回収裁判は民事訴訟です。原告が訴状を出して受理されれば訴訟が始まります。訴訟が終わるまでは数回の口頭弁論を重ねますが十分な証拠がある場合や相手が債務を認めている場合は比較的短い期間で判決が出されやすいです。

債権回収裁判で判決が出た後にすることと裁判をせずに差し押さえる方法

判決が出されるとこちらの正しさが公に認められたことになるので原告にとっては一つの達成感があると思います。しかし、債権回収裁判の目的は勝訴でなく取り立てであることを忘れないでください。

判決は、それを元に債務を履行させる効果を持っていないのです。だから「勝訴したのに賠償金を払ってもらえなかった」という事例が多発しています。特に犯罪被害者は目も当てられない状況です。

判決が出ても支払われないなら強制執行を

判決が出ても債務の支払いがないなら強制執行して財産を差し押さえるしかありません、すでに仮差し押さえがされているなら強制執行しやすくなります。

強制執行をするためにはまず判決に対して強制執行できる効力を持たせなければいけません。この手続きは判決が出された裁判所に対して行います。

そして強制執行をするために債務者の住所を管轄する裁判所へ申し立てます。差し押さえる財産に応じて手続き内容や差し押さえまでの流れが変わります。

詳しくはこちらをご覧ください。
〈強制執行の記事へのリンク〉

判決がなくても差し押さえるには

差し押さえるためには必ずしも裁判が必要とは限りません。公正証書での契約に強制執行についての条項があればそれを根拠に申し立てができるし、朝廷や和解で解決した場合もそれらの調書があれば強制執行が可能です。

担保権の実行も一つの差し押さえと言えますが、話し合いや裁判が必要ない点で手続きが簡単になります。契約の際、事前に何かを担保にしておくことも債権回収で困らない対策です。

ワンポイントアドバイス
判決はあくまで権利義務関係を確定させるものであって、実際に財産を移動させる効果はありません。債権回収を終わらせるためには強制執行が必要となります。強制執行は不動産、動産、債権によって手続きの方法が異なります。
債権回収は債務者の財産が少なく他の債権が大きいほど満足な結果が得られなくなるので費用倒れにならないよう事前調査を念入りに行いましょう。

債権回収裁判で債権が回収できると限らない、訴訟の判断は弁護士と一緒に考えましょう

裁判は債務者の財産を差し押さえる根拠を与えてくれますが、債権回収をするためには強制執行が必要です。しかも債務者が財産を持っていなければ強制執行したところで何も支払ってもらえません。つまり、考えなしに裁判や強制執行をしても骨折り損のくたびれもうけとなってしまうのです。

債権回収は財産を持っている人に対してしか行えませんから、実効性や訴訟によって得られる効果を弁護士と良く検討してください。

債権回収を弁護士に相談するメリット
  • 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
  • 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
  • スピーディーな債権回収が期待できる
  • 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
  • 法的見地から冷静な交渉が可能
  • あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談