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債権回収の基本的な流れ|債務者の未払金回収、問題解決のプロセス
この記事で分かること
- 債権回収の流れにおいて差し押さえは最終手段
- 債権回収は相手方との話し合いから始める
- 債権回収の流れは複雑なので早期解決のため弁護士へ相談を
債権回収=差し押さえというイメージがあるかもしれませんが債務者によっては話し合いで解決することもあるし、逆に強制執行をしても債権回収できないこともあります。債権回収は法的手段がいくつかありそれぞれのメリット、デメリットを知った上での選択が求められます。こちらでは基本的な債権回収の流れを紹介するので弁護士と相談して案件にあった解決法を見つけましょう。
債権回収を話し合いで解決する流れ
債権回収とは債権を回収することですから、相手方に対して債務を支払ってもらうために行うことは全て債権回収になります。つまり、必ずしも法的手段をとるわけではありません。
こちらでは訴訟や差し押さえをする前にできる債権回収の方法とその流れをご紹介します。
債務者との話し合い
債務者との話し合いは連絡さえつけばいつでもできます。債権回収といっても債務を踏み倒そうとする人だけでなくどうしても支払えずに困っている債務者もいるわけですからしっかりと事情を聞き、期限を延長すれば解決することもあり得ます。
もちろん、逃げる気でいる債務者に対しては話し合ったところで何の解決にならないでしょう。この場合は次の手段に出る必要性の確認が主な意義となります。
債務者との話し合いは対面でも電話でも構いません。
債務者に何とかして払う意思がある場合は念書を書いておく
債務者に払う意思があるのに何らかの事情がある場合は、改めて債権についての念書を書きましょう。公正証書という形で作成すれば裁判なしでの強制執行が可能となります。和解調書の場合も裁判なしでの強制執行が可能で代物弁済を選べる点が公正証書と異なります。
請求書を内容証明郵便で送る
私的な話し合いで解決しないときは請求書を内容証明郵便にて送ります。内容証明郵便を使う理由は、文書を送った証明になることと消滅時効を停止できることにあります。請求書を送った時によくある問題なのですが相手が「受け取っていない」としらを切ると埒があきません。
内容証明郵便は数百円の費用で送信を証明してもらえるほか別途費用を支払えば到達したことも証明してもらえます。督促状という形で送っても変わりません。
相手にプレッシャーをかけたいときは法的手続きをする旨を書き添えておくと良いでしょう。
弁護士を立てての話し合い
内容証明郵便で請求書を送っても解決しない場合は弁護士を立てた上で改めて話し合いを行います。すでにこちらからの連絡を無視している債務者に対しても弁護士がいることは大きなプレッシャーになり話し合いへ応じてくれるようになります。
弁護士は法律のプロですから相手の主張に対して公正に判断することができる上、お互いが実現可能な解決法を提案してくれます。債権回収になれた弁護士は交渉のプロでもあるため思わぬ妥協点が見つかることもあります。
お互いに合意できたら書面にまとめます。
実績が多く交渉上手な弁護士に依頼しましょう。
債権回収で裁判所に頼る流れ
債権回収をしても債務者が全く応じないようなら裁判所に頼ります。裁判所は強制的に債務者の財産を差し押さえることができますがそこまでの流れは長く、費用もかかります。弁護士費用も数十万円は必要なのであくまで「いざという時の手段」と心得ましょう。例えば債務者が破産や逃亡を考えているときはすぐに法的手続きを行いたいです。
和解調書の作成
すでにお互いが合意できている場合、簡易裁判所に申し立てて和解調書を作成してもらえます。この場合は裁判上の和解となり訴訟なしでの強制執行が可能となります。代物弁済も可能となるため公正証書での念書より債権回収の選択肢が広がります。
調停
簡易裁判所に申し立てた上で話し合いを行います。調停委員が間に入ることで話し合いが進みやすくなることが考えられます。ただし調停は欠席しても大きなペナルティがないためここで解決するならそもそも大きな問題でなかったのかもしれません。調停による合意も不履行の場合、訴訟なしで強制執行できます。
支払督促
支払督促とは裁判所に裁判なしで強制執行を申し立てる手続きです。強制執行までおよそ2ヶ月と訴訟を起こす場合に比べて非常に短期間で債権を回収できる上、支払督促の費用は訴訟費用の半額です。
ただ、支払督促は相応のデメリットもあるので「ほぼ確実に裁判で勝てる状態」で選ぶことをお勧めします。
支払督促に対する異議があったら
支払督促は一方的な手続きに見えますが、相手にも督促異議をする権利があります。督促異議があったら訴訟に移行するのですがなんと相手方の管轄裁判所で行われます。つまり、遠方の債務者から督促異議をされると割と面倒です。
相手方の管轄地での訴訟が難しい場合はいったん通常訴訟を取り下げましょう。
督促状との違い
督促状は一度送った請求書に基づく支払いを急がせるためのもので法的手続きによる書類ではありません。よって、督促状の送付と支払督促は全く別の手続きです。
訴訟
支払督促で解決しなかった時や、そもそも支払督促にリスクが感じられる場合は訴訟を行います。訴訟は債権が60万円以下の時に行う少額訴訟とそれ以上の場合に行う通常訴訟に分かれます。また、訴訟の最中に債務者が財産を処分したり逃げたりしないよう財産の仮差し押さえを申し立ててください。
仮差し押さえとは
裁判をすると終わるまで短くとも数ヶ月かかり、強制執行できるのも判決を得た後です。その間に財産を処分されたり債務整理されてしまえば、債権回収ができません。そこで裁判が終わるまで仮差し押さえという形で財産を凍結させることができます。
もちろん、相手の権利を大きく制限するものですからそれなりの審査が求められますが仮差し押さえによって交渉を有利に運び判決前に和解に持ち込める可能性も高まります。何よりも債権を守れるメリットが大きいです。
少額訴訟
債権が60万円以下の場合は簡易裁判所で少額訴訟を行います。少額訴訟は通常訴訟に比べて判決が出るまで早く、相手方が反訴できない点が特徴的です、
通常訴訟
債権が60万円より大きい場合は通常の民事訴訟を行います。債権が140万円以下の場合は簡易裁判所で行えますが、それより大きい場合は地方裁判所で行います。訴訟は債務者の所在地を管轄する裁判所で行うのが原則ですが、契約書で管轄裁判所を決めている場合はそこを指定できます。
強制執行
判決が出されてもなお支払わないようであれば差し押さえを行います。差し押さえできるものは金銭だけでなく、動産や不動産も含まれます。債務者が別の人に対する債権者である場合は債権を差し押さえることもできるでしょう。ただ、相手が持っている以上の財産を奪うことはできず給与の差し押さえにも限度があります。
解決が難しいときは、調停や和解を踏まずすぐに支払督促をすることも考えられます。
債権回収に手間取らないための事前策とその流れは?
債権回収は本来得られるはずのお金が手元にないだけでも痛手を負っているのに、さらなるコストを発生させます。場合によっては取引の継続さえ危ぶまれるでしょう。こちらでは今後、債権回収で手間取らないための対策をご紹介します。
信用調査をする
信用調査は忘れずに行いましょう。取引先の経済状況や運営の実態を知ることで取引に値する企業かいなかを判断します。公開されている書類から判断することもできますが、詳細な調査が難しいときは専門の会社に依頼することがおすすめです。個人との取引においても可能な限り信用調査を行なってください。
相手の信用度に合わせて与信枠を設定します。その範囲内で取引をします。債務者の状況は日々変わっていくので定期的な信用調査をしましょう。
重要な契約は公正証書で合意する
契約書を公正証書で作成しておけばいざという時すぐに強制執行ができます。もちろん、契約書が立派な根拠となるよう内容は誰が見ても明確であることが望ましいです。商品の取引が伴うなら品質や責任についての取り決めを明確にすると相手方との争いがこじれずに済みます。
とはいえ、全ての契約において公正証書を作成していたのではあまりに手間と費用がかかります。重要な契約を見極めましょう。
すぐに依頼できる弁護士を見つけておく
債務不履行に素早く対処するためには日頃から相談できる弁護士の存在が欠かせません。いち早く債権を回収したい時に頼める弁護士がいないと、弁護士を探す手間が増えてしまいます。現在、債権回収に悩んでいるのであればこれからも継続して依頼できるような弁護士を選ぶと良いです。
債権回収自体は司法書士でも行政書士でも可能ですが、法的手続きができるのは弁護士だけです。
いま、悩まれている問題を解決したら再発を防げるような対策を始めましょう。
債権回収の流れは簡単でない。熟知した弁護士に依頼し早期解決を
債権回収の流れは複雑で、選択肢ごとのメリットとデメリットを比較して最善を尽くさなくてはいけません。しかも債務者によっては債権回収の意思が伝わると逃げようとします。つまり、債権回収はその流れを熟知して手早い解決が求められます。法律のプロである弁護士の中でも債権回収に強い人をパートナーにできれば、債務不履行による損失を最小限に抑えられるでしょう。
- 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
- 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
- スピーディーな債権回収が期待できる
- 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
- 法的見地から冷静な交渉が可能
- あきらめていた債権が回収できる可能性も