1,857view
売掛金トラブルに巻き込まれたら、正しい対応方法は?
この記事で分かること
- 売掛金は会社の生命線。倒産の原因になることもある。
- 売掛金トラブルに巻き込まれたら、まず取引先に事情を確認すること
- 売掛金トラブルが解決しないようなら手早く法的手段に頼ること
売掛金は会社の収益ですから、予定通りに支払われないと経営に必要な費用を払うことができず債権者がお金を借りなければいけない場合もあります。売掛金の期日が守られずトラブルに発展した時は契約の見直しをする、それでも解決しないなら弁護士に相談して債権回収しましょう。大きな取引先に対して貸し倒れが発生すると想像以上の痛手になります。
目次[非表示]
売掛け金トラブルは事業の存亡に関わる
売掛け金とは、後払いでお金を払ってもらう権利です。個人での買い物なら商品の引渡しとお金の支払いが同時に行われることが多いのですが、商売では金額の大きさや経営の余裕からそうも言っていられません。
相手方も取引先によって収益の入るタイミングが異なるため、後払いが認められているおかげでお金を払いやすくなります。そういえば、労働者の給与も後払いされるものですね。
売掛け金という売り手にとって危険な方法が許されるのは信頼があってこそ。たとえ後払いでも期日を守ってきっちり支払ってくれるなら債権者として安心です。
もし、売掛金が支払われなかったとすればどうなってしまうのでしょうか?
売掛金の貸し倒れは売上ゼロより大変
売掛金が支払われないということは、その取引先からの売上がゼロという意味です。しかもただ売上がないだけでなく商品を作って納品するまでのコストがあるのでただ売れないよりも損害が大きいです。
売掛け金を払ってもらえず貸し倒れになってしまえば、債権者は毎月の支払いができなくなります。お金がないせいで経営がストップして最悪の場合は倒産します。売掛金トラブルというのは「ちょっと支払いが遅れる」レベルではありません。
中小企業の場合は取引先が少なく、一つの企業に対する売上の比率が大きくなりがちです。そのため売掛金トラブルの影響を受けやすいです。
手形を振り出して解決するなら売掛金トラブルなど起きない
売掛金はあくまでその日までに支払うという約束にすぎませんが、手形を発行してもらえばそれが法的根拠になります。しかし、たとえ手形契約をしても相手方が当座預金にお金を入れていなければ同じことです。
取引によってはクレジットカードという方法もある
売掛金トラブルを防ぐためにクレジットカード払いを求めることも考えられます。クレジットカードを使うとその分手数料で損をしてしまいますが、売上を取り逃がす損失とは比べるまでもありません。
ファクタリングは有効な解決策と言えるか
売掛け金の債権を担保に融資を受けるファクタリングもすぐに現金を手に入れる方法ですが、手数料がかかりますし売掛金の不払いを繰り返している会社に対する債権であれば審査に通りづらいです。
銀行は意外とお金を貸してくれない
売掛金トラブルを解決するためにはいくつかの法的手段が取られますが、すぐに売掛金を回収できると限りません。したがって当座の支払いは売掛け金をあてにできないのです。そうなると銀行からの融資を受けることも選択肢になります。しかし、銀行にとって売掛金は手元にないお金ですから債権の額を理由に貸しづらい側面があるようです。
たとえ必要な支払いよりずっと多い売掛け金を持ってたとしても、融資を断られたら倒産してしまいます。「経営そのものはうまくいっていたのに…」と悔やんでもしょうがありません。
こんな時はすんなりお金を貸してくれるらしい
銀行が簡単にお金を貸してくれるのは収入があるとわかっている時。例えば「税金が払えなくて困っている」場合は今後も収入が見込まれますから銀行も貸しやすいのです。
クラウドソーシングでも気をつけたい売掛け金トラブル
売掛金トラブルで悩むのは会社だけではありません。最近は働き方の多様化や技術の発展によりフリーランスでの仕事をしやすくなってきました。クラウドソーシングで仕事のやり取りをすることもあるでしょう。
しかし、駆け出しフリーランスの無知や無力に付け込んで報酬を支払わない企業もあるようです。クラウドソーシングの場合は匿名のクライアントもいるため尚更の注意が必要です。
売掛金トラブルに巻き込まれた時の対策として有効なものは少ないので、すぐに債権回収を行なってください。
売掛金トラブルを早期解決できるなら
売掛金トラブルを解決するには債務者から売上を支払ってもらうしかありません。どうしても支払いを拒むようなら裁判に打って出るほかないのですが、話し合いで解決できる場合はその方が圧倒的に早く、コストもかかりません。
こちらが「甘く見られている」なら法律のプロである弁護士を交渉の場に立たせることでプレッシャーになります。会社の取引は個人の争いとは規模が違いますから毅然とした態度で臨みましょう。
債務者にも資金トラブルがある場合
売掛金トラブルでまず考えられるのは債務者も資金トラブルを抱えている場合です。お金がなくて払えないとしても簡単には許せないものですが、「支払いのあてがある」場合は期限を伸ばすという選択肢ができます。手形を発行している場合は手形ジャンプをすることもありです。
支払うための方法を一緒に考える
債権を払う意思があるならしっかり支払うための方法を考えましょう。場合によっては分割払いを認めることになります。当事者間だけでの解決が難しいなら債権回収に詳しい弁護士にも協力してもらうとお互いにとって良い妥協点が見つかります。
債務者の事情を思いやることで今後の関係が良くなるかもしれません。ただし、あまりに業態がひどい場合は厳しい態度で話し合った方が望ましいです。
和解調書や公正証書で改めて合意する
支払いの予定が決まったら書面で合意を交わします。この時に公正証書や和解調書を作成しておけば再び売掛け金トラブルになった時、強制執行できます。あらかじめ抵当権を定めておくのも良いでしょう。
公正証書は金銭債権のみが対象でお近くの公証役場で作成します。一方和解調書は簡易裁判所で作成しますが代物弁済も対象になります。
債務者が頑なに支払おうとしない場合
そもそも債務者に支払いの意思がない場合は、取引先との関係悪化を心配するだけ無駄で積極的な交渉が求められます。ただ、注意すべきは感情的に振る舞うことで力ずくで財産を奪い取ったり相手を殴ったりすることは刑事事件にさえ発展します。
この場合は間違いなく弁護士を立てた方が良いです。
内容証明郵便を弁護士の名前で送る
債権回収で最初に行うのは請求書の送付です。送信の記録がされるよう内容証明郵便を利用してください。内容証明郵便は裁判上の証拠になるし消滅時効を6ヶ月間停止する効果もあります。(わざわざ内容証明郵便を送らなくても話し合いで解決できるなら、不要です)
この時、弁護士の名前で内容証明郵便を送りましょう。弁護士が関わっていることは債権回収の本気度を印象付け、相手方はこれから行われる法的措置を想像します。そのため、この段階で売掛け金を払ってくれる場合が少なくありません。
強気に交渉する
内容証明郵便のプレッシャーで相手方が話し合いに応じてくれたら、交渉に移ります。相手は支払いを拒んでいる以上、こちらは強気に交渉します。法的な正しさや訴訟のリスクを伝えて相手に支払うメリットを納得してもらいます。
交渉をしても支払いの合意をしてくれないなら法的手段をとるしかありません。
契約そのものの問題で争う時は
そもそも「契約そのものの問題」で食い違いが出ている時も売掛け金を払ってもらえません。例えば商品に問題があった、納期がずれたなどを理由に支払いを拒んでいる場合もやはり弁護士を立てて請求の正当性を訴えましょう。
売掛金トラブルを解決するなら法的手段も辞さないこと
売掛金トラブルを解決するためには法的手段もためらってはいけません。大金、それも他人のためのお金がかかっているわけですから弁護士費用を払っても回収できるメリットの方が大きいはずです。
法的手段は支払督促、訴訟、強制執行があります。
支払督促
支払督促は裁判所に申し立てて訴訟なしに財産を差し押さえる方法です。最も時間もコストもかからない方法ですが、相手に督促異議を申し立てられると通常訴訟に移行します。契約に合意している場合はその裁判所で、特に管轄裁判所を決めていない場合は相手方の住所を管轄する裁判所で訴訟が行われます。
よって、遠方の債務者に異議申し立てをされると非常に面倒なことになります。支払督促はどう考えても勝てる。相手はまず反論できないという場合に使いましょう。
訴訟
訴訟には60万円以下の債権を扱う少額訴訟と60万円より多い額の債権を扱う通常訴訟があります。さらに通常訴訟は140万円未満の訴額なら簡易裁判所、140万円以上なら地方裁判所で行われます。
判決が出されれば、それを根拠に財産を差し押さえられますが相手が破産してしまったり、財産を持っていなかったりすると差し押さえのしようがありません。訴訟を起こす時は忘れずに仮差し押さえをしてください。
強制執行
強制執行とは要するに差し押さえのことです。相手が債務を支払わないなら強制的に支払わせるしかありません。強制執行ができるのは主に判決が出された時、和解調書がある時、公正証書の合意において強制執行についての条項を定めた時、そして支払督促に相手が異議を申し立てなかった時です。
ただ、相手が生活できないだけの財産を奪うことはできません。
相手の状況をしっかり調べて最善の手を打ちましょう。
売掛金トラブルは取引先や社員を困らせてしまう。すぐに解決できるよう弁護士と相談しよう
売掛金トラブルが起きたらすぐに債権回収しましょう。会社は常にお金を回し続けているのでのんびり債権回収しているうちにお金が足りなくて他の取引までショートしてしまいます。債務者が全く売掛け金を支払う気がないのであればもう弁護士の力を借りるしかありません。
債権回収に強い弁護士なら相手の財産をしっかり調べて最善の手を打ってくれるでしょう。強制執行を視野に入れるなら早めの仮差し押さえが大切です。
- 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
- 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
- スピーディーな債権回収が期待できる
- 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
- 法的見地から冷静な交渉が可能
- あきらめていた債権が回収できる可能性も