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特定調停で不利になるリスクも?5つのデメリットを知っておこう
この記事で分かること
- 特定調停ではケースによっては債務残高がほぼ変わらず、債権者に同意を強いることもできない等、返済負担の軽減に大きな効果がないことも多い
- 手間がかかる、返済が2回以上滞ると強制執行のリスクもあると言った手続きや返済計画上のデメリットもある
- 特定調停では引き直し計算で過払い金が見つかることがあるものの、調停内で過払い請求をすることはできない
- 特定調停は個人でも行えるが、仕事が休めない場合等、ケースによっては弁護士に依頼した方がよいことも
特定調停には、債務残高がさほど減らないことがある、債権者に同意を強制できない、手間がかかる、返済が滞ると強制執行のリスクもある、過払い請求を並行してできない等のデメリットがあります。個人でも行うことは可能ですが、仕事が休めない場合等は弁護士に依頼した方がよいこともあります。
特定調停にはデメリットも多い
特定調停とは債権者が裁判所に申し立てて行う債務整理手続きです。債務の分割払いについて合意を目指し、裁判所に選任された“調停委員”を挟んで債務者と債権者が話し合いをします。簡単にできて経費も安く済むなどメリットもありますが、実は見過ごせないデメリットも多く存在するのです。まずは債務者の負担に関するものを紹介します。
デメリット1~借金がほぼ減らないケースも多い
特定調停は、利息制限法の金利による再計算後の借金残高の分割払いについて取り決める債務整理手続きです。しかし、必ずしも大幅に債務を圧縮可能なわけではなく、債務額がほぼ変わらないケースも少なくありません。
利息制限法の制限を超過した利率の取引
特定調停では利息制限法に残債を照らし合わせて引き直し計算し、債務の圧縮を図ります。利息制限法が定める金利を超えた利率での取引があった場合は、債務を大幅に圧縮可能ですが、そうでない場合は債務を減らすのは困難です。
将来利息のカットに応じないことも
また特定調停では、基本的に元本ではなく将来利息のカットについての交渉をします。ところがこの交渉が必ずしも成立するとは限りません。債権者の中には強硬なスタンスをとるものもあり、場合によっては交渉に応じてくれないこともあるのです。そうなれば特定調停を利用しても月々の返済額はほぼ変わらず、負担がさほど軽減されないわけです。
デメリット2~債権者に同意を強制できない
特定調停は双方の合意があって初めて成立します。しかし、裁判ではないので、当事者に合意を強いることはできず、調停が成立しないことも少なくありません。
不調に終わるケースも多くかえって不利に
特定調停は裁判所で執り行われるものの、あくまでも債務者と債権者の“私的な交渉”です。それゆえ、話がまとまらないこともあります。特に債権者が合意に消極的な場合等は、不調に終わることも少なくありません。実際、調停の成立率は僅か数%程度と言われています。調停が不調に終われば、それまでの未払い利息や遅延損害金も支払わなければならないので、かえって債務が増えることになるのです。
17条決定があっても異議申し立てされれば無効
また特定調停では“17条決定”と言って、話がつかない場合に裁判所が調停に代わる決定を下せる仕組みがあります。しかしながら、2週間以内に17条決定の内容に異議申し立てをすればこの決定は無効になることもが定められています。そうなると債権者が申し立てをしてくることもあり、その場合17条決定は意味を成しません。
強制執行もあり得る特定調停のデメリット
更に特定調停では手間がかかる、支払いが滞ると強制執行のリスクもある等、手続きや返済計画上のデメリットもあるのです。特に後者は生活に甚大な影響を与え得るので、頭に入れておきましょう。
デメリット3~手間がかかる
特定調停のメリットとしてよく挙げられるのが、“比較手続きが簡単であり、個人でも行えること”です。しかし別の角度から見れば、これは債務者当人の負担が大きいことを意味します。
面倒な書類作成も自分で行う
特定調停での債権者との交渉は調停委員が代行してくれるので、債務者当人には法的知識は必要ありません。そのため多くのケースでは弁護士や行政書士等の専門家に依頼することなく、個人で特定調停の手続きを進めます。そうすることで、経費を抑えることができるわけです。しかしこれは裏を返せば、手続きに必要な書類の作成等は自身で行わなければならないことを意味します。特定調停には必要な書類は数種類あり、慣れていない素人にとってそれらの作成は大変な手間です。
期日の度に裁判所へ出向く必要がある
特定調停では、2~3回の期日が簡易裁判所で執り行われ、債務者はその度に出頭する必要があります。無論借り入れ件数が多ければ、その分だけ多く裁判所に足を運ばなければなりません。更に調停は平日に開かれるため、勤め人の場合仕事の都合を付けなければならないわけです。
デメリット4~支払い遅延・滞納があると強制執行
また、特定調停の成立後は和解した条件に基づき分割で返済を続けることになりますが、2回以上支払い遅延や滞納があった場合、強制執行により差し押さえられる可能性があります。
調停調書は強制力を持つ
調停が成立すると債権者との合意内容を記載した「調停調書」が作成されます。これには判決と同じ法的拘束力があり(債務名義)、内容に従わなかった場合債権者には、強制執行をして債務の回収をする権利が生じてしまいます。
二回以上遅延や滞納があった場合に強制執行される恐れがある
ただ、強制執行される恐れがあるのは二回以上遅延や滞納があった場合で、一回の遅延や滞納でその様な事態になるわけではありません。しかしそうは言っても、任意整理の場合に作られる“和解書”には判決と同じ効力はないので、この点は特定調停のデメリットに数えられると言えます。
過払い請求ができない特定調停のデメリットも
特定調停は、借金の引き直し計算をして残債の返済計画を決める手続きです。よってその過程で過払い金が見つかることも当然、あります。しかし調停内で過払い請求をすることはできないのです。
デメリット5~過払い金が発生しても請求不可
特定調停では過払い金が発覚することもあります。しかし特定調停は、借金の返済方法についての合意を取り計らう手続きに過ぎず、お金の返還を求めるものではありません。それゆえ調停内で過払い請求はできないのです。
過払い金の請求は特定調停の対象範囲外
特定調停では引き直し計算の際、過払い金が判明することがあります。しかし調停内で過払い金の請求はできません。なぜなら、特定調停で行うのは「返済方法の決定」「債務が存在しないことの確認」の2点であり、過払い請求は対象範囲ではないためです。任意整理や個人再生の手続きにおいては過払い請求も一緒に行うことが可能なので、それができないのは特定調停のデメリットと言わざるを得ません。
請求は別途行う必要がある
引き直し計算をして過払い金が見つかった場合は、調停終了後自分で別途請求する必要があります。
過払い請求をするなら調停条項の定め方に注意!
特定調停は本来であれば借金の負担を減らす目的で行われます。しかし調停中に過払い金が判明した場合、整理の対象となる債務はなく、それどころか申立人が相手方にお金を返還してもらう権利を有することになります。ところが前述のように特定調停では過払い請求はできません。請求は調停終了後別途行う必要がありますが、その場合、調停調書の条項の定め方に気を付ける必要があります。
通常の清算条項で合意しない
通常調停調書には互いに債務がない旨を示す“清算条項”が記載されますが、過払い金があった場合にこの旨の条項を入れるのは問題があります。なぜなら過払い金があることは “債権者であった”相手方が、“債務者であった”申立人に対して過払い金支払いという債務を負うことだからです。「互いに債務がない」とすれば申立人にお金を返還する義務もないことになりその内容で合意した場合、後々相手方がそれを主張してくる可能性があります。すると、過払い請求ができなくなる恐れがあるので注意が必要です。
“片面的債務不存在”の内容にとどめることが大切
従って、過払い請求をする場合、調停調書に記載する条項では過払い金については触れず「貸付金債務は存在しない」とするにとどめる(片面的債務不存在)必要があります。これを、“片面的清算条項”と呼びます。そうすることで、後々スムーズに過払い請求ができるのです。
特定調停のその他のデメリット
このように、特定調停にはデメリットが多くあります。最後に特定調停を利用する前に抑えておくべき点を紹介します。
速やかに督促を止めることができない
特定調停の申し立てをすれば、債権者からの督促は止まります。しかし、そのタイミングが問題です。特定調停では速やかに督促を止められないのです。
督促は実際に申し立てするまで止まらない
任意整理では弁護士に依頼すれば直ちに督促はストップします。一方特定調停の場合、実際に裁判所に申し立てをして初めて督促が止まるのです。申し立てには特定調停申立書の他、関係権利者一覧表や財産の状況を示す明細書が必要で、督促が止まるまでにかなり時間がかかることがあります。
ブラックリスト入りする
特定調停も債務整理のひとつであり、手続きをすればJICCやCIC、KSC等の信用情報機関に載ります。ブラックリスト入りすれば、借り入れ制限を受けることになります。
掲載期間は5年
登録情報はJICCの場合は申し立て日から5年、CICやKSCでは完済から5年で抹消されます。同じ5年でもカウントの開始時点が異なるので気を付けましょう。CICやKSCの場合、返済期間3年(通常)+5年、つまり申し立てから8年を経過しないとブラック情報は消えない点に留意する必要があります。
ケースによっては弁護士に頼んでも
特定調停は債務整理の中で唯一、個人で行うことが多い手続きです。しかし、調停は土日祝日には開かれないので働いている人は、平日に仕事を休む必要があり、休みがとりにくい職場の場合は、精神的に負担になります。弁護士に依頼すれば代わりに調停で話し合ってもらえるのでその心配がなくなります。
参考:特定調停とは?14のメリット・デメリットとリスク!手続き負担の申立て前にチェック
特定調停のデメリットをよく知り弁護士に相談
特定調停にはメリットもありますが、デメリットもあります。それを理解した上で、自分の状況は特定調停に適しているのかをよく考えて決めましょう。特定調停について分からないことや、確実に手続きを進めたい場合は、債務整理に詳しい弁護士に依頼するとよいでしょう。
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