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自己破産をすると生活はどうなる? 信用情報やローンへの影響も解説!
この記事で分かること
- 自己破産をすると信用情報に登録され、10年間はローンを組むことが難しくなる
- 自己破産をしても通常の生活を送ることが可能で原則賃貸契約への影響はない
- 自己破産によって会社を解雇されることはない。一定期間資格制限を受けるが、免責許可の決定で解除される
自己破産をすると信用情報に傷が付き約10年間はローンを組むことが難しくなりますが、通常の生活を送ることが可能で、仕事への影響もほとんどないと言えます。一般的にイメージされる程、悲惨なものではないことを知っておきましょう。
自己破産と信用情報の関係
借金問題に行き詰ったときに合法的に返済負担を軽減できるのが債務整理です。債務整理にも種類があり、個人再生や任意整理では多かれ少なかれ一定額を弁済することが前提となっています。ところが100%の免責を受けられる債務整理があります。それが、自己破産です。自己破産すると人生終わりであるかのように思っている方も多いですが、本当にそうなのでしょうか。まずは自己破産と信用情報との関係について説明します。
自己破産とは
自己破産の手続きに関わる機会は通常はないので、詳しく知らない方も多いでしょう。そこではじめに自己破産について解説します。
自己破産は大きく「管財事件」と「同時廃止事件」に分かれます。管財事件の場合「破産手続き開始決定→管財人選任→債権者集会→配当→免責手続き」のプロセスを経ます。しかし破産人に換金できる財産がなければ、この手続き費用そのものも賄えず、費用倒れになってしまいます。そこでそうした事態を避けるために、破産手続きの開始と“同時に廃止”され、直ちに免責手続きに移行するのが「同時廃止事件」です。
自己破産の手続きには厳しい要件がある
自己破産は債務を帳消しにするわけですから、ちょっとやそっとのことでは手続きは認められず、厳しい要件をクリアしなければなりません。大前提となるのが、「支払い不能」であることです。手続きではまず資産や収入の調査がありますが、不動産や高価な動産をもっていたり、保険を解約すれば解約返戻金が入ってきたりする場合は、それも考慮されます。そうした財産等を換金すれば借金を返済できる場合には、自己破産の手続きはできません。
また、借金理由が「免責不許可事由」に該当する場合も破産手続きは許可されません。例えば株式投資の失敗やギャンブル、浪費による借金の場合免責が認められないことがあります。加えて裁判所に対して虚偽の申告をした場合も免責許可はおりません。
自己破産をすると信用情報が傷つく
破産手続きをすると勿論その事実がCICやJICC等の個人信用情報機関に登録されます。これがいわゆるブラックリストの状態で、一定期間融資制限を受けることになります。
破産手続きをすると個人信用情報機関にその事実が“異動情報”として登録され、融資制限を受けることになります。金融機関は融資の際この情報を照会するため、ブラック情報が登録されている間は新規にローンを組んだりクレジットカードを発行することが困難になります。ただ、事故情報も永久に残るわけではなく、登録期間が過ぎれば抹消されます。
登録期間は約10年
自己破産の場合事故情報の登録期間は任意整理や個人再生等他の任意整理よりも長く、信用情報機関毎に異なるものの、約10年と考えて差し支えありません。10年を何事もなく経過すれば、原則自己破産の経験が融資審査に影響することはなくなります。
自己破産をすると信用情報に傷が付き10年間はローンを組むことが難しくなります。
自己破産後のローンや賃貸契約などへの影響
自己破産をすると、借金は帳消しになるものの、最小限の生活費と家財を残して財産や家財は換金処分されます。自己破産は債務整理手続きの中でも最終手段に位置付けられています。では、自己破産をすると生活にどのような影響が出るのでしょうか。
自己破産で信用情報に登録されても家族のローンに影響はない
自己破産をすれば、信用情報に登録されるため、10年程度は新しくローンを組むことはできません。しかし、本人以外の家族は、自己破産しているわけではないので、ローンを組むことができます。また、家族が大学に入学したときも、奨学金を申請することも可能です。(自己破産した本人でなければ)
自由財産は手元に残せる
管財事件の場合破産手続きをすると価値のある財産は換金処分されます。しかしただでさえお金がないところ、全てを没収したのでは生活が送れなくなってします。そこで“自由財産”と言って99万円以下の現金や最低限生活に必要な家財道具等は手元に残すことができるのです。
原則家族への直接的な影響もない
破産手続きを検討する際気がかりなのが家族への影響です。しかし自己破産含む債務整理はあくまでも個人の借金を整理する手続きであり、配偶者や子供に直接的な影響が及ぶことはありません。ただし家族が連帯保証人になっている場合、当然影響はありますし、マイホームやマイカーを所有している場合、それらは換金処分されることになるため影響が全くないわけではありません。
戸籍にも載らず選挙権にも影響なし
また破産者となっても戸籍や住民票に登録されることはありません。従って結婚に支障が出ることもなければ、選挙権や被選挙権等の公民権が停止されることもありません。
なお、破産手続きで免責決定がされなかった場合、破産者の本籍地の市町村役場の“破産者名簿”に記載されますが、これは簡単に第三者が閲覧できるものではありませんし、そもそもほとんどの場合免責許可が下りるので心配いりません。
賃貸契約への影響も原則なし
住居は生活の基盤となるものですから、賃貸契約への影響は知っておきたいポイントでしょう。実は、ほとんどの場合、破産手続きが賃貸契約に影響することはないのです。
破産手続きで賃貸契約を解除されることはない
賃貸物件に住んでいる場合に自己破産すれば、家を追い出されるのか不安になる人も多いでしょう。結論から言えば、家賃を払い続けている限り自己破産をしたからと言って賃貸契約を一方的に解除されることはありません。
許可が必要な場合もあるが転居も基本的に可能
また自己破産すると引っ越しできなくなると聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これは誤認で転居が禁止されることはありません。ただ、破産法第37条1項で「破産者は、その申立てにより裁判所の許可を受けなければ、その居住地を離れることができない」と規定されており、管財事件の場合破産手続き中は転居が制限されます。これは逃亡や財産隠匿を防ぐためですが、実際には申し立てれば許可は下りるので引越しができないことはありません。また同時廃止事件の場合そもそも破産手続きが省かれるので許可なしで転居可能です。
また、自己破産するのは本人だけなので、家族がローンを組んだり、奨学金を借りることは制限されません。
自己破産による仕事への影響
破産手続きをすれば、現在勤めている会社は追われることになってしまうのか、就職には支障があるのか…。自己破産をするにあたって特に心配なのが、仕事への影響でしょう。どのような影響があるのでしょうか。
会社を首になることはない
破産手続きによって解雇されたり、解雇されなくても破産の事実が周囲に知れ渡り、居辛くなり結局辞める羽目になることを危惧して破産を躊躇する方は多いです。しかし実際にはそのような心配は無用なのです。
会社を解雇されることはない
破産をすることは懲戒解雇事由に該当しないので、通常の勤め方は破産によって首になることはないと言えます。また裁判所から破産の通知が行くこともありませんので、自分で触れ回らない限り、同僚に知られることもありません。ただ、銀行から借金をしている場合には給与振込の関係で会社に照会がいくことはあります。
就職先に破産の事実を知られることはまずない
では破産手続き後、就職する場合の影響に関してはどうでしょうか。まず、一般企業が採用活動で身辺調査をし、個人の金融事故情報まで調べることはほとんどないので破産の事実を知ることもないでしょう。こう言うと、「企業がわざわざ調べなくても履歴書には賞罰欄がある。ここに記載しなければならないのでは」と心配する方がいます。確かに賞罰欄には受賞歴や表彰歴、犯歴を記入する必要があり、自分に不利なことも書かなければなりません。しかし自己破産は犯罪ではなく、法に則った正式な手続きなので記入の必要はないのです。またそもそも現在の厚生労働省推奨のJIS規格の履歴書には賞罰欄自体がありません。こうしたことから、申告しない限り、就職先企業に破産の事実を知られることはまずないと考えて間違いないでしょう。
一定期間資格制限を受ける
自己破産には職業制限も設けられていて、破産者になると就くことができない仕事があります。しかしこの制限は免責許可の決定を得れば解消されます。
破産者は就けない仕事がある
自己破産者は弁護士や公認会計士、税理士や弁理士、不動産鑑定士等、いくつかの職業に就くことができません。また代理方や後見人になることもできません。なお、以前は株式会社の代表取締役や監査役にはなれませんでしたが、2005年に施行された新会社法ではこれらの資格制限は撤廃されています。
免責許可の決定で制限は解除される
これらの制限もずっと続くわけではなく、免責許可の決定を得れば解消されます。免責許可の決定が下りるまでにかかる時間は3か月~6か月程度です。
自己破産での信用情報でローンへの影響
ここまで自己破産がローン契約に与える影響、手続き後私生活や仕事はどうなるのか等を解説してきました。最後に自己破産の注意点や自己破産の実情等押さえておきたいポイントを紹介します。
自己破産の注意点
ここでは破産手続き後、後悔しないように破産後の注意点や知っておきたいポイントを紹介します。
自己破産後の賃貸契約に関する注意点
自己破産後の転居は基本的に問題ないことは前述の通りです。しかしながら気を付けなければならないポイントがいくつかあります。まず、手続き後はクレジットカード審査に通らないので、家賃がカード払いに限定されている物件は借りることはできない点です。また家賃保証会社を使う場合も注意が必要です。保証会社は基本的には借主の信用情報を見ることはできません。しかし運営元が信販系の会社の場合、個人信用情報機関の会員となっているカード会社等金融機関が運営しているので信用情報を照会できてしまうのです。従って信販系会社が運営元の家賃保証会社を利用した場合、入居審査に落ちる可能性が高いわけです。
免責されない債務もある
また債務が帳消しになると言っても、免責されない債務もあります。例えば養育費や滞納税金等は免責されません。
自己破産は悲惨なものではない
世間では「自己破産=人生終わり」というイメージが持たれがちです。しかし実際はさほど悲惨なものではなく、自己破産を選んだことでむしろ更生の道を踏み出せるケースも多いのです。
自己破産のデメリットばかりフォーカスしない
自己破産をすると官報に掲載され、資格制限も受けることは事実です。しかしながら、常日頃から官報情報をチェックしている人はいませんし、資格制限についても免責を受ければ解除されます。ブラック情報も時間が経てば抹消されます。自己破産によって被る不利益を過大視すべきではないのです。
“自己破産をすると二度と更生不可能”、“自己破産をすると社会的に抹殺される”等々自己破産について否定的な情報もちらほら聞きますが、実際の自己破産は悲惨なものではないことを知っておく必要があります。
自己破産を選ぶのが賢明な場合も
収入や資産から考えて明らかに返済不能であるような場合でも破産手続きをとらず、任意整理に固執するケースは少なくありません。確かに自己破産をすれば信用情報に傷がつき、ブラック情報が消えるまでにかかる期間は他のどの債務整理よりも長いです。しかし、守れもしない弁済計画を立てても何の解決にもなりません。また例え履行可能な計画であっても債権者が応じてくれるとは限らないのです。従ってどう考えても返済不可能な場合、自己破産をするのも一つの手段と言えるのです。
自己破産の信用情報登録でのローンの影響について弁護士に相談
自己破産を考える場合、その手続きや信用情報、またローンなどの契約関係への影響について心配になるものです。自己破産を恥ずかしいものと考えず、借金に悩んだら債務整理に強い弁護士に相談してみるとよいでしょう。
初回は無料相談ができるところも多いので、一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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