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特定調停でも信用情報は登録される? ローンなどへの影響は?
この記事で分かること
- 特定調停は、裁判所で調停委員を介して債権者と話し合い債務の圧縮をする手続きです。
- 特定調停をすると信用情報に登録され、少なくとも5年間は融資制限を受けることになります。
- 特定調停は個人で行った場合手間がかかる点や、返済不可能と判断された場合取り下げをすすめられることもある。
特定調停は、裁判所で調停委員を介して債権者と話し合い債務の圧縮をする手続きです。他の債務整理と同様手続きによって信用情報に傷が付き、少なくとも5年間は融資制限を受けることになります。特定調停では整理の対象を選択できるので、ローン返済中の財産も対象から外すことで保持可能です。しかし、返済不履行で強制執行される恐れがある点や個人で行った場合手間がかかる点に留意する必要があります。
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特定調停は信用情報登録などのデメリットもある
借金の返済に行き詰ったとき、本来ならば弁護士等の専門家に依頼するのが賢い選択と言えます。しかし、ただでさえお金がない状態ですから専門家を雇う費用を工面できないこともあるでしょう。そんな場合に有用なのがこの、特定調停です。まずは特定調停の手続きについて解説していきます。
特定調停とは
特定調停とは債権者が裁判所に申し立てて行う債務整理手続きです。民事調停の一つで、裁判所に選任された“調停委員”を挟んで債権者と話し合いを行い債務の分割払いについての合意を目指します。
スピーディな解決が見込める
特定調停の特徴の一つが他の債務整理と比較しスピーディな解決が可能であることです。任意整理や個人再生では手続きに3~6ヵ月の歳月を要しますし、自己破産では長ければ一年かかることもあります。他方、特定調停では申立てから2回程度の期日、3ヶ月程度で終了します。
費用は安く済む
また特定調停では調停委員が仲介を行い、債権者との交渉も任せられます。したがって個人で手続きを行うことができるので弁護士に依頼する必要がなく、弁護士費用もかからないわけです。手続きにかかる費用も債権者一社につき500円の収入印紙代と一社につき420円の予納郵便切手代のみと、低コストで行えるのも特定調停の利点と言えます。
特定調停のデメリット
このように多くの利点を有する特定調停ですが、その一方で当然欠点も存在します。まず、特定調停固有のデメリットを見ていきましょう。
過払い金請求ができない
特定調停は利息制限法に基づく引き直し計算で債務の圧縮を図る手続きです。その過程で過払い金が発覚することがありますが、その場合でも調停内で過払い請求をすることはできません。あくまでも特定の債務を整理する手続きなのです。
他方、同じ債務整理でも任意整理では手続き中に過払い金請求が可能ですから、これは特定調停のデメリットと言えるわけです。
必ずしも調停が成立するわけではない
また、特定調停はあくまでも話し合いです。そのため必ずしも調停が成立するとは限らず、不調に終わるケースも少なくないのが実際です。話がまとまらなければ「調停不成立」で終了となります。
複数回返済遅延があれば強制執行される恐れもある
さらに、調停が無事成立したからと言って安心してはいけません。と言うのも、成立後、裁判所によって作成される「調停調書」には判決と同等の効力があり、その内容を履行できないと強制執行される恐れがあるからです。ただし、一回の遅延や滞納でそのような事態になるわけではなく強制執行される恐れがあるのは複数回返済遅延があった場合です。
特定調停をすると信用情報に登録される
特定調停は債務整理の一つですから、たとえ調停成立となっても、任意整理や自己破産と同じように、手続きの事実が個人信用情報機関に登録されます。そして事故情報が消えないうちは、融資制限を受けることになり、新規の借り入れは難しくなります。
事故情報が登録されている間の新規ローン
事故情報が個人信用情報機関から抹消されないうちは、新規借り入れは難しくなります。これは貸金業者や銀行などの金融機関は融資の際、個人信用情報機関の情報を融資の判断材料とするためです。
特定調停の事故情報登録期間は少なくとも5年
事故情報も永久に残るわけではありません。
事故情報には登録期間があります。
現在日本における個人信用情報機関は消費者金融系株式会社日本信用情報機構「JICC」と信販系株式会社「CIC 」、銀行系の全国銀行個人信用情報センター「KSC」の3つがあります。
特定調停の事故情報の扱いは信用情報機関毎に異なります。
例えばJICCの場合特定調停の事故情報登録期間は申し立てから5年ですが、CICやKSCでは“完済から”5年です。つまり通常通り3年の分割払いであれば、CICやKSCの場合手続きから計8年間は事故情報が消えず融資制限を受けることになります。同じ5年でもカウントの開始時点が異なるので気を付けましょう。
登録期間を経過すぎても「社内ブラック」に注意
事故情報が抹消されれば、融資制限は受けなくなります。
事故情報登録期間を何事もなく経過すれば、事故情報が抹消され、融資制限は解かれます。ブラック経験者であることが融資審査に落ちる直接の原因となることは基本的にはありません。
特定調停による信用情報の既存ローンへの影響は?
特定調停の手続きをすると、“返済期間3年(通常)に事故情報の登録期間5年を加えた計8年間”はローン審査に通るのが難しいことは分かったと思います。では、既存のローンへの影響はどうなっているのでしょうか。
特定調停では整理の対象を選べる
同じ債務整理でも個人再生や自己破産の場合、「債権者平等の原則」によって一部の債権者に優先的に返済することは禁じられています。けれども特定調停では、整理する債務を選べるのです。
一部の債権者に優先的に返済できない
「債権者平等の原則」とは一人の債務者に対し複数の債権者がいる場合、債権者間には優劣はなく債務者の総財産から平等・公平に債務の返済を受けられなければならないとする原則です。債務整理のうち、自己破産や個人再生ではこの原則により一部の債権者へ優先的に返済することはできません。
特定調停では整理の対象を選べる
住宅や車などの大きな買い物となると一括購入できる人は少数派で、多くの人がローン契約で購入するでしょう。自己破産の場合は、必要最低限の財産を残して、のこりはすべて換金処分され返済に充てられるため、ローン返済中の財産があれば原則手放すことになります。しかし、整理の対象を選択できる特定調停では、ローン返済中の財産も対象から外すことが可能なので、住宅や車が差し押さえられなくてすみます。
整理の対象に含めなくても順当に返済できるか
もちろん住宅ローンや自動車ローンを整理の対象から外した場合でも、それ以外の借金と併せて分割返済することになります。そのため、債務整理の対象から外したローンと整理をした債務の返済の両方を問題なく履行できるかをきちんと考えた上で、整理の対象を選ぶ必要があります。もし、特定調停での和解内容を履行できない場合は(返済が滞る)差押えされる可能性があります。
特定調停で気をつけたいのは信用情報だけじゃない
特定調停を行う上で、信用情報登録以外にも気をつけたいことがあります。
特定調停の大きなメリットは、比較的手続きが簡単なことと、個人でも行えることです。しかし、裏を返せば、特定調停では債務者が行わなくてはならない作業が多く、それだけ労力がかかり、負担が大きいことを意味するのです。
期日の度に裁判所へ出頭する必要がある
特定調停は2~3回の期日があるため、債務者はその度に出向かなければなりません。もし借り入れ件数が多ければ、その分、多く裁判所に足を運ぶ回数が増えるでしょう。また、調停は平日にしか行われないので、平日休みにくい仕事の場合は、そのたびに休みをとらなければならなくなります。
書類作成等が大きな負担になる
個人で特定調停を行った場合、面倒な書類作成等も自分で行う必要があります。特定調停には必要な書類が数種類あり、手続きに慣れていない素人にとって、それらの書類作成は大変な手間になるのです。
調停委員から取り下げを勧められるケースもある
また特定調停では調停委員から調停を諦めて自己破産を勧められるケースがあります。覚えておきましょう。
返済意志がないと判断されれば調停は中止に
特定調停では債務を減らすことはできますが、ゼロになるわけではありません。原則元本は返済する必要があります。そのため、明らかに返済意志が見られない場合や弁済プランの実現が不可能な場合などは、調停委員から調停の取り下げを勧められるケースがあります。取り下げに応じる場合、「取下書」を書かされ、調停不成立で終了することになります。
取り下げを勧められたら調停委員を説得する
調停委員に取り下げを勧められた場合、家計簿や収支を証明できる書類等を見せながら、返済計画を履行できることや、支払い意思があることをアピールすることが大切です。もし、説得できなければ、調停は不調に終わってしまいます。
特定調停の信用情報について不安なことは弁護士に相談
特定調停では整理の対象から外せば既存のローンへの影響を免れることができます。しかしその場合でもそれ以外の借金と併せて返済する必要があります。返済が滞れば強制執行される恐れがあるので話し合いの段階でしっかりと見通しを立て、弁済計画は確実に履行することが大切です。
また、特定調停を進める上で、信用情報について不安なことは債務整理に強い弁護士に相談してみるとよいでしょう。信用情報登録によって、どのようなリスクがあるかも含めてアドバイスしてもらえるはずです。
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