21,652view
生命保険金(死亡保険金)は相続財産に含まれる?相続税はかかる?
この記事で分かること
- 生命保険の死亡保険金は相続財産ではない。だから遺産分割の対象とならない
- 生命保険の死亡保険金はみなし相続財産。だから相続税の対象にはなる
- 生命保険は契約内容や保険約款で扱いが変わる。計算や遺産分割が難しい時は弁護士へ相談を
生命保険は相続の形を取らず被相続人へ渡されるため、みなし相続財産となります。そのため遺産分割の対象にならないものの相続税の対象となる点で注意が必要です。特に高額な保険金を受け取ると特別受益の問題が生じるのでこの点もしっかりとした話し合いが必要です。死亡保険金の受取人が決まっていない場合は、保険約款が根拠になります。詳しくは弁護士と保険会社に確認しましょう。
目次[非表示]
生命保険の死亡保険金は相続財産ではない
死亡保険金は非相続人の死で「保険会社」から受け取るお金
被相続人がなくなると、被相続人の遺産が分割されます。現金や土地、株式などかたちあるものから特許や著作権など形のないものまで様々です。では、被相続人の死によって得られた財産はどうでしょう?
被相続人が亡くなったら渡すと契約した死因贈与や遺言によって財産を渡す遺贈によって送られた財産は相続財産として扱うのが相当ですが、生命保険の死亡保険金は被相続人の死によって「保険会社から」受け取ります。つまり被相続人の財産が渡されたわけではないのです。
生命保険の死亡保険金は相続財産ではありません。
生命保険の死亡保険金は遺産分割の対象にならない
生命保険の死亡保険金が相続財産であるかどうかは「遺産分割」において大きく関わります。
相続財産であれば、遺産分割の対象となり相続財産でなければその財産を他の相続人と分ける必要がなくなります。つまり死亡保険金が相続財産でないということは「どんなに大金であっても他の相続人と分けなくて良い」ことを意味します。
もちろん、相続財産でないということで遺産分割協議書に書く必要もありません。
相続放棄をした場合も死亡保険金を受け取れる
生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産ですから相続放棄をした場合でも受け取れます。あくまで被相続人と保険会社の契約に則って保険会社から支払われます。
生命保険が相続の問題になるのは「被相続人が契約者だった時」だけ
そもそも生命保険に相続が関わるのは被相続人が契約者、つまり保険料負担者であった時だけです。そうでなければある人が亡くなったときの死亡保険金について相続税が関わりません。なぜなら被相続人が保険者でない場合は、生きている人同士で財産が移動しているだけだからです。
死亡保険金の受け取りが贈与とみなされる場合(みなし贈与)
死亡保険金の受け取り贈与とみなされるのは保険料負担者と受取人が異なる人物でかつ両方が被相続人でない場合です。この場合は保険料負担者から受取人への贈与とみなされ贈与税の対象となります。
死亡保険金が所得として扱われる場合
死亡保険金の受け取りが所得として扱われるのは保険料負担者と受取人が同じである場合です。この場合は自分で保険料を払った結果として保険金を得ているだけなので通常の所得と同じく所得税および住民税を支払います。
生命保険は特別受益が争点となるが…
生命保険は相続財産でないとはいえ、受取人は死亡保険金を受け取ることによって他の相続人に比べて大きく得をしている場合が多いです。その場合、死亡保険金をないものとして財産を分けるのはいささか不公平です。
そこで高額な死亡保険金を受け取った場合はそれを特別受益として扱い公平な遺産分割を行うのが望ましいです。
あくまで遺産分割は相続人の合意で決められますが、いざ裁判に持ち込まれたときのために押さえておきましょう。
ただし、死亡保険金が特別受益であったとしても受け取ったお金は受取人固有の財産となるため他の相続人はその一部を請求できません。仮に相続財産が800万円、死亡保険金が2000万円で相続人が子ども3人だけだとしても、死亡保険金の受取人が2000万円をもらい、残りの2人が400万円ずつ分けることになります。
(遺贈も贈与も受けていないため、ここで言う特別受益は民法第903条の類推適用です。また、あまりに高額な生命保険を他の相続人に分けなくて良い理由も民法第903条2項の類推適用です)
相続放棄をした場合でも受け取れる点も要チェックです。
生命保険の死亡保険金は相続税の対象となる
生命保険の死亡保険金は相続財産とならないものの、実質的に被相続人から財産を渡されているようなものですから、所得税で扱うことや相続財産の圧縮に使われることは不公平です。
そこで、生命保険の死亡保険金は他の相続財産と同じく相続税の対象となります。このような性格を持つ財産のことを通称・みなし相続財産と呼びます。
生命保険の死亡保険金は人数×500万円を引いた額が相続財産に加算される
では生命保険に加入しても節税効果がないのか、といえばそうではありません。死亡保険金を受け取った場合は法定相続人の人数×500万円が控除されるので侮れないです。この控除については相続放棄をした法定相続人もカウントするので例えば相続人4人うち2人が相続放棄をしている場合でも2000万円が控除されます。
相続放棄をした人は死亡保険金についての控除を受けられませんが次で説明する基礎控除は適用されます。
相続税の計算方法
相続税の計算はこのような手順で行われます。生命保険についての理解を深める最低限の解説のみしているので、詳しい税率などについてはこちらの記事をご覧ください。
- 相続財産およびみなし相続財産の把握
- 各種控除、負債を元に課税価格を計算
- 相続税の計算を行う
- 相続税を実際に分けた財産の比率で負担する
1.相続財産およびみなし相続財産の把握
生命保険のほか死亡退職金もみなし相続財産として扱われます。他にもいくつかありますが、基本的にはこの2つが論点になりやすいです。
2.各種控除、負債を元に課税価格を計算
色々な控除がありますが相続税に関わる控除で大切なのがやはり基礎控除です。基礎控除は3000万円+法定相続人の数×600万円と大きく誰にでも適用されます。さらに生命保険は500万円×法定相続人の人数が控除されます。
よって死亡保険金以外に目立った財産がない場合は大幅に相続税が減り、場合によっては課税価格がゼロになります。
相続放棄をした場合は基礎控除のみが適用されます。
⒊相続税の計算を行う
相続税の計算は課税価格を法定相続分で分けてそれぞれに速算表の税率をかけたものを合計します。
誰か1人だけ多額の財産を相続する場合であってもそれを法定相続分で分けた上で相続税の総額を決定します。
4.相続税を実際に分けた財産の比率で負担する
相続税の総額が出たら、実際の遺産分割に合わせて相続税の負担します。よって生命保険の死亡保険金を受け取った人は死亡保険金についての相続税をそのまま負担することとなります。
生命保険を受け取る上で気になるポイントを解説
ここまで「一時金を特定の受取人が決まっている状態で取得した場合」に絞って解説してきたためそれ以外のケースに対する疑問が予想されます。そんなケースになっても対応しやすいようこちらで簡単な解説をします。
受取人が決まっていない生命保険は誰のもの?
受取人が決まっていない生命保険の処理は保険約款に委ねられます。被相続人自らが被保険者となっている場合でも受取人が指定されていなければ同様です。
保険会社はこのような事態にも対応できるよう、受取人の決め方を保険約款に盛り込んでいます。具体的に指名されていなかった場合は受取人が複数いる状態と同じ処理を行います。
受取人が複数いる場合はどう分ける?
受取人が複数いる場合は法定相続分に合わせて分けます。死亡保険金の受け取りは相続ではありませんが、民法427条における「別段の意思」があるものとして法定相続分が適用されます。
生命保険の受取人が複数になった場合、受取人全員の同意がないと保険金をもらえません。割合に不満で同意してくれない、代表者を決められないといった問題が出た時は弁護士に相談しましょう。
一時金でなく年金型保険であった場合は?
一時金でなく年金型保険であった場合には残っている分の受給権が相続財産となり、その評価額を元に相続税を計算します。実際に支給された時は相続税法24条に則って決められた課税部分に対してのみ所得税を払います。
被相続人がある生命保険の受取人であった場合は?
被相続人が別の誰かの生命保険を受け取る立場にあった場合、保険会社に連絡をして受取人を変更します。受取人変更の手続きをしなかった場合は受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取ることになります。
被相続人が複数である場合や受給権そのものが相続される場合、一時金のタイプでない場合などはケースに応じた解決を。
生命保険の対応はケースバイケース。保険金の存在が明らかになったら弁護士に相談を
生命保険は相続税の対象になりますが、本来は相続人固有の財産ですから遺産分割で差し引きされることはありません。相続財産に対して多額と言える場合も動じなくて大丈夫です。
生命保険は相続税だけでなく所得税や贈与税で処理されることもあるし、場合によってはすんなり受け取れないこともあるでしょう。保険約款を読むのも簡単ではないので死亡保険金が明らかになった時はすぐに弁護士へ相談しましょう。
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
- 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
- 遺産分割協議で話がまとまらない
- 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
- 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
- 相続について、どうしていいのか分からない