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法定相続人の相続割合~遺産分割のルール
この記事で分かること
- 相続人は配偶者と子のみが原則。それ以外の家族が相続人になるのは例外
- 法定相続分は揉めた時の目安だが、法定相続分を以てしても解決しないことがある
- 法定相続人以外に遺産を渡したい時は遺贈と贈与ができる
遺産分割は配偶者と子に対して行われます。そのほかの家族に関しては被相続人に子がいない場合に相続人となります。遺産分割の目安として法定相続分を参考にできますがあくまでも分割の割合は自由です。感情や利害を越えてお互いに納得できるように遺産を分けましょう。法定相続人以外にも遺産を分けたい時は生前贈与や遺言を活用できます。
目次[非表示]
相続権を得る法定相続人は全ての家族がなれるわけではない
被相続人が亡くなり葬儀が行われたら、次は遺産分割です。相続税の申告期限は遺産分割協議から10ヶ月後ですからのんびりしている暇はありません。遺産分割協議をする上で最初にすべきことは法定相続人を確定させることです。
法定相続人とは民法第887条から第890条によって決められているルールで表にまとめるとこのようになります。
配偶者 | 常に相続人となり、第一順位、第二順位、第三順位の相続人がいる場合はそれらと同順位扱いされる。 |
---|---|
第1順位 | 被相続人の子ども(子どもが先に亡くなっている場合は孫、曾孫といった直系卑属) |
第2順位 | 被相続人の父母(父母が先に亡くなっている場合は祖父母、曽祖父母といった直系尊属) |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は甥姪) |
この表について必ず知っておくべきことは以下の2点です。
- 配偶者は絶対に法定相続人となる
- 順位の低い血縁者は相続人と”ならない”
第一順位、第二順位、第三順位と相続人が決められていますが、第一順位の相続人がいる場合は第二順位と第三順位の血縁者は相続権を持たないのです。
第二順位と第三順位の相続人が相続権を持つのはどんな時?
第二順位と第三順位の相続人が相続権を持つ場合は「自分より上の順位にいる血縁者がいない時」あるいは「本来自分より上の順位にいる血縁者が相続権を持っていない時です」
前者のケースはそもそも直系卑属(子や孫)がいない時や子や孫が全てなくなっている場合です。兄弟姉妹については直系尊属も亡くなっていることが条件となります。
後者のケースは相続放棄や相続人の廃除、相続欠格が考えられます。要するに自分で相続人の権利をないものとしたか相続人の権利を法によって剥奪されたかです。
配偶者は最も順位が高い血縁者と同順位になるためどの血縁者とも競合しません。
逆に言えば、相続を放棄したり剥奪されたりしていない相続人は生きている限り相続権を持ちます。たとえ顔も名前も知らない人間であったとしてもです。
代襲相続に制限があるのは兄弟のみ
相続権が子に引き継がれることを代襲相続と言います。例えば被相続人の子が亡くなった場合は孫が相続人になります。代襲相続には制限がなく法的には何世代先までも起こります。物理的にはせいぜいひ孫まででしょう。
ただし、兄弟だけはその子までしか代襲相続されません。よって甥と姪が相続人でなくなればその時点で第三順位の相続人は全ていなくなります。
相続放棄は、相続の開始を知ってから3ヶ月という期限があります
相続放棄は相続の開始を知ってから3ヶ月と決められてます。もし、相続の開始から3ヶ月であれば順位の高い相続人が相続放棄をした事実を知らないまま期限を迎えてしまうかもしれないからです。
また、ほかの人が相続放棄をした事情を知らないせいで多額の債務を背負う不条理が起きないよう債務の存在を知ってから3ヶ月という期限を裁判所に認めてもらうことも可能です。相続放棄の起源が過ぎて困っている時は諦めず弁護士に相談しましょう。
法定相続人を確定させる根拠は戸籍謄本
法定相続人は知らない人でも相続権を持ちます。遺産分割協議は相続人全ての合意が必要ですから仲間外れを許しません。法定相続人は誰一人欠けることなく探しましょう。
法定相続人を確定させるための根拠は被相続人および相続人の戸籍謄本です。まず被相続人の戸籍謄本には子と直系尊属が載っています。腹違いの子も認知して入れば載っています。
続いて相続人の戸籍謄本は代襲相続人を見つけるために必要です。相続権に時効はないので絶対に戸籍謄本の取り寄せを怠らないでください。失踪者がいる場合は法定相続分だけ分けて管理します。
新たに法定相続人が見つかった時は、やり直しになるかも
新たに法定相続人が見つかった時は遺産分割協議をやり直さなくてはいけません。ただし現状復帰が難しい時はお金で解決します。
遺産分割は自由だが揉めた時は法定相続分の割合を参考にしよう
遺産分割は相続人の自由ですが、相続人同士の不公平を防ぎ相続争いの早期解決のため民法で法定相続分が決められています。法定相続分は訴訟や調停、家事審判での基準となるのでよほどの事情がない限りは法定相続分の割合で遺産分割を手打ちにした方が良いでしょう。
法定相続分の割合
法定相続分は民法第900条に決められています。
同順位の相続人は同じ法定相続分の割合となります。
配偶者がいない場合はその分がほかの相続人に分けられ、配偶者のみが相続人となる時は全ての遺産を受け取ります。
配偶者と子どもが相続人 | 配偶者に2分の1 子に2分の1 |
---|---|
配偶者と直系尊属が相続人 | 配偶者に3分の2 直系尊属に2分の1 |
配偶者と兄弟姉妹が相続人 | 配偶者に4分の3 兄弟姉妹に4分の1 |
例えば配偶者と3人の子が相続人となる場合は配偶者が相続財産の半分、子はそれぞれ6分の1という割合になります。
法定相続分では解決しきれない寄与分と特別受益
遺産分割は特に異論がなければ法定相続分でさっさと分けてしまった方がお互い納得できるし諦めもつきやすいです。とはいえ、どんな家庭も法定相続分の割合で納得できるなら相続争いが問題になりません。
相続争いが問題になるのはそれぞれに対する感情とこれらの事情が理由です。
「こんなに良くしてもらったくせに!」という特別受益
特別受益とは被相続人から特別に得た利益です。一人だけたくさん生活費を援助してもらったり大学に行かせてもらったりした場合、それを無視してはほかの相続人と不公平になります。そこで、特別受益を受けた人はその分を相続したものとして遺産分割を行うことが推奨されます。
一人だけ死亡保険金を受け取った場合も不公平になりかねませんが、死亡保険金は受取人固有の財産です。保険金の額があまりに大きいという場合でなければ特別受益とされないようです。
「こんなに頑張ってあげたのに!」という寄与分
寄与分とは被相続人に対して特別に与えた利益です。被相続人の身の回りの世話をした、生活費を援助した、被相続人の稼業を支えたなど色々あります。こちらも遺産分割に反映されてこそ公平な割合が導きだせます。
ただし寄与分も特別受益もお金に換えられるものだけと限りません。日常的な依怙贔屓が積もり積もって爆発することもあるのです。
こんな場合も相続争いに発展しやすい
他にはこのような場合にも相続争いに発展しやすいです。遺産分割協議は相続人全ての同意が求められるため、争族が長引くようなら弁護士に仲裁してもらうか裁判所に持ち込む他ないでしょう。
相続人の性格に難がある
相続人が妥協できない性格であると相続争いはもつれやすいです。特に「長男が優先されるべきだ」といった法的根拠のない価値観に縛られた相続人を納得させるのは至難の技です。
欲しい財産を得られない
欲しい財産を得られない時もなかなか納得できないものです。本当は土地が欲しかった、本当は株式が欲しかった、逆に現金が良かったというように財産の金額だけでなく内容も大事です。
お互いのニーズを把握すれば遺産分割もうまく行きやすいです。
法定相続人以外にも一定の割合の遺産分割をしたいなら遺贈や生前贈与を
相続権を持つ人は法律で決まっていますが、遺産を相続人以外に分け与えたい場合はどうすれば良いのでしょうか?
この場合は遺贈や生前贈与が使えます。
遺贈とは遺言によって遺産を分け与えること
遺贈とは遺言によって遺産を分け与えることです。遺言はどんな相手に対しても遺産分割ができるし、割合だけでなく財産を指定できます。
愛人や友人に遺産を分割するために遺言を使うケースもあれば、相続争いを防ぐためにあらかじめ遺言書を書いておくケースもあります。もちろん、ある相続人に対して法定相続分以上の遺贈をすることも可能です。
死因贈与も贈与者の死によって財産を移動するものですが、お互いの合意が必要な点で以蔵と異なります。ちなみに、死因贈与に関連するルールは遺贈とほぼ同じです。
生前贈与は節税対策になる
生前贈与も自由に財産を分け与える方法です。しかも生前贈与の場合は受贈者一人につき年間110万円の控除があるため相続税についての節税対策になります。大きく節税対策になるものとしては孫への教育資金や直系卑属への結婚・子育て資金、不動産を取得する資金があります。
ただし、生前贈与の控除は”受贈者”に設定されるものですから複数人から110万円の贈与を受けると控除される金額を優に超えてしまいます。
もちろん贈与契約ですから相手の合意が必要です。例えば受贈者になるべき人の名義で預金通帳を作ったところで合意がなければ贈与が成立しません。よくあるのが小さな子供のためにお金を遺そうとするケースです。
贈与を成立させるためにはお互いの合意があり、かつ受贈者が財産を自由に使える状態にあることが求められます。
法定相続人から奪えない遺留分県債請求権
では、遺贈や死因贈与、生前贈与を使えば好きな人に丸ごと遺産を渡せるのか?そんなことを認めてしまえば相続の意義が崩れてしまいます。
そこで、民放は法定相続人に対して遺留分減殺請求権を認めています。
遺留分とは絶対に確保できる財産の割合のことで、基本は被相続人の財産の2分の1、直系尊属のみが相続人であるときは相続財産の3分の1が遺留分として認められます。遺留分として確保した財産は相続人みんなで分け合います。
なお、兄弟姉妹には遺留分減殺請求権がありません。
裁判所は遺留分減殺請求権を行使すべき財産の優先順位を遺贈されたもの、死因贈与されたもの、生前贈与されたものの順と判断しています。
遺産分割の割合や法定相続人探しで困った時は弁護士に相談しよう
法定相続分は意外と単純ですが法定相続人の確定や代襲相続、遺留分減殺請求権などが問題となった時、遺産分割は非常に複雑なものとなります。相続が開始してから相続税の申告期限まで10ヶ月しかないことを考えれば、弁護士のサポートを受けることは当然と言えます。
遺産分割のルールで迷った時はすぐに弁護士へ相談してください。
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