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不動産の換価~担保権(抵当権)の実行と強制競売・売却代金の配当順位
この記事で分かること
- 不動産には抵当権という担保権をつけられる
- 担保権を実行しても自分より順位の高い人から優先して配当される
- 確実に債権回収したいなら相手の債務状況をよく確認することが大事
借金や売掛金を払ってもらえない時でも事前に担保権を設定しておけばそのリスクを減らせます。特に、価格の大きな不動産に抵当をつけておけばより高額の契約に対応できます。しかし、一つの不動産について複数の担保権を設定できるうえ抵当順位の高いものから順番に配当されるのが民法の決まりです。抵当権を設定するときは必ず債務者の状況を確認してください。
目次[非表示]
担保権とは履行遅滞があったとき不動産をお金に換えられる権利
担保権とは債務者が債務を履行できない、つまりお金を支払えない状態に陥った時に担保にしたものをお金に換える権利です。不動産の場合は抵当権、動産の場合は質権が設定されます。債権の場合は質権が設定できますが履行遅滞による債権譲渡を契約書に組み込んだ譲渡担保も使われています。(譲渡担保は法律でなく判例で認められた方法です)
抵当権を設定するには登記が必要?
抵当権を設定するときはその旨についての登記がされます。不動産についての重要な情報は登記に追加されることがよくあります。持ち主でない人は登記から不動産の情報を得るためしっかり登記することが社会のためになるでしょう。
そして、登記をし忘れていると抵当権行使できなくなるかもしれません。まず二者間にとっては契約書さえあれば登記がなくても抵当権行使が認められます。しかし抵当権を設定した不動産がその事実を知らない(法律用語では善意と言います)第三者に不動産が譲渡された場合は登記の有無が行使の可否に関わります。
担保権とは不動産を取得する権利ではない
担保のことを俗に「借金のカタ」と言いますが実際にそのものを取得する権利ではありません。あくまで担保を設定したものから得たお金で債権を充当する権利です。例えば抵当権の場合は不動産を換金して債権を充当し、残ったお金は債務者のものになります。
質権の場合でさえ、質権設定したものを直接もらえるのは競売が難しい場合に限られます。
もしすべての動産に対して質権しか使えなかったら…
担保権については色々難しい部分があるもののとりあえず「動かせるものは質権」「動かせず自分での管理も難しいものは抵当権」という理解で大丈夫です。
したがって動産でも質権より抵当権の方がふさわしい財産があります。質権は債権者が債務履行までその財産を管理することになるので車や船、飛行機などを対象にするのは困難でしょう。そこでこれら登録・登記がされる動産に対しては不動産と同じように抵当権が設定されます。このような動産を準不動産と呼ぶようです。
担保権の実行とその流れ 配当順位について
担保権を実行できるのは債務者が履行遅滞に陥っている時だけで、早くお金が欲しいからと不当なタイミングで抵当権を実行することは許されません。この点にご注意ください。
また、抵当権を実行したとしても配当順位が下であれば思うような弁済を受けられないことも考えられます。
こちらでは担保権を実行する流れを紹介します。
担保権を実行した時の流れ
担保権の実行はこのような流れで行われます。基本的には強制執行をする場合と同じです。
申し立て
債務者の住所を管轄する裁判所に申し立てます。不動産執行の場合は担保不動産競売申立書の他に公課証明書や登記事項証明書、住民票などを提出します。
弁護士に委任する場合は委任状も必要です。申し立て手数料は強制執行と同じく4000円です。
競売の準備
申し立てが受け入れられたら裁判所によって不動産が競売されます。裁判所は債務者に対して競売の通知としたり競売物件の調査や公示をしたりします。
競売
競売は期間入札の形で行われます。もっとも高い値段を提示した入札者が競売物件を落札できます。債務者は速やかに不動産を引き渡さなければいけませんが債権者は特にすることがありません。
配当
競売が終わったら不動産を換価したお金を受け取ります。債権者が複数人いるときは法律に則って分けられます。
強制執行と担保権の実行は何が違う?
強制執行をしても担保権を実行しても「競売にかけられて売価を受け取る」点は同じです。異なるのはその根拠。担保権の場合は契約が根拠となりますが、強制執行の場合は確定判決など債権と債務を確定させる債務名義が根拠となります。
したがって担保権を設定しておけば裁判をせずに手早く不動産執行が可能となります。
配当順位と債権者平等の原則
担保権を設定している不動産についてはたとえ債権者平等の原則があっても担保権者が優先して配当を受け取れます。配当順位はこのように決まっています。
配当はそれぞれに公平な割り当てが行われるのでなく「順位の高い債権が充当されてから次の順位の債権に充てられる」方式であるため再開の配当順位者は一銭も配当を得られない場合があります。
第一順位 手続き費用
不動産執行をするにあたってかかった費用です。ここを最優先しなければ債権者が複数いた時に申立人だけが大きな不利益を被ることとなります。とくに不動産執行の予納金は数十万円以上を要するので申立人にとって小さくない負担となります。
申立人以外は配当要求をすれば配当を得られるため、全員の利益に関わることです。
第二順位 公租公課
国や地方自治体などに支払うお金です。要するに税金ですね。ここも債権より優先されます。税金を支払う義務は強くたとえ自己破産をしても免れません。なんと、不動産に関わる税金だけでなく債務者本人が滞納している税金までここから支払われます。
第三順位 担保権者
担保権はその目的物から優先的に弁済を受ける権利ですが、担保権者は第三順位という位置付けです。その中で抵当権を設定した順番に順位が決められます。つまり抵当権者が複数いることも考えられるのです。
第四順位 それ以外の債権者
担保権者の弁済が終わっても財産が残っている場合は一般の債権者が配当を受け取れます。一般の債権者に対しては債権者平等の原則に則り山分けされます。
強制執行と抵当権
強制執行によって不動産を換価した場合でも抵当権がついていれば抵当権者に優先弁済がされ申立人(抵当権者なら担保権の実行を選ぶ)の弁済は後回しにされます。債務名義を根拠に不動産執行する際は十分ご注意ください。
抵当権実行と債務の行方
抵当権を実行するとそれで契約関係が終わったように感じるかもしれませんが、あくまで決められた金銭を支払う契約を交わしているわけですから抵当権を実行しても債権を充当できないなら契約は続きます。
つまり債権者は債権が充当できるまで債務者に支払い要求ができるのです。とはいえ、債務者が無視力である場合は無理な取り立てができません。
担保権の配当順位で困らないために
担保権には配当順位があり、担保権を設定していない人は不動産執行で大きく不利になりかねません。不動産執行を考えているならこのようなポイントに注意しましょう。
抵当権を設定する前に登記を確認する
抵当権を設定する前に登記を確認しましょう。債務者が「どうせ弁済できない」とわかった上で複数の抵当権がついた不動産を担保に提案することがあり得ます。もし登記がされていない場合は最初に登記さえすればあなたが抵当権者の中で最優先で弁済されます。
登記はそれだけ強い効果を持つので不動産に関わる契約をした時は遅滞なく登記をしましょう。
不動産の価額とそれぞれの債権額を確認する
仮に複数の抵当権者がいたとしても不動産が高額なものであったりそれぞれの債権額が不動産の価額に比べて小さなものである場合は、抵当順位が低くても担保権を設定するメリットがあります。
不動産が複数ある場合は、抵当権のないものを選ぶ
当たり前ですが抵当権のない不動産であればあなたが最優先で弁済を受けられます。ただしその不動産の価値があまりに低いようであれば担保として機能しないので不動産にこだわらず自動車や機材などを担保にすることも考えましょう。
早期に財産状況を確認する
もし債務者の支払いが遅れがちならすぐに財産状況を確認してください。いざ差し押さえになった時に十分な配当を受けられなければ大きく損をしてしまいます。一般財産からの弁済が望めるならそちらに対して何らかの合意をしておくこともリスクヘッジとなります。
担保権の設定やその配当順位についての問題は弁護士に相談しよう
担保は債権者が安心を得るためのものですが、不動産の価値や抵当権の状況によっては不安が残ります。担保という言葉に乗せられず中立な判断を心がけてください。契約を一人で決めかねる時や債務者の履行遅滞にお悩みなら債権回収に強い弁護士に相談しましょう。思わぬ解決策を提案してくれるかもしれません。
- 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
- 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
- スピーディーな債権回収が期待できる
- 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
- 法的見地から冷静な交渉が可能
- あきらめていた債権が回収できる可能性も