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事業承継とは?中小企業経営者が事業引継ぎで検討すべき3つの方法
この記事で分かること
- 2020年頃には団塊経営者の大量の引退が予測され、今後の事業については、「上場」「廃業」以外に、「事業」を「承継」する「事業承継」という道がある
- 「事業承継」は、承継先により3つに分かれ、親族に承継する「親族内承継」、役員・従業員に承継する「従業員承継」、社外にM&Aなどで承継する「M&Aによる事業承継(社外承継)」がある
- 「事業承継」の方法を考える際は、「承継先」を誰にするのか、また事業の正確な把握をすることが重要となる
来るべき2020年には団塊経営者の大量の引退が予測され、それに伴い「事業」を「承継」する「事業承継」の件数が増加しています。「事業承継」には、承継先により3つに分かれ、親族に承継する「親族内承継」、役員・従業員に承継する「従業員承継」、社外にM&Aなどで承継する「M&Aによる事業承継(社外承継)」があります。それぞれにメリットもデメリットもあり、詳しく理解した上で、どの方法が一番合うかを判断する必要があります。
事業承継とは?
近年、日本の経済を支える「中小企業」の経営者の高齢化が進んでいます。具体的には、2015年~2020年までに約30万人が新たに70歳に、約6万人が75歳に達する状況といわれ、2020年頃には団塊経営者が大量に引退することが予測されているのです。
そこで、経営者が引退する際に、これまでの「事業」をどうするかを考えねばなりません。その選択肢の一つが、「事業」を「承継」する「事業承継」です。具体的には、「事業」の重大な要素である「人(経営)」「資産」「知的資産」の3つを後継者へ引き継ぎ、安定した経営、さらなる発展を目指そうというものです。
事業承継が求められる背景
これまで育ててきた「事業」をどうするかについて、取りうる選択肢は「上場」「廃業」「承継」という3つです。ただ、「上場」に関しては、望んでできるものではありません。証券取引所の厳しい審査を通過する必要があり、実現するには難しい場合が多いでしょう。
また、「廃業」であれば、従業員の雇用の問題が浮上し、多くの取引先にも影響を与えるため、容易に選択できないとも考えられます。しかし、驚くことに、60歳以上の経営者のうち、約半数以上が廃業を予定しているというデータがあります。特に個人事業者では圧倒的に多く、その数は約7割に達します。
特に、廃業というと、「業績悪化」「赤字経営」というイメージですが、うち3割の経営者は、同業他社よりも良い業績を上げています。業績好調にもかかわらず廃業となると、企業が保持する貴重な技術やノウハウが失われます。
日本の企業数の約99%、従業員数の約70%を占める「中小企業」において、一定数が廃業となれば、日本全体の経済の活性化を阻害し、大きな損失といわざるを得ません。そこで、これらの問題を回避すべく、現実的な選択肢の「事業承継」が注目されているのです。
事業承継には3つの方法がある
「事業継承」には3つの方法があります。「事業」をどこに引き継ぐかで分かれます。
- 親族に引き継ぐ場合…「親族内承継」
- 親族以外の役員・従業員に引き継ぐ場合…「従業員承継」
- 社外にM&Aで引き継ぐ場合…「M&Aによる事業承継(社外承継)」
以下、順に説明します。
親族が後継者となる「親族内承継」とは?
「親族内承継」とは、経営者の子どもなど、その親族に事業を承継させる方法です。これまで自分が成長させた会社ですから、親族に承継したいという思いは当然ともいえます。
ただ、時代と共に生き方や働き方に対する意識も変化し、子ども自身が実家の事業を継ぐ必要性を感じていない傾向があります。「親と自分の人生は別」、「やりたいことを仕事として追求する」などの考え方です。この影響か、近年は「親族内継承」が行われる割合は減少しています。
後継者教育に時間がかけられるというメリットがある
もともと、親族に事業を承継するため、経営者としては、後継者を誰にするか、事前に決めておくことができます。その分、長期間に渡って後継者教育ができるというメリットがあります。一般的には後継者教育に要する期間は5~10年といわれています。
また、経営者の親族であるため、会社の内外からの評価もよく、関係者にスムーズに受け入れられやすいこともメリットといえます。
後継者につき親族内で争いが起きるデメリットも
誰を後継者にするかで、親族内で争いが起きるなどのデメリットが考えられます。特に、相続人が複数いる場合には、後継者について親族内で十分な時間を割き、互いが納得できるよう話し合いをすべきでしょう。万が一に備えて、確実に後継者に事業用資産と株式などの会社関係の資産を相続できるよう、遺言をする必要があります。
他にも、現経営者の個人保証などの問題です。まだ実績もない新しい後継者ですから、金融機関が現経営者の保証を外すことを了承しないなどのデメリットも考えられます。
「役員・従業員」が引き継ぐ「従業員承継」とは?
「従業員承継」とは、親族以外の「役員・従業員」に、事業を承継する方法です。現経営者の親族の中に後継者がいない、しかし全く見ず知らずの第三者に経営を任せたくはないという場合など、折衷案のような方法ともいえます。
スムーズに事業承継ができるなどのメリットがある
これまでの部下としての働きぶりを評価して人選を行うことができ、能力ある人材を後継者に選ぶメリットがあります。
既に現場で指揮を取っている場合も多く、もともと会社の従業員や役員であるため、他の従業員との信頼関係は既に構築されているといえます。従業員や取引先からみれば、安心した後継者といえ、一番スムーズに事業承継ができるでしょう。
他にも、会社の方針など、これまで大切にしてきたものまで引き継げるというメリットもあります。
株式など譲り受けるための資金不足が大きな課題!
一方で、大きな課題もあります。まず挙げられるのは、承継する側の資金調達が困難ということです。経営の安定のためには、経営者が有する株式や事業用アセットなどを譲り受ける必要がありますが、到底個人では用意できない金額となることが多いのです。経営者と共に、無理なく行える方法を検討する必要があります。
また、従業員といっても役員の場合が多く、現経営者より少しだけ若い世代であるため世代交代がなされない、会社の方針などが引き継がれるため新たなイノベーションが生まれない、経営者が個人(連帯)保証を行っている場合の処理方法などの課題もあります。
社外にM&Aで引き継ぐ「M&Aによる事業承継」とは?
M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で、企業の合併買収を意味します。後継者がいない場合などに、企業そのものを買収もしくは合併して、その事業を承継するという方法です。方法は様々で、株式譲渡、事業の全部譲渡、事業の一部譲渡、株式交換、合併、会社分割など多岐に渡ります。
また、M&Aは専門性のある知識やスキルが必須であり、経営者個人で進めるのは難しいといえます。そこで重要になってくるのが、M&Aをサポートする仲介機関です。地域の公的機関(事業引継ぎ支援センターなど)、士業等専門家、M&A専門業者(コンサルティング会社など)取引金融機関などが候補として挙げられます。慎重に検討する必要があります。
後継者がいなくても事業承継できるメリットがある
「親族」や「役員・従業員」のどちらにも後継者候補がいなかった場合に、「廃業」せずとも、社外の第三者への事業承継ができるのが大きなメリットです。また、これにより、全従業員もそのまま継承することができ、雇用の確保が可能となります。
また、もう1つの大きなメリットは、現経営者が株式売却の利益を得るということです。売り手・買い手ともにWin-Winの関係になることもメリットといえます。
時間やコストがかかり、マッチングできるか確実でないデメリットも
第三者が承継するので、スムーズに事業の承継がなされず時間がかかることが予想されます。また、承継先を探して選定するなど、仲介業者へのコストもかかるのがデメリットといえます。
他にも、「M&A」は買い手企業が現れて初めて成り立ちうるものなので、そもそも合併や買収の条件が合わなければマッチングができない可能性もあります。事業承継ができないデメリットも押さえておかねばなりません。
事業承継を考える際のポイント
事業承継について、どの方法を選択するべきか悩むところです。ここでは、どのように考えて判断すべきか、ポイントを解説します。
承継先を誰にするのかの考え方
最初に考えるべきは、「承継先」です。
- 親族内に後継者がいるか
- その後継者に経営者としての素質があるか
ここで、後継者がいないとなれば、「親族内承継」は消去法で選択できないことになります。残っている選択肢は2つです。
- 役員や従業員の中に後継者候補がいるか
- 後継者候補に経営者としての素質があるか
ここで後継者候補がいないとなれば、「M&Aによる事業承継」しか取るべき選択肢はありません。このように、順序立ててフローチャートのように進めていけば、自然と取るべき選択肢に行きつくはずです。
ただ、それだけで「事業承継」の方法を考えるのは早計です。承継までの時間や会社の現在の状況なども併せて考慮し、総合的に判断することが望ましいといえます。
事業の現状を正確に把握する
「事業」の経営が思わしくなく、負債を抱えており、事業承継の際に立て直しをしたいというのであれば、「M&Aによる事業承継」で新しいイノベーションを生み出せるかもしれません。このように、会社の現在の状況を正確に把握することで、取るべき選択肢を考えることもできます。
具体的には、この機会に事業の棚卸をして、自社の経営状況や経営課題の洗い出し、現在の事業の持続性、成長予測なども把握すべきでしょう。また、新しい事業の開発可能性の有無や利益確保のプロセスの確認などもあれば、より正確に「事業」の将来予測を立てることができます。
事業承継を相談すべき相手は?
「事業承継」については、下記のとおり、各種相談窓口があります。
- 弁護士、税理士、公認会計士、中小企業診断士などの士業専門家
- 金融機関(中小企業に日常的に接し、経営支援等を実施しうる立場)
- 商工会議所・商工会(経営指導員の日々の巡回指導等で信頼のある身近な存在)
- 同業種組合
- 認定経営革新等支援機関(「中小企業等経営強化法」に基づき認定された支援機関(士業等専門家、金融機関、商工会・商工会議所、民間企業)
- 公的機関(事業引継ぎ支援センター、中小企業再生支援協議会、独立行政法人中小企業基盤整備機構、よろず支援拠点、中小企業庁・経済産業局)
この中でも相談すべき相手としてお勧めなのが、法的スペシャリストである弁護士です。中小企業や経営者の代理人となることもでき、特に、株主関係が複雑な場合には株主や従業員などの利害関係人への説明や説得を任せることができます。
また、会社債務や経営者の個人保証の面において、金融機関との調整や交渉にも便利です。さらに、M&Aを行う際は、契約書の書類作成など、法律的側面からみた課題などの洗い出しも可能です。株式譲渡の際の税制や相続関係にも明るく、様々な角度からアドバイスをもらうことができるので、早期に弁護士へ相談することをお勧めします。
なお、一般的には、弁護士といってもそれぞれ専門分野があります。所属している法律事務所のカラーや、特化した分野を確認することが重要です。ウェブサイトの情報もそうですが、実際に足を運んで相談をしてみるのも一つです。
専門的な言葉で説明が分かりにくい、ヒアリングをせず自分の話ばかりをしているなどの対応は要注意です。依頼者と寄り添う姿勢がなければ、実際の事業承継の場面でも、期待に沿えない可能性もあります。
事業承継については弁護士に相談しよう
弁護士にも専門分野があるため、実際に足を運んで、様々な質問を用意して、ぶつけてみるのもいいでしょう。ちなみに、相談する候補者が複数の場合は、同じ質問をして比較することも効果的です。スムーズな承継が行えるように、早期に弁護士に相談してみましょう。
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