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生前贈与を非課税で行う8つの方法~正しい節税のための注意点も解説
この記事で分かること
- 生前贈与の非課税枠の活用で、贈与税をなくすか減らすことができる。
- 親族間での生活費・教育費の贈与は贈与税ゼロである。
- 暦年贈与、おしどり贈与、相続時清算課税、住宅取得資金贈与、教育資金一括贈与、結婚・子育て資金一括贈与、障害者贈与には非課税枠がある。
- 暦年贈与の評価維持、贈与財産に応じた非課税枠の使い分けにより、効果的な節税ができる。
- 生前贈与を非課税で行うなら、まず相続の専門家に相談することが一番である。
生前贈与を非課税で行う方法があります。非課税枠を活用する方法です。贈与税には8つの非課税枠があります。それらを上手に組み合わせることが、効果的な節税につながります。贈与税を非課税で行う方法については、弁護士や税理士などの相続の専門家に相談しましょう。
生前贈与は非課税で行える?
生前贈与を非課税で行うということには、2つの意味があります。贈与税が全くかからないように生前贈与を行うこと、贈与税をなるべく少なくして生前贈与を行うことの2つです。
生前贈与を非課税で行うことができるのか。行えるとしたら、どんな方法があるのか。この記事で解説します。
贈与税の非課税枠を活用する8つの方法
生前贈与を非課税で行うことができます。生前贈与の非課税枠を活用する方法です。ここでは、8つの非課税枠活用方法について解説します。
生活費や教育費の贈与は全額非課税
夫婦、親子、兄弟姉妹などの間での生活費や教育費の贈与には、贈与税は一切かかりません。
夫婦、親子、兄弟姉妹などは、互いに生活を助け合う義務があります。その代表格が、生活費と教育費です。これらに課税することは、家族の助け合いを妨げることになるからです。
学費、アパート代、結婚費用、出産費用が適例です。税務署への申告は不要です。
ただし、次の2つの場合、贈与税が課税されるので注意しましょう。
使い道を変えると課税対象に
生活費や教育費としてもらったお金を、生活費・教育費以外に使うと、贈与税がかかります。学費として贈与されたお金で株式を買った場合などです。教育面での助け合いとはいえなくなるからです。
数年分まとめ贈与の剰余分は課税対象に
数年分をまとめて贈与した場合、贈与した年の12月31日現在の余っている部分に贈与税かかかります。たとえば、大学4年間分の学費として入学時にまとめて与えたところ、入学年の12月31日に学費の残り分があると、そこに贈与税がかかります。
贈与税は、1月1日から12月31日という年単位で計算されます。12月31日時点の残り分は、もはや入学年の学費ではなくなるからです。
暦年贈与は110万円まで非課税
1月1日から12月31日までを暦年といいます。暦による1年間という意味です。
1月1日から12月31日までの間に行われる贈与を、暦年贈与いいます。暦年に行われる贈与という意味です。
暦年贈与の合計額のうち、110万円までは贈与税がかかりません。贈与税の基礎控除としての非課税枠です。暦年贈与の合計額が500万円であれば、500万円-110万円=390万円に対してのみ贈与税がかかります。暦年贈与の合計額が100万円であれば、贈与額より非課税枠の方が多いので、贈与税はかかりません。
暦年贈与の非課税枠は、毎年1月1日にリセットされます。その年その年の贈与である限り、暦年贈与として、110万円の非課税枠が適用されます。税務署への申告は不要です。
1年間の合計額でも暦年贈与とみなされない場合に注意しましょう。次のような場合です。
数年分一括贈与は課税対象に
たとえば、平成28年の贈与額の合計が100万円であっても、25万円の暦年贈与を4年分まとめて行ったと税務署が判断した場合です。
25万円については平成28年の暦年贈与なので、非課税です。しかし、残り75万円については、平成29年、30年、31年それぞれの暦年贈与なので、平成28年の暦年贈与としての非課税枠は適用されません。受贈者(贈与を受ける人)のもとに75万円が残っていることには変わりないので、平成28年分の贈与税がかかります。
おしどり贈与は2000万円まで非課税
夫婦の間で、家またはその購入資金を贈与する場合、2000万円まで非課税です。非課税枠が適用される夫婦をオシドリになぞらえて、「おしどり贈与」と呼ばれます。
暦年贈与の非課税枠110万円を足すことができます。年間2110万円まで非課税となります。
贈与は、夫から、妻から、どちらからでもよいです。20年以上夫婦であることが必要です。贈与された人は、贈与の翌年3月15日までに、贈与された家に住まなければなりません。
贈与税の申告をしないと課税対象に
非課税の恩恵を受けるには、贈与税の申告が必要です。おしどり贈与であることを、税務署に知らせなければなりません。
相続時清算課税制度で2500万円まで非課税
「相続時精算課税」という納税方法があります。生前贈与の時点で贈与税は納めません。贈与者が亡くなった時点で、「遺産+生前贈与」について相続税を納めます。遺産にかかる税と生前贈与にかかる税とを合わせて、相続税として相続時に一括清算します。
この方法をとると、生前贈与のうち2500万円までが非課税となります。遺産+(生前贈与-2500万円)に対して相続税が課されます。
その分、暦年贈与の110万円の非課税枠は使えません。
2年以上に分かれて生前贈与が行われる場合があります。この場合、たとえば、1年目の生前贈与1500万円はまるまる非課税、2年目以降は各年合わせて1000万円までが非課税となります。
贈与者と受贈者に条件あり
相続時精算課税を利用するには、贈与者が60歳以上の父母又は祖父母であること、受贈者が20歳以上の子又は孫であることの2つの条件が必要です。
相続時精算課税は、受贈者が贈与者の相続人となることを想定しています。受贈者としては納めなかった贈与税を、贈与者亡き後、今度はその相続人として、贈与税を相続税に含めて納めるわけです。
贈与税の申告をしないと課税対象に
非課税の恩恵を受けるには、贈与税の申告が必要です。相続時精算課税にすることを、税務署に知らせなければなりません。
相続時精算課税は撤回できない
いったん相続時精算課税の申告をすると、「やっぱりやめた」は許されません。その贈与者からの贈与は、贈与者が亡くなるまで、すべて相続時精算課税の扱いとなります。中途の撤回は、それまでの贈与に課税しなければならなくなり、手続が面倒になるからです。
住宅取得資金の贈与は最大1200万円まで非課税
家の新築や増改築、中古住宅の購入など、住宅取得のための資金の贈与には、贈与税の非課税枠があります。住宅は生活の基盤です。その取得をできるだけ容易にするべきだからです。
住宅取得資金の贈与の非課税枠は、次の表のとおりです。
取得の契約締結日 | 省エネ等住宅 | その他の住宅 |
---|---|---|
2016年1月1日~2020年3月31日 | 1200万円 | 700万円 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1000万円 | 500万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
取得の契約締結日 | 省エネ等住宅 | その他の住宅 |
---|---|---|
2019年4月1日~2020年3月31日 | 3000万円 | 2500万円 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1500万円 | 1000万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 1200万円 | 700万円 |
2019年10月1日から消費税率が10%になる予定です。実際にそうなれば、契約締結日が2019年4月1日以降である住宅取得のための資金贈与には、表②の非課税枠が適用されます。最大3000万円まで非課税となります。
住宅資金贈与の非課税枠を適用した後に残る課税対象額について、さらに暦年贈与および相続時清算課税の各非課税枠を使うことができます。
住宅資金贈与の非課税枠の適用には、次の3要件を満たす必要があります。
贈与者と受贈者に条件あり
贈与者と受贈者について、次の6条件を満たす必要があります。
- 受贈者は贈与者の子・孫・ひ孫であること
- 受贈者は贈与年の1月1日時点で20歳以上であること
- 受贈者の贈与年の所得が2000万円以下であること
- 受贈者は今までに住宅資金贈与の非課税枠の適用を受けていないこと
- 売主や施工業者が受贈者の親族でないこと
- 受贈者は贈与年の翌年の3月15日までにその住宅にすむこと。または住むことが確実であること
取得住宅に条件あり
取得する住宅について、次の3条件を満たす必要があります。
- 床面積が50㎡以上240㎡以下であること
- 床面積の半分以上が居住用であること
- 新築、築20年以内(耐火建築物なら築25年以内)、一定の耐震基準を満たしていることのいずれかであること
贈与税の申告をしないと課税対象に
非課税の恩恵を受けるには、贈与税の申告が必要です。住宅取得資金のための贈与であることを、税務署に知らせなければなりません。
教育資金の一括贈与で1500万円まで非課税
父母、祖父母、曽祖父母からの教育資金としての一括贈与には、贈与税の非課税枠があります。
非課税枠は受贈者1人につき1500万円
非課税枠は、1500万円です。教育資金のうち学校に支払われた分の非課税枠は1500万円です。入学金、授業料、給食費などです。教育資金のうち学校以外に支払われた分の非課税枠は500万円です。学習塾、習い事などです。
学校に1500万円の非課税枠を使い切ってしまうと、学校以外に非課税枠が使えなくなります。学校以外に500万円の非課税枠を使い切ってしまうと、学校に使える非課税枠は残りの1000万円のみとなります。
非課税枠は受贈者1人当たりの枠です。受贈者が両祖父母4名から各1000万円、合計4000万円の贈与を受けても、受贈者は1人なので、非課税枠は1500万円です。
非課税枠を使えるのは30歳未満のうち
非課税枠を使えるのは、受贈者が30歳未満のうちだけです。30歳になると、非課税枠は使えなくなります。
1年間で使い切らなくても非課税
非課税枠活用の一番目の方法として紹介したとおり、夫婦、親子、兄弟姉妹などの間での教育費の贈与には、贈与税はかかりません。ただし、12月31日までに使い切ることが必要です。使い切らない残りの分に対して、贈与税がかかります。
教育資金一括贈与は、1年間で使い切る必要はありません。使い切るのに2年以上かかっても、非課税枠は年を越えて残ります。
非課税枠にしたがって贈与税額を計算
教育資金をすべて使い切った時点で、使い道に応じた非課税枠にしたがって、贈与税額が計算されます。使った資金がすべて非課税枠の中に収まれば、贈与税はゼロになります。
資金を使い切らないうちに、①教育資金としての使い道がなくなる、②受贈者が30歳になることがあります。いずれの場合も、残りの資金に対して贈与税がかかります。①は、もはや教育資金でなくなるからです。②は、非課税の要件から外れるからです。
「教育資金口座」の開設が必要
教育資金一括贈与の非課税枠を使うには、「教育資金口座」を開設することが必要です。
金融機関に受贈者名義の「教育資金口座」を開設します。開設期限は、2019年3月31日までです。金融機関を通じて税務署に「教育資金非課税申告書」が提出されます。
受贈者は、一括贈与された教育資金をこの口座に預け入れます。必要時に引き出します。引き出したときは、領収書を金融機関に提出します。領収書には、教育資金としての領収であることが記載されます。
結婚・子育て資金の一括贈与で1000万円まで非課税
父母、祖父母、曽祖父母からの結婚・子育て資金としての一括贈与には、贈与税の非課税枠があります。
非課税枠は受贈者1人につき1000万円
非課税枠は、1000万円です。結婚・子育て資金のうち子育て費用の非課税枠は1000万円です。妊娠、出産、不妊治療、保育などの費用です。結婚・子育て資金のうち結婚費用の非課税枠は300万円です。結納、挙式、引越しなどの費用です。
子育てに1000万円の非課税枠を使い切ってしまうと、結婚に非課税枠が使えなくなります。結婚に300万円の非課税枠を使い切ってしまうと、子育てに使える非課税枠は残りの700万円のみとなります。
非課税枠は受贈者1人当たりの枠です。受贈者が両祖父母4名から各1000万円、合計4000万円の贈与を受けても、受贈者は1人なので、非課税枠は1000万円です。
非課税枠を使えるのは20歳以上50歳未満のうち
非課税枠を使えるのは、受贈者が20歳以上50未満のうちだけです。50歳になると、非課税枠は使えなくなります。
1年間で使い切らなくても非課税
非課税枠活用の一番目の方法として紹介したとおり、夫婦、親子、兄弟姉妹などの間での結婚費用や出産費用の贈与には、贈与税はかかりません。ただし、結婚や出産のたびに贈与すること、12月31日までに使い切ることが必要です。使い切らない残りの分に対しては、贈与税がかかります。
結婚・子育て一括贈与は、1年間で使い切る必要はありません。使い切るのに2年以上かかっても、年を越えて非課税枠は残ります。
非課税枠にしたがって贈与税額を計算
資金をすべて使い切った時点で、使い道に応じた非課税枠にしたがって、贈与税額が計算されます。使った資金がすべて非課税枠の中に収まれば、贈与税はゼロになります。
資金を使い切らないうちに、①結婚・子育て資金としての使い道がなくなる、②受贈者が50歳になることがあります。いずれの場合も、残りの資金に対して贈与税がかかります。①は、もはや結婚・子育て資金でなくなるからです。②は、非課税の要件から外れるからです。
「結婚・子育て資金口座」の開設が必要
結婚・子育て資金一括贈与の非課税枠を使うには、「結婚・子育て資金口座」を開設することが必要です。
金融機関に受贈者名義の「結婚・子育て資金口座」を開設します。開設期限は、2019年3月31日までです。金融機関を通じて税務署に「結婚・子育て資金非課税申告書」が提出されます。
受贈者は、一括贈与された結婚・子育て資金をこの口座に預け入れます。必要時に引き出します。引き出したときは、領収書を金融機関に提出します。領収書には、結婚・子育て資金としての領収であることが記載されます。
障害者への贈与は最大6000万円まで非課税
受贈者が特定障害者(特別障害者、または特別障害者でない精神障害者)である場合、贈与税の非課税枠があります。贈与の目的は問われません。
受贈者が特別障害者(身体障害1級または2級など、重度の障害者)であれば、非課税枠は6000万円です。特別障害者でない精神障害者であれば、非課税枠は3000万円です。
信託銀行への信託が必要
障害者贈与の非課税枠を使うには、贈与財産を信託銀行へ信託することが必要です。これを、特定贈与信託といいます。
金融期間を通じて税務署に「障害者非課税信託申告書」が提出されます。
信託された贈与財産は、受贈者の生活費や医療費などのために、定期的に払い出されます。
生前贈与の非課税枠を活用する場合の注意点
8種類の生前贈与非課税枠を紹介して来ました。ここでは、これらの非課税枠を活用する際の5つの注意点について解説します。
暦年贈与を一括贈与とみなされないこと
暦年贈与は110万円まで非課税です。毎年100万円の贈与を10年間、合計1000万円贈与した場合、税務署によって暦年贈与とみなされる限り、贈与税は非課税です。
しかし、税務署が、たとえば「1000万円の贈与を1年ごと10回の分割にしているだけ。実質的には1000万円の一括贈与だ。」と判断すると、暦年贈与とはみなされません。次の計算式により、贈与税231万円が課されてしまいます。
(贈与額1000万円-基礎控除110万円)×贈与税率40%-控除額125万円=231万円
税務署が一括贈与と判断するヒントのひとつが、贈与契約書です。一括贈与と判断されない文言にすることが大切です。ただ、税務署はこちらの思いどおりには読み取ってくれない可能性があります。毎年の贈与ごとに別々の契約書を作ることが一番です。
わずかに贈与税を納める
たとえば、毎年111万円の贈与をする方法です。基礎控除110万円を上回る1万円について贈与税が課されます。贈与税額は1000円です。
毎年1000円の贈与税を納めることで、暦年贈与の証明になります。贈与税対策と疑われる可能性も下がります。
価値が上がりそうな財産には相続時清算課税を利用
たとえば、近々近所に駅ができる予定の土地は、価値が上がることが予想されます。こうした財産を贈与する場合、相続時清算課税の利用が節税につながります。
財産価値が上がらないうちに贈与することが必要です。相続時清算課税での生前贈与額は、贈与時の財産価値を基準に決まるからです。
相続時清算課税では、相続時に、生前贈与額と相続額を合わせた額に相続税が課されます。相続税は贈与税よりも税率が低いです。
生前贈与額を低くし、そこに贈与税よりも税率の低い相続税が課される。相続時清算課税の節税効果が発揮されます。
暦年贈与と相続時清算課税を使い分ける
たとえば父と母など、複数の人から贈与を受ける場合です。父からの贈与財産の価値上昇が予想されるときは、相続時清算課税を利用します。母からの贈与が110万円前後なら、暦年贈与にします。贈与財産の種類や価額に応じて、非課税枠を使い分けるのです。
いったん相続時清算課税にすると、その贈与者からの贈与は、その後ずっと相続時清算課税になります。暦年贈与に変えることができなくなります。注意が必要です。
現金手渡しでの贈与は税務署で否認の可能性も
生前贈与の方法は自由です。贈与者が受贈者に現金を手渡しする贈与も可能です。現金手渡しの贈与といいます。
税務署による相続税の税務調査では、故人の預貯金通帳を見られます。多額の出金があると、使い道を聞かれます。「この100万円は故人の孫に対する生前贈与です」と説明しても、証拠がありません。100万円の出金は生前贈与ではないと判断されてしまいます。これを、税務署による贈与の否認といいます。
生前贈与は年間110万円まで非課税です。この100万円が生前贈与で、その年に他に贈与がなければ、贈与税はかかりません。しかし、証拠がないばかりに、生前贈与とは認めてもらえません。100万円に対して相続税がかかることになってしまいます。出金されていても故人のお金に変わりないからです。
生前贈与は、証拠の残る金融機関への振込みで行うのが一番です。
贈与契約は書面で交わすのが安全
金融機関への振込みが贈与のためであることは、通帳にも振込み依頼書にも記載されません。贈与契約書を作成するのが、贈与のための振込みであることの証拠確保として安全な方法です。
生前贈与の非課税枠活用は相続の専門家に相談を
生前贈与の非課税枠を効果的に活用するには、贈与契約や贈与税についての知識と実務経験が欠かせません。一般の人が対応するのは困難です。
税理士や弁護士など、相続の専門家に相談することをお勧めします。的確なアドバイス、手続の代行など、非課税枠の活用につながる支援をしてもらえるはずです。
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