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相続人調査の流れ~戸籍調査で相続人を探す方法と注意点

この記事で分かること

  • 相続人を決める根拠は戸籍と遺言
  • 相続人全ての合意がない遺産分割協議書は無効
  • 戸籍を取り寄せる時間がない時は弁護士に代行できる!

民法において相続人は被相続人との戸籍関係で決まります。たとえ交流がなくても戸籍上のつながりがあればその人は相続人となるので相続人調査は抜かりなく行ってください。相続人全員が合意しない遺産分割は無効となります。

もし、相続人調査を怠ったせいで遺産分割が無効になったり相続人の順位が変わったりしては大変です。戸籍の取り寄せに労力を割きたくない人はぜひ弁護士へ依頼してください。

相続人調査とは何をするのか?

被相続人の遺産を相続できる相続人は民法第887条〜第890条に定められています。そのことから、法定相続人と呼ぶこともあります。この内容をまとめると次のようになります。

  • 配偶者は常に相続人となり、他の相続人と同順位となる
  • 子は相続人となる
  • 子が相続人とならない場合は直系尊属が相続人となる
  • 子も直系尊属もいない時は兄弟姉妹が相続人となる

相続人調査とは、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つ相続人を探すことを言います。相続権を持っている人をないがしろにして相続順位を入れ替えることはできません。

相続人を探す方法は戸籍の取り寄せ

相続人になる条件は被相続人と戸籍上の家族であることが基本です。そのため、相続人調査は戸籍の取り寄せが主となります。もちろん戸籍情報の省略がない戸籍謄本を取り寄せてください。

被相続人の家族関係を明らかにするためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、世帯に人がいなくなった場合は除籍謄本、そして改製原戸籍が必要となります。

戸籍は本籍地が移るたびに管理する自治体が変わっていくので、死亡した時の戸籍から順番に辿っていく必要があるかもしれません。戸籍が変わる大きなイベントといえば結婚と独立ですね。

被相続人の戸籍謄本に他の相続人がいた場合はその人の調査が必要となります。このように相続人調査はどんどん連鎖していくところに面倒くささがあります。

改製原戸籍とは?

戸籍情報を調べるだけなら戸籍謄本だけで十分そうですが、制度変更のたびに残る改製原戸籍も相続人調査には必要です。これは、改製原戸籍の内容のうち一部が原稿戸籍に反映されないからです。例えば戸籍の様式が変わる前に除籍された人や養子離縁があった人は現行戸籍に載らないのです。

海外の相続人は?

アメリカや中国、ヨーロッパなど様々な国へ飛び立った相続人もいると思います。その場合も海外に住所を移すまでは戸籍が残っていますから同じく戸籍の取り寄せを行います。海外の住所は領事館で取り寄せることが可能です。

代襲相続の戸籍も集める必要あり

被相続人の戸籍を取り寄せて、知らない相続人がいた場合はその人の所在を辿ります。しかし、時にはその人が相続開始前に亡くなっていることがあります。この場合は次のような代襲相続が起きます。

  • 被相続人の子が亡くなっていた場合は孫やひ孫に相続権が移る
  • 被相続人の兄弟姉妹が亡くなっていた場合は一代だけ代襲相続が起きる

万が一相続開始後にある相続人が亡くなったとしたら再相続が起きてその方の法定相続人がまるごと相続権を得ます。もちろん、所在を知っている推定相続人の誰かが亡くなっていた場合も該当者がいれば代襲相続が起こっています。

代襲相続について調べるためにも戸籍謄本が必要です。

養子や非嫡出子も探す必要あり

非嫡出子や養子も嫡出子と同じく相続権を持ちます。法定相続分や遺留分についても法の下の平等という観点から優劣がありません。非嫡出子については認知されている人だけが相続人となります。養子に関しては戸籍謄本に縁組した事実が書かれているのでご安心ください。

遺言で相続人が増えることも

認知されていない非嫡出子は相続人となりませんが、被相続人が遺言でその人を認知する場合があります。つまり遺言で法定相続人が増えるということがあります。

ちなみに、遺言は遺産分割の内容を一方的に定める効果を持つことから相続人長がさ不要となります。

相続放棄や限定承認でも相続人調査が必要

相続放棄や限定承認をする場合も相続人調査が必要です。なぜならこれらの手続きを申し立てられるのは相続人だけだからです。

相続放棄をする場合は自分より上位の相続人がいないことを証明するため、限定承認をする場合は自分より上位の相続人がおらずその上で合意していない相続人が存在しないことを証明するために戸籍謄本を提出します。

相続放棄は好きなタイミングで行えば良いように思えますが相続人を保護する目的で相続前の放棄が認められていません。しかし申し立てまでの期限は相続の開始を知ってからわずか3ヶ月です。

ワンポイントアドバイス
相続人は被相続人との戸籍上の関係によって決まります。血縁でも相続順位が低ければ相続人とならないし、一方で血が繋がっていなくても養子であれば相続人となります。そのくらい戸籍関係が大切であることをご理解ください。

数カ所の地方自治体へのアクセスが必要であればぜひ弁護士へ依頼しましょう。

参考:【相続人の確定】戸籍調査の方法~個人でも戸籍の調査はできる?

相続人調査の基本的な流れ

相続人調査では

  • 被相続人の出生~死亡まですべての戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本

が必ず必要になります。

実際に相続人を調査する際は、まず上記の被相続人の戸籍謄本を取得することで判断するのが一般的です。流れを順にまとめると、下記の通りです。

  1. 被相続人の最新の本籍地で戸籍謄本を取得する
  2. 戸籍謄本を過去にたどっていき、出生の戸籍までを揃える
  3. 出生~死亡までの戸籍を見て相続人を判断する

被相続人の最新の本籍地で戸籍謄本を取得する

まず被相続人の最新の本籍地で、死亡日が書かれている戸籍を取得します。

戸籍謄本を過去にたどっていき、出生の戸籍までを揃える

取得した最新の戸籍謄本で、1つ前の本籍地を確認した上で、その本籍地に1つ前の戸籍謄本を請求します。

この手続きを繰り返し被相続人の出生までたどり着くことで、被相続人の出生~死亡までの連続した戸籍謄本を取得したことになります。

出生~死亡までの戸籍を見て相続人を判断する

被相続人の出生~死亡までの戸籍を見て、相続人を判断します。

ワンポイントアドバイス
戸籍謄本の取得に漏れがあると、相続人調査を適切に行うことはできません。また、家族構成などによっては除籍謄本や、兄弟姉妹の戸籍謄本もあたる必要が出てきます。
相続人の確定・証明のために何が必要か、状況に応じて判断する必要があります。戸籍謄本の取得そのものは難しいことではありませんが、正しく判断するには相続における戸籍の取扱を理解している必要があります。スムーズに相続人調査を進めたい場合は、相続人調査の段階から弁護士に相談・委任するのがおすすめです。

相続人調査をしないと相続が無効になる?

相続人は法律に基づいた相続権を得ます。もし、相続人調査が面倒だからとある相続人を無視した遺産分割協議を行えばその人にとって大きな不利益になってしまいます。

したがって遺産分割協議は相続人全ての合意で初めて成立します。民法第907上では協議が調わないときや協議ができない時に家庭裁判所への請求が可能としています。逆にいえば協議無くして遺産分割できないことを意味します。

遺産分割協議は無効になるのか?

遺産分割協議は無効になると考えられます。理由は遺産分割協議の条件である全員の合意をしていないからです。そもそも遺産分割協議とは一つの契約ですから、コンセンサスが必要な合意で誰かを省くことがいかにおかしいかわかりますね。

しかも相続には事項がありません。理論上、10年後に法定相続人が名乗り出ても遺産分割協議をやり直すことは可能です。

とはいえ実際に遺産分割協議をやり直すことは大きな手間だし、遺産分割協議に参加できなかった相続人にとっての利益になるとも限りません。現実には遺言で子が認知された場合と同じく金銭での支払い請求が落とし所になるでしょう。

遠方の相続人と遺産分割するにはどうすれば良い?

相続人の所在がわかっても遠方で遺産分割協議に参加できない場合は電話などオンラインで遺産分割協議に参加してもらいましょう。また、全ての人が同時に会合へ参加する必要もないのでそれぞれ都合がつく時間を選び遺産分割協議書の内容を詰めていきましょう。

遺産分割協議に参加したがらない人はどうすれば良い?

遺産分割協議に参加したがらない人もいますが、相続額ゼロでも合意してもらわないことには遺産分割協議が終わりません。

単に興味がなかったり被相続人と浅からぬ因縁があったり事情はいろいろですが、遺産分割協議に参加しない人には相続放棄をしてもらいましょう。それすら受け入れてくれないなら家庭裁判所へ相談してください。

どうしても相続人が見つからなかった場合は?

戸籍は辿ったのに相続人が見つからない場合はすでに亡くなっている可能性があります。生死不明の相続人に対しては失踪宣言の申立を行い亡くなったものとして相続を進めましょう。生死不明の相続人について不利益にならないよう法定相続分は分けておきます。

何れにせよ根拠は戸籍謄本

相続人の不足で遺産分割協議の問題を起こしたくないなら、戸籍謄本を集めましょう。被相続人の分、相続人の分、そして代襲相続人の分まで集めれば完璧です。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議は全員の合意が必要ということは、全く顔を合わせたことのない相続人に対しても同じ原則が働くことを意味します。その方が隠し子であったり、再相続が起きてしまったりした場合も分け隔てなく遺産分割協議の場に迎え入れてください。

誰か1人でも合意がない状態で作られた遺産分割協議書は覆されるので念入りに相続人調査をしてください。

相続人調査は弁護士に依頼することができる

相続人調査は家族が多くて複雑なほど面倒くさくなります。いくら戸籍を取り寄せるだけといっても地方自治体に足を運ぶのは疲れるし、スケジュールの観点で電話と郵送を駆使するのも労力となります。

そんな時は相続人調査を丸ごと弁護士にお願いしてしまいましょう。

弁護士は依頼者の代理人となれる

弁護士は依頼者の代理人となれます。そのため難しい法的紛争や裁判では他の士業よりも弁護士が優位性を持ちます。相続に関わる難しい手続きを弁護士にお願いできる点は心強く、法的なミスを減らすためにも有益です。

もちろん戸籍謄本の取り寄せに関しても代行してもらうことが可能です。弁護士に依頼すれば手続きが早く戸籍の取り寄せを終わらせたい期日に合わせたスケジューリングも考えてくれます。

相続人への事情説明が楽になる

相続についての条文は難しく、相続人であるという事実を伝えて理解してもらうだけでも一苦労という場合があります。そのような時も法律のプロである弁護士が事情を説明することでコミュニケーションロスを減らすことが可能です。

相続には難しい手続きがいっぱい

相続人調査が終わったら遺産分割協議の作成、相続登記、相続税の申告といった手続きが待っています。せっかく戸籍調査をプロにお願いするなら相続すべてについて瑕疵がないかチェックしてもらうことがおすすめです。

相続人について調査して明らかになったことは相続関係説明図に反映します。相続放棄を希望する場合は3ヶ月の期限しかないこと、相続放棄の要件が厳しいことから弁護士の力が必要です。

法定相続情報証明制度で今後の手続きが楽になる

戸籍の取り寄せは相続人調査の他に預金の払い戻しや相続登記に必要です。その度に戸籍の束を提出するのが面倒だという問題を解決すべく平成29年から法定相続情報証明制度が始まりました。

これは戸籍謄本を法務局に持っていくと1枚の法定相続情報一覧図にまとめることができます。そして、必要に応じて法務局で発行すれば戸籍謄本の代わりに使えます。

ただし最初に戸籍の取り寄せが必要な点だけはご注意ください。

ワンポイントアドバイス
戸籍の取り寄せは意外と時間がかかるので、弁護士などに代行してもらうと良いです。弁護士なら戸籍の取り忘れがないし必要な戸籍の種類を間違えるリスクも限りなく低いです。相続人調査の他にも不安があれば随時相談が可能です。

相続人調査で不安な点がある時はすぐに弁護士へ相談を

家族が多い、疎遠な家族がいる、被相続人の過去が不明瞭だ、このような要素があると相続人調査が面倒になりがちです。

相続人の確定は被相続人の財産を分割あるいは処分するときの根拠となるので曖昧にしないようご注意ください。何よりも遺産分割協議にケチがつくことは相続人全ての不利益です。

相続人調査で不安がある時はすぐ弁護士へ相談しましょう。経験豊富な弁護士なら不測の事態にもしっかり対応してくれます。

遺産相続は弁護士に相談を
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
  • 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
  • 遺産分割協議で話がまとまらない
  • 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
  • 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
  • 相続について、どうしていいのか分からない
上記に当てはまるなら弁護士に相談