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愛人や内縁の妻、隠し子は相続人になる?相続させる・させない方法

この記事で分かること

  • 愛人と内縁の妻は相続人になれないが、遺産を手にする途はある。
  • 隠し子は認知があれば相続人になれるし、認知がなくても遺産を手にする途がある。
  • 認知のある隠し子の相続を阻止することはできないが、相続阻止と同じ結果を得られる途がある。
  • 愛人、内縁の妻、隠し子が絡む相続で行き詰まったら、弁護士に相談することが解決への第一歩である。

愛人、内縁の妻、隠し子が絡む相続では、彼らは相続人かという法律問題が生じます。憎悪相打つ当事者心情を治めて、いかに円満な解決を図るかも重要です。こうした相続では、法律知識はもちろん、当事者の心情に配慮した紛争解決が大切です。こうした相続に直面したら、法律と紛争解決の専門家である弁護士に相談しましょう。

愛人、内縁の妻、隠し子がいる場合、相続はどうなる?

愛人、内縁の妻、隠し子といえば、芸能人など有名人のゴシップ記事が思い浮かびます。有名人でない一般の人についても、時折、耳にすることばでもあります。

巷では興味本位に語られることばですが、愛人、内縁の妻、隠し子が相続権を持つかどうかとなると、興味本位ではすまされない問題となります。

この記事では、愛人、内縁の妻、隠し子が相続人になれるかどうかの問題を中心に、それぞれの法律的な意味合いに光を当て、解説していきます。

ワンポイントアドバイス
愛人、内縁の妻、隠し子の相続が問題となる場合、愛人・内縁の妻・隠し子と、本妻およびその子供との間で、憎悪の衝突が必ずあります。そこでは、法律論は勿論のこと、両者の憎悪渦巻く感情の対立にも配慮した解決が必要となります。愛人・内縁の妻・隠し子として相続問題の当事者になったら、できる限り冷静な対応を心がけましょう。そして、対応に困ったら、まず弁護士に相談しましょう。

愛人、内縁の妻、隠し子とは?定義と法律的な位置づけ

愛人、内縁の妻、隠し子が相続人になれるかどうかを考える前に、それぞれの法律的な定義と位置づけを明らかにしておきましょう。

愛人とは

「愛人」とは、歌謡曲の題名などにもよく使われることばですが、その法律的な意味とは、どのようなものなのでしょうか。

既婚者に囲われた配偶者以外のパートナー

愛人とは、法律上、「既婚者に囲われた配偶者以外のパートナー」と定義されます。

愛人については、伝統的に、女性が愛人になる形が一般的でした。しかし近年、同性愛者(同性を愛する人)、両性愛者(同性と異性を愛する人)、トランスジェンダー(身体の性と自分が思う性とが一致しない人)といった性的少数者(性的マイノリティー)の存在がクローズアップされ、社会的に受け容れられつつあるのに伴い、男性が愛人になるケースも現れています。

そこで、愛人の定義についても、「既婚男性に囲われた女性」ではなく、「既婚者に囲われた配偶者以外のパートナー」へと変わってきました。ちなみに、ここにいう「囲う」とは、生活費の面倒を見るなどの経済的援助をしながら、性的関係を続ける状態をいいます。

内縁の妻とは

「内縁の妻」は、略して「内妻」などとも呼ばれますが、その法律的な意味合いは、どのようなものなのでしょうか。

届出をしない事実上の夫婦の妻

内縁の妻とは、法律上、「届出をしない事実上の夫婦の妻」と定義されます。

内縁とは、男女が法律上の夫婦と同様の共同生活をしていながら、婚姻届をしていないために、法律上は夫婦と認められない男女の関係をいいます。

愛人と内縁の妻の違いは「婚姻意思の有無」

巷では、「愛人」と「内縁の妻」を混同して使われることが多いのが実状です。しかし、両者の法律的な意味は、異なります。

その違いは、婚姻意思の有無にあります。「婚姻意思」とは、最高裁判所の判例によれば、「夫婦として共同生活を営もうとする意思」と定義されています。

最高裁判所の判例によれば、内縁関係とは「婚姻に準ずる関係」と定義されています。これは、内縁関係が、婚姻意思を伴うものであることを示したものといえます。

内縁の妻には、婚姻意思があるのに対し、愛人には、婚姻意思はありません。この点が、両者の違いです。

隠し子とは

「隠し子」も、芸能人などのゴシップ記事によく見かけることばですが、その法律的な意味はどのようなものなのでしょうか。

婚姻外の男女間に生まれた子供(非嫡出子)

「隠し子」とは、法律上、「婚姻外の男女間に生まれた子供」と定義されます。民法の条文では「嫡出でない子」と表現され、一般的には「非嫡出子」と略称されます。

かつて、婚姻外に子供を設けることは社会的に恥ずべき行為として、子供の存在を社会に知られないように隠してきたことから、「隠し子」ということばが生まれたといわれます。

ワンポイントアドバイス
内縁の妻に対しては、法律により、健康保険などの社会保障、労災補償のひとつである遺族補償などの面で、法律上の妻と同等の権利が認められています。こうした点において、内縁の妻と愛人の区別が重要となります。内縁の妻か愛人かという自分の立場に迷ったら、まず弁護士に相談しましょう。

愛人・内縁の妻は法定相続人にはならない

愛人関係の相手、内縁の夫がそれぞれ亡くなった場合、愛人と内縁の妻は、愛人関係の相手や内縁の夫の相続人となることができるのでしょうか。

法定相続人になるには、法律上の婚姻関係が必要

愛人と内縁の妻は、愛人関係の相手や内縁の夫の法定相続人となることはできません。以下、その理由を説明します。

配偶者相続権の根拠は、遺産形成への協力

法律が、故人(被相続人)の配偶者を法定相続人とした理由は、次のとおりです。夫婦は互いに協力し扶助する義務があります。

この義務の下で、夫婦は互いの財産形成についても協力し合います。夫婦の一方が財産を残して亡くなった場合、残された財産(遺産)は、本人の努力はもちろん、生存配偶者の協力もあって、築かれたものと考えられます。こうした協力の見返りとして、配偶者は相続権を手にし、法定相続人とされるわけです。

愛人には、遺産形成への協力はない

愛人とその相手の間には、互いに協力扶助の義務はなく、相手が愛人を経済的に援助する関係があるだけです。相手の財産形成に愛人が協力することはなく、相手の遺産について、愛人が見返りを求める根拠はありません。従って、愛人は、相手の法定相続人とは認められないことになります。

内縁の妻には、遺産形成への協力が認められる

最高裁判所の判例(昭和33年4月11日最高裁判決)が示すように、内縁とは婚姻に準ずる関係です。内縁の夫婦には、法律上の夫婦同様、互いに協力し扶助する義務があります(昭和43年12月10日東京地裁判決)。内縁の夫の財産形成は、内縁の妻の協力もあってのものと考えることができます。

内縁の妻は法定相続人とは認められない

内縁の夫の財産形成に対する内縁の妻の協力があっても、内縁の妻を法定相続人と認めることはできません(昭和30年5月18日仙台家裁審判)。理由は、2つあります。

ひとつは、内縁の妻を法定相続人と認めた場合、内縁の妻が遺産分割に参加するためには、被相続人と内縁の妻とが内縁関係にあったことを証明しなければなりません。過去何年、何十年にわたる生活の実態を証明するには、多くの時間を費やします。その分、遺産分割の手続が遅れ、他の相続人が困ります。

もうひとつは、内縁関係の有無は、誰もが一目で判断できる形式的な基準でなく、夫婦と同視できる共同生活の実態という実質的な基準によって判断されます。こうした実質的な基準は、誰もが一目で判断できる基準ではありません。他の相続人にとって、内縁の妻と称する者が法定相続人になるかどうかがはっきりしないまま、遺産分割に臨まざるを得ない状況に追い込まれることは、先行きが見えず、とても迷惑な話です。

法定相続人となることのできる配偶者は、婚姻届およびそれに基づく戸籍への記載という、形式的で、誰もが一目で判断できる明確な基準を満たした者、つまり法律上の婚姻関係にある者に限られます。

愛人・内縁の妻に遺産相続させるには?

愛人や内縁の妻が法定相続人とは認められなくても、被相続人にとっては、生前に尽くしてくれたことへのお礼として、自分の遺産を少しでも与えたいと思うことがあるでしょう。愛人や内縁の妻からしても、被相続人に生前尽くしてきたことへの見返りとして、いささかでも遺産をもらいたいと思うこともあるでしょう。愛人や内縁の妻が、法定相続人以外の立場で、被相続人の遺産をもらう方法はないのでしょうか。

現行法上、愛人や内縁の妻が、法定相続人以外の立場で、被相続人の遺産をもらう方法として、次の2つが考えられます。

特別縁故者になる

ひとつは、特別縁故者になる方法です。特別縁故者の制度とは、財産を残して亡くなった人について、法定相続人がいなくて、遺言で遺産をもらう人(受遺者)もいない場合(相続人の不存在)、故人と特別の縁故があった人に、遺産の全部または一部を与える制度です。相続人は不存在なので、相続ではなく、遺産の分与です。

相続人不存在の場合でも、故人と特別の縁故のあった人に遺産を与えることが、故人の遺志にかなうものと法律は考えたわけです。

相続人が一人でもいれば、特別縁故者にはなれない

法定相続人か受遺者が一人でもいれば、その人が遺産を相続することになるので、特別縁故者の制度が利用されることはありません。従って、愛人も内縁の妻も、特別縁故者になることはできません。

相続人が一人もいなけいれば、特別縁故者になる途がある

法定相続人も受遺者もいない場合(相続人不存在の場合)、故人と特別の縁故があった者は、家庭裁判所に対して、自分に遺産の全部または一部を与えるよう求めることができます。

具体的には、家庭裁判所に対して、特別縁故者に対する相続財産分与の審判を申し立てます。家庭裁判所は、申立てに対して、申立てを却下する審判、または相続財産の全部もしくは一部の分与を認める審判のいずれかを行います。

申立てのできる人は、故人と生計を共にしていた人、故人の療養看護に尽くした人、その他にこの2つに準ずる程度に密接な縁故関係のあった人です。

内縁の妻については、「故人と生計を共にしていた人」として、特別縁故者として認められるのが、裁判例の大勢です(昭和38年10月7日東京家裁審判、昭和38年12月9日千葉家裁審判など)。

愛人についての裁判例は、今のところ見当たりません。もしも、愛人として密接な縁故関係を理由に、特別縁故者への相続財産分与の審判を申し立てた場合、故人と愛人との具体的な縁故関係を基に、愛人に相続財産を分与することが故人の遺志にかなうものであるかどうかという基準によって、審判が行われることになるものと思われます。

遺言書で相続させる

もうひとつの方法は、故人の存命中に、遺産の一部を内縁の妻や愛人に与える内容の遺言を書いてもらう方法です(遺贈)。遺贈により遺産を与える相手は、親族か親族以外かを問わず、誰でもよいです。内縁の妻や愛人に遺贈する遺言も有効です。

但し、故人の兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺留分という、遺産について必ずもらえる権利の割合が保障されています。内縁の妻や愛人への遺贈のせいで、法定相続人の遺留分が満たされないときは、足りない分を、遺贈の中から取戻されてしまうことに注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
愛人や内縁の妻が遺贈を受ける場合、法定相続人も交えての遺産分割となります。愛人や内縁の妻は、法定相続人からすれば、不快で面白くない存在です。法律論以前に、感情の戦いの火蓋が切られるのが常です。そのような場面になったら、法定相続人からの挑発的言動に乗ることなく、あくまで冷静な対応を貫くことが、遺産分割をスムーズに進めるポイントです。遺産分割における法定相続人への対応に困ったら、まず弁護士に相談しましょう。

隠し子は、実の父の法定相続人になれる?

実の父が財産を残して亡くなった場合、隠し子は、父の法定相続人として、遺産をもらうことができるのでしょうか。

隠し子に相続権は与えられない

婚姻中の男女の間に生まれた子供(嫡出子)は、生まれると同時に、父との間で法律上の親子関係が発生し、将来における父の法定相続人としての資格を手にします。そして、実際に父が亡くなると同時に、その法定相続人となります。

これに対して、婚姻外の男女間に生まれた子供である隠し子は、実の父が亡くなると同時に、当然には、その法定相続人とはならず、相続権も与えられません。嫡出子と異なり、生まれると同時に、実の父との間で法律上の親子関係が発生しないからです。

隠し子が実父の法定相続人になる方法

隠し子と実の父との間には、法律上の父子関係はないとはいえ、生物学上の父子関係はあります。隠し子は、実の父の精子から生まれたことに間違いないからです。

この生物学上の父子関係を、法律上の父子関係へと高める方法はないのでしょうか。

実父の「認知」で法律上の父子関係を成立させる

法律は、生物学上の父子関係を法律上の父子関係へと高める手続を定めました。「認知」という手続です。

認知とは、実の父が、隠し子を自分の子供であると認める意思を表明することをいいます。認知には、任意認知と強制認知とがあります。

任意認知とは、実の父が自発的に認知をすることをいい、市区町村役場への届出によって認知の効果が生じます。これに対し、強制認知とは、実の父が自発的に任意認知をしない場合に、隠し子が裁判を起こし、判決の確定により、実の父が認知したのと同じ効果を生じさせることをいいます。

任意認知の届出または強制認知の判決確定によって、法律上の父子関係が成立します。実の父が亡くなると同時に、隠し子は実の父の法定相続人となります。

隠し子の法定相続分

実の父の認知によって法律上の父子関係が成立し、実の父の死去によって、その法定相続人となった隠し子ですが、法定相続分はどうなるのでしょうか。

隠し子の法定相続分は、嫡出子の法定相続分と同じです。例を挙げて、解説します。

被相続人A、妻B、嫡出子ED、愛人C、隠し子Fとします。
法定相続人は、妻Bと子供DEFです。
Bの相続分は、2分の1です。
DEFの相続分は、3人合わせて2分の1です。
DEFそれぞれの相続分は均等ですので、2分の1×3分の1=6分の1がDEFそれぞれの相続分です。
これを図に表すと、次のようになります。

平成25年までの隠し子の法定相続分

平成25年の民法改正までは、隠し子(非嫡出子)の法定相続分は、嫡出子の2分の1でした。この規定については、憲法が定める法の下の平等の原理に反するとの意見が強かったところ、平成25年、この規定は法の下の平等の原理に反するとの最高裁判所の判断が示されました。これを受けて国会は、嫡出子と非嫡出子の法定相続分が等しくなるように民法を改正しました。

隠し子に遺産を与える遺言は有効

実の父は、遺言によって、隠し子に遺産を与えることもできます(遺贈)。

隠し子への遺贈は、実の父が隠し子を認知した場合はもちろん、認知していない場合も、これを行うことができます。遺贈により遺産を与える相手は、法定相続人かどうかを問わず、誰でもよいからです(遺贈の自由)。

実の父の兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺産について必ずもらえる権利の割合が保障されています。これを遺留分といいます。場合によっては、隠し子への遺贈によって法定相続人の取り分が減り、遺留分が満たされなくなることがあります。こうした場合、遺留分を持つ法定相続人は、遺留分に足りない分を、遺贈の中から取戻すことができます。遺贈を受けた隠し子として、注意しなければならないことです。

ワンポイントアドバイス
隠し子が、法定相続分を手にするには、実の父の認知が必要です。しかし、遺贈を受けるには、実の父の認知は必要ありません。法定相続分か遺贈かで、認知が必要かどうかが違ってきます。一般の人には分かりにくい問題です。相続と認知の関係に迷ったら、弁護士に相談しましょう。

認知された隠し子を遺産分割協議に参加させるには

実の父が隠し子を認知することにより、両者は法律上の父子となり、隠し子は実の父の法定相続人となります。実の父の遺産分割協議には、隠し子も参加することが必要です。法定相続人および遺贈を受けた人(受遺者)が一人でも欠けた状態でなされた遺産分割協議は、無効となってしまうからです。

隠し子が遺産分割協議に参加するには、2つのパターンが考えられます。隠し子が成年の場合と未成年の場合の2つです。

隠し子が成年なら本人が参加

隠し子が年齢20歳以上の成年であれば、隠し子自身が遺産分割協議に参加します。遺産分割協議は多数当事者間の契約であり、20歳以上であれば、独りで契約をする資格(行為能力)を持つからです。

隠し子が未成年なら法定代理人(母)が参加

隠し子が年齢20歳未満の未成年であれば、隠し子の母が、遺産分割協議に参加します。未成年者は独りで契約する資格(行為能力)がなく、隠し子(非嫡出子)の親権者である母が、隠し子の法定代理人として遺産分割協議に参加して、隠し子の法定相続分の実現を手助けすることになるからです。

ワンポイントアドバイス
成年の隠し子は、独りで遺産分割協議に参加しなければなりません。隠し子が、社会経験もあって、本妻や嫡出子たちともある程度対等に渡り合えるくらいの年齢であれば問題ありません。しかし、20代そこそこの若年者の場合、社会経験も乏しく、独りで遺産分割協議に参加して本妻や嫡出子たちと対等に渡り合えるだけの力量がないのが通常です。下手をすれば、相手のペースに乗せられて、不利な遺産分割協議書にサインさせられる羽目にもなりかねません。そんな時こそ、法律の専門家である弁護士に相談し、遺産分割協議の場に同行してもらいましょう。

隠し子に相続させないことはできる?

隠し子が実の父によって認知され、法律上の父子関係がある以上、隠し子は法定相続人として、実の父の遺産をもらうことができます。

しかし、隠し子が故人と愛人の間にできた子供であれば、故人の本妻としては、隠し子が自分の夫の遺産をもらうことを何とか阻止したいと思うのが普通でしょう。

また、隠し子が故人と内縁の妻との間にできた子供であれば、たとえば故人の前妻の子供にすれば、隠し子が自分の父親の遺産を持って行くことを面白くないと思うことも当然でしょう。

本妻および前妻の子供の腹が癒えるように、隠し子に実の父の遺産を相続させないようにする方法はあるのでしょうか。

「認知された隠し子に相続させない」は、原則できない

現在の法律では、認知された隠し子に実の父の遺産を相続させないようにする方法はなく、実の父の遺産を相続させないことは、原則としてできません。隠し子は法定相続人として、実の父の遺産をもらうだけの歴とした資格があるからです。また、遺言により遺産を隠し子に与えることは、遺産の持ち主であった実の父の自由だからです(遺贈の自由)。

認知された隠し子に相続させない方法

本妻および前妻の子供などからすれば、実の父の遺産を隠し子に相続させない正式な方法がないのであれば、それに代わり得る方法は何かないかと考えたくなるものでしょう。

ここでは、そうした代替手段となる可能性のあるものを、5つ紹介します。

遺贈放棄の働きかけ

被相続人の遺言により遺産を与えられた者(受遺者)は、遺言どおり遺産をもらうこともできれば、もらうことを拒むこと(遺贈の放棄)もできます。

隠し子が実の父から遺贈を受けた場合、本妻たちは、隠し子に対して、何かしらの理由を付けて、遺贈放棄をするよう働きかけることができます。隠し子がこれに応じて、遺贈放棄をすれば、隠し子は実の父の遺産を相続しないのと同じになり、本妻たちの目論見どおりとなります。

相続放棄の働きかけ

法定相続人は、被相続人の死後、相続人となることを拒むことができます(相続放棄)。マイナス遺産の方が多い場合などに、よく行われます。

隠し子が法定相続人となった場合、本妻たちは、隠し子に対して、何かしらの理由を付けて、相続放棄をするよう働きかけることができます。隠し子がこれに応じて、相続放棄をすれば、隠し子は初めから相続人ではなかったことになり、本妻たちの目論見どおりになります。

遺産分割で取得ゼロの働きかけ

法定相続人または包括受遺者(遺産の全部または分数的割合を遺贈された人)が一同に会して、遺産分割協議が行われます。事情によっては、分割参加者のうちのある人の取得分をゼロとする分割協議も、本人が承諾すれば可能です。

隠し子が遺産分割協議に参加する場合、本妻たちは、隠し子に対して、何かしらの理由を付けて、取得分をゼロにするよう働きかけることができます。隠し子がこれに応じて、取得分をゼロとすることに承諾すれば、隠し子は実の父の遺産を相続しないのと同じになり、本妻たちの目論見どおりになります。

相続分譲渡の働きかけ

一人の被相続人についての複数の相続人(共同相続人)の一人は、自分の相続分を他の共同相続人、または第三者に譲り渡すことができます。他の共同相続人に譲渡された相続分は、譲り受けた共同相続人のものになります。第三者に譲渡された相続分は、譲渡した相続人以外の共同相続人が、その価額と費用を支払って、再び譲り受けることができます(相続分の取戻権)。

本妻たちは、隠し子に対して、何かしらの理由を付けて、相続分を譲渡するよう働きかけることができます。隠し子がこれに応じて、相続分を譲渡することに承諾すれば、隠し子は実の父の遺産を相続しないのと同じになり、本妻たちの目論見どおりになります。

認知無効確認調停

すでになされた認知が事実に反する、つまり認知の当事者間に親子関係がないと考えられるとき、利害関係人は認知無効確認の調停を起こすことができます。

本妻たちは、隠し子が実の父の法律上の子供であることを理由に法定相続人に加わることで、遺産分割による自分たちの取り分が減らされます。この意味で、本妻たちは、「利害関係人」として、認知無効確認の調停を起こすことができます。

認知無効確認調停において合意に相当する審判が確定した場合、または調停から裁判に移行した後に認知無効確認判決が確定した場合、実の父が隠し子に対して行った認知は無効となり、隠し子は実の父の法律上の子供ではなくなる結果、隠し子は実の父の遺産を相続することができなくなります。

働きかけ拒否の場合および詐欺・強迫による働きかけの場合

遺贈放棄など4つの働きかけを隠し子が拒否した場合、もはや隠し子に相続させないための手段は尽きた形になります。

遺贈放棄など4つの働きかけが、隠し子を騙したり脅したりする方法で行われた場合、隠し子は、自分が行った遺贈放棄などは、詐欺または強迫による意思表示であるとして、これを取り消すことができます。

ワンポイントアドバイス
認知された隠し子が、未成年であれば、親権者である母が盾となって、本妻たちからの遺贈放棄などの働きかけに対抗してもらえます。しかし、20歳そこそこの成年の場合、自分独りで本妻たちからの働きかけに対応しなければならず、働きかけに圧倒されて、思わず遺贈放棄などの意思表示をしてしまうことが十分に予想されます。そんな時は、法律の専門家である弁護士に味方に付いてもらい、本妻たちへの対応をしてもらい、不本意な遺贈放棄などをしないようにしましょう。

愛人、内縁の妻、隠し子を巡る相続トラブルは弁護士に相談を

相続問題は、ただでさえ骨肉相争う、解決の難しい問題です。そこに、被相続人の愛人、内縁の妻、隠し子が加わると、本妻や嫡出子たちとの間で、互いの憎悪が相まみえる状況に陥り、解決はさらに難しくなります。

愛人、内縁の妻、隠し子に相続権があるかどうかという法律問題が生まれます。当事者間での感情の激しい衝突も生じます。

弁護士が関わることで、法律問題への適切な対応が可能となります。弁護士が、当事者間のワンクッション的な立場で関わることで、当事者のエキサイトした感情のクールダウンも期待できます。

愛人、内縁の妻、隠し子を巡る相続トラブルに直面したら、まず弁護士に相談しましょう。

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