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不動産売買契約書、作成時のポイント
この記事で分かること
- 不動産売買契約書はトラブルを回避するために重要
- 売買契約書は契約の数日前には手に入れ、細部までよく確認する
- 自分で確認する自信がない場合には弁護士に相談するのもおすすめ
不動産は重要な財産で代金も高価なため、不動産売買ではトラブルが発生する可能性が高くなります。不動産売買契約書はトラブルを回避するために重要です。この記事では、不動産売買契約書を作成する際の心がまえ、契約書作成にあたってのチェックポイント、および不動産売買でありがちなトラブル事例について解説します。
不動産売買契約書を作成する際の心がまえ
最初に、不動産売買契約書を作成する際に必要となる心がまえについて見ていきましょう。
不動産売買契約書はトラブル回避のために重要
不動産売買契約書は、トラブルを回避するために重要です。不動産は、重要な財産であるうえに資産価値が高いため、売買代金は高額になるのが一般的です。そのために、契約がうまく行かなかった場合にはトラブルに発展する可能性も高いといえます。
法的に隙のない売買契約書を作成することにより、トラブルを未然に防ぐことができます。不動産売買契約書は「単に書類上のこと」などと安易に考えず、十分な検討と確認のうえで作成しましょう。
遅くとも数日前には契約書を入手する
住宅などを売買する際には一般に、不動産仲介業者が売買契約書を作成します。契約の当日に契約書を渡され、仲介業者が読み上げながら内容を確認する、などということも多いのではないでしょうか。
しかし、契約当日の1時間ほどのあいだに契約書の内容を細かく確認することは容易ではありません。ましてや、法律やトラブルの可能性についての知識を備えていない人にとっては、契約当日での契約書の確認はほとんど不可能といえるかもしれません。
したがって、不動産売買契約書は、遅くとも契約の数日前には入手しましょう。時間をかけて内容を確認し、もし不明点や疑問点があるならば、契約の当日までにそれを解消しておくことが大切です。
不動産売買契約書の作成にあたってのチェックポイント
不動産売買契約書の作成に当たり、チェックすべきポイントについて見ていきましょう。
1. 物件の表示
売買予定の物件の表示を確認しましょう。物件の表示は、登記記録をそのまま記載するのが一般的です。登記記録と見比べながら、誤りがないかを確認します。
2. 売買代金や手付金などの金額と支払日
売買代金や手付金などの金額と支払期日を確認します。契約の内容によって中間金が支払われることもあります。期日までに支払いがされない場合は契約違反となり、違約金が発生することもあります。
手付金の金額は、売買代金の20%までの範囲で設定するのが一般的です。売主の信用に不安がある場合には、あまり高額とならないように注意しましょう。
一般に、手付金が少額であれば、買主が手付解除をする際の負担は小さくなりますが、売主が手付解除することも容易になります。手付金が多額なら、手付解除の際の買主の負担は大きくなるものの、売主が手付解除することも難しくなります。
3. 土地面積と売買代金の確定法
土地の売買代金は、登記記録上の面積で確定させる方法と、実測した面積によって確定させる方法とがあります。土地の実測は、引渡しまでのあいだに売主が行なうとすることも多くあり、登記記録の面積と実測面積が食い違った場合に、その差額をどのように精算するかを契約書に記載します。
4. 所有権移転と引渡しの期日
売主による所有権移転および引渡しの期日を確認します。この期日は、買主による売買代金の支払いと同時とすることが一般的です。
5. 付帯設備
中古住宅の場合には、照明やエアコン、給湯器などの設備、門や庭木、庭石などについて、何を引渡すのか、故障しているものはないかについて確認します。何を引渡すのか、撤去するのかについて売主と買主が十分に調整を行わないと、あとでトラブルになることもあります。
6. 抵当権などの抹消の明記
物件に、抵当権や地役権、地上権などが設定されている場合には、引渡しまでに売主がそれらを抹消し、完全な所有権を買主が取得できる旨が明記されていることを確認します。
7. 公租公課などの精算方法
固定資産税や都市計画税、マンションなどの場合なら管理費や駐車場料金などを、売主と買主とのあいだでどのように精算するのかを確認します。負担の区分は、引渡し前日までは売主、当日以降は買主とし、日割で計算されることが一般的です。
8. 手付解除の取決め
手付解除の取決めについて確認します。手付解除とは、契約の解除を、買主は手付金を放棄することにより、売主は手付金の倍返しをすることにより認めるとするものです。売主と買主の合意があれば、手付解除を認めない、あるいは手付解除の期限を設けるなどのことも可能です。
9. 危険負担
引渡しまでのあいだに、天災など売主にも買主にも責任がない理由により物件が損害を受けた場合に、その損害の負担(危険負担)を売主と買主どちらがするのかを確認します。一般的には、売主が修復したうえで物件を引渡すとし、物件の修復が困難な場合には契約を解除できると取決めがされます。
10. 契約違反による解除
契約違反により契約を解除する際の取決めを確認します。売買代金の20%までの違約金を契約に違反した側が払うと決めるのが一般的です。
11. 反社会的勢力の排除
反社会的勢力を排除するため、「売主および買主が暴力団など反社会的勢力ではないこと」「物件を反社会的勢力の活動拠点にしないこと」を確約する条項が設けられていることを確認します。この条項に違反した場合には、契約を解除することができます。
12. ローン特約
買主が住宅ローンを利用して物件を購入する場合、金融機関から融資が受けられなかった場合の取決めを確認します。契約を白紙にもどし、売主が受取った手付金は無利息で買主に返還する、とすることが一般的です。
13. 瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、買主が通常の注意を払っても発見できなかった瑕疵(欠陥)について、売主が責任を追うことを定める取決めです。引渡し後の期間を定め、その期間内に瑕疵が発見された場合は売主が損害を賠償し、瑕疵が重大である場合は契約を解除できます。
不動産売買契約書でありがちなトラブル事例
最後に、不動産売買契約書でありがちなトラブル事例について見ていきましょう。
売買契約の解除トラブル
不動産売買で起こりがちなトラブルとして、「契約の解除」についてのものが多くあります。
不動産売買契約の解除は、買主から申出た場合には手付金を放棄することにより、売主から申出た場合には手付金の倍返しをすることによりできると、民法557条により定められています。ただし、契約の解除はいつでもできるわけではありません。民法557条は、契約の解除ができる期日を「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは」と定めています。
ただ、「契約の履行に着手」が具体的に何を指すのか必ずしも明確でないために、契約の履行に着手したかどうかをめぐり裁判で争われることもあります。契約の解除トラブルを未然に防ぐためには、手付金による解除を認める期日を日付で特定しておくことが必要でしょう。
瑕疵担保責任をめぐるトラブル
不動産売買において、瑕疵担保責任をめぐるトラブルも多く発生しています。瑕疵担保責任を売主に請求するための期間は、民法においては「1年以内」と定められています。ただし、この期間は、売主と買主が合意のうえ契約書において定めることができ、「2ヶ月〜3ヶ月」とするのが一般的です。
ところで、この瑕疵担保責任は、不動産売買契約書に特約として「隠れた瑕疵があっても売主は一切の責任を負わない」とすることにより排除することができます。これでは買主にとって非常に不利となりますので、瑕疵担保責任を排除する特約が契約書に存在しないか、よく確認しなくてはなりません。
不動産売買契約書のチェックは弁護士に相談しよう
不動産売買契約書の作成は、不動産仲介業者におまかせしてしまうことも多いでしょう。多くの場合、それでもトラブルは起こりませんが、万が一の場合には深刻な事態となることもあります。契約書を自分でチェックする自信がない場合には、法律の高度な知識を持つ弁護士に相談するのが良いでしょう。
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