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瑕疵担保責任とは~期間や免責条件は?売主買主のための基礎知識

この記事で分かること

  • 瑕疵担保責任は隠れた瑕疵に対して売主が買主に対して負う責任
  • 追及できる期間はまちまちだが、隠れた瑕疵を買主が発見してから一年以内であれば請求できる
  • 瑕疵担保責任免責の物件では、隠れた瑕疵がないか事前にしっかりチェックしよう

不動産物件の売買は多額の金銭がやり取りされる契約ですので、対象となる物件に契約締結時点ではわからなかった瑕疵(隠れた瑕疵)があった場合の責任の所在は明らかにしておく必要があります。新築物件などではそういった瑕疵に対して売主が責任を負う瑕疵担保責任がありますが、築年数が古い中古物件などでは瑕疵担保責任免責となっている場合もあります。隠れた瑕疵は、トラブルに発展しやすい部分でもありますので、瑕疵担保責任の期間や免責については契約を締結する前にしっかりと確認しておくことが大切です。

瑕疵担保責任とは?

不動産取引において、売買の対象となる物件がどういう状態にあるのかということは、契約締結の可否を左右する重要な問題です。

そのため、売主側は既にわかっている物件の瑕疵(欠陥や不具合)については契約を結ぶ前に買主にきちんと告知する義務があります。しかし、売主といえども物件の全ての瑕疵を把握できているわけではないため、中には物件に実際に住んで使用していく中で明らかになる瑕疵もあります。

そういった場合に重要となるのが、瑕疵担保責任です。瑕疵担保責任は物件の隠れた瑕疵に対して売主が負う責任のことを指し、その追及期間や免責となるかどうかなどは最初の契約条件によって異なります。

瑕疵担保責任が問われるケース

瑕疵担保責任の追及期間や免責となる場合についての解説に進む前に、まずは瑕疵担保責任が問われるケースについてみていきましょう。

瑕疵担保責任は、何も物件の全ての瑕疵について問われるわけではありません。瑕疵があったとしても重要事項説明でそのことをしっかりと買主に説明していた場合には、その瑕疵は瑕疵担保責任の対象にはなりません。

また、一目で見てわかるほどの破損などに対しても、買主はそれを承知の上で契約を結んだとみなされるため瑕疵担保責任を負う必要はないでしょう。これらは、契約に際して重要事項や物件の状態をちゃんと確認しなかった買主側の落ち度ということになります。

つまり、瑕疵担保責任が問われるのは、契約前に確認していたとしても通常の注意では気づくことが難しい欠陥を対象とするのです。具体的には、下記のようなケースが挙げられます。

  • 雨漏りがあった
  • 床下や壁の中の柱などの部分にシロアリ被害があった
  • 建物が微妙に傾いていた
  • 地下に産業廃棄物が埋められていた
  • 給排水管の故障
  • 水回りの腐食

ただし、具体的に何が瑕疵に当たるのかは法律によって定められているわけではありませんので、隠れた瑕疵に当たるかどうかを巡って裁判にまで発展するようなケースもあります。

ワンポイントアドバイス
瑕疵担保責任は、隠れた瑕疵があった場合に売主が買主に対して負う責任です。不動産を購入する際には、売主から事前に告知された以外の瑕疵がないかしっかり確認することが大切なのはいうまでもありませんが、それでも発見できなかった瑕疵があった場合には、瑕疵担保責任がセーフティーネットとなりますので、売主や不動産会社などに報告して、修繕等の処置をしてもらいましょう。

瑕疵担保責任の期間

瑕疵担保責任を追及できる期間は法律上は特に定められていませんが、もしいつまでも瑕疵責任を売主が負うことになれば、売主にとってあまりに不利益が大きくなってしまいます。

そこで実際は、不動産売買契約書において瑕疵担保責任を負う期間が定められています。その期間は物件の新築か中古か、売主は個人か不動産業者かなどによって異なりますが、いずれの場合も買主は瑕疵を知った日から1年以内に瑕疵担保責任の追及を行わなければなりません。

中古物件の場合

中古物件の場合は、築年数が長く経過している場合には瑕疵があることが常識的に予測されるため、売主の瑕疵担保責任が新築物件よりも短く、もしくは免除となっている場合もあります。

売主が個人の場合

物件の売主が個人の場合は、瑕疵担保責任を負うかどうかは売主の判断に委ねられますので、瑕疵担保責任が免責となっている場合が多いです。

売主が不動産業者の場合

売主が不動産業者の場合は、個人の場合と違って瑕疵担保責任を免責とすることはできません。民法によって、引き渡し日から2年以上は瑕疵担保責任を負うことが義務付けられていますので、通常は不動産業者を介した中古物件の売買を行う場合、瑕疵担保責任の追及期間は2年となります。

新築物件の場合

新築物件の場合は、中古物件と違って通常瑕疵はないと考えられますので、瑕疵担保責任を追及できる期間は中古物件よりもずっと長くなります。

平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって、全ての新築住宅の売主は引き渡し日から10年間、瑕疵担保責任を負うことが義務付けられました。ただし、この法律の適用を受けるのは法律の施行日以降に締結された新築物件の契約ですので、さかのぼっての保証は受けることができません。

ワンポイントアドバイス
瑕疵担保責任の期間は、新築か中古か、売主が個人か不動産業者かによって左右されます。特に中古物件を購入する際には、瑕疵担保責任に期間や免責となっているかを契約の締結前にしっかり確認し、納得した上で契約に進むようにしましょう。

瑕疵担保責任免責とは

前項でも触れましたが、瑕疵担保責任は個人が売主の中古物件の場合には特約で免責にすることも可能です。瑕疵担保責任を免責とすると、引き渡し後に瑕疵が見つかったとしてもそれは買主の責任になるということです。しかしもちろん、売主側に瑕疵があることを知っていてそれを隠していた場合にはその限りではありません。

瑕疵担保責任免責の注意点

築年数がある程度経っている中古物件ですと、瑕疵がある程度想定されると買主側も理解していることから、瑕疵担保責任免責となっている場合も少なくはありません。しかし、建物を解体したら地中にコンクリートガラや土壌汚染などが見つかり、最悪の場合数百万から数千万もの費用を買主が負担することになってしまうようなケースもあり得ます。

もちろん売主がその瑕疵について知っていたとなればその責任は売主にありますが、売主がそのことを知っていたと証明することは容易ではないため、泣き寝入りというケースが多くなります。そのため、買主側は購入前にとにかくしっかりと物件に瑕疵がないかをチェックすることが必要となります。

また、もし売主側が同意すれば、瑕疵担保責任を契約時の条件につけてもらうと安心でしょう。たとえ責任の追及期間が2ヶ月や3ヶ月といった短期間であっても、売主側が意図的に隠している瑕疵がないことの証明になりますし、大きな瑕疵であればその期間で十分見つけることができるでしょう。

建物検査の実施

売主側に瑕疵担保責任をつけてもらえば安心とはいっても、築年数が経過した物件ですと売主にとってのリスクが大きいため、なかなか同意してもらえないことが多いでしょう。
そんな時には、買主が自分で建物の瑕疵について事前にしっかりと調べることが次善の策となります。

しかし、見えない床下や壁の中の柱の腐食やシロアリ被害、建物の傾き、土壌汚染などの瑕疵を素人が自分で発見することは非常に難しいと言わざるをえません。特にリフォーム等で内装が綺麗に整えられている場合などでは、素人目には瑕疵があるかどうかの判断はつかなくなってしまいます。

そこで昨今注目をあつめているのが、専門の調査会社による建物検査です。建物検査とは建物の設計や施工に精通した建築士などの専門家が、住宅の劣化や不具合などの状況についての調査を行い、客観的に補修すべき場所などがあるかを検査するものです。

新築時にももちろんこういった専門家による検査は行われますが、中古物件の安心な取引においても有効であることから、購入予定の中古住宅の建物検査を実施するケースが増えてきています。また、建物検査の実施は買主側だけではなく、売主にとっても広告等で「建物検査済み物件」として宣伝できるため、買主の安心につながり売買取引がスムーズに進みやすいといったメリットがあります。

瑕疵担保責任をめぐるトラブルにまきこまれたら弁護士に相談

瑕疵担保責任をめぐるトラブルを防ぐためには、まずは売主も買主も瑕疵担保責任の期間や免責についてしっかりと知識をつけて、取引条件に納得した上で売買契約を締結するというのが第一です。

また、その地域で実績のある信頼できる不動産業者を選ぶ、中古物件の売買時には専門業者による建物検査で客観的な物件の瑕疵を評価してもらうなど、事前に講じられる対策はできるだけとっておくことが望ましいでしょう。しかし、そういったご自身での対策だけではどうしても防ぎきれないトラブルに巻き込まれてしまうこともあり得ます。

不動産取引では多額の金銭のやりとりが伴い、瑕疵に対する修繕なども高額になってしまうことが多く、当事者同士での決着はなかなか難しいケースも多いでしょう。そういった場合には、不動産取引に関するトラブルを扱う弁護士などにまず相談することがオススメです。

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