71,902view
中途解約とは?民法上の不可と言われても契約が解除できるケースを紹介
この記事で分かること
- 一見、中途解約できなさそうな契約でも、途中で解除できるケースは多い
- 民法上、詐欺や脅迫、錯誤があったときには無条件に契約を解除できる
- 特定商取引法上では、頭を冷やして契約を再考できるクーリングオフ期間がある
契約を途中で解除できるケースや具体的な要件は、民法上とその他の法律で異なります。民法では消費者を保護しきれないことも多いため、消費者をより確実に保護すべく特定商取引法や消費者契約法などの特別法が定められています。
中途解約とは?
中途解約とは、文字通り契約を途中で解約することを指します。
消費者は仮に8日間のクーリングオフ過ぎていても基本的に中途解約が可能となっており、その際に理由を説明する義務もありません。
また、中途解約の際に支払いの義務がある解約料についても、法律で上限が決められており過剰な金額を支払う必要もありません。
契約を中途解除できるパターンとは?
お互いの合意のもとに契約が成立したら、契約の目的が達成されるまでお互い誠実に契約内容を履行しなければなりません。
これを「信義誠実の原則」と言います。しかし、なんらかの原因によって成立した契約を途中で解除しなければならない事態が生じることがあります。
契約の解除とは、有効に成立している契約を当事者の一方が破棄する意思表示をすることによって、契約の最初にさかのぼって契約の効果を消滅させることを言います。
契約を解除できるパターンは次の3通りあります。
法定解除
法定解除とは、法律の規定に基づいた解除のことです。相手方がするべきことをしない場合、相当な期間を与えて履行するように言っても履行しなければ解除権が発生します。これが法定解除の典型例です。
約定解除
約定解除とは、契約をする時点で契約の解除条件をあらかじめ決めておき、その条件が適用される事態になった場合に解除権が発生することを言います。一般的に、契約を結ぶ際には契約書に解除条件に関する記載を盛り込んであるため、何かトラブルが発生した時にはその項目を探してみましょう。
合意解除
合意解除とは、いったん成立させた契約を当事者間の合意をもって解除することを指します。契約成立時の意思に関係なく、契約後に「解除という名の契約を新たに結ぶ」と言うこともできるでしょう。
民法上の契約解除も不可ではない!
民法上、契約が解除できるのは詐欺や脅迫の被害に遭った場合や錯誤があった場合です。また、請負契約を結んだ場合でも、ある条件を満たすことにより途中で契約を解除することができます。
錯誤による契約解除が成立する場合
民法上、法律行為の重大な部分に錯誤があった場合は、契約が無効になるとされています。「この製品は○○だから買う」といった動機の部分に錯誤があった場合は無効にならないという考え方もありますが、過去の判例によると購入者が動機を何らかの形で表示していれば動機の錯誤も有効であるとされています。
例:ブランド品の偽物をつかまされるケース
海外有名ブランド品のバッグであるとの表示を信じて買ったのに、あとからバッグが偽物だとわかった。この場合、返金を求めることはできるか。
錯誤による無効を主張可能
バッグの購入者は海外有名ブランド品との表示がなければ買わなかったであろうと予想されるため、重大な錯誤があったと考えられます。購入者はバッグを返品することで、返金を求めることができます。
詐欺被害により契約解除が成立する場合
詐欺とは人をだますことです。ある事業者が、消費者をわざと勘違いさせ、かつ消費者の勘違いによって消費者にある意思表示をさせて契約を結ばせることは無効であるとされています。
例:怪しい投資話に乗ってしまった
「あるファンドに投資すれば、高額なリターンが見込める」と話を持ちかけられて100万円を出資した。最初の2~3回は配当が支払われていたがやがて支払われなくなり、その後投資の話を持ち掛けてきたのが詐欺グループであることがわかった。この場合、出資金の100万円を取り戻すことができるか。
詐欺を主張することにより契約解除できる
相手にだまされて契約をした場合、詐欺による契約の無効を主張することができます。したがって、この場合も詐欺グループが嘘をついて出資金を集めていたことになるので、100万円の返金を要求することが可能です。しかし、受け取っていた配当金は返還する必要があります。
請負契約は中途解約できる場合もある
相手方にある仕事を依頼し、その完成品や結果に対して報酬を支払うことを「請負契約」と言います。一度契約が成立した以上、当事者は一方的に契約を破棄することはできないのが原則ですが、例外的に契約を解除できる場合があります。
例:スーツをオーダーしたが事情が変わったのでキャンセルしたい
スーツのオーダーメイドができるお店で、スーツをオーダーした。しかし、諸事情によりそのスーツが不要になったので、キャンセルすべくお店に連絡をとろうと思っている。この場合、キャンセルすることはできるか。
完成する前なら損害賠償を払って解除
原則、請負契約は一方的に破棄することができません。しかし、仕事が完成する前であれば相手方に損害賠償金を支払うことで契約を解除することが可能です。仕事がまだ準備段階にあった場合でも、準備にかかった手間賃・労賃は相手に支払うべきと考えられています。
債務不履行による契約解除は不可とは限らない
契約を結んだ相手が契約したときに交わした約束を守らないことを、「債務不履行」と言います。債務不履行があった場合、相当の期限を設けてもなお履行がされないときは契約を解除できるとされています。
例:相手が約束したものを引き渡さない
中古車販売店で中古車を購入する契約を結び、整備を済ませて2週間後に納車するとの約束を販売店から取り付けた。しかし、約束の期日になっても相手方は納車しない。問い合わせたところ「あと1週間待ってくれ」と言われたが、1週間経っても納車されないので契約を解除したいと考えている。
期限を決めて、相手に伝える
一度契約を結んだら、当事者は契約内容を履行する義務があります。期日までに相手方が自分のすべきことをしない場合は、期限を決めて催告しましょう。その期限までに契約内容が履行されなければ、契約を一方的に解除することができます。
契約解除を不可にさせない特定商取引法
民法の規定だけでは消費者を保護しきれないケースがあることから、消費者保護に関して特別法がいくつか設けられています。その中のひとつが特定商取引法です。平成16年の特定商取引法改正により、消費者のための「取消権」が創設されました。
クーリングオフ
クーリングオフとは、電話や訪問などの不意打ちのような形で冷静な判断ができないときに結んだ契約について、その後頭を冷やして考え直す期間を消費者に与えることで消費を保護するための制度です。
クーリングオフが適用される取引とは
クーリングオフ制度が適用となるのは、主に訪問販売や勧誘販売などが中心ですが、以下のような取引に適用されます。
- 訪問販売(路上で声をかけて営業所などに連れ込み商品の購入などを迫るキャッチセールスや、電話をかけて目的を告げずに営業所などに誘い出して契約を迫るアポイントメントセールスも含む)
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引(マルチ取引)
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
特定継続的役務では8日を過ぎても中途解約できる
通常、クーリングオフができる期間は8日間が一般的です。しかし、英会話教室・家庭教師・エステサロンなど効果が出るかわからないにもかかわらず長期にわたる契約をしなければならないものについては、8日を過ぎても中途解約ができるようになっています。
特定継続的役務の中途解約
特定継続的役務を行っている事業者と契約をして代金を支払った場合、利用期間や料金総額の条件を満たせば、消費者側から申し出ることによって契約を中途解約することができます。
例:徳的継続的役務を中途解約できる?
英会話を習おうと思い、英会話学校で1年分の授業料48万円を支払った。しかし、通い始めて半年後に遠隔地に転勤することになった。残り半年分の授業料は返してもらえるのか。
解約損料を払えば差額を返金してもらえる
英会話学校の場合、解約損料(サービス利用前は1万5千円、サービス利用後は未利用分の代金か5万円のいずれか少ないほうの金額)を支払えば、未利用分の代金は返金してもらえます。このケースの場合では、
未利用分の代金:48-4×6=24(万円) 解約損料:5万円
24-5=19(万円)
となり、19万円が戻ってくることになります。
マルチ取引(ネットワークビジネス)を中途解約する場合
「知り合いを一人誘うたびに○万円が手に入る」などと言って、人の人脈を利用して商品を購入させたり販売員を誘わせたりすることを「マルチ取引」と言います。人のネットわーうを利用することから、「ネットワークビジネス」とも呼ばれます。
例:友人にネットワークビジネスを持ち掛けられた
親しい友人のひとりが、健康食品のネットワークビジネスをしようと誘ってきた。会員になって人を誘えば、会員を獲得するごとに手当が支払われるという。そのため、2か月前に会員登録をして、30万円分の商品を購入して5万円分ほどの商品を開封・使用した。しかし、家族からは反対にあっているため、できれば解約したいが返金してもらえるか。
要件を満たせば返品・返金可能
新規契約から1年未満の解約であること、納品後90日未満で未使用の商品であることという条件はありますが、返品することは可能です。また、中途解約もいつでもできるようになっています。この場合、25万円分の商品を返品すれば、25×0.9=22.5万円は少なくとも戻ってくる計算となります。
契約に関するトラブルは身近なところに潜んでいるものです。あまりよく考えずに契約をしてしまったが、契約解除できるかわからない、契約書にクーリングオフの記載がないなどの場合は、最寄りの消費生活センターや法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
悪質な不正請求・不当契約は法律のプロが解決
- 購入した商品が不良品でメーカーに問い合わせたところ、返金・交換に応li>えなかった