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セックスレスは離婚の理由になる?
この記事で分かること
- セックスレスでの離婚は、認められるケースと認められないケースがある
- セックスレスの立証は難しい。できるだけ協議離婚で解決を
- セックスレスでの離婚では、慰謝料も認められない可能性が高い
セックスレスが夫婦関係におよぼす影響は決して小さくありませんが、プライベートな問題であることから客観的な立証が難しいものでもあります。セックスレスでの離婚は、お互いのプライバシーを守るという意味でも、可能な限り協議離婚で解決するのがベストです。
セックスレスを理由に離婚はできるか
捉え方は人それぞれですが、夫婦関係を築くうえでは一般的に、性交渉はなくてはならないものとされています。それでは、夫婦間に性交渉がなくなってしまった状態である「セックスレス」を理由に、離婚することは可能なのでしょうか?
「セックスレス」を理由に離婚を考える人の割合は?
2016年度の「婚姻関係事件数」という司法統計によれば、「性的不調和」を離婚の申し立て事由に挙げている割合は、男性で全件数の約13%、女性で約7%となっています。性的不調和にはセックスレス以外に性的嗜好の違いによる性的不一致なども含まれますが、この統計から、夫婦生活に関する不満やすれ違いから離婚を考える人が一定数いることがうかがえます。
セックスレスが「法廷離婚事由」にあたるかどうかがポイント
法廷離婚事由とは法律に定めのある離婚理由のことで、次に挙げる5つです。離婚の理由が法廷離婚事由に該当すると判断されれば、裁判でも離婚が認められます。
- 不貞行為(不倫・浮気)
- 配偶者が夫婦の同居義務・扶助義務・協力義務を意図的に怠ったこと
- 3年以上の生死不明
- 配偶者が回復の見込みのない精神病を患っていること
- そのほか婚姻を継続し難い重大な事由
上記を見てもわかるとおり、日本の法律では、夫婦間に性交渉がないことを離婚理由とする明確な規定はありません。つまり、セックスレスを理由に離婚が認められるかどうかは、その夫婦のセックスレスという状態が、5の「そのほか婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかに左右されるのです。
セックスレスで離婚が認められるケースとは
性交渉がなくても成り立つ夫婦関係ももちろんあり、必ずしもセックスレス=夫婦関係の破綻と言い切ることはできません。どのような場合であればセックスレスを理由に離婚が認められるのか、具体的な事例を見ていきましょう。
離婚できるケース
セックスレスが離婚理由として問題となるのは、一方が夫婦生活を求めているのにもう一方にその意思がなく、すれ違いが生じている場合です。
特に理由がないにもかかわらず、何度も拒絶される
お互いに心身健康で年齢も若く、性交渉をするのにまったく問題がないにもかかわらず一方的に拒否されるケースでは、セックスレスが離婚の理由として認められる場合があります。もちろん、夫婦だからといって、必ず相手に応じなければならないわけではありません。しかし、なぜ性交渉をしたくないのかきちんと伝えるなどコミュニケーションを取ることは、夫婦関係を維持するためにも必要なことだといっていいでしょう。
夫婦としてのコミュニケーションを怠り、長期間にわたってはっきりとした理由もいわずに性交渉を拒み続ける場合は、相手に対する不信感などからこれ以上結婚生活を継続していくことが難しいと判断され、離婚が認められる可能性は高くなります。
性交渉をしない理由が不貞行為にある
はっきりと理由をいわず性交渉を拒否し続ける場合、配偶者以外と肉体関係を持っている、つまり、不倫や浮気をしているケースもあります。このようなケースはセックスレス以前に法廷離婚理由である不貞行為にあたりますから、離婚が可能となります。
離婚できないケース
一方で、性交渉をしないことにきちんと理由がある場合などでは、セックスレスを理由に離婚できない可能性が高くなります。
お互いに納得して性交渉をしていない
愛情表現の仕方も夫婦のあり方もそれぞれですから、性交渉がないことが即座に夫婦としての愛情がないことにはつながらないでしょう。お互いが「性交渉はなくてもいい」と考えているうえでのセックスレスであれば、当然ながら離婚理由にはなりません。
また、特にお互いに確認し合ったわけではなくても、歳を重ねれば性交渉をする機会もだんだんとなくなっていくことは自然だといえます。このようなケースでも、セックスレスを理由に離婚することはできません。
性交渉をしたくない理由がある
配偶者と性交渉しない、あるいはしたくないことに明確な理由がある場合、その理由次第では離婚できない可能性もあります。
1. 生活リズムの違いなどからタイミングが合わない場合
職種によっては、夜が勤務時間だったりシフト制で休みが不規則だったりすることも珍しくありません。そのような場合、一方が夫婦生活を求めても、「夜勤続きで今日は休みたい」「疲れているから眠りたい」などとタイミングがうまく合わないこともあるでしょう。
このようなケースにおいては、長期間にわたって性交渉を拒み続けられているといっても、生活環境の違いからやむを得ないといえ、セックスレスを理由に離婚することは難しいと考えられます。ただし、セックスレスを含めた生活のすれ違いから夫婦関係にミゾができ、結婚生活を続けていくことが難しくなれば、離婚が認められる可能性はあります。
2. 性的嗜好が合わない場合
自分にとっての普通が相手にとってそうでないことは、珍しいことではありません。性交渉を拒んでいる理由が配偶者の性的嗜好と合わない、ついていけないといったことである場合、相手が離婚を望んでいないのであれば、セックスレスを理由に離婚することは難しいでしょう。特に女性からそういったことはいいづらいものですから、一度、お互いに相手の気持ちを知る時間を作って話し合うのがよいかもしれません。
相手が拒み続けるからといって無理に性交渉を強要した場合、それが夫婦関係の破綻の原因となれば、離婚する際に慰謝料を請求されるなど、性交渉を求めた側が不利な状況に立たされることもあります。まずは相手とコミュニケーションを取る努力をしてみましょう。
3.過去に不倫などの経験がある場合
たとえば、過去に夫が不倫をしたことが原因で妻が性交渉をしたくないと思っている場合、「夫婦としての愛情がなくなったわけではないけれど、どうしてもセックスはできない」といわれたとしたら、夫婦間に性交渉がないことを否定はできないでしょう。また、愛情はあるわけですから夫婦関係が破綻しているともいえず、セックスレスを理由に離婚はできないと考えられます。
このようなケースでは、そもそもセックスレスの原因を作った側が、とにかく相手の信頼回復に努めるしかありません。また、2のケースと同様、セックスレスが原因で夫婦関係が破綻し離婚に至った場合は、セックスレスの原因を作った側、つまり過去に不倫をした側が不利な立場になることに注意が必要です。
身体的な問題があって性交渉ができない
男性の場合は勃起障害や射精障害、女性の場合は性欲低下や性交痛など、性機能障害やそのほかの病気による身体的な問題で性交渉ができない場合、セックスレスを理由に離婚することは難しいといえます。ただし、性的不能であることを相手が隠しており、結婚以前にその事実を知らなかった場合は、離婚することが可能です。
セックスレスで離婚するために必要なこと
このように見ていくと、セックスレスを理由に離婚できるケースはそれほど多くないことがわかります。ここからは、セックスレスで離婚するための具体的な方法を見ていきましょう。
セックスレスによる離婚の特徴
結婚生活や夫婦関係自体がそもそも非常にプライベートなものではありますが、その中でも性交渉に関することは、他人が関わるのが非常に難しい私的な事柄です。それゆえに、セックスレスであることを客観的に証明することも難しく、セックスレスだけが離婚の理由であると、第三者がからむ調停離婚や裁判離婚では、調停委員や裁判官を納得させることは困難だといえます。
また、調停や裁判で争うとなれば、お互いの私的な事柄を公にさらすことになります。そのため、お互いのプライバシーを守る意味でも、セックスレスによる離婚はなるだけ2人の話し合いである協議離婚で済ませたほうがよいといえます。
セックスレスを立証するための証拠とは
相手に離婚に応じる気がない、自分がどうしても離婚したいという場合には、最終的に調停や裁判が必要です。そこで離婚を認めてもらうためには、セックスレスの事実があること、そして、そのために夫婦関係が破綻していることを証明しなければなりません。
前述のとおりセックスレスは客観的に証明することが難しいのですが、たとえば、以下のようなものはセックスレスの証拠になり得ます。
- お互いの起床・就寝時間、出勤・帰宅時間などを記した生活状況の記録
- 性交渉を拒まれたときの録音、メールなどで誘ったときにはその返事の画像など
長期間にわたって上記のような記録が残っていれば、生活のすれ違いなどもなく年齢や身体的なことから考えても問題なく性交渉ができるにもかかわらず、理由もなく長期間にわたって応じてくれないことの証明になります。
セックスレスで離婚する場合、慰謝料は請求できる?
慰謝料とは、相手から受けた精神的苦痛に対し、その賠償として支払ってもらう金銭のことを指します。性交渉は、夫婦の愛情を確かめる術のひとつでもあります。理由もなく何度も断られ続ければ大きな心の傷になりますし、自信をなくしてしまうこともあるでしょう。そのため、「深く傷ついた賠償として、きちんと慰謝料を払ってほしい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、くり返しになりますがセックスレスそのものを証明することは非常に難しいため、相手に慰謝料の支払いを認めさせることも困難であるといえます。また、たとえセックスレスを証明できたとしても、性交渉をしないことに明確な理由があれば、慰謝料は取れない可能性が高くなります。
ただし、性交渉を求めても無視される、強い言葉で拒絶される・非難されるといった拒絶の方法や、セックスレスの期間などによっては、慰謝料が認められ可能性もあります。しかしその場合も、離婚理由が単にセックスレスのみであるならば、数十万円程度とあまり高額な慰謝料は望めないと考えられます。
セックスレスでの離婚は1人で悩まず弁護士へ相談を
性交渉に関することは、場合によっては配偶者本人にも直接いいづらいことですし、親しい間柄だからといって家族や友人にも気軽に相談できることではありません。そのため、セックスレスやそれにともなう離婚に悩んでいても、誰にも相談できず1人で抱え込んでしまいがちです。
そのようなときは、一度弁護士に相談してみましょう。弁護士なら必ず依頼者のプライバシーを守りますし、法律の側面から、客観的かつ具体的な解決策を提案してくれます。きっと、自分ではどうにもしようがない悩みから解放されるための助けとなってくれるはずです。
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