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アルバイトでも不当解雇は成立する!不当な理由・予告なしで解雇されたら弁護士に相談しよう
この記事で分かること
- 正当な理由のない解雇はアルバイトであっても違法。
- 突然解雇を言い渡されても、「認めない」が鉄則。解雇理由証明書などの証拠集めを進めよう。
- 不当解雇を解決するには、できるだけ早く弁護士へ相談を。
正社員ではないからといって、簡単に解雇されてよい理由にはなりません。まずはどのようなケースが不当解雇にあたるのかを押さえ、不当解雇が疑われる場合は、すぐに弁護士へ相談しましょう。
アルバイトでも不当解雇は違法
アルバイトの場合、正社員などと比べれば立場的にも、解雇されれば仕方がないと思ってしまう方が多いかもしれません。しかし、労働基準法が保護している労働者には当然ながらアルバイトも含まれており、雇用形態にかかわらず、不当に解雇することは法律上認められていません。
解雇には厳しい制限が設けられている
正当な理由なしに一方的に労働契約を解消することを不当解雇といますが、そもそも、解雇が正当と認められるには厳しい条件があります。労働基準法によれば、企業が従業員を解雇するには、解雇に至る理由が客観的に見て合理的であり、さらに、解雇という処分が社会通念から考えて相当であるとされています。
つまり、企業側の都合や主観的な理由から、一方的に従業員を解雇することは認められていないのです。前提として、“正当な解雇”と判断されるケース自体が少ないことを知っておきましょう。
正規雇用でなくても不当解雇は成立する
労働基準法において解雇に厳しい制限が設けられている背景には、雇う側の使用者に比べてどうしても弱い立場になりがちな雇われる側の労働者を保護する目的があります。そして、法律上の労働者とは正社員だけを指すのではなく、アルバイトをはじめ、パートや契約社員などといった非正規雇用者も含まれます。そのため、正規雇用ではないからといって、簡単にクビにしていい理由にはならないのです。
一方で、正規雇用の一般社員と比較すると、アルバイトの法律上の保護の程度は軽いといえる側面もあります。たとえば、やむを得ない事情により人員整理を行う整理解雇、いわゆるリストラでは、正社員よりも先にアルバイトなどの非正規雇用者をリストラの対象とすることが「合理的な人選」と理解されています。
とはいえ、リストラが正当な解雇と認められるには他にも、①リストラを行うことが経営上やむを得ないこと、②解雇を回避するためのその他の努力を尽くしたこと、③労働者に対して誠意を尽くし納得を得たこと、といった条件を満たさなければなりません。これらの条件をクリアしないままアルバイトだからという理由だけでリストラの対象とするのは、不当解雇であるといわざるを得えません。
アルバイトの不当解雇に該当するケースとそうでないケース
ここからは、実際に不当解雇にあたるケースと、不当解雇とはいえないケースをもう少し具体的に見ていきます。
不当解雇にあたるケース
不当解雇にあたる代表的な事例は主に次の3つです。
即日解雇
「明日からもうこなくていい」などと突然解雇を言い渡されるケースがありますが、解雇の理由以前に、即日解雇自体が違法です。労働基準法では、従業員を解雇する場合は、少なくとも解雇日の30日前までに解雇予告をしなければならないとされています。解雇予告ができなかった場合は、30日に満たない日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払わなければなりません。
たとえば、解雇される日の20日前に解雇を言い渡された場合、平均賃金×10日分の解雇予告手当を支払わなければなりません。そのため、解雇予告も解雇予告手当の支払いもない解雇は、不当解雇といえます。ただし、日雇い労働者など期間の限られている一部の雇用者に対しては、解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要ない場合もあります。
従業員の能力不足
「能力不足」といわれるともっともらしい解雇の理由に聞こえますが、解雇理由としてはあいまいで主観的であり、不当解雇にあたるケースが多いです。能力不足を理由に解雇が認められるためには、明らかに業務に支障が出ているといえるほど、相当程度のものでなければなりません。
また、能力不足で従業員を解雇する場合、企業側は解雇に至るまでに、指導や教育を徹底する、業務内容や部署を変えるなど、解雇を回避するためのあらゆる努力をしなければなりません。
退職推奨・退職強要
使用者からの労働契約の解消である解雇に厳しい制限が設けられている一方で、労働者からの労働契約の解消である退職には、法律上特に制限は設けられていません。労働者保護の観点から、一定の退職の自由が認められているためです。
そのためこれを悪用し、労働者に退職を迫る事例も多くあります。企業としては、労働者が自分から辞めたことにすれば、後から訴訟を起こされるリスクを避けることができるからです。しかし、労働者の意思に反して退職に追い込むような行為も、不当解雇にあたります。
不当解雇にはあたらないケース
不当解雇にあたらないのは、解雇に際して労働者に非がある場合です。たとえば、次のようなケースが挙げられます。
就業規則に違反した
企業側から指導や勧告があったにもかかわらず、何度も遅刻や無断欠勤をくり返している場合などです。ただし、たった一度の遅刻などを理由に解雇することは、処分の程度としては重すぎると判断され、不当解雇にあたります。また、そもそも就業規則自体が法律に違反している場合は、就業規則違反を理由に解雇することはできません。
企業にとって多大な損失となるミスを犯した
ミスや失敗は誰にでもあることですから、意図的でなければ、企業が被る損失の程度によっては不当解雇と判断される場合があります。ミスが意図的であったり故意であったりした場合は、当然ながら不当解雇にはあたりません。
重大な犯罪行為を行った
横領や企業内での暴力など、重大な犯罪行為を行った場合は、解雇もやむを得ないとされています。この場合、解雇予告や解雇予告手当の支払いも必要なく、即日解雇となる「懲戒解雇(懲罰的な意味合いでの解雇)となる可能性もあります。
アルバイト先に不当解雇されたときの対処法
勤務先から不当に解雇された場合は、あわてず冷静に以下のような対処法をとりましょう。
まずは解雇を認めないこと
突然不当に解雇を言い渡されたとき、もっとも大切なのは解雇を認めるような言動をしないことです。不当解雇の場合、労働契約は解消とはならないので、いわれたとおりに離職する必要はありません。解雇の違法性と辞める意思がないことをはっきりと伝えましょう。
また、退職同意書にサインしたり、企業にいわれるまま退職願や辞表を提出したりするのはNG。これらは「解雇を認め自分の意思で退職した」という証拠となってしまうため、後から裁判などで争う際に不利となります。解雇を言い渡されたときは、退職に同意する前に弁護士へ相談しましょう。
解雇理由証明書を請求しよう
企業は、従業員から請求された場合、解雇理由証明書の発行を拒むことはできません。解雇に際して自分に非がないこと、あるいは、解雇という処分が妥当ではないことの証明になるため、必ず請求しましょう。
法的措置を取る
どれだけ解雇を拒否する意思表示をしても、不当な解雇であることを公に証明しない限り、元通りに復職することはできません。そのため最終的には、会社を相手取って不当解雇を争う裁判を起こすことになります。
とはいえ、たとえ不当解雇が認められたとしても、裁判で争った後に元の職場に戻り、それまでと同じ環境で働くことは難しいかもしれません。そのため、不当解雇に対する損害賠償請求を行い、転職先を探すほうが現実的な対処といえるでしょう。
いずれにしても、組織を相手に1人で裁判を進めることは簡単ではありません。裁判で不当解雇を争う場合は、労働問題に強い弁護士に相談しましょう。
アルバイトの不当解雇の解決は弁護士に相談
雇う側の使用者の中には、非正規雇用のアルバイトなどを簡単にクビにできると考えている人がいることも事実です。しかし、アルバイトであろうと正社員であろうと、不当解雇が違法であることに変わりはありません。「アルバイトだから仕方がない」などと泣き寝入りせず、きちんと労働者としての権利を主張しましょう。
なお、不当解雇に関する問題は、解雇を言い渡されてから時間が経てば経つほど、労働者が不利な状況に立たされます。特に、一度解雇や退職に同意してしまったら、後から覆すことは困難です。突然解雇を言い渡されたら誰でもあわててしまうものですが、とにかくまずは冷静になり、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談してください。
- サービス残業、休日出勤がよくある
- タイムカードの記録と実際の残業時間が異なる
- 管理職だから残業代は支給されないと言われた
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
- 自主退職しなければ解雇と言われた
- 突然の雇い止めを宣告された