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深夜労働を強要された場合には?まずは弁護士に相談するのが得策
この記事で分かること
- 深夜勤務の強要は違法。強制労働は労働基準法で禁止。深夜業は育児・介護休業法によって制限。
- 深夜労働の強要はパワハラ。法律上は労働者には深夜労働を拒む権利がある。
- いきなり労働基準監督署に相談すると状況の悪化を招く恐れがある。
深夜労働の強要は違法です。強制労働の禁止規定は労働基準法、深夜業の制限は育児・介護休業法にあり、労働者は拒否することができます。強要はパワハラにも当たるので労働基準監督署に相談することもできますが、まずは弁護士に相談することが賢明です。
目次[非表示]
深夜勤務の強要は法律違反
深夜勤務そのものは違法でない
割増手当が支払われれば違法ではない
労働基準法第32条は1日8時間、1週間40時間を超える労働は原則禁止としています。これを超えた時間の勤務(時間外労働)や午後10時から翌午前5時までの勤務(深夜労働)、または休日の勤務場合は、使用者(雇い主)へのペナルティーを込めて割増手当を付けるように定められています(労働基準法第37条)。つまり、深夜勤務があっても割増手当が支払われれば違法ではないのです。
深夜勤務に好んで従事する人もいる
また、好きで深夜勤務に従事している場合もあります。例えば割増賃金で効率よく稼ぎたい人や昼間は時間が取れず、深夜帯にしか働けない事情を抱える人も存在し、自ら進んで深夜帯に労働していることがあるのです。
深夜勤務の強要は違法
労働基準法の強制労働禁止規定
労働の強要は労働基準法によって禁止されています。労働基準法は第5条で「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」と規定しています。
深夜業は育児・介護休業法で制限
さらに深夜業には誰でも就けるわけではなく、従事が制限される場合があります。小学校に入学する前の子を持つ労働者は深夜労働が制限されており、基本的に申請すれば、深夜労働を拒むことができます。育児介護休業法第19条で「事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が当該子を養育するために請求した場合においては、午後十時から午前五時までの間において労働させてはならない」としています。
深夜勤務を強要されたら法律上は拒めても難しいケースも
このように、深夜労働の強要は違法です。従って強制させられそうになった場合、労働者には拒否する権利があるのですが、深夜勤務は会社の利益のための労務であること等から、それが難しいケースも少なくありません。
深夜労働を拒否しにくい現状
深夜帯の労務を強要することは違法で、労働者には拒む権利があります。しかしながら“強要”であることを立証するのは難しく、本意ではないながらもやむなく応じるケースが多いのが実際です。
深夜勤務の強制の立証が難しい
前述の通り、意に反して労働に就かせることは労働基準法に抵触しますし、小学校に入学する前の子を持つ労働者の夜業は育児介護休業法によって制限されていて法的には深夜労働を拒む権利が労働者にはあります。しかし当該深夜労働が、労働基準法の禁止規定「暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」によって強制されたものと立証するのは困難ですし、育児・介護休業法の制限規定も申請しなければ効力を持ちません。そのため、深夜労働を拒むのが難しいケースも少なくないのです。
深夜労働の強要はパワハラの側面も含む
深夜労働の強要は暴言や暴行、職場におけるいじめ等と同じく、パワハラにも該当します。大抵の場合、加害者にパワハラの自覚がないことが多く、しかも深夜勤務は会社の利益のための労務のため拒否しづらいのが現実です。
深夜労働の強要はパワハラの中でも解決が困難な部類
一口にパワハラと言っても実に多様です。例えば他の社員の前で馬鹿にしたり怒鳴りつける、侮辱する、暴力や暴言を吐くと言った「誰が見ても明らかなパワハラ」もありますが、不必要な業務を押し付ける、根拠のない噂を流す、あるいはわざと孤立させる等「明白ではないが加害者の悪意があるパワハラ」、そして極端に低い評価を付けたり、有給休暇を与えない、休日出勤や時間外労働、深夜労働を強要する等の「明白でなく、加害者の自覚もないパワハラ」もあります。この内、深夜労働の強要は後者のパワハラに該当すると言えますが、周囲から見て、それと認識されにくく、そもそも社内での問題として取り上げてもらえなかったりと、解決に難儀すると言えます。
会社の利益のための労働なので拒否しにくい
深夜勤務の強要は他のパワハラと異なり、多くの場合会社の利益のために行われています。拒否すれば、会社に対する忠誠心がないと見なされる恐れがあり、こうした事情から、深夜労働の強要は違法ではあるものの、拒否するのがはばかられる状況は多いでしょう。
深夜勤務の強要について労働基準監督署に相談
深夜労働を強要することを止めさせたいなら、法令違反として労働基準監督署に申告する手段があります。その場合、企業に指導が入り解決することもあります。
労働基準監督署に申告
労働基準監督署は、労働基準法やその関連法律に基づき企業の法律違反を監督し、労働者の就業環境の改善を図るところです。深夜労働の強要は労働基準法違反に当たるので、申告すれば指導や勧告をしてもらえる可能性があります。
いきなり労働基準監督署に相談するのは控えた方が賢明
しかし、いきなり労働基準監督署に相談するのは控えた方が良いでしょう。前述の通り、深夜労働の強制は、パワハラの側面も含んでいると言えます。つまり、職場における上下関係から、反抗できないため意に反して深夜労働をさせられている、という構図があるのです。そのような状況の中、弁護士への相談を経ずに労働基準監督署に申告した場合、事態が悪化する可能性は高いと言えます。
深夜勤務を強要されたら専門家に相談することも重要
このように、深夜労働の強要は重大な問題ですが、解決は一筋縄ではいきません。では、深夜労働を強いられた場合、労働者がとるべきはどのようなことなのでしょうか。
まずは法律の専門家に相談
企業側からすれば、深夜勤務は自社のために行っていることです。しかし、労働者側にも、それを拒む権利があり、複合的な要素が絡む深夜労働の強要問題は非常に難しい事案です。深夜労働を強要された場合、どういった解決法を目指すのかで方針は異なりますが、まずは労働問題に強い弁護士に相談するのが得策です。ここでは弁護士に相談をする際の流れやポイントを解説します。
事前に用意しておくべきもの
深夜労働を強要された際、その証拠となるものを事前に用意してきましょう。例えば、出退勤簿やタイムカード等、退社時刻を証明できるものです。サービス残業を強いられた、つまり未払いの残業代も請求するなら、給与明細も必要です。そのほか、深夜労働を強制された経緯や日時等のメモ等も準備しておくとスムーズに進みます。
正直に話すのがポイント
弁護士に相談をする場合、気を付けなければならないのが、話を有利に持っていきたいからと言って、虚偽の情報を伝えないようにすることです。真実を伝えないと、仮に解決に近づいたとしても後々それが発覚し、トラブルの種になってしまいます。
深夜勤務を強要されたら弁護士に相談を
深夜勤務を強いられた場合、無理して従う必要はありません。会社の中に居づらくなることを懸念して泣き寝入りしたり、自分一人で戦おうとせず、まずは労働問題に強い弁護士に相談しましょう。初回の相談は無料の法律事務所も多いので、利用してみることをおすすめします。
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