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休日出勤における残業代のルールとは?法定休日や法定外休日の扱いの違いも解説
この記事で分かること
- 法定労働時間を超過して労働した場合、残業代として割増で賃金が支払われます。
- 法定休日労働に対しては35%割増で賃金が支払われます。
- 割増手当の発生条件は最終的には就業規則の記載次第です。
法定労働時間を超過して労働した場合、労働者に対して、割増で賃金の残業代が支払われます。法定外休日労働においては法定外残業の場合、賃金は25%割増しされますが、法定内残業では割増賃金は発生しません。
目次[非表示]
休日出勤など時間外労働に対しては残業代が支払われる
近年大手企業による残業代の未払いが発覚し、問題となっています。
2017年には宅配大手二社で残業代の未払いが横行していることが発覚、同年秋には大手広告代理店に23億円の未払い残業代があることが明るみになり、批判にさらされました。
さらに、2018年には某鉄道会社が巨額の未払い残業代を抱えていることが判明し、非難の的になっています。
残業代が発生するのは時間外労働をした場合ですが、深夜労働と休日労働、そのいずれでもない時間外労働の割増率はすべて異なります。まずは残業代が発生する根拠をおさえた上で、これらの違いをみていきましょう。
残業代について
まずは、残業代が発生する根拠や労働者に残業をさせる上で、使用者に求められることなど、残業代について基本的なところを解説していきます。
労働基準法第32条で1日8時間、1週間40時間(法定労働時間)を超える労働は原則禁止となっています。けれども、さまざまな事情により、法定労働時間を超過して労働せざるを得ないケースも出てきます。
そして、そのような場合に、労使協定使用者に対するペナルティの意味を込めて、割増で賃金支払いをすることが義務付けられています。
残業させるには三六協定が必要
また、法定労働時間を超えて労働させる場合、使用者は労使協定(三六協定)を結ぶことが必要です。
労働基準法第36条に「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。」と定められています。
時間外労働の割増率は
労働者は法で手厚く保護されているために、残業に対しては割増で賃金が支払われるのです。割増率は深夜労働と休日労働、そのいずれでもない時間外労働ですべて異なります。次に残業代の割増率についてみていきましょう。
通常の時間外労働、深夜残業の賃金割増率は25%増
法定労働時間を超えた労働はすべて残業となるわけですが、賃金の割増率は時間帯によって異なります。
通常の時間外労働の賃金割増率は25%です。深夜労働(午後10時から午前5時の勤務)についても、同じく25%増しで支払われます。
休日出勤にも種類があり、残業代が違う
休日に出勤すれば必ず35%増しの賃金が発生するとの認識を持つ人も多いでしょう。
しかし、それは誤りです。というのも休日出勤にも種類があり扱いが異なるのです。
法定休日労働と法定外休日労働
労働基準法では使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えるか4週間に4回以上の休日を与えなくてはならない旨が定められています(35条)。
同条に違反し、法定休日を与えなかった場合、使用者は6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金刑に処せられることとなります。
この、労働基準法によって定められた毎週1日以上、もしくは4週に4回以上の休日を「法定休日」と呼びます。
法定休日労働の割増率は35%
法定休日に働くことを法定休日労働と呼びます。そして、法定労働時間を超過した労働は本来禁止されているので、使用者は法定休日労働に対しては3割5分増しで賃金支払いをしなければなりません。
割増で賃金を支払わなかった場合、やはり使用者は6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金刑に処せられることになります。
法定休日はどのように決まる?
法定休日は原則就業規則によって決まりますが、就業規則に定めがない場合もあります。その場合、法定休日はどのように決まるのでしょうか。
法定休日の特定義務はない
中には休日は就業規則によって定められているものの、そのうちのどの日を法定休日とするかは決まっていない事業所も少なくありません。
実は使用者には休日を与える義務はありますが、法定休日を特定する義務はなく、これ自体は違法でも何でもないのです。
就業規則規定がなければ1週間のうち、最後に位置する休日
けれども休日出勤した場合に、どの日が法定休日かわからないのでは割増賃金の計算の時に困ってしまいます。では、就業規則に定めがない場合、どのように判断すればよいのでしょうか。
一般的に、就業規則に定めがない場合「1週間のうちで最も後順に位置する休日」が法定休日になります。
休日出勤-法定外休日の場合の残業代
労働者には毎週1日以上、もしくは4週に4回以上の休日、「法定休日」が必ず与えられ、その日に出勤した場合は35%増しで賃金が支払われることになります。
では、法定外休日、及び法定外休日労働の賃金割増率についてはどうでしょうか。
法定外休日とは
法定休日はあくまでも“最低限度与えなければならない”休日であり、このほかに休日を与えても問題ありません。実際に週休2日の会社も多くみられます。この、法定休日以外に会社が独自に定めた休日を「法定外休日」と呼びます。
労働時間の枠組みについて
では、法定外休日に労働した場合、割増賃金は発生するのでしょうか。結論から言えば割増賃金が発生する場合と発生しない場合があるのですが、それについての説明の前に、労働時間の枠組みについて確認しておきましょう。
法定労働時間と所定労働時間
前述のように労働基準法第32条によって1日8時間、1週間40時間を超える労働は原則禁止になっています。そして、この1日8時間、1週間40時間の法定労働時間が、使用者が労働者を通常の賃金にて働かせてもよい上限の時間となるわけです。
他方、あらゆる会社が週5日、1日8時間の勤務体制をとっているかといえばそうではありません。
例えば勤務時間の条件が
- 月~金曜
- 9時~17時(うち一時間昼休憩)
の会社などもあり、この場合勤務時間は1日7時間週35時間となります。
また、アルバイトなどでは1日4時間、週3日勤務なんてケースもざらです。
このように会社が就業規則や雇用契約で独自に定めた労働時間を「所定労働時間」と言います。
法定外休日労働の割増賃金は
これを踏まえた上で、法定外休日労働の割増賃金についてみていきましょう。
法定外残業と法定内残業で異なる賃金
お伝えしたように、割増賃金が発生するのは法定時間を超過した労働(法定外残業)に対してのみです。ですから、法定外休日労働の場合1日8時間、1週間40時間以内の残業(法定内残業)に対しては、割増手当は発生しないのです。
法定外残業に対してのみ25%の割増が適用される
例えば、所定労働時間が7時間の会社において午前9時から1時間の昼休憩を挟んで午後20時まで働いた場合、実質的には3時間残業したことになります。
しかし、午後17時~18時は法定内残業なので割増賃金が発生するのは、法定外残業にあたる午後18時~20時の2時間となるわけです。法定外残業に対しては25%の割増賃金が発生します。
休日出勤における残業代のルールについて
固定残業代制度とは残業の有無にかかわらず、一定の残業代を含めた賃金が支払われる制度です。
業務に適した賃金支払いが可能で、近年導入する企業が増加していますが固定残業代制度の場合あらかじめ一定の残業代が固定給に組み込まれています。そのため、労使協定で取り決めたみなし労働時間内では残業代は発生しません。ただ、取り決めた時間を超過した分の労働に対しては割増手当が発生します。
労働者が管理監督者にあたる場合
また、当該労働者が管理監督者にあたる場合も残業代は発生しません。
これは、管理監督者は労働基準法32条の労働時間に関する規定や35条の休日に関する規定の適用除外となるためです。
管理監督者に該当するかの判断基準は
- そのものに与えられた職務内容、権限、責任が管理監督者にふさわしいもので、経営者と一体の立場にあるか
- 勤務態様や労働時間管理の状況が会社に管理されていないか
- 管理監督者としての待遇を受けているか
です。
法定外休日の法定内残業でも割増賃金が支払われることがある
法定外休日労働のうち、法定内残業ならば基本的に残業代は発生しません。けれども、割増賃金が支払われるケースもあります。
就業規則の記載次第
法定外休日では条件によっては残業代が発生しない旨は既に説明しました。
しかしながら、これはあくまでも使用者側に“割増で賃金支払いをする義務は生じない”というだけの話であって、割増賃金を支払ってもまったく問題ありません。
適正な残業代請求のためにも弁護士に相談を
残業代不払いのケースにも会社がその事実を認識していない場合と、意図的に支払うことをしていないケースがあります。
前者の場合請求すればすんなりと支払いに応じてくれる可能性もありますが、後者の場合、一筋縄ではいきません。確実に残業代を取り戻すためには弁護士に相談するのが得策です。
- サービス残業、休日出勤がよくある
- タイムカードの記録と実際の残業時間が異なる
- 管理職だから残業代は支給されないと言われた
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
- 自主退職しなければ解雇と言われた
- 突然の雇い止めを宣告された