2,931view
残業代の計算方法~正しい計算ルールを理解して残業代を取り戻す!
この記事で分かること
- 残業代を計算するにはまず「時給」を計算する
- 残業時間分の時給に1.25をかけると残業代が概算できる
- 残業代の割増率はさまざまなケースにより違う
残業代が未払いとなっている人も多いでしょう。未払いの残業代を取り戻すためには、まず残業代がいくらなのかを計算しなければなりません。この記事では、残業代計算の根拠である「時給」の計算方法、残業代概算の計算式、およびさまざまなケースによる割増率の違いについて解説します。
残業代の計算方法は?
この記事では、残業代の計算方法を、大きく3つの工程に分けて解説します。
- 時給を算出する
- 残業代の割増賃金 概算の計算方法
- 残業代の正確な金額の計算方法
正確な残業代を算出するには、会社の企業規模や、就業規則、契約形態によっても条件が異なります。まず概算でおおまかな未払い残業代の損失を把握した上で、厳密な計算を希望する場合、就業規則や働き方などをふまえる必要があるため、弁護士に相談するのがベターでしょう。
残業代計算はまず「時給」の計算から
月給から手当を差し引き、時給を算出する
残業代を計算するためには、まず月給から「時給(1時間あたりの基礎賃金)」を割り出さなくてはなりません。時給を計算するためには、月給から手当を差し引き、1ヶ月あたりの労働時間で割ります。計算式は次の通りです。
時給 = (月給 - 手当)÷ 1ヶ月あたりの労働時間
ここで、差し引かなければならない手当や1ヶ月あたりの労働時間はどのようなものなのでしょう? それを以下で見ていきましょう。
月給から差し引かなければならない手当
給与明細を見ると、「基本給」のほかにさまざまな手当が記載してあるでしょう。残業代計算の根拠となる時給を算出する際には、次の手当は除外しなければなりません。
- 家族手当
- 通勤手当
- 単身赴任手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 賞与や精勤手当など1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
労働時間の計算方法
時給を計算するために必要となる「1ヶ月の労働時間」は、実際に働いた「実働時間」ではありません。残業や休日出勤などを除いた「所定労働時間」が計算の根拠となります。
1ヶ月あたりに働く日数は、月により、1ヶ月の日数や土日の日数が違います。そのために、1ヶ月あたりの所定労働時間も月によって違います。したがって、1ヶ月あたりの所定労働時間を計算するためには、
- 1日あたりの所定労働時間を求める
- 1年を通しての所定労働日数を求める
- 1.と2.より1ヶ月あたりの所定労働時間を求める
の手順を踏みます。
1.1日あたりの所定労働時間
1日あたりの所定労働時間は、就業規則などに書かれている「定時」です。定時が午前9時~午後6時で、1時間の昼休みがある場合には、1日あたりの所定労働時間は「8時間」です。
2.1年を通しての所定労働日数
1年を通しての所定労働時間を求めるためには、1年の所定労働日数を求めなければなりません。所定労働日数の計算式は、
1年の所定労働日数 = 365 - 所定休日の日数
となります。「所定休日」は、就業規則で確認しましょう。
3.1ヶ月の所定労働時間
以上の手順を踏むことにより、1ヶ月の所定労働時間を計算する準備ができました。1ヶ月の所定労働時間の計算式は、
1ヶ月の所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 1年の所定労働日数 ÷ 12
となります。
時給の計算例
実際に、例をもとに時給(1時間あたりの基礎賃金)を計算してみましょう。計算の条件は、
- 手当を差し引いた月給 …25万円
- 1日の所定労働時間 …8時間
- 所定休日 …土日祝日、年末年始(12月29日~1月3日)、お盆休み(8月13日~16日)
であるとします。
1月1日は祝日となり別途休日とは換算しません。また、2018年の場合なら12月29日(土)と30日(日)も土日と重なりますので休日の日数には加えません。したがって、年末年始の休日は実質「3日間」です。
土日祝日は2018年は全部で117日、年末年始の休日は3日、お盆休みが4日ですので、2018年の所定休日はこの例の場合「124日」です。したがって、1年の所定労働日数は、
1年の所定労働日数 = 365 - 124 = 241日
となります。ここから、1ヶ月の所定労働時間は、
1ヶ月の所定労働時間 = 8時間 × 241日 ÷ 12 ≒ 161時間
となりますので、時給は、
時給 = 25万円 ÷ 161時間 ≒ 1,553円
と算出することができます。
残業代の割増賃金 概算の計算方法
時給に割増率1.25をかける
時給が計算できたら、残業代を概算してみましょう。残業代を正確に計算するためにはやや複雑な手順を踏まなければなりません。しかし、大まかな額を知りたいだけなら、次の計算式で計算することができます。
残業代の概算 = 時給 × 残業時間数 × 1.25
残業代の割増率は、さまざまなケースにより細かく決められています。そのうち、休日出勤や深夜労働を除いた通常の残業代の割増率は「×1.25」です。休日出勤や深夜労働が少ない場合は、上の計算式により正解に近い金額を算出することができるでしょう。
残業代概算の計算例
時給が1,553円の人が、1ヶ月で45時間の残業をしたとします。その場合の1ヶ月の残業代概算は、
残業代概算 = 1,553円 × 45時間 × 1.25 = 87,356円
となります。
残業代の正確な金額の計算方法
割増率の違いを考慮に入れる
それでは、さまざまなケースでの割増率の違いを考慮に入れて、正確な残業代を計算するための方法を見ていきましょう。
法定時間外残業と法内残業
残業には、まず「法定時間外労働」と「法内残業」の2種類があります。
労働基準法により「法定労働時間」として、
「労働時間の限度は1週間に40時間、1日に8時間とする」
と定められています(32条)。これを超える残業は「法定時間外労働」と呼ばれ割増賃金の対象となりますが、法定労働時間内に行われた残業は、「法内残業」と呼ばれ割増賃金の対象とはなりません。
例えば、会社の定時が午前9時~午後5時、あいだに休憩時間が1時間ある場合には、所定労働時間は7時間となります。所定労働時間が法定労働時間より1時間少ないため、このケースで午後7時まで残業をした場合には、
- 午後5時~6時 …割増賃金の対象とならず、残業代は時給と同じ
- 午後6時~7時 …割増賃金の対象となる
と、割増賃金の対象となるかならないかは、その残業が法定時間内であるか、時間外であるかによって変わります。
ただし、多くの会社が採用している「1日の所定労働時間8時間、週5日勤務」の場合なら、所定労働時間と法定労働時間が一致しますので、法内残業は存在しないことになります。
法定外休日と法定休日
休日にも同様に、「法定外休日」と「法定休日」とがあります。
労働基準法は、
「毎週少なくとも1回の休日を与えなくてはいけない」
と定めており(35条)、これは「法定休日」と呼ばれます。法定休日に仕事をすれば休日労働の割増賃金の対象となりますが、法定外休日に仕事をした場合には、休日労働の割増賃金の対象とはなりません。
多くの会社が採用する「週休2日制」の場合、所定休日のうち1日は法定休日、残りの1日は法定外休日となっています。土日や祝日などのうち、どの休日が法定内で、どの休日が法定外なのかは、就業規則に規定があるはずですので確認しましょう。
ただし、法定外休日であっても就業規則に規定がある場合には、休日労働の割増賃金が支払われることもあります。
さまざまな残業代の割増率
さまざまな残業代の割増率を見ていきましょう。
法定時間外労働
法定時間外労働の割増率は、×1.25です。ただし、1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合には、「大企業」の場合には割増率は1.5となります。大企業ではない、中小企業の場合には、割増率は当面×1.25のままとされています。「中小企業」として定義される範囲は、次の通りです。
- 小売業 …資本金5,000万円以下または常時使用する労働者が50人以下
- サービス業 …資本金5,000万円以下または常時使用する労働者が100人以下
- 卸売業 …資本金1億円以下または常時使用する労働者が100人以下
- その他 …資本金3億円以下または常時使用する労働者が300人以下
休日労働
法定休日に労働した場合の割増率は×1.35です。また、法定内休日での労働であってもそれが「法定時間外労働」に該当する場合には、×1.25の割増率が必要です。
深夜労働
午後10時~午前5時までの「深夜」に労働する場合には、それが法定時間内労働であったとしても、×0.25の割増賃金を時給に加えて支払わなければならないとされています。また、深夜でありかつ時間外労働である場合には、残業代の割増率は×1.5、深夜でありかつ法定休日であった場合は、割増率は×1.6となります。
残業代を計算して未払いが多ければ弁護士に相談しよう
未払いの残業代は、会社に支払いの義務がありますので、取り戻すことは可能です。しかし、会社を相手に残業代を請求したり、さまざまな交渉や法的措置を取ったりするのは「気が重い」と思う人も多いでしょう。そのような時、法律の専門知識を持ち、物心ともに親身に相談に乗ってくれる弁護士の存在は、大変心強いものとなるでしょう。
- サービス残業、休日出勤がよくある
- タイムカードの記録と実際の残業時間が異なる
- 管理職だから残業代は支給されないと言われた
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
- 自主退職しなければ解雇と言われた
- 突然の雇い止めを宣告された