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自己都合退職と会社都合退職の違い~変更することはできるの?
この記事で分かること
- 会社都合退職とは雇用保険の「特定受給者資格」に該当するもののこと
- 会社都合退職は自己都合退職と比べ失業保険の給付が有利になることがメリット
- 自己都合退職を会社都合退職に変更することもできる
「退職の際の自己都合と会社都合ってどういう意味があるの?」「メリットとデメリットはどうなの?」と思う人も多いでしょう。この記事では、自己都合退職と会社都合退職との違い、それぞれのメリットとデメリット、および自己都合退職を会社都合退職に変更する方法を解説します。
自己都合退職と会社都合退職の違いは?
自己都合退職と会社都合退職との違いは、雇用保険の「特定受給資格者」に該当するかどうかです。特定受給資格者に該当する理由での退職は「会社都合退職」となり、それ以外の理由による退職は「自己都合退職」になります。
特定受給資格者に該当するとしないとでは、失業保険の支給開始日や給付日数、最大支給額、国民健康保険の軽減などで大きな差が出てきます。ただし、自己都合退職であっても「特定理由離職者」に該当する場合には、会社都合退職と同様の条件で失業保険が給付されます。
会社都合退職は失業保険の給付が有利になることがメリットですが、転職を考えるとデメリットとなる場合もあります。会社都合退職の場合、転職時の面接などで退職の理由を詳しく聞かれることがあるからです。
自己都合退職を会社都合退職に変更したいと思ったら、まずは会社と交渉することが考えられます。また、ハローワークに相談して特定理由離職者として認定されれば、失業保険の給付条件は会社都合退職の場合と同じになります。
特定受給資格者の範囲
特定受給資格者とは、厚生労働省の規定により「倒産・解雇などの理由により再就職の準備をする時間的な余裕がなく離職を余儀なくされた者」とされています。具体的には退職の理由が以下の要件を満たす場合です。
倒産などにより離職した場合
- 倒産にともない離職した人
- 大量リストラ(1ヶ月に30人以上または従業員の3分の1以上)で離職した人
- 事業所の廃止にともない離職した人
- 事業所の移転により通勤が困難になって離職した人
解雇などにより離職した場合
- 解雇により離職した人(ただし、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は除かれます)
- 勤務場所や勤務時間、賃金、職種などの労働条件が労働契約の締結時に示されたものと著しく違っていたことにより離職した人
- 賃金の未払いが2ヶ月以上続いたために離職した人
- 賃金が85%以下の大幅に減らされたために離職した人
- 毎月の残業時間が45時間を超えることが3ヶ月以上続いたために離職した人
- 職種が変更されたのに必要な配慮がなかったために離職した人
- 期間に定めのある労働契約が更新されて3年以上雇用された、または期間に定めのある労働契約の締結時に契約が更新されることが明示されたにもかかわらず、契約が更新されなかったため離職した人
- 上司や同僚からいじめや嫌がらせを受けたために離職した人
- 退職勧奨により離職した人(早期退職優遇制度に応募して退職した場合は該当しません)
- 事業所の都合で休業が3ヶ月以上続いたために離職した人
- 事業所が法令違反をしたために離職した人
特定理由離職者の範囲
特定理由離職者とは、特定受給資格者以外の人で、期間に定めがある労働契約が更新されなかったこと、およびその他やむを得ない理由により離職した人のことです。特定理由離職者に認定されれば、失業保険の給付条件は特定受給者資格の場合と同じになります。特定理由離職者に該当するための具体的な要件は以下の通りです。
- 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、更新を希望したのに更新されなかったために離職した人
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力・聴力・触覚の減退などにより離職した人
- 妊娠・出産・育児などにより離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた人
- 父母の介護や親族の看護など、家庭の事情が急変したことにより離職した人
- 配偶者や扶養家族との別居が困難になったため離職した人
- 次の理由により通勤が不可能または困難になったため離職した人
・結婚による住所変更
・保育所の利用や親族への保育の依頼
・通勤困難な場所への事業所の移転
・意思に反して余儀なくされた住所の移転
・鉄道やバスなどの廃止または運行時間の変更
・単身赴任による別居の回避
・配偶者の転勤などによる別居の回避 - 希望退職者の募集に応じて離職した人
特定受給資格者や特定理由離職者の判断方法
特定受給資格者や特定理由離職者に該当するかどうかの判断は、会社が主張する離職理由と離職者が主張する離職理由とを把握し、必要であれば資料による事実確認を行ったうえでハローワークが行います。会社または離職者の主張のみで決められるものではありません。
会社都合退職と自己都合退職のメリット・デメリット
会社都合退職と自己都合退職のメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?失業保険の給付条件が有利になるのが会社都合退職のメリットですが、転職を考えた場合には自己都合退職にもメリットがあります。
会社都合退職のメリットは失業保険の給付が有利になること
会社都合退職は、雇用保険の特定受給資格者に該当しますので失業保険の給付が有利になるのがメリットです。会社都合退職と自己都合退職とで、失業保険の給付条件は以下のように違います。
受給要件
失業保険の給付を受けるためには雇用保険の被保険者期間が、会社都合退職の場合なら半年以上あることが条件です。それに対して自己都合退職では、被保険者期間が1年以上ないと失業保険を受給できません。
参考リンク: ハローワーク
最短支給開始日
失業保険の手続きをハローワークで行ってから実際に失業保険が支給されるまでの日数は、会社都合退職の場合なら最短で5営業日(約7日)です。それに対して自己都合退職の場合には、最初の3ヶ月間は失業保険が給付されません。会社を退職してから3ヶ月間は失業保険なしで生活しなくてはならないことは、自己都合退職の大きなデメリットだといえるでしょう。
給付日数
失業保険の給付日数は、会社都合の場合なら90日~330日です。それに対して自己都合退職の場合には90日~150日となり、給付される最大日数が大幅に異なります。
累計給付額
失業保険の毎日の給付額は、会社都合退職と自己都合退職で違いはありません。どちらも8,250円を上限(平成30年8月1日現在)とし、離職する前の直近6ヶ月間における賃金日額と年齢から決められます。ただし、会社都合退職と自己都合退職とでは失業保険が給付される日数が大幅に違います。
したがって、受給される失業保険の累計額は、会社都合退職なら最大で約272万円、自己都合退職なら約124万円と、こちらも大幅な開きがあります。
国民健康保険の軽減措置
会社都合退職をした人に対しては、前年の給与を100分の30として保険料を計算する国民健康保険の軽減措置が2年間にわたって受けられます。それに対して自己都合退職をした人の場合には、そのような軽減措置はありません。
転職で不利になりかねないことが会社都合退職のデメリット
会社都合退職のデメリットとして上げられるのは、転職の際に不利になりかねないことです。
会社都合退職の要件には、「倒産など」と「解雇など」の2つがあります。会社が倒産したり、または賃金の未払い、上司・同僚からのいじめなどは不可抗力というべきですが、解雇や退職勧奨などの場合は、転職しようとして履歴書を提出したり面接を受けたりする際、「本人にも問題があったのでは?」と採用担当者が考える可能性があります。
したがって、会社都合退職の場合には、転職の際の提出書類・面接対策をより入念に準備する必要があるでしょう。また、「失業保険の給付条件が有利になる」という理由だけで会社都合退職にこだわらないことも大切です。
自己都合退職を会社都合退職に変更する方法
これまで見てきた通り、会社都合退職は自己都合退職と比較して、失業保険の給付条件が有利になります。それでは最後に、自己都合退職を会社都合退職に変更するためにはどうしたら良いかを見ていきましょう。
会社都合退職への変更を会社と交渉する
方法の第1は、自己都合退職から会社都合退職への変更を会社と交渉することです。特に、倒産や解雇など本来なら会社都合退職であるはずなのに自己都合退職にされてしまった場合なら、会社との交渉は絶対に必要なことだといえるでしょう。
また、自己都合で退職をする場合でも、「会社都合退職にしてほしい」と会社に対して申し出れば、会社が柔軟に応じることもあります。「揉めるよりは早く辞めてもらいたい」と会社が考えた場合には、会社都合退職となる退職勧奨の一環として取り扱うことがあるからです。
特定理由離職者の認定をハローワークで相談する
自己都合退職の場合でも、もし特定理由離職者に認定されれば失業保険の給付条件は会社都合退職と同じになります。
したがって、失業保険の給付条件を有利にしたいというだけのことである場合には、特定理由離職者への認定をハローワークで相談するのが良いでしょう。その場合には、例えば「体力の不足」で退職したのなら医師の診断書など、必要書類をハローワークへ持参することが必要です。
自己都合退職や会社都合退職の不明点は弁護士に相談しよう
退職に際しては、会社とのあいだでトラブルが起こりがちです。特に、解雇のケースでは不当解雇を疑わなくてはなりません。
不当解雇の場合には解雇の無効を訴え、賃金や慰謝料を請求できることもあります。そのような交渉を会社とする際、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
- サービス残業、休日出勤がよくある
- タイムカードの記録と実際の残業時間が異なる
- 管理職だから残業代は支給されないと言われた
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
- 自主退職しなければ解雇と言われた
- 突然の雇い止めを宣告された