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未払い残業代の計算で割増賃金を適用すべきケースとは?

この記事で分かること

  • 未払いの残業代で割増賃金が発生するのは法定時間外労働と休日、深夜の労働
  • 未払い残業代の計算は1時間あたりの賃金に残業時間と割増率をかける
  • 未払い残業代は法的な措置も含めて請求可能

残業代は支払わなければいけないと法律で定められているものです。未払いの残業代がある場合には、会社にしっかり請求しましょう。この記事では、未払い残業代で割増賃金が発生するのはどういう場合か、未払い残業代の計算方法、および未払い残業代を会社に請求する方法を解説します。

未払い残業代で割増賃金が発生するのは?

未払い残業代のうち、労働基準法により割増賃金を支払うべきと定められているものは、

  • 法定時間外労働
  • 休日労働
  • 深夜労働

の3つです。

法定時間外労働の割増賃金

労働基準法により、労働時間は「1日に8時間以内、1週間に40時間以内」と定められています。この時間を超えて労働した場合、企業は時間外手当として割増賃金を支払わなければならず、割増率は「×1.25」です。

時間外労働が1ヶ月に60時間を超える場合

ただし、法定時間外労働が1ヶ月に60時間を超えた場合は、「大企業」についてはその時間の割増率が「×1.5」となります。大企業ではない「中小企業」とは、以下のものが定められています。

  • 小売業 …資本金5,000万円以下、または常時使用する労働者の数が50人以下
  • サービス業 …資本金5,000万円以下、または常時使用する労働者の数が100人以下
  • 卸売業 …資本金1億円以下、または常時使用する労働者の数が100人以下
  • その他 …資本金3億円以下、または常時雇用する労働者の数が300人以下

所定労働時間が法定労働時間より短い場合

会社の就業規則などにより労働時間として定められている「所定労働時間」が法定労働時間より短い場合もあるでしょう。その場合、

  • 所定労働時間を超え、法定労働時間以内の残業代の割増率 …「×1.0」
  • 法定労働時間を超える残業代の割増率 …「×1.25」

と、労働時間が法定労働時間を超えるか超えないかによって、残業代の割増率は異なります。

休日労働の割増賃金

労働基準法は「毎週少なくとも1回の休日を与えなくてはいけない」と定めており、この「法定休日」に労働した場合には割増賃金が支払われ、割増率は「×1.35」です。

週2日制の場合は休日のうち1日が法定休日

週休2日制の場合には、1週間に2日ある休日のうち1日が法定休日、もう1日は法定外休日となっています。会社で休日と定められていても労働したのが法定外休日なら、休日労働の割増賃金は法律では支払わなくて良いことになっています。2日の休みのうちどちらが法定休日なのかは就業規則で決められているはずですので確認をしてみましょう。

深夜労働の割増賃金

午後10時~午前5時までの「深夜」に労働した場合、深夜手当の割増賃金は「×1.25」です。

残業代の割増率が重複する場合

「深夜に残業」「休日に残業」など、賃金が割増されるケースが重複する場合があるでしょう。その場合には、割増賃金の割増率は足し合わせがされます。

深夜で法定時間外に労働したなら、割増率は、

「×1.25(深夜手当)」+「×1.25(時間外手当)」

で、割増賃金は「×1.5」となります。また、法定休日に法定時間外労働をした場合には、

「×1.25(休日手当)+「×1.35(休日手当)」

で、割増賃金は「×1.6」となります。

ワンポイントアドバイス
残業代は、割増賃金も含めて支払いがされなければなりません。未払いの残業代は会社にきちんと請求しましょう。ただし、従業員から残業代を請求されても、会社が「舐めた態度」を取って支払いに応じないこともあります。その場合には弁護士に相談するのが良いでしょう。

割増賃金を含めた未払い残業代の計算方法

割増賃金を含めた未払い残業代の計算方法を見ていきましょう。残業代の計算方法は、

  1. 残業時間を求める
  2. 1時間あたりの賃金を求める
  3. 残業代を計算する

の3ステップです。

ステップ1 残業時間を求める

最初に、タイムカードや出勤簿などの記録から残業時間を求めます。残業時間は、割増率がそれぞれ異なる、

  • 時間外労働
  • 休日労働
  • 休日+時間外労働
  • 深夜労働
  • 深夜+時間外労働

などに分けてまとめておきます。

ステップ2 1時間あたりの賃金を求める

次に、「1時間あたりの賃金」を求めなくてはなりません。1時間あたりの賃金は、

月給 ÷ 1年間における1ヶ月平均所定労働時間

として定義されます。「月給」と「1年間における1ヶ月平均所定労働時間」は、次のようにして求めます。

月給の求め方

月給は、実際に支払われている給与から、次のものを差し引くことによって求めます。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 単身赴任手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 賞与や精勤手当など、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

1年間における1ヶ月平均所定労働時間の求め方

所定労働時間については就業規則で「1日8時間」などと決められているでしょう。この8時間に、1ヶ月で働くことになっている日数をかければ「1ヶ月あたりの労働時間」が求められそうですが、1ヶ月で働く時間は、月の日数や休日の日数がその月によって異なるため、その月によって違ってきます。

そこで、1年間における1ヶ月平均所定労働時間を、

  1. 1年間で働くことになっている日数(1年間の所定労働日数)を求める
  2. 1.の日数を12で割り、「1年間における1ヶ月平均所定労働日数」を求める
  3. 2.の日数に8時間をかけ、「1年間における1ヶ月平均所定労働時間」を求める

の手順を踏んで求めます。

1年間における所定休日が「124日」であったとすると、1年間の所定労働日数は、

365日 - 124日 = 241日

として求められます。1年間における1ヶ月平均所定労働時間はこれを12で割り、1日の所定労働時間8時間をかけたもの、

241日 ÷ 12 × 8時間 ≒ 160時間

として求められます。

1時間あたりの賃金の求め方

1時間あたりの賃金は、上で解説した通り、手当を差し引いた「月給」を「1年間における1ヶ月平均所定労働時間」で割ったものです。月給が「24万円」であったとすると、

24万円 ÷ 160時間 = 1,500円

として1時間あたりの賃金が求められます。

ステップ3 残業代を計算する

残業時間と1時間あたりの賃金を求めることができましたので、これで残業代を計算することができます。ある月の残業時間が、

  • 通常の残業時間 …20時間(割増率:×1.25)
  • 休日での残業時間 …10時間(割増率:×1.35 + ×1.25 = ×1.6)
  • 深夜での残業時間 …10時間(割増率:×1.25 + ×1.25 = ×1.5)

であったとすると、その月の割増賃金を含めた残業代は、

1,500円(1時間あたりの賃金)×{20時間 × 1.25(通常の残業)+10時間 × 1.6(休日残業)+ 10時間 × 1.5(深夜残業)}

で計算し、「8万4,000円」であることになります。

ワンポイントアドバイス
未払いの残業代を実際に計算してみると、思っていたより大きな額になり驚くこともあるでしょう。未払い残業代の額がある程度大きい場合には、それを請求する際の弁護士費用は会社から支払われる残業代の中から十分負担することができます。ただし、残業代請求は時効が2年間と定められています。未払いの残業代は時効になる前に請求しましょう。

未払い残業代と割増賃金の請求方法

未払いの残業代がある場合、どのように請求すればいいのでしょうか? 最後に、未払い残業代を会社に請求する方法について見ていきましょう。

請求法1 証拠を集める

未払いの残業代を会社に請求するためには、「残業をし、その残業代が未払いであること」を証明するための証拠を集めなければなりません。証拠は、

  • 残業をしたことが証明できるもの
  • 残業についての会社の規定が証明できるもの
  • 残業代が支払われていないことが証明できるもの

の3種類が必要です。

たしかに残業をしたことが証明できるもの

たしかに残業をしたことが証明できるものとして、

  • タイムカード
  • 出勤簿

などがあればいちばん間違いがありません。ただし、それらが手に入らない場合でも、

  • 会社で時間外や休日・深夜したメール
  • 出退勤時間を記したメモ
  • オフィスの入退出記録
  • オフィスのあるビルの出退館記録

などでも証拠として認められます。

残業についての会社の規定が証明できるもの

残業についての会社の規定が証明できるものとして、

  • 雇用契約書・労務契約書
  • 就業規則

などがあります。もし手元にない場合でも、人事部や総務部などに申し出ればコピーをもらうことができるでしょう。

残業代が支払われていないことが証明できるもの

残業代が支払われていないことを示すものは「給与明細」です。

請求法2 会社と交渉する

残業の証拠を集め、残業代を計算したら、まずは会社と交渉します。ただし、従業員から残業代を請求されてもまともに取り合ってくれない会社もあります。この時点で弁護士に相談し、弁護士を代理人として会社に交渉してもらうようにすれば、会社の対応が全く変わることもあります。

請求法3 労働審判に申立てをする

労働審判は、裁判所において会社と交渉するものです。交渉の場に裁判官や専門家が同席をしますので、個別に交渉するより、交渉がまとまる可能性が高くなります。ただし、審判の結果には強制力がありません。

請求法4 訴訟を提起する

会社との直接交渉や労働審判で交渉がまとまらなかった場合には、訴訟を提起することも選択肢となります。訴訟の判決には強制力があり、会社は従わなければなりません。訴訟の途中で判決を待たずに和解が成立することもあります。

ワンポイントアドバイス
未払い残業代を請求する方法は、会社に引き続き残るのか、それとも退職するのかによって大きく変わります。会社に残る場合には穏やかな方法を取らなければならないのに対し、会社を退職するのなら手段を選ばず交渉することができるからです。どのように交渉するのが最善なのかは、弁護士に相談するのが良いでしょう。

割増賃金と未払い残業代は弁護士に相談しよう!

会社に支払いの義務がある未払いの残業代は、泣き寝入りをせずに請求しましょう。しかし、会社が交渉に素直に応じない場合には、1人で交渉するのは心細いこともあるでしょう。

そんなとき、法律の専門家である弁護士に相談することで、素人では思いつかなかったことをアドバイスしてくれたり、よりスムーズな手続きをサポートしてくれたりするでしょう。

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