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変形労働時間制とは?制度の意味と残業・時間外労働の取扱い
この記事で分かること
- 変形労働時間制とは、労働時間を週や月、年といったまとまった単位で管理する制度
- 変形労働時間制でも、平均して「1日8時間、週40時間」以上働いた場合は残業代が出る
- トラブルの解消、残業代の請求は専門の弁護士に相談しよう!
最近では労働者にとって負担の少ない働き方に注目が集まっており、より自由な働き方ができる制度作りが望まれるようになっています。そのような中で「変形労働時間制」という言葉を耳にすることも多くなりましたが、変形労働時間制を導入しているから残業代を支払わなくてもいいと考える方も少なくないようです。実際にはどのような制度なのでしょうか。
変形労働時間制とは?
変形労働時間制とは、労働時間を週や月といったまとまった単位で管理する制度になります。どういうことかというと、たとえば労働基準法では例外を除いて1日の労働時間の上限を原則上「1日8時間」と定めていますが、これを「週40時間」や「月171.4時間」とするということです。
つまり、それまでは1日8時間×5日で40時間であったのが、5時間で終わる日もあれば11時間で終わる日もあるといったような形で週40時間に調整したり、週30時間の時もあれば週50時間の時もあったりするという形で月あたりの労働時間を管理することを意味します。なかには、1年単位の変形労働時間制を採用している企業もあります。
なぜ変形労働時間制をとるのか
変形労働時間制をとる理由は、労働時間削減や効率のよい働き方を提供するためだとされています。というのも、多くの企業が繁忙期と閑散期を有しており、繁忙期にはより多く働いてほしいが、閑散期はそのように働く必要がないという状態の時期があるためです。
繁忙期にはより多く働いてもらうが、それ以外の時は早く帰ってもよいとすることで、メリハリのある働き方ができ、閑散期に労働者が自分の時間を確保できるようになることで、より豊かな生活が送れるということが目的のようです。しかし、このような理想が形骸化し、労働者を苦しめる制度となっているところも多いようです。
週、月、年単位の制度の概要
次に、具体的にどのような制度がとられているのかを説明していきます。週、月、年単位ごとに見ていきましょう。
週単位で行われる変形労働時間制
仕事の内容によっては、飲食店や旅館など繁忙期と閑散期がはっきりしているところがあります。こういった仕事では、1日8時間ではなく、1週間のうち40時間働けばよいとしている場合があります。このように、週単位で労働時間を計算しているのが週単位の変形労働時間制です。しかし、どのような仕事でも週単位の変形労働時間制を用いることができるというわけではありません。
週単位の変形労働時間制を用いることができるのは、「小売業、旅館、料理店および飲食店の30人未満」で、労使協定において1週間40時間以内の時間を定め、その労使協定を所轄の労働基準監督署に届け出ている場合に限られます。さらに、週40時間以内の労働時間を守れば1日20時間×2日といった働き方も認められるかといえばそうではありません。この場合でも1日の労働時間は10時間以内でなければなりません。このような制度が週単位で行われるのが変形労働時間制です。
月単位で行われる変形労働時間制
上でも述べたように、月単位で行われる変形労働時間制とは、月で決められた時間さえ働けば、日ごとの時間のばらつきをあまり気にしないという制度です。月ごとの合計労働時間は、平均して「1日8時間、週40時間」になるように計算されており、28日の場合は160時間、29日の場合は165.7時間、30日の場合は171.4時間、31日の場合は177.1時間となっています。
週単位の変形労働時間制と同様に、導入の際には労使協定で定めて所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。また、休日は1週1日もしくは4週4日以上にしなければなりません。月単位で行われる変形労働時間制を多く導入している企業の種類は、週単位と変わらない部分もありますが、電気やガスなどインフラ系の企業が多いようです。
年単位で行われる変形労働時間制
年単位で行われる変形労働時間制は、1年という長い期間で労働時間を定める制度になります。
この制度を用いれば、たとえば夏季に繁忙期がくる場合、夏季の労働時間を多く設定し、秋季や冬季の労働時間を少なく設定することで、年間の業務時間を短くすることができます。しかしその場合でも、年間の平均労働時間を1日8時間、週40時間になるように計算しなければならず、だいたい365日の場合で2085.7時間、366日の場合で2091.4時間以内とする必要があります。
この場合もやはり、労使協定で定めて所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。年単位で行われる変形労働時間制を用いているのは、夏季休暇や冬季休暇がある教育関係や、採掘業、建設業などが多いようです。
フレックスタイム制との違い
場合によってはフレックスタイム制も変形労働時間制の一環として用いられることが多く、変形労働時間制の一形態としてみなされることもあります。しかし、変形労働時間制では1日の始業時間と終業時間が会社によって定められているのに対し、フレックスタイム制は自分で1日の始業時間と終業時間を自分で定めることができるという違いがあります。
フレックスタイム制を導入している会社によっては、会議の時間など絶対出勤していなければならないコアタイムという勤務制度を用いているところもありますが、基本は自分の裁量に任せられるというところに変形労働時間制との違いがあります。
変形労働時間制のメリット
変形労働時間制のメリットは、何よりもまず年間の労働時間を減らすことができるという点があります。また、仕事がない時は早く帰れるが、給与は変わらないという利点もあります。
しかし、これらのメリットが得られるのは変形労働時間制を本当に採用している会社のみになります。なかには「え、うちの会社と全然違うぞ」と思う方もいるかもしれません。これは変形労働時間制が、実際には経営者側の都合のいいように解釈されて導入されているケースになります。
次に、変形労働時間制が正しくない方法で導入された際のデメリットについて紹介します。
変形労働時間制のデメリット
社員の労働力を搾取したいと考える経営者は、変形労働時間制を「1日8時間以上働かせても、残業代を支払わなくてもよい制度」 と考えている方が少なくありません。
変形労働時間制は、労働時間の計算があいまいに見えてしまうため、うまく言い返せないという方もいるのではないでしょうか。次に、変形労働時間制が導入されることで引き起こされやすいデメリットを紹介します。
そもそも適法でない可能性もある
変形労働時間制を導入している会社の中には、そもそも導入の方法自体が適法ではない可能性がある会社もあります。
特に就業規則や労使協定に変形労働時間制の導入の旨が書かれていないことや、導入された期間の平均労働時間が1日8時間、週40時間になるように計算されていない場合は、すぐに弁護士に相談した方がよいかもしれません。すでに働いた分の残業代を取り戻せる可能性も出てきます。
労働時間をごまかされやすい
変形労働時間制を導入している場合、1日の労働時間はあいまいになりやすいという特徴があります。そのため、自分で毎日記録していないと、あとで計算してみたら実際には平均労働時間が1日8時間、週40時間以上だったということにもなりかねません。この場合でも残業代が支払われていればまだ救われるのですが、そうでない場合もあるようです。
残業代をごまかされやすい
もし経営者側が「うちは変形労働時間制だから残業代は出ない」といった場合にはすぐに労働基準監督署や弁護士に相談した方がよいでしょう。変形労働時間制でも、定められた期間の平均労働時間が1日8時間、週40時間を超えている場合は残業代を支払う必要があります。
弁護士に相談するメリット
変形労働時間制に関連したトラブルが起きた際には、専門の弁護士に相談した方が、トラブルが解決しやすくなります。最後に、弁護士に相談するメリットを紹介します。
残業代を請求できる
まずは何といっても残業代を法的に請求できることがあげられます。残業代は、どの期間であっても平均して1日8時間、週40時間以上働いた場合に支払わなければなりません。個人で会社に請求することもできますが、交渉が難航したり数字をごまかされたりする場合があるため、弁護士に相談することをおすすめします
法的にダメージを与えることができる
これまで労働力を搾取されてきた方は、何とか経営者にダメージを与えたいと考えている方もいるかもしれません。そのような方は、弁護士に相談することで企業のイメージダウンや、他の方の残業代もいっぺんに支払わなければならない状態を作り出すことで、一定のダメージを与えることができます。
また、もし精神的な病が発症した場合は、諸々の補償を受け取ることができるかもしれません。そんなに大事にしたくないという場合も、相談することで大事にせず残業代などを請求することができます。
変形労働時間制のトラブルは弁護士に相談!
変形労働時間制とは、労働時間を週や月、年といったまとまった単位で管理する制度になります。しかしその場合であっても、平均して「1日8時間、週40時間」となるように労働時間を調整しなければなりません。
それ以上働いた場合は、残業代を出さなければなりませんが、そうではない企業も多いようです。もし変形労働時間制でトラブルが起きている場合は、専門の弁護士に相談してはいかがでしょうか。
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