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実の父親なのに子どもの認知ができない?|離婚後300日問題を徹底解説!
この記事で分かること
- 離婚後300日以内に生まれた子は、法律上、前夫の子どもであると見なされる。
- 2016年女性の再婚禁止期間を離婚後6ヶ月から100日に短縮する改正法が成立。
- 離婚後300日問題を解決するためには調停を申し立てる必要がある。
離婚後300日以内に生まれた子供は、法律上前夫の子とされ、前夫の戸籍に入らなければいけません。これによって、自分の実子でも認知できない父親や出生届を出さないことで戸籍がない子供が生じる300日問題が起こっています。これらの問題を解決するためには、調停を起こす必要があります。
離婚後の子供の認知における300日問題とは
民法第772条では、離婚が成立してから300日以内に妊娠・出産した子供は、どのような場合であっても前の夫の子供であると定められています。これによって起こっている様々な問題が、「離婚後300日問題」です。
自動的に前夫の子に
子どもの父親が100%前夫なのであれば問題はありません。しかし、もしそうでなければ非常に厄介です。例えば、夫婦関係が破綻しており、別の男性の子どもを出産した場合、たとえ離婚が成立しても、生まれてきた子どもはなぜか元夫の戸籍に入らなければならないのです。
実の父親でも出生届は受理されない
離婚から6ヶ月以上経ち、前夫とは別の、生まれてくる子供の実の父親と再婚しても、離婚後300日以内に生まれた子は、法律上、前夫の子どもであると見なされます。
自動的に母親の前の夫の戸籍に入ることになってしまい、前夫の子としてしか出生届も受理されません。
戸籍のない子供になる
離婚した前夫の戸籍になど一瞬でも入れたくないと考える母親もいます。そのために出生届を出さなかったり、実の父親の名前を書いても受理されないために、戸籍のない子どもが存在することになるケースが現実に起きています。
離婚した後、法律の規定で自分の子供を認知できない
子どもは、母親の体から生まれてきます。そのため、母が誰だかわからないということはありえません。しかし、父親の場合は状況によって、子どもの父が誰だか明確にわからないということが起こりえます。そこで、法律では妊娠についての規定を定めているのです。
子供の認知問題に関わる法律
子供の認知に関する問題は深刻で、子供の将来への影響は計り知れません。ここではそもそも認知とは何なのか、どのような法律の取り決めがあるのかを詳しく見てみましょう。
認知とは
婚姻関係のない男女の間に生まれた子どもを、自分の子であると法的に認めるのが「認知」です。
母親は、子どもが産まれた時点で親子関係にあるのが明らかなので、認知は一般的には、父親が親子関係を認めることを言います。母親の場合は、出産すれば法的な親子関係が生じます。
認知は、正式に認知届を提出することで成立して法律上の親子関係が結ばれ、それに基づいて権利や義務が発生します。
子どもに関する法律の取り決め
認知するとかしないとかいう問題の前に、民法772条では子どもについて以下のような取り決めがされています。
- 妻が婚姻中に妊娠した子供は夫の子供とする
- 結婚して200日経過後もしくは離婚から300日以内に生まれた子供は婚姻中の妊娠とする
仮に、前夫とは長らく別居し、その間、子どもの生まれてくる子どもの父親である男性と暮らしていたとしたら、一般的には母親の新しい恋人や再婚相手の子であると考えるのが自然です。しかし法律上は、離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と解釈され、子どもの戸籍を取得するためには、前夫の子どもとして出生届を出さなければならないのです。
生物学的に親子関係がある父親が認知すると言っても、受け入れられません。
離婚後の子供の認知問題に関する法改正の動き
自分の実の子を認知できなかったり、戸籍のない子どもを生み出してしまったりする問題を受け、民法772条の改正を求める声は高まっています。国も法改正の動きを見せており、少しずつ解決を目指す方向へは向かっているのではないでしょうか。
女性の再婚禁止期間を短縮
2016年に、女性の再婚禁止期間を離婚後6ヶ月としていた民法733条について、100日に短縮する改正法が成立しました。1898年の制定以来はじめての動きであり、100年以上続いた夫婦のあり方に一石が投じられました。
改正のポイント
改正法では、離婚禁止期間を6ヶ月から100日に短縮した上で、離婚時に妊娠しておらず、離婚後に出産した場合、「100日」の禁止期間も適用されず、すぐに再婚できるとなっている。
場合によっては、再婚禁止期間が実質ゼロに近づいたのです。
「100日」が残った理由
改正されたにも関わらず、「100日」という期間が残ってしまったのは、前述の民法772条との兼ね合いであると考えられます。
もしすぐに再婚した場合、離婚後から200日~300日の間に子が生まれると、前夫と現夫で推定が重なってしまうため、100日の再婚禁止期間が残ったのではないでしょうか。
離婚後妊娠の証明が鍵
2007年5月21日より、離婚後の妊娠であることを医師が証明した場合のみ、実際の父親の子として出生届が受理されることになっています。しかし、年間約3000人に上るとされる「離婚後300日問題」対象の子のうち、この方法で救済されるのは約1割と言われています。
離婚後、実の父親として子供を認知してもらう解決法
それでは、対象となる期間に生まれてきた子は、本当の父親の子として認められることはないのでしょうか。ここでは、生まれた子どもと前夫との法的親子関係を解消し、実の父親と親子関係を結ぶための、3つの調停方法をご紹介します。
解決のための調停
離婚後300日問題を解決するためには調停を申し立てる必要があります。その種類は3つあり、それぞれ申立てできる人や期限が決まっていますので、確認して動きましょう。認められれば実の父親と親子関係を結ぶことが可能です。
嫡出否認調停
生まれてくる、もしくは生まれた子が自分の子どもではないと、前夫に申し立ててもらうのが、嫡出否認調停です。調停を通して元夫婦の子ではないと双方が合意し、家庭裁判所が調査によりそれが事実と認めれば、前夫と子どもの間に親子関係がないと認められます。
この調停を行えるのは、子どもが生まれてから1年以内
前夫が一度でも自分の子だと認めてしまうと使えない手段なので、注意してください。
親子関係不存在確認調停
生まれた子ども自身、母、実の父親だけでなくその両親も行うことができるのが、親子関係不存在確認調停です。離婚後300日以内に生まれた子どもであっても、前夫が海外へ長期単身赴任していたり、受刑中であったりして、妻を妊娠させられる可能性が客観的に無いことが明白であると認められれば、子どもとの親子関係を解消することができます。この調停は申立ての期限はありません。
認知調停
離婚前に妊娠していた場合でも、前夫とすでに別居していたことなどが証明できるのであれば、母は、子の実の父親を相手に認知調停を行えます。その調停が成立すれば前夫の子ではないと認められます。
調停中でも行える手続き
出生届は子どもが生まれてから14日以内に提出しなければならないことが、戸籍法に定められています。調停中の場合、結果を待ってから出生届を提出したいとなれば14日以内に間に合わない可能性は高くなります。出生届を出せなければ戸籍は作れませんが、できる手続きはあります。
住民票は作れる
戸籍は国が管理しているものですが、住民票は自治体が管理しているものです。実は、戸籍がない人でも日本の市区町村に住んでいれば、住民票を作成することは可能なのです。
住民票さえあれば受けられる公的サービスも存在します。
出生届を出していないけれど住民票を作りたい場合は、お住まいの市区町村役場に相談してみてください。調停を行っていることを伝えれば、出生届を提出していなくても、子どもの住民票を作成してもらえるでしょう。
健康保険も入れる
以前は、国民健康保険は住民票がないと加入資格がないとされていましたが、平成19年3月の厚生労働省通達により、やむをえず出生届を提出できない場合に限り、戸籍も住民票もなくても加入できるようになりました。
離婚後の300日問題では、残念ながら産まれてくる子どもは自動的に前夫の戸籍に入ってしまう可能性が高いです。しかし、今回紹介した対処法を取れば、母親の戸籍・もしくは実の父親の戸籍に子どもを入れることも可能ですので、あきらめずに動いてみてください。
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