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熟年離婚が急増中! 円満離婚のために知っておきたい注意点を解説
この記事で分かること
- 夫の年金は満額を半分受け取れるわけではないことに注意
- 熟年離婚では、財産分与の1つとして退職金を受け取れる場合が多い
- 離婚時にもらえるお金について把握し、離婚後の生活設計をすることが大切
熟年離婚で円満に離婚するためには、離婚時に発生するお金の問題をクリアにしておくことが重要です。特に間違えがちな年金分割や財産分与などについては、正しい知識を持っておきましょう。
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熟年離婚で円満に離婚するためには、離婚時に発生するお金の問題をクリアにしておくことが重要です。特に間違えがちな年金分割や財産分与などについては、正しい知識を持っておきましょう。
熟年離婚での年金分割は必ずしも配偶者の年金を半分ではない
近年、20年以上と長く連れ添った夫婦が50~60歳頃になって離婚する「熟年離婚」が急増しています。熟年離婚を考えたとき、悩んでしまうのが離婚後の生活設計についてです。そこで、熟年離婚を考えるうえでは、離婚後も専業主婦が夫の年金の一部を受け取れる「年金分割」の制度について、正しく把握しておくことが重要になるのです。
国民年金は対象外
2008年4月の年金分割の制度変更 により、届け出をすれば夫婦間の協議や裁判所の決定によらず、専業主婦の妻も自動的に夫の年金の半額がもらえることになりました 。しかし、多くの人が勘違いしていますが、この年金分割制度は、誰もが一律にすべての年金を半分もらえるわけではありません。
2008年4月以降の年金分割制度は、第3号被保険者を対象とした制度であることから、「3号分割制度」と呼ばれます。第3号被保険者とは、会社に勤めている人や公務員に扶養されている配偶者のことです。つまり、自動的に年金が半額もらえるのは、夫か妻が厚生年金か共済年金に加入している被扶養者(専業主婦など)に限り、夫や妻が自営業などで国民年金に加入している場合は3号分割の対象外となります。
年金が半額もらえるのは2008年4月以降の保険料納付分のみ
また、第3号被保険者が自動的に年金をもらえるのは、2008年4月以降に納付した保険料に相当する部分の年金のみです。また、当然ながら、配偶者が婚姻以前に勤めていた期間の納付分に関しては、夫婦が助け合って支払った保険料とはいえないため、年金分割の対象にはなりません。
たとえば、2005年4月に婚姻し2010年4月に離婚が成立した場合、夫か妻が厚生年金・共済年金に加入している被扶養者は、2008年4月から2010年3月に納付した保険料に相当する部分の年金を半額受け取ることができます。2005年4月から2008年3月までに納付した保険料に相当する部分の年金に関しては、夫婦間の話し合い、または、調停や裁判にて分割の割合を決めることになります。これを「合意分割」といいます。
合意分割は国民年金も対象となりますが、その割合は最大半額であり、話し合いや裁判所の決定によっては、もらえる割合が半額より少なくなる可能性があることに注意が必要です。
まずは年金事務所に届け出をして、年金について把握しよう
離婚を決意し年金分割について考える場合は、まず年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を送付し、夫婦であった期間におさめた保険料納付分などについて把握しましょう。ただし、年金分割の請求権は、離婚成立の翌日から2年で消滅するため、期限内に社会保険事務所へ年金分割の届け出を行いましょう。
熟年離婚では財産分与は退職金とマイナスの財産に注意
財産分与とは、婚姻後に夫婦が共同で築いた財産をお互いに分配して清算する意味を持つ制度です。明文化されてはいませんが、裁判所の判例では専業主婦(夫)の場合も財産を半分もらえるとするのが一般的であり、保有している資産によっては、まとまったお金を手に入れられる可能性があります。
熟年離婚で問題となる退職金
退職金が財産分与の対象となるのは、すでに退職金が支払われている場合(退職金の支払いから時間が経っていないとき)と、将来退職金が支払われることの確実性が高いと判断できるとき(定年退職まであと数年など)です。長年連れ添った夫婦が離婚する熟年離婚の場合は、退職金がまだ支払われていなくても将来支払われることが確実であると判断される場合が多く、退職金も財産分与の対象になるといえます。
財産分与として支払ってもらえる退職金の金額は、配偶者がその会社に勤めていた期間のうち、夫婦であった期間に相当する金額の半額とするのが一般的です。たとえば、配偶者が勤めていた期間が40年、その間に夫婦であった期間が25年、将来支払われる退職金が3000万円であると仮定すると、財産分与の対象となる退職金額は3000×25/40=1875万円です。ここから将来受け取るはずの財産を先に受け取ることから発生する利息分を差し引き、さらにその半額が離婚時の財産分与として受け取ることができる退職金の額となります。
マイナスの資産も財産分与の対象となることを忘れずに
現金、預貯金、株や有価証券、車、住宅などの不動産といったプラスの資産のほか、ローン、借金(ギャンブルなどで個人的に築いた借金を除く)などマイナスの資産も財産分与の対象です。財産分与として支払われるのは、プラスの資産からマイナスの資産を差し引いた金額の半額となるので、マイナスの資産が多い場合は想定よりももらえる金額が少ない場合もあることを知っておきましょう。
ただし、マイナスの資産のほうが大きくなる場合は、単純に財産分与の割合が半額となるわけではありません。自身が専業主婦(夫)である、相手よりも経済力が低いといった場合は、個々の事情や状況を考慮して負債の負担額が軽減されることもあるので、話し合いがまとまらなければ家庭裁判所の調停を利用してみるのも1つの方法です。
熟年離婚の場合のマイホームの分割はどうなる
土地や建物などの不動産も夫婦の共有財産です。マイホームがある場合はこれも財産分与の対象となります。しかし、不動産の場合は現金や預貯金のように単純に夫婦で分割するものが難しいもの。マイホームの分割はどのように考えるのでしょうか?
まずはマイホームの評価額を算出
不動産の価格は時期によって異なるため、まずは不動産業者などに査定を依頼して、離婚時のマイホームの評価額を調べましょう。マイホームの資産としての価値は「いくらで売れるか」が重要であり、財産分与の際にマイホームを購入したときの価格は参考にできないことに注意が必要です。
マイホームを売却する場合
離婚に際してマイホームを売却する場合は、売却金からマイホームを現金化する際にかかった経費と支払いが残っているローンを差し引き、残ったお金を夫婦で決めた割合に従って分割します。
マイホームを引き続きどちらかが所有する場合
離婚後もどちらかが住み続ける場合は、マイホームを所有する側がしない側へ、評価額からローン残高を差し引いた金額のうち、財産分与として妥当な金額を支払います。一度に支払うことが難しい場合は、相手の合意を得れば分割支払いにすることも可能です。
離婚原因が相手にある場合は慰謝料を請求しよう
慰謝料は離婚すれば必ずもらえるものではありませんが、離婚、あるいは別居に至った原因が相手方の不倫やDVなどにある場合は、慰謝料として金銭を請求できます。
財産分与と慰謝料は別物
離婚時のお金の問題として慰謝料と財産分与をまとめて考え、「すでに財産分与としていくらか支払ったから、慰謝料は払わない」などといわれる場合があります。しかし、慰謝料と財産分与は本来、性格の異なるものです。
夫婦の共有財産がある限り、財産は夫婦双方の過失の有無を問わず平等に分配されるものです。しかし、慰謝料は不倫などの法律に反する行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金なので、離婚原因がある方は他方に対し、相手に与えた精神的苦痛を、金銭をもって償う義務があります。財産分与はもともとが夫婦の双方に受け取る権利があるものですから、「すでに財産分与を分けたから」という理由で慰謝料の支払いを拒むことはできません。
熟年離婚時にもらえるお金を把握し生活設計を
熟年離婚では離婚後に新たな就職先を探すことも困難になるため、年金分割をはじめとした離婚後にもらえるお金をしっかりと把握して、そのお金で老後の生活をやりくりできるか、事前に生活設計を立てておくことが重要です。
特に、共有財産に関しては、離婚を切り出す前にしっかりと把握することがポイントになります。。婚を切り出してからでは相手に財産を隠される可能性もあるため、可能であれば給与明細や預金通帳などの写真やコピーをとって、証拠として保管しておきましょう。また、年金分割と財産分与は離婚の成立後から2年、離婚慰謝料は3年の請求期限があることにも十分に注意してください。
熟年離婚の場合は、婚姻生活が長く、夫婦で築いてきた財産も多いため、離婚の手続きや財産の把握などが複雑です。できるだけスムーズに損をしないためにも、離婚を考えた際は離婚に強い弁護士などの法律の専門家に相談することをおすすめします。
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