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プロバイダ責任制限法~ネット社会で自分を守るための基礎知識
この記事で分かること
- プロバイダ責任制限法は年々増加するネット上の権利侵害事案を背景に2001年に新たに制定された法律です。
- プロバイダ責任制限法は、プロバイダの責任の制限、および被害者の保護が目的です。
- ネット上での権利侵害被害に遭った場合、迅速な対応が重要です。
プロバイダ責任制限法は2001年に制定された法律で、プロバイダが負う損害賠償責任に一定の制限を設けています。プロバイダ責任制限法は、ネット上でプライバシーの侵害や名誉棄損などのトラブルが発生したときに、プロバイダ(サイトの管理者含む)の責任を制限する法律です。ネット上での権利侵害被害に遭った場合、迅速な対応が重要です。
目次[非表示]
プロバイダ責任制限法とは
ここ数年、ネット上のトラブルが増加しています。いざと言うときに適切な対処をするには、周辺の法律を知っておくことが大切です。
今回紹介するプロバイダ責任制限法もネット社会で自分を守るために知っておくべき法律のひとつです。まずはネットトラブルの実情や、プロバイダ責任制限法について基本的な部分を解説します。
ネット上のトラブルが増えている
インターネットの普及により、誹謗中傷や私的画像の流出といったネットトラブルが増えています。
現実社会で侮辱や名誉棄損を受ければ、相手に賠償請求できますが、インターネットの誹謗中傷はそのほとんどが匿名でなされます。発信者の特定は難しく、賠償請求まで至らないケースが多いのです。
さらにネット上に晒された情報は誰でも簡単にコピーできるので、ひとたび流出すれば瞬く間に拡散してしまいます。特に私的性画像が拡散した場合、被害者はその後、長期に亘って苦しむことになり、解決は容易ではありません。
泣き寝入りになりがち
そしてこの類のネットトラブルは年々増加しています。
被害に遭った場合、ウェブサイトの管理人に依頼して問題の投稿を削除してもらうことも可能ですが、サイト側が応じてくれるとは限りません。
依頼があったものを何でもかんでも削除していると、“あそこのサイトは投稿が削除される”などと悪評が立ち利用者が減ってしまうことも考えられるためです。
このような理由からネットトラブル被害に遭っても泣き寝入りになりがちなのです。
プロバイダ責任制限法とは
こうした時代背景から2001年に新たに制定されたのが「プロバイダ責任制限法」です。正式には“特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律”と言い、プロバイダやサイト管理者の責任を制限する法律です。
今まではネット上で権利侵害があってもその発信者情報の開示について明確な法規定はなく、賠償責任の所在も曖昧だったためプロバイダ側も対処に難儀していました。
つまり、被害者からの発信者情報の開示要請を拒否すれば被害者から訴えられるリスクがあり、要請に応じて情報開示すれば今度は発信者、すなわち書き込み主に訴えられる可能性があったのです。
プロバイダの負う賠償責任に制限を設けた
そこでプロバイダ責任制限法はプロバイダの負う責任に制限を設けました。それによりプロバイダこのジレンマから解放されたのです。
プロバイダ責任制限法について次章から具体的に解説していきます。
プロバイダ責任制限法について深く知る
名誉棄損や著作権の侵害、私的性画像の流出…。インターネット上ではいろいろなトラブルが巻き起こっていますが、ネット社会に生きる我々は誰しも被害に遭う可能性があります。
そしてプロバイダ責任制限法について把握しておくことは、こうした被害から自分を守るためには欠かせないことなのです。
ここではプロバイダ責任制限法とは何か、またどういった役割を果たすのか詳しく解説していきます。
対象はインターネットサービスプロバイダに限らない
プロバイダ責任制限法に記載されている“特定電気通信”とはwebサイトや電子掲示板、インターネット動画やインターネットライブ配信などが該当します。
宛先を指定して送信する電子メールは特定電気通信には当たりません。
そして、プロバイダ責任制限法の対象となるのは特定電気通信の役務を提供する者です。つまりプロバイダ責任とは言うものの、実際にはその対象はインターネットサービスプロバイダに限らず、webサイトの運営者や管理者など広くに渡ることとなります。
プロバイダの負う賠償責任に制限を設けた
プロバイダ責任制限法は、プロバイダの負う賠償責任に制限を設けています。具体的には以下の場合、プロバイダは賠償責任を負う必要がない、とするものです。
権利侵害があった場合に被害者側に生じた損害について
- 権利侵害した情報の送信を防止することが技術的に不可能な場合
- 情報の送信が権利侵害することを知り得なかった場合
権利侵害の申告を受けて当該情報の差し止めをした場合に発信者側に生じた損害について
- 停止措置が必要最低限であり、権利侵害を疑う十分な理由があった場合
プロバイダ責任制限法に基づいて被害者がとれる対応は
つまり、プロバイダ責任制限法が制定されたことで、プロバイダ側の責任が制限されただけでなく、被害者側も泣き寝入りせずに済むようになったわけです。
では、具体的にはネットトラブルの被害に遭った場合、被害者はプロバイダ責任制限法によってどのような対応ができるのでしょうか。
プロバイダ責任制限法の制定により被害者がとれる対応は「発信者情報開示請求」と「送信防止措置請求」です。プロバイダ責任制限法ではこれら2つを行う権利を被害者に認めているのです。
発信者情報開示請求権
まず発信者情報開示請求権とは損害賠償請求をすべく、書き込みを行った発信者情報の開示をプロバイダに請求する権利です。
発信者情報開示請求で発信者を特定する権利
同じ権利侵害でも、同僚の面前で侮辱されたケースなどではその加害者は当然発言者となります。
ところが如何せん、ネット上の誹謗中傷被害では投稿は匿名でなされるので通常のユーザーには加害者すなわち発信者の情報を特定できません。そこで、被害者がプロバイダに対して誹謗中傷の発信者情報を開示するよう請求できる権利を認めたわけです。
開示された発信者情報を基に賠償請求を行う
そして加害者が分かれば損害賠償請求を行うことができます。
開示される発信者情報としては
- 氏名
- 住所
- 登録された電話番号
- IPアドレス
- 投稿日時
- SIMカード識別番号
です。
送信防止措置請求権
送信防止措置請求権とは送信防止措置をプロバイダに依頼する権利のことです。
送信防止措置とは記事の削除や非表示と言った対処のことで、プロバイダに応じてもらうためには依頼書を送付する必要があります。
主張する権利侵害と侵害を主張する根拠の整合性を持たせるよう記載することが大切
違法性を訴えるわけですから送信防止措置依頼書には当然、主張する権利侵害とそれを主張する根拠を記載しなければなりません。
そして依頼書作成で大切なのは、これらの整合をとることです。
例えば、プライバシーの侵害を主張しているにも関わらず、名誉棄損の要件を記載した場合、整合がとれなくなってしまいます。
主張する権利侵害と侵害を主張する根拠に整合性を持たせるよう記載することが大切です。
ただこの辺りの権利侵害の成立要件は複雑なので、自分で作成する場合きちんと調べましょう。
プロバイダ責任制限法について知っておきたいこと
ネットの投稿によるトラブル全般において被害を最小限に抑えるためには、できるだけ早くアクションをとることが大切です。
ネット上の誹謗中傷や名誉棄損、著作権侵害、リベンジポルノなどの恐ろしさは、一旦拡散すると歯止めが効かない点にあります。
それでも被害をなるべく最小限に食い止めるために制定されたのがプロバイダ責任制限法なのですが、対処が遅くなればそれだけ被害は拡大します。
弁護士に依頼するのが得策
権利侵害被害者がプロバイダ責任制限法を最大限に活用するには、弁護士に相談するのが得策です。
ネット上の問題の対応には、スピードと的確な判断が求められます。
誹謗中傷されたことで冷静さを失い、対処を誤り火に油を注ぐ結果となるケースも少なくありません。著名人がネット上で批判されて下手にコメントし事態の悪化を招いたケースも多くあります。
その点、弁護士なら確かな知識と豊富な経験をもってしてうまく対処してくれます。
インターネットに強い弁護士に相談を
ただ、注意すべきは弁護士ならどこの事務所でもよいわけではない点です。
ITの分野には知識はもちろん、経験も要求されます。そのため弁護士の中でもITに強い弁護士事務所に頼むことが大切と言えるのです。
繰り返しになりますが、ネット上の権利侵害はぼやぼやしているとあっという間に被害は深刻になってしまいます。ですから、被害に気付いたら早めに弁護士に相談するのが肝心です。
プロバイダ制限法については弁護士に相談!
プロバイダ責任制限法によって被害者がとれる行動は発信者情報開示請求と送信防止措置依頼ですが、発信者情報の特定には時間がかかることがあります。被害が拡大する前に、早めに送信防止措置依頼をとるようにしましょう。また、ネットトラブルが発生したら、できるだけ早い段階で、ITに強い弁護士に依頼することをおすすめします。