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不正アクセス禁止法とは?逮捕の可能性がある違法行為は
この記事で分かること
- 不正アクセス禁止法は不正アクセスを処罰と防止の2側面から規定した法律です。
- 他人のIDやパスワードを第三者に伝えるだけでも逮捕される可能性があります。
- 何気ない行動も不正アクセス禁止法に触れる可能性があります。
不正にアクセスしたり、他人のIDやパスワードを不正に取得する行為、他人のIDやパスワードを第三者に伝えたり、不正に保管する、入力させる行為も、不正アクセス禁止法で取り締まられています。いつもの行動が不正アクセス禁止法に抵触する可能性があるため、注意が必要です。
目次[非表示]
不正アクセス禁止法とは
ネット犯罪の中でも特に深刻なのが、サイバー犯罪と呼ばれるものです。これに対抗するために制定されたのが「不正アクセス禁止法」です。どのような法律なのか、詳しく解説します。
不正アクセスを2つの測面から規定した法律
不正アクセス禁止法は平成11年に公布、平成13年に施行された法律で、正式には“不正アクセス行為の禁止等に関する法律”と言います。
不正アクセス禁止法は、その第一条で制定の目的について次のように定めています。
“この法律は、不正アクセス行為を禁止するとともに、これについての罰則及びその再発防止のための都道府県公安委員会による援助措置等を定めることにより、電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止及びアクセス制御機能により実現される電気通信に関する秩序の維持を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的とする。”
つまり不正アクセス禁止法は不正アクセス行為について「禁止・罰則」と「再発防止のための行政機関による援助措置」の2つの測面から規定することで、電気通信の維持を図ろうとする法律なのです。
処罰対象となる行為やその罰則は
不正アクセス禁止法の条文によると「電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪」が取り締まりの対象となります。ではどういった行為がこれに該当し、またその罰則はどうなっているのでしょうか。
不正アクセス禁止法において取り締まりの対象となっている行為は、大別するとく次の5つになります。
- 他人のコンピュータのアカウントに不正にアクセスすること
- 他人のコンピュータのIDやパスワードを不正に取得すること
- 不正アクセスを助長すること
- 他人のコンピュータのIDやパスワードを不正に保管すること
- 他人のコンピュータのIDやパスワードの入力を不正に要求すること
罰金刑や長期の懲役刑に処される可能性がある
不正アクセス禁止法に抵触し逮捕されれば、罰金刑にとどまらず長期の懲役刑に処される恐れもあります。
罰則は違反行為の内容によって異なり「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」もしくは「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。
不正アクセス禁止法で逮捕の可能性がある違法行為
これまでは、不正アクセスそのものを禁止する法律は存在しませんでした。
そのため情報の破壊や改ざんなどを伴わない不正アクセスについては処罰できず、ネットワークがサイバー犯罪を始めとする違法行為の温床となっていたのです。
そこで制定されたのがこの不正アクセス禁止法です。ここからは不正アクセス禁止法に抵触する行為を具体的に解説していきます。
不正アクセス行為
不正アクセスとはアクセス権限のない者が通信回線・ネットワークを通じてコンピュータに侵入し情報を不正に取得したり改ざんしたりする行為を指します。不正アクセス行為を働いた場合「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」に問われることがあります。
なりすまし行為やロックを解除する行為など
不正アクセス禁止法第2条において禁止されている不正アクセス行為をまとめると以下のようになります。
- アクセス制御がかかっている特定電子計算機(コンピュータ)に識別符号(IDやパスワード)を入力して制限されている利用を可能にする行為
- アクセス制御がかかっている特定電子計算機に特殊な情報又は指令を入力して、制御されている利用を可能にする行為
- ネットワークで接続された他の特定電子計算機のアクセス制御機能によってアクセス制限がかかっている特定電子計算機に、特殊な情報又は指令を入力して、制御されている利用を可能にする行為
要は不正アクセス行為とは他人のコンピュータのIDやパスワードを不正に利用したり、ロックを解除して利用を可能にする行為を指すのです。
近年問題となっているFacebookやLINEといった情報共有SNSの“アカウントのっとり”はまさにこれに当たります。法に違反し上記行為をした場合、不正アクセス罪で「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」に問われることがあります。
他人の識別符号を不正に取得する
不正アクセスの目的で他人の識別符号を不正に取得する行為を働いた場合、不正取得罪が成立し「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処される可能性があります。
不正アクセス禁止法の第4条では
“何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。”
としています。
『不正アクセス行為の用に供する目的』とは、取得者自身に不正アクセスを行う意図がある場合はもちろん、不正アクセスを行う意図がある第三者に、その事実を知りながら、提供するつもりで、識別符号を取得した場合も含みます。
違反した場合“不正取得罪”が成立し、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処される可能性があります。
何気ない行為も不正アクセス禁止法で取り締まられる
このように不正アクセス行為や、他人のIDやパスワードを不正に取得する行為は不正アクセス禁止法に抵触し、逮捕される可能性があります。
他人のIDやパスワードを第三者に伝える
他人のIDやパスワードを正当な理由なくして提供先に不正アクセス行為の用に供する目的がある第三者に伝えた場合、不正助長罪として罰せられることがあります。
不正アクセス禁止法第五条では“何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。”としています。
つまり、他人のIDやパスワードを正当な理由なくして提供先に不正アクセス行為の用に供する目的がある第三者に伝えてはならない、ということです。
違反した場合“不正助長罪”が成立します。
提供先に不正アクセス行為の用に供する目的があることを知りながら提供した場合、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に、知らなかった場合「30万円以下の罰金刑に処される可能性があります。
他人のIDやパスワードを不正に保管する
他人のIDやパスワードを不正に保管した場合、不正保管罪に問われることがあります。
不正アクセス禁止法は第6条で
“何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、不正に取得されたアクセス制御機能に係る他人の識別符号を保管してはならない。”
としています。
違反した場合“不正保管罪”に問われることがあります。不正保管罪の罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
他人のIDやパスワードを不正に入力させる
他人のIDやパスワードを不正に入力させる、いわゆる“フィッシング行為”を働いた場合、“不正入力要求罪”に問われることがあります。
不正アクセス禁止法は第7条でパスワードや暗証番号などを不正に入力させる行為について禁止しています。フィッシングサイトの構築やいわゆるフィッシング行為がこれに当たります。
違反した場合不正入力要求罪に該当し、1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑に処される可能性があります。
不正アクセス禁止法について知っておきたいこと
不正アクセス禁止法の処罰対象となるのは、何ものっとり行為やフィッシング行為などの悪意に満ちた行動だけではありません。何気ない行動も刑罰に処される可能性があるのです。
LINEの盗み見も違法になる可能性がある
例えば浮気を疑いパートナーのLINEの内容を見た場合、不正アクセス禁止法に抵触する恐れがあります。違法性のポイントはロックを解除したか否かです。
不正アクセス禁止法ではその第3条で“何人も不正アクセスしてはならない”としており、違反した場合不正アクセス罪に問われます。そしてパスワードを解除してログインした上でLINEを盗み見ることは不正アクセスに当たります。
不正アクセス禁止法の知識を持っておくことが大切
そうなればパートナーへの慰謝料請求どころか自分が刑に服すことにもなりかねないわけです。このように、何気ない行動でも不正アクセス禁止法に抵触し得るのです。
うっかり不正アクセス禁止法で禁止されている行為をしてしまわないよう、法の知識を持っておくことが大切です。
被害に遭わないためポイント
ここまでは不正アクセス禁止法の違反行為を侵さないため、つまり加害者にならないための解説をしてきました。しかしながら言わずもがな、被害者になってしまうこともあります。そこでここでは被害に遭わないために気を付けたいことを解説します。
簡単に推測できるパスワードを使わない
一般に広く言われていることですが、類推され得るパスワードを設定しないことは不正アクセス被害にあわないためにも有効な対策と言えます。
不正アクセス禁止法の知識は必須!
近年増加するネット犯罪に対応するために、いろいろな法律が制定されています。
中には一般ユーザーには縁遠いものもありますが、不正アクセス禁止法ではネットユーザーなら、つい行ってしまう可能性がある行為についても処罰対象になります。
不正アクセス禁止法はネット社会に生きる私たちが知っておくべき、法律と言えるのです。