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ストーカー規制法とは?禁止されている行為と違反者への罰則を解説
この記事で分かること
- ストーカー規制法は、つきまとい行為とストーカー行為を規制している
- メールやSNSなどをつかったつきまとい行為も対象
- 尾行や待ち伏せ、SNSなどを使った執拗なメッセージの送信などが禁止行為
- 2年以下の懲役または200万円以下の罰金になることもある
- ストーカー規制法については弁護士に相談
ストーカー規制法は2016年の改正でSNSなどによる付きまとい行為も取り締まりの対象となっており、ストーカー行為を広く取り締まることができるようになっています。ストーカーの被害にあっている方、ストーカーをして逮捕された方など、ストーカー規制法についてのお悩みがある方は、刑事事件に強い弁護士に相談するようにしましょう。
「ストーカー規制法」とは
ストーカーなどの被害が多く発生し社会的な問題になってこともあり、「ストーカー規制法」という法律が制定されています。
この「ストーカー規制法」という法律はいったいどんなものなのか、どんな行為が規制され、処罰の対象となるのでしょうか。まずはこの法律の概要、そして制定に至った背景について解説します。
ストーカー規制法の概要
一般に「ストーカー規制法」と呼ばれることが多いですが、正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。
規制をする対象は「つきまとい等」および「ストーカー行為」です。この法律により、これらの行為を行う者に警告を与え、悪質である場合には逮捕、そして処罰をすることもできるのです。
そこで、具体的にどういった行為が処罰の対象となるのかについて理解することが重要になります。
制定の背景
この法律がなくても、刑法などに該当する犯罪行為であればこれを取り締まることはできます。しかし、ストーカーに関する行為については犯罪であるかどうかの判断が微妙であることも珍しくなく、大きくエスカレートした行為でなければ犯罪として逮捕・処罰することが難しいという状況がありました。
そうした状況のなかで、ストーカー行為が発展して殺人にまで至った事件が発生しました。「桶川ストーカー殺人事件」とも呼ばれる事件で、これは被害者の元交際相手を含む犯人グループから嫌がらせ行為を継続的に受け、最終的には殺害までされてしまったというものです。
この事件などを受けて、2000年にストーカー規制法が制定されました。ストーカー行為による嫌がらせ行為の段階では脅迫罪や名誉毀損罪として取り締まることが難しかったために取り締まることができず、法を新たに制定したことによりその後はストーカーの段階で取り締まることができるようになっています。
しかし、行為の形態も多様化、特に電子機器を使ってストーカーができるようになっていきます。色んな手法でストーカーができるようになっていきますが、法律が追いついておらず、新たに事件が発生してしまいます。
2012年に起こった「逗子ストーカー殺人事件」とも呼ばれる事件です。この事件ではストーカーの被害が把握されていたものの、その時点では電子メールを使ったつきまとい行為に対応しておらず取り締まることができなかったのです。
行為はエスカレートし、殺害にまで至っています。この事件を受け、初めての見直しがなされ、電子メールの連続送信をつきまとい行為として含めるなどの改正がなされました。
2016年の改正で変わったストーカー規制法
2012年の改正では電子メールに関するつきまとい行為が規制できるようになりましたが、この改正後もスマホ等の電子機器を利用したサービス展開は加速、特にSNSが多くの人に利用されるようになります。2012年の改正では規制の範囲が電子メールと解釈できる範囲に限られていましたので、SNS上での行為については取り締まることが難しい状態でした。
そうした中、さらに「小金井ストーカー殺人未遂事件」が発生。この事件ではTwitterなどのSNS上でストーカー行為を行い、殺人未遂にまでエスカレートしたというものです。一部の地域では条例で取り締まることが可能にもしていましたが、この時点ではSNS上の書き込みを規制することが難しかったのです。
そこで、このようなSNS上での行為についても規制できるように改正がなされました。具体的にどのような点が改正されたのか、解説していきます。
主な改正ポイント
2016年に行われた改正では、主にSNS等でメッセージを連続送信することや、ブログなどのWebサイトへの執拗な書き込みなどを規制対象に追加したということがポイントになります。その他、罰則も強化されています。
また、これまではストーカー行為は親告罪として扱われていました。親告罪とは、被害者自身が被害に遭っているということを警察などに告げなければ処罰することができない部類の犯罪ということになるものです。
警察などの捜査機関は親告罪に関して申し出を受けていなくても捜査を始めることはできますが、結局は被害者の告訴などがなければ処罰できませんので、実際のところ被害者の申し出がないと動いてくれないでしょう。しかしこれを非親告罪として扱うことができることで、比較的取り締まりが行いやすくなり、被害が大きくなる前にこれを防ぐことができる可能性も高くなりました。
また、これと趣旨の近い改正としては、緊急時の禁止命令ができるようになった点も挙げられます。基本的には取り締まりに、警告や聴聞等の手続きを要しますが、緊急事態であればこの過程をなしにして禁止命令を出すことができるようにしたのです。これは公安委員会が出すものですが、被害者の申し出がなくてもこの禁止命令は出すことができるとされています。
また、被害者はその行為者に住所や職場等が知られている可能性もあり、そうした場合には場所を移すなどの対応をしていくことが必要です。改正によりこの点の支援についても規定がなされています。国や自治体に対し、被害者の民泊等の支援および公的賃貸住宅への入居を支援するよう努めさせるという内容です。
改正後の逮捕事例
2016年の改正後、SNSでのつきまとい行為をした者について逮捕者も出ています。元交際相手の女性に対してLINE(ライン)を使い、わいせつなメッセージや音声データを継続して送ったとしストーカー規制法違反の疑いにより男が逮捕されたという事件です。
北海道での事件ですが、改正後では全国初の逮捕となっているようです。被害女性はLINEで送信されてくるメッセージ等を無視していたが電話まで来て困っていると警察に相談しており、逮捕にまで至りました。
ストーカー規制法で禁止されている具体的な行為
ストーカー規制法で規制されているのは「つきまとい等」と「ストーカー行為」です。つきまとい行為についてはこの法律の第2条で定義されており、ストーカー行為はつきまとい行為を繰り返した場合に該当します。
要約すると、「特定の者に対する恋愛感情やその他の好意の感情や、その感情が満たされないことをきっかけに、その特定の者やその家族などに対し、つきまとうことや待ち伏せ、SNS等を使った執拗な連絡をしてくること」となります。
行為者の気持ちなど主観が関係し、特に恋愛感情などの好意を抱いている点で特徴的です。さらに、その好意の対象者に対する行為だけでなく、配偶者や直系もしくは同居の親族など、密接な関係を持つ人に対する行為も規制の対象として扱われています。
条文内ではその具体的な行為についても定めがあります。第2条1項における1号から8号までの内容です。その内容と具体例を見ていきましょう。
1:尾行や待ち伏せ行為
特定の者を尾行したり待ち伏せしたりすることは規制行為の第1号にあたります。進路に立ちふさがる行為、自宅に限らず勤務先や学校といった場所で見張る行為についてもこれに該当します。また、こうした住居などの場所の付近をみだりにうろついてもいけません。
2:監視していると告げる行為
実際に監視をしていなくても、監視をしていると思わせるようなことを告げるのはその者に精神的な負担をかけます。第2号ではこうした行為を規制しています。間接的にこれを告げる行為についても対象とされます。
たとえば、行動や服装をメール等の方法により伝えることがこれにあたり、その者がアクセスすることが分かっているインターネット上の掲示板に同様の内容の書き込みを行うことも同じく禁止されます。
3:交際を求める行為
交際を無理に求めるなど、義務のないことをするよう要求する行為は第3号に該当します。交際の要求、面会を求めること、プレゼントを受け取るよう要求する行為などは規制対象です。
4:乱暴な言動
「乱暴な言動」については程度の問題もあり、どこから規制できるのか、その判別は難しいものの、著しく粗野または乱暴であると取り締まりの対象になると考えられます。家の前でクラクションを鳴らし続けるといった行為もこの第3号に当たる可能性があるでしょう。
5:SNS等でしくこく連絡してくる行為
第5号では、無言電話や執拗な電話、メールやSNSを使った連絡などが規制対象とされており、法改正で大きく変わったポイントでもあります。拒否をしているにもかかわらず携帯電話や勤務先、自宅等にしつこく電話をかけてくる行為は取り締まりの対象です。
メールについてはフリーメールであるかどうかも問わずYahoo!メール、GmailといったWebメールサービスを利用した行為も規制されます。LINEやTwitter、Facebook内におけるメッセージ機能を使っても同様で、幅広く対応できるようになっています。
6:汚物などを送る行為
汚物や動物の死体等、人を不快に思わせる物を自宅等に送ることについては第6号で定められています。
7:名誉に傷をつける行為
特定の者を害する内容のメッセージを告げる、中傷する、名誉を毀損するような文面を送るなどの行為は第7号で定められています。
8:性的羞恥心を侵害する行為
第8号で定められている内容は、性的羞恥心を侵害する行為です。たとえば、わいせつな写真を自宅等に送ることや、電話等により卑わいな言葉を告げて性的羞恥心を害する行為がこれにあたります。
- 1. つきまといや待ち伏せ行為
- 2. 監視していると告げる行為
- 3. 交際を求める行為
- 4. 乱暴な言動
- 5. SNS等でしくこく連絡してくる行為
- 6. 汚物などを送る行為
- 7. 名誉に傷をつける行為
- 8. 性的羞恥心を侵害する行為
違反者への罰則
上記の行為を繰り返す「ストーカー行為」が処罰の対象です。そのため待ち伏せ等をしたからと言って即座に処罰されるということではありません。あくまでこういった行為を繰り返し、ストーカー行為と判断された場合です。
さらに、罰則が適用されるのは基本的に、「その行為により身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害された」または「行動の自由が著しく害される不安を感じたようなケース」です。
処罰までの流れ
基本的な流れとして、まずは警告がなされます。警告は警察署長等により行われ、さらに警告に違反すれば禁止命令が出されます。接近を禁止する命令などが出されます。ただし、こうした手続きを絶対的なものとしてしまうと、臨機応変な対応ができるとは言えず、法改正によって柔軟に対処できるようになっています。
たとえば、被害者の申し出があり、規制対象となる行為を反復するおそれもあるとみられる場合、警告を行うことなく、公安委員会が聴聞をして禁止命令を出すことができると規定されました。
さらに、公安委員会は被害者の申し出がなくても、特に必要があれば同様の過程で禁止命令を出すことできます。また、身体に危険が及ぶ恐れがある場合など、緊急を要する場合なら聴聞の手続きを経ずに禁止命令が出せるようになっています。
禁止命令以前の行為への罰則
禁止命令が出される前の段階では「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処される可能性があります。この内容も2016年における法改正でより重く設定されています。それ以前は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金と定められていました。
また、親告罪から非親告罪になったという大きな変化もあります。先ほども解説しましたが、親告罪でなくなったことで、被害者が申し出なくても処罰される可能性があるということになります。
禁止命令に背いた場合の罰則
禁止命令が出されているにもかかわらず、これに背くと「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に処される可能性があります。この罰則も、やはり改正により厳罰化されています。
その他の事項に違反した場合の罰則
上の2つのように規定されている行為以外について、禁止命令等に違反した者は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることになります。
時効について
ストーカー規制法違反による処罰でも、通常の犯罪同様、刑事訴訟法第250条の規定に従い、時効が適用されます。そのため、「3年」が時効です。
ストーカー規制法については弁護士に相談!
このページでは、ストーカー規制法で禁止されている行為や、違反者への罰則について解説してきました。
「つきまとい等」として、尾行や待ち伏せ、LINEなどのSNSを使った執拗なメッセージの送信などが禁止されます。そしてこれらをさらに繰り返すと「ストーカー行為」として処罰の対象となるのです。
この法律に違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があり、禁止命令が出されているにもかかわらず違反するとさらに重い罰則が適用されます。
ストーカー規制法違反によって逮捕された場合には、できるだけ早い段階で、刑事事件に強い弁護士に相談するようにしましょう。また、行為者にそのつもりがなくてもストーカー扱いをされてしまうこともあります。冤罪などの可能性もありますので、加害者であるかのように扱われている場合であっても弁護士に相談してみると良いでしょう。
弁護士にはそれぞれの得意分野がありますので、刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
- 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
- 23日間以内の迅速な対応が必要
- 不起訴の可能性を上げることが大事
- 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
- 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実