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マンションの管理費滞納への対処法~督促から法的手続き移行時の判断基準

この記事で分かること

  • 管理費の滞納は予防対策がまず重要
  • 管理費滞納が発生したら初期対応は迅速に!
  • 法的措置では、強制執行で財産を差し押さえることもできる

マンションの管理費滞納は、マンション全体にとって大きな弊害がありますので、適正に対処しなくてはなりません。この記事では、管理費滞納の予防対策や、初期対応、法的措置の流れなどについて解説します。

管理費の滞納は予防対策がまず重要!

マンションを購入すると、多くの場合、管理を毎月支払うことになります。管理費はマンション共用部分の修繕などに使われるもので、住民が公平に負担することが求められます。
管理費の滞納は、そのマンションに住む住民の間で不公平が生じるため問題です。

管理費の滞納は、予防対策がまず重要です。管理費滞納の予防法について見ていきましょう。

管理費滞納の予防法

管理費滞納を予防する方法は、次のようなものがあります。

管理費滞納発生時のマニュアル作成

管理費の滞納が発生したら、初期対応を迅速に行うことが重要です。また、時間が経っても支払いが得られなければ、法的措置も講じていかなくてはなりません。したがって、管理費滞納発生時の対処法について、マニュアルを作成しておきましょう。

特に、管理費発生初期はマンションの管理会社と、法的措置は弁護士と、連携を取らなくてはなりません。連携の方法もきちんと明記しておく必要があるでしょう。

管理費徴収方法の簡略化

管理費の徴収方法が面倒だと、滞納も発生しやすくなります。管理費徴収は、銀行口座からの自動引き落としを利用しましょう。

管理費の必要性の周知

マンションの管理費が、マンションの資産価値を長期的に維持していくために必要なものであること、および管理費の支払いはマンション住民の義務であることを、住人に対して日常的に周知しましょう。管理費の使途を、毎年公開していくことも大切です。

管理費滞納のペナルティーを策定する

管理費滞納があった場合のペナルティーを決めておくことも大切です。高率(14~20%程度)の遅延損害金を設定することも効果的です。また、滞納者の氏名を公表することなども、管理費滞納の抑止に効果があるでしょう。

ワンポイントアドバイス
管理費の滞納は、マンション全体にとって大きな弊害があります。まずは、できるかぎり管理費滞納が発生しないよう、予防策を講じましょう。どのような予防策がより効果的かは、不動産トラブルが専門の弁護士に相談することもおすすめです。

管理費滞納が起きた場合の初期対応は?

管理費対応が起きたら、初期対応は迅速に行うことが大切です。ここでは、管理費を督促する流れについて見ていきます。

管理費滞納が発生したら迅速な対応が重要

管理費滞納が発生したら、迅速に対応しましょう。時間が経てば経つほど、回収は困難になるからです。

滞納額が大きくなるほど回収は困難になる

管理費は、月ごとに見れば2~3万円が一般的です。したがって、支払うのは難しくないように思えますが、時間が経ち、滞納額がかさんでくると、支払いは困難になっていきます。管理費の滞納は、まだ額が小さい初期のうちに、迅速に対応することが大切です。

滞納者への請求や交渉は記録に残そう

滞納者へ管理費を督促する際、かならず日時と対応者、請求や交渉の状況などについて、記録に残しておきましょう。記録は、法的措置を検討する際、弁護士と相談するにも必要ですし、裁判所でも、重要な証拠として採用されます。

滞納管理費を督促する流れ

滞納された管理費を請求する、一般的な流れを紹介します。実際の対応方法については、上で解説した通り、管理組合でマニュアル化しておきましょう。

ステップ1 電話によって督促する

滞納が発生したら、まずは管理会社から、電話で督促を行います。滞納が発生してから何日後に電話するかは、マニュアルに記載しておきましょう。この時点ではまだ、滞納の理由がわかりません。丁寧な対応を心がけることが大切です。

「支払いを忘れた」「自動引き落としの口座にお金を入れ忘れた」などのことが滞納の理由なら、すぐに支払ってもらえるようにお願いしましょう。経済的困窮が理由なら、その原因や、いつになったら支払いが可能になるのか、などを確認します。意図的な支払い拒否なら、管理費はマンション全体にとって必要なものであり、支払いの義務があることを伝え、説得の必要があるでしょう。

ステップ2 訪問して督促する

滞納が2ヶ月連続して続いたら、やはり管理会社から、自宅を訪問しての督促を行いましょう。また、文書で督促状を送付することも効果があります。この際、管理会社に督促を任せきりにしないことが大切です。管理会社から逐一報告を受けながら、管理組合としても、状況をきちんと把握しましょう。

ステップ3 配達証明付き内容証明郵便で督促する

滞納が発生して3ヶ月程度経ったら、管理組合から、配達証明付きの内容証明郵便で督促を行います。内容証明郵便を送ることは、「これ以上滞納を続けると法的措置に移行する」ことを予告する意味があり、滞納者に対して心理的な効果が期待できます。

内容証明郵便は、通常は管理組合の理事長名で送ります。しかし、より効果を高めたい場合には、この時点で弁護士に相談し、弁護士名で送ることも検討の余地があるでしょう。また、このタイミングで、ペナルティーとして遅延損害金を付加することもおすすめです。

ステップ4 法的措置の検討

滞納が発生して6ヶ月程度が経った時点が、法的措置を検討するには適切なタイミングとなるでしょう。それと同時に、氏名の公表など、より強いペナルティーを加えることも検討しましょう。

ワンポイントアドバイス
滞納が6ヶ月以上続いたら、管理会社や管理組合からこれ以上督促しても、支払いは見込めないと考えるべきでしょう。その後は、裁判所を通じての法的措置に入ることになります。法的措置をどのように講じるかは、早めの段階で、弁護士などの専門家に相談しておきましょう。

管理費滞納への法的措置の流れ

管理費を支払うように再三お願いをしても、支払いに応じてもらえない場合は、いよいよ法的措置にうつりましょう。
管理費滞納者に対する法的措置の流れは、次のようになります。

ステップ1 支払督促

支払督促は、滞納管理費を回収するために、まず講ずる法的措置として、一般的に行われます。

証拠書類の審査だけで裁判所から支払督促が送られる

支払督促は、裁判所から管理費滞納者に対して督促状が送られます。裁判所から送られる督促状は、管理会社や管理組合から送られるものと比べ、心理的効果ははるかに大きいと言えるでしょう。支払督促を申し立てるためには、通常の裁判のように、裁判所へ行く必要がありません。手続きは書類審査のみですので、比較的簡単に行えます。

2週間以内に滞納者から異議がでなければ確定判決と同一の効力

支払督促が送られて、2週間以内に滞納者が異議を申し立てなければ、支払督促は、裁判で確定判決が出たのと全く同じ効果があります。その場合には、差し押さえなどの強制執行も可能となります。もし、滞納者が異議を申し立てた場合には、訴訟へ移行することとなります。

ステップ2 少額訴訟

滞納管理費の回収を目的とした訴訟として、少額訴訟は一般的に取られる方法です。

滞納額が60万円以下の訴訟について行うことができる

少額訴訟は、滞納管理費の額が60万円以下の場合に利用することができます。通常、訴訟では複数回の期日が設けられますが、少額訴訟は1回の期日で審理を終了します。口頭弁論が行われると、即座に判決が言い渡されます。

管理費滞納の法的措置として少額訴訟はおすすめ

管理費の滞納は、6ヶ月程度で法的措置に移った場合、60万円を超えることは少ないでしょう。1回の期日で終了し、通常の訴訟と比べて時間と費用もかからない少額訴訟は、管理費滞納に対する法的措置として、一般的に取られる方法です。もし、滞納管理費が60万円を超える場合は、通常の訴訟を行います。

ステップ3 強制執行(差し押さえ)

支払督促や少額訴訟で処分が確定しても、滞納者が管理費を支払わない場合には、強制執行を行って、財産を差し押さえることになります。差し押さえる財産は、勤務先の給料や銀行預金、自動車などが一般的です。

また、管理費滞納者が非常に悪質とみなされる場合には、滞納者のマンション区分所有権を競売し、滞納者をマンションから追い出すこともできます。ただし、裁判所に競売が認められるためには条件が厳しいため、弁護士とよく相談する必要があるでしょう。

ワンポイントアドバイス
滞納された管理費は、支払督促や少額訴訟などの比較的簡単でありながら強力な法的措置により、回収することができます。弁護士と相談しながら、慎重に手続きを進めましょう。

管理費の滞納は弁護士に相談しよう!

マンション管理組合の理事は、なりたくてなる人は少ないでしょう。ましてや、管理費を滞納するのも同じマンションの住人ですので、「トラブルにはしたくない」と思うこともあるかもしれません。しかし、管理費滞納は放置すると大きな問題に発展し、回収が困難になることもあります。早期のうちに、きちんと解決するのがおすすめです。その際に、法律を熟知し、交渉をタフに行う弁護士のような専門家に相談することは重要です。
管理費の滞納などのトラブルが発生したら、できるだけはやく、不動産に強い弁護士に相談しましょう。

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