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症状固定が交通事故の後遺障害認定のタイミング|医師によって対応が違う?
この記事で分かること
- 症状固定までの日数が長いほど損害賠償金は高くなる。
- 症状固定のタイミングを決める際、最も重要なのは医師の判断。
- 症状固定までを遅くすれば被害者に有利というわけではない。
交通事故でのけがに対する損害賠償金は、症状固定までの日数が長いほど金額が高くなるのが通常です。早く症状固定してほしいと保険会社からプレッシャーをかけられても、今後まだ治療の効果が出そうかどうか、医師に確認することが大切です。
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損害賠償金と医師による症状固定の診断
「症状固定」とは、これ以上けがの治療を続けても大幅な回復はないと見込まれる状態のことです。症状固定は医学上の用語ではありませんが、示談交渉を進めるために必要な区切りをつける意味があります。つまり症状固定の前後で損害賠償請求の内容が変わります。
症状固定前(障害部分)の損害賠償金
症状固定前、つまりけがの治療期間に対する損害賠償金には、医療関係費、休業損害、慰謝料があります。いずれも症状固定までの日数が長いほど金額が高くなるのが通常です。金額の相場には強制(自賠責)保険、任意保険、弁護士会の3つの基準があり、弁護士会の基準が最も高額となります。
医療関係費
医療関係費は、けがの治療にかかった治療費はもちろん、入院・通院にかかったさまざまな費用を実費で請求できるものです。職業看護人や近親者が付き添った日数に応じて発生する付添看護費や、病室で使う日用品の購入費、通院時の交通費などです。
休業損害
交通事故の被害者は、けがで入院や治療を余儀なくされると仕事ができなくなり、収入が減ってしまいます。この場合の損害を加害者側に請求できるのが休業損害です。会社員などが入院・通院のために有給休暇を使った場合も休業損害を請求可能です。
慰謝料
慰謝料は、事故のけがによる精神的・肉体的苦痛に対する賠償を請求するものです。弁護士会の基準では入院・通院の期間の長さに応じて慰謝料の価格帯が決まっていて、特に症状が重い場合は上限額の2割程度を加算することも可能です。
症状固定後(後遺障害部分)の損害賠賠償金
交通事故で後遺障害が残った場合、被害者に支払われる損害賠償額は後遺障害の等級(1〜14級)に応じて異なります。等級認定を受けるためには、けがと後遺障害を便宜上分ける「症状固定」を行い、医師に診断書を書いてもらう必要があるのです。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害の影響で働けなくなり収入が減った分の推計金額のことです。後遺障害の等級に応じて労働能力喪失率が決まっていて、これと事故前の年収や後遺障害が仕事に与える影響の大きさなどをもとに金額を算出します。就労可能期年数は原則として67歳までとなっています。一方、後遺障害が残っても仕事に影響がなく収入が減らない場合、逸失利益は認められません。
慰謝料
慰謝料は、後遺障害による精神的・肉体的苦痛に対する賠償を請求するものです。等級ごとに慰謝料の目安が決まっていて、弁護士会の基準では最も症状が重い1級は2,700〜3,100万円、最も軽い14級は90〜120万円となっています。
症状固定のタイミングは医師と相談「慎重に判断を」
けがを治療すると症状は回復していきますが、ある時点から調子の良い日と悪い日が交互に訪れて治療の効果が出なくなってきます。それが症状固定のタイミングなのですが、示談交渉で不利にならないためにはどのように決めればいいのでしょうか。
症状固定のタイミングは誰が決める?
症状固定のタイミングは、加害者と被害者の間でもめやすい問題です。損害賠償を支払う加害者側は「早く症状固定して傷害部分の賠償額を抑えたい」と考える一方、被害者側は「本当にこれ以上治療の効果が出ないのか?」と望みを捨てたくないからです。
症状固定のタイミング医師の判断を仰ぐ
交通事故の示談交渉の相手は加害者本人ではなく保険会社の示談担当者となることがほとんどです。被害者がけがの治療を開始してから数ヶ月経つと、担当者から「そろそろ症状固定してください」と言われることがあります。傷害部分の賠償金を早めに打ち切って金額を抑えるためです。しかし症状固定のタイミングを決める際、最も重要なのは医師の判断です。保険会社からプレッシャーをかけられたからといって症状固定を焦らず、今後まだ治療の効果が出そうかどうか、医師に確認しましょう。
納得がいかなければセカンドオピニオン
医師が「これ以上治療の効果は望めない」と判断しても、けがを負った本人は納得がいかない場合もあるでしょう。そんな時は別の医師にセカンドオピニオンを求めてみるのも一つの手です。もしセカンドオピニオンでも症状固定が妥当と判断され、被害者本人も受け入れた場合は、再び主治医の診察を受けて後遺障害の診断書を書いてもらいます。
症状固定までの期間
治療開始から症状固定までの期間はどれくらいを目安にすればいいのでしょうか。これは、けが・症状の種類や被害者の体力・年齢、さらには診察する医師よって様々なので、一概に言うことはできません。以下に挙げる例は一般的なケースです。
むち打ち
むち打ちは、頚椎捻挫で首・肩に痛みやしびれが出る症状などのことで、近年の交通事故でよくみられるけがです。症状固定のタイミングは治療開始から6か月を目安に検討するケースが多いようです。
骨折
骨折は、骨が折れたりヒビが入った部分を正常に癒合させる治療を行います。一般的には完治するイメージが強いけがですが、変形して癒合したり、うまく癒合できないケースもあり、後遺障害が残ることもあるのです。症状固定までの期間は若い人ほど早い傾向がありますが、骨が癒合するまで6か月〜1年程度のケースが多いようです。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、交通事故などで脳が損傷し、感情のコントロール、集中力、記憶力など認知機能の一部が正常に働かなくなる症状です。症状固定には、脳の損傷部分の回復と、リハビリによる症状の改善度合いの両方を見て判断する必要があります。症状固定の時期は1〜2年程度と比較的長期間かかることが多いようです。
医師による症状固定のメリット・デメリットや注意点
後遺障害が残るけがの場合、症状固定後に示談交渉が始まります。症状固定は必ずいつか訪れるタイミングですが、被害者にとってどのような意味を持つかを理解して時期を検討しましょう。
症状固定のメリット・デメリット
症状固定のタイミングは損害賠償額を大きく左右します。症状固定までの期間を故意に伸ばすことは禁物ですが、一概に「遅くすれば被害者に有利」というわけでもありません。症状固定のメリット・デメリットを知っておけば、適切な判断の一助となります。
症状固定のメリット
症状固定のメリットは、損害賠償金の支払いに向けて具体的に話が進み始めることです。交通事故の被害に遭って後遺症が残るほどのけがを負った場合、示談交渉がまとまって損害賠償金が実際に支払われるまでには、少なくとも数ヶ月かかります。被害者を金銭面で救済する各種制度を活用しても、けがによる収入減と支出の増加で生活がくるしくなることもあるでしょう。焦って示談するのは禁物ですが、交渉が始まれば生活再建の道筋が見えてくるはずです。
症状固定のデメリット
症状固定のデメリットは、治療費や通院の交通費などを相手に負担してもらえなくなることです。また、休業損害や慰謝料も日数に応じて支払われるので、対象期間が終了します。もし、保険会社のプレッシャーに負けて早めに症状固定してしまい、さらに治療期間が短いことを理由に後遺障害の等級認定が受けられなかった場合は、受け取れる損害賠償金が少なくなってしまいます。
症状固定の注意点
症状固定が決まったら、医師に診断書を書いてもらい、後遺障害の等級認定や示談交渉に入っていきます。それぞれの段階でどのような注意点があるのでしょうか。
等級認定は「被害者請求」を
後遺障害の等級認定の手続きには2種類の方法があります。加害者側の保険会社が書類を準備する「事前認定」と、被害者が自ら必要書類を揃えて後遺障害を立証する「被害者請求」です。どちらの方法でも認定を行うのは第三者機関ですが、保険会社は加害者の代理人なので、被害者に有利になるように手続きを進めてくれるとは考え難いです。等級認定には被害者請求を選んだほうが、等級認定が受けられる工夫を盛り込みやすくなります。
示談成立後に後遺症
示談で決まった内容は原則として覆すことができません。しかし、もし示談成立後に後遺症が出てきた場合は、後遺障害に対する損害賠償請求が可能です。このような事態に備えて、後遺障害の発症時には別途請求を行う旨を示談書に記載しておくと安心です。なお後遺障害の損害賠償請求権の時効は、事故発生日ではなく、医師が後遺障害の診断書を書いた日を起算日として3年間となっています。
症状固定は医師の意見を優先!損害賠償金については弁護士に相談
症状固定は、保険会社の言いなりにならないことが大切です。保険会社は早く症状固定してほしいために、「まだ決まりませんか?」と催促してくるかもしれませんが、焦って早く決めようとする必要はありません。もちろん、いたずらに引き伸ばすことはできませんが、きちんと必要な期間、治療を受けましょう。保険会社への対抗策や、少しでも多くの損害賠償金を得たい方は、交通事故に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない