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交通事故による脳挫傷~後遺症が残った場合、家族がとるべき対応は?
この記事で分かること
- 脳挫傷を負った場合、家族がとるべき初期対応は精密検査を受けさせること。
- 後遺症が残った場合に家族がとるべきは、後遺障害慰謝料を請求することです。
- 慰謝料以外にも休業損害や逸失利益、介護費などの賠償請求をできることがあります。
脳挫傷の後遺症には、高次脳機能障害・外傷性てんかん・遷延性意識障害があります。後遺症が残った場合に家族がとるべきは、後遺障害慰謝料を請求することです。後遺障害等級認定申請の方法には「事前認定」と「被害者請求」があり、等級申請に際しても弁護士に相談するのが得策です。
目次[非表示]
交通事故による脳挫傷の後遺症
交通事故で頭部に打撲を受けることも少なくありません。その結果、ときに脳組織が損傷を受けるケースもあります。これを“脳挫傷”と呼びます。
脳挫傷を負った場合、初期の対応次第で後遺症の程度が大きく変わってきます。そこで初めに、脳挫傷に関する基本的なことがらや脳挫傷を負った場合に家族がとるべき初期対応について説明していきます。
脳挫傷の症状
まずは脳挫傷の主な症状やその出方、発症のそのメカニズムを見ていきましょう。
- めまい、頭痛 …損傷を受けた脳は腫れ、頭蓋内圧が高まることによって起こります。
- 吐き気や嘔吐 …頭蓋内圧の高まりによって起こります。
- 半身のマヒ・感覚異常…手足のマヒ、痺れなどの感覚異常が起こります。運動や感覚機能は、左脳は右半身を右脳は左半身を司っているので、損傷を受けた方とは逆の身体部位に症状が出ます。
- 言語障害…言語を司る言語中枢は多くの場合左大脳半球に位置するので左脳に損傷を受けた場合に発症します。
- 意識障害(錯乱・けいれん発作)…損傷を受けた細胞は壊死し、脳の活動が低下することによって錯乱状態に陥ったり振戦(ふるえ)が起きたりします。
交通事故で脳挫傷を負った場合家族がとるべき初期対応
脳挫傷とは頭部の打撲などにより脳組織が損傷を受けた状態を言い、程度によっては重度の後遺症が残ります。では、脳挫傷の診断を受けた場合家族がとるべき初期対応はどのようなものなのでしょうか。
精密検査を受けさせる
交通事故では全身のどの部位に怪我を負う可能性もあるわけですが、頭部に損傷を受けた場合、深刻な後遺症が残る危険性があります。
重度の後遺症が残ればそれまでできていた日常動作ができなくなる、認知能力が著しく低下するなど生活が大きく変わってしまうことになります。しかし脳挫傷を負っても、早期に傷の具合や範囲・箇所が判明すれば後遺症の程度も軽く済む可能性が高まるのです。
そのため、脳に異常がある可能性を指摘されたらできる限り迅速に、CT検査やMRI検査、RI検査といった精密検査を受けさせるようにすることが重要になります。
弁護士に相談する
また仮に後遺症が残れば、それに応じた賠償金を相手方に請求しなければなりません。交通事故でケガを負った場合示談交渉や各種慰謝料交渉はさることながら、事故とケガとの相当因果関係を立証することなど被害者側がすべきことは山ほどあります。
また、過失割合の算定に関しては、事故当時の道路状況などを詳しく調べる必要がありますがブレーキ痕などは時間が経つと薄れてしまうことがあります。
加えて事故後についた他の車のものとの区別がつきにくくなることも考えられます。そのため事故後すぐに写真に撮るなどし、証拠として残しておくことが重要です。けれどもこれは素人には難しい作業です。
もちろん人身事故の場合警察が実況見分をしていますが、被害者側で証拠を所有しておくに越したことはないでしょう。ですから初期の段階で弁護士に相談しておくべきと言えるのです。
交通事故による脳挫傷で後遺症の種類
脳挫傷によって後遺症が残った場合、家族がとるべきは後遺障害慰謝料の請求することですが請求できる額は後遺症やその程度によって変わってきます。
そこでここでは脳挫傷の後遺症にはどんなものがあるのか、慰謝料請求のポイントなどについて解説していきます。
脳挫傷の後遺症にはどんなものがある?
脳挫傷は脳の損傷であるゆえ、残り得る後遺症は非常に多岐に渡りますが、大きく「高次脳機能障害」「外傷性てんかん」「遷延性意識障害」の3つに分かれます。それぞれについて簡単に見ていきましょう。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは脳にダメージを受けることにより、感情の抑制や言語や記憶・認知能力といった高度な脳機能が阻害される障害です。症状は多岐に渡りその現れ方にも個人差があります。
代表的なものには感情の抑制不能、麻痺や運動障害がないのに着衣着脱や食事などの日常動作がスムーズにできない、簡単なことも記憶できない集中できないなどが挙げられ、多くの場合社会生活に支障をきたします。
ですから社会復帰は難しい場合が多いです。とは言え、ケースによるももの急性期に適切なリハビリをすれば回復する見込みは大いにあります。
外傷性てんかん
てんかんとは慢性的・断続的に意識の消失やけいれんが起こる症状のことです。てんかんの内、外部からの衝撃が原因で発症するものを外傷性てんかんと呼びます。
遷延性意識障害
交通事故による脳挫傷の後遺症で最も重篤な症状です。脳細胞が壊死し、昏睡状態が続きます。意識はなく、体を動かすことはおろか言葉を話すこともできない、いわゆる“植物状態”と言われる症状です。
後遺症が残ったら家族は後遺障害慰謝料認定申請を
脳挫傷で後遺症が残った場合、家族がとるべき対応は後遺障害慰謝料の請求です。そしてそのためには後遺障害等級認定申請をし、後遺障害等級認定を得る必要があります。
後遺障害等級認定とは
後遺障害等級認定とは被害者ごとに異なる後遺障害の症状や程度、損害を正確に把握するために行うものです。交通事故に関しては自賠法施行令別表1および2の後遺障害等級表に定められた等級を基準に後遺障害の損害が見積もられます。
後遺障害は部位や程度によって0~14級までの等級と140種類、35系列に細かく分類され、等級によって労働能力喪失率が定められています。そして脳挫傷の後遺症の内高次脳機能障害に関しては程度に応じて1、2、3、5、7、9級に、外傷性てんかんについては程度に応じて5、7、9級にそれぞれ該当します。
遷延性意識障害については1級になります。
後遺障害等級認定の手続きは裁判になった際にも重視される
交通事故の後遺障害等級認定は、自賠責損害調査事務所が調査を行い、後遺症の有無や後遺障害等級の認定を行います。
この認定は裁判になった場合にも裁判所に尊重されるものです。ですから交通事故では、後遺障害等級認定を得ることが非常に重要なのです。
交通事故での脳挫傷の後遺障害等級認定の申請方法は
では脳挫傷の後遺症で後遺障害等級認定を得るためにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、後遺障害等級認定を獲得する方法やできるだけ高い等級を得るためのポイントを解説していきます。
後遺障害等級認定で高い等級を獲得するには
交通事故の後遺障害等級認定を獲得するには申請が必要です。申請の方法には「事前認定」と「被害者請求」があります。
事前認定
事前認定とは、すべての手続きを加害者側の損保会社に任せる方法です。被害者側が行うのは加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出することのみなので、手間はかかりません。
被害者請求
被害者請求とは被害者自身で必要書類を集め、自賠責損害調査事務所に提出する方法です。手間はかかりますが自分で手続きを行うので認定結果にも納得がいきます。
できるだけ高い等級を得るためには
後遺障害等級の賠償額は等級が一つ違うだけで何十万もの差が生じます。ですから少しでも高い等級を獲得する必要があるのです。ではそのためにはどうすればよいのでしょうか。ここでは高い等級を獲得するためのポイントを紹介します。
被害者請求で申請すること
前述の通り、事前認定においては手続きの一切を相手方の任意保険会社に任せることになるので、被害者としては確かに楽ではあります。しかしながら加害者側の保険会社が手続きを進めるわけですから、被害者有利に事が運ぶことはありません。書類の不備や検査の不足があってももちろん指摘してくれはしません。
他方、被害者自らが必要書類を集め提出する被害者請求では労力がかかりますが、自分で行える分、妥当な認定を得て適正な賠償金を得られるようきちんと研究し提出資料の内容を精査した上で申請することが可能になります。
被害者側が何のアクションも起こさなければ通常事前認定の方法がとられますが、被害者請求を選んだ方が多くの慰謝料や賠償金を得られることは必ず覚えておきましょう。
弁護士に依頼すること
また弁護士に依頼することも大切です。前述の通り、後遺障害等級認定を得るには自賠責調査事務所に認定申請しなければなりません。
必要書類の作成は煩雑で、かつ高度な専門知識が要求されますが、完ぺきに仕上げる必要があります。なぜなら申請手続きや提出書類に不備があれば獲得できる認定も獲得できないからです。
しかし法的知識に乏しい素人には、抜けなくすべての手続きをこなすのは難しいでしょう。その点弁護士に依頼すれば確かな知識と豊富な経験で正しい手続きを踏み、万全の書類を作成することができます。
交通事故での脳挫傷の後遺症について家族が知っておきたいこと
最後に交通事故による脳挫傷で後遺症が残った場合家族が押さえておきたいポイントを解説します。
後遺障害等級慰謝料以外の賠償項目
後遺障害等級認定を得ることができれば、慰謝料以外の賠償金も請求できます。ここでは慰謝料以外の賠償項目の一部を解説します。
休業損害
サラリーマンの場合怪我をして入院を余儀なくされれば会社を休む必要があります。そのことによる損害が休業損害で、保険会社に請求できます。算出式は「事故前の3か月間の収入合計÷90×休業日数」となります。
なお収入の計算方法は職業によって違い、学生など働いていない場合は、賃金センサスにおける平均賃金に基づいて計算することになります。賃金センサスとは年齢や性別、職種や学歴、勤続年数など労働者の属性別の賃金の統計調査をまとめたものです。
逸失利益
事故により後遺障害が残れば事故前と同じように働けなくなるケースが当然出てきます。そのことで給与が減れば将来に渡り経済的な損失を受けることになります。この“得られたはずの利益を逸すること”を逸失利益と呼び、保険会社から補填を受けられるのです。
介護費
例えば遷延性意識障害など極めて重度の後遺障害が残った場合、将来にわたって介護が要になります。介護費は余命年数を基準に算定され、場合によっては非常に高額になる項目と言えますが問題はその必要性の有無です。
後遺障害等級1級や2級では認められることが多いものの、それ以下の等級では必要性がないと判断されることもあります。
賠償額を引き上げるには弁護士に相談を
後遺障害の慰謝料を決める基準は「自賠責基準」「弁護士基準(裁判所基準)」「任意保険基準」があります。
そしてその額は自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準となります。従って賠償額を引き上げるには弁護士に依頼するべきなのです。
弁護士費用について
けれども弁護士に依頼すれば着手金や相談料、成功報酬といった弁護士費用がかかるのも確かです。そこで最後に、弁護士費用について知っておきたいポイントを紹介します。
弁護士費用特約などで費用の負担を減らせることも
裁判になった場合、損害賠償額の10%は被告に負担してもらうことができます。また、弁護士特約を結んでいれば弁護士費用は保険会社が支払ってくれます。また“法テラス”を利用すれば弁護士費用の立て替えをしてもらうことが可能です。
交通事故で脳挫傷による後遺症については弁護士に相談
交通通事故による脳挫傷で後遺症が残ったら、家族は弁護士に依頼することが大切です。弁護士に相談すれば示談交渉や手続きなどを一任できるので精神的な負担も和らぐ利点もありますし、何より被害に遭った家族の傍にいてあげることも可能です。
交通事故にあって、トラブルが生じたら、できるだけ早く弁護士に相談するとよいでしょう。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない