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交通事故の過失割合は誰が決める?警察・保険会社の関わりと決まり方
この記事で分かること
- 過失割合は損害賠償額に影響する。
- 過失割合を決めるのは保険会社。警察は決定に介入できない。
- 過失割合は過去の裁判例をもとに、基本過失と修正要素から決定される。
最終的に支払われる損害賠償金の額を左右するのが、過失割合です。交通事故当事者双方の過失の割合は、過去の裁判例を基本として、加入している保険会社により決定されます。
そもそも過失割合とは?
加害者であれ被害者であれ、交通事故の当事者になると、「過失割合10対0」「8対2」などと耳にすることがあるでしょう。まずは、この過失割合が何を指すのか、どういったときに必要になるのかを押さえていきます。
過失割合は責任の程度のこと
過失割合とは、その交通事故に対して加害者側と被害者側が負う責任の程度を表したものです。たとえば信号機のない交差点での事故など、被害者側にも注意義務違反などの一定の非(過失)が認められるケースが、交通事故では非常に多いものです。
そこで、加害者側から被害者側に損害賠償を支払うときには、事故に対してどちらにどれくらいの責任があるのか双方の過失の割合を決め、被害者の過失の程度に応じて、損害賠償金が差し引かれます。これを、「過失相殺」といいます。
交通事故の過失割合は誰が決める?
では、交通事故の過失割合は誰が決めているのでしょうか?交通事故が起きたときの警察や保険会社の関わり方から見ていきましょう。
過失割合を決定するのは保険会社
交通事故を起こした、または交通事故に巻き込まれた場合は、事故の程度にかかわらず、必ず警察に届けなければなりません。また、警察が現場に到着した後は、事故当時の状況を詳しく聞かれますし、現場の調査も行われます。そのため意外に思われるかもしれませんが、実は、過失割合を決定するのは警察ではなく、被害者や加害者の加入している保険会社なのです。
より厳密にいえば、保険会社が提示してきた過失割合に交通事故の当事者双方が納得したとき、過失割合が決まります。つまり、最終的には、当事者間の話し合いで決定されるのです。もしもどちらか一方が過失割合に納得しない場合は裁判となり、最終的な判断は裁判官にゆだねられます。
過失割合に対する警察の関わり方
それでは、交通事故、あるいは過失割合に対して、警察はどのように関わっているのでしょうか?
交通事故を起こしたときに受ける3つの処分
交通事故を起こすと、加害者となった人は次の3つの処分を受けます。
1.行政処分
交通事故の担当行政である警察が直接関わる処分で、違反による免許の点数減点、免許停止・取り消し、反則金支払いなどがこれにあたります。行政処分の重さは、加害者の過失と被害者の被害状況(けがの状態)によって決まります。当然ながら、被害者側に一定の過失が認められる場合は、被害者も行政処分の対象となります。
2.刑事処分
加害者の過失や被害者のけがの程度によっては、事故を起こした人に罰金や懲役などの刑事罰が科されることもあります。
交通事故が起きると、警察は現場検証や事故当事者へのヒアリングを行い、それらを「実況見分調書」としてまとめ、検察へ送致します。警察から送致された書類をもとに、起訴するかどうかの判断を下すのは検察です。
検察が起訴の必要がないと判断し、不起訴処分となれば刑事処分は科されません。しかし、起訴相当と判断された場合、刑事処分の対象となるかどうか、また、刑事処分の重さは、最終的には裁判で決定されます。
3.民事処分
民事処分は、加害者と被害者の私人間の問題解決、すなわち、賠償金支払いのことを指します。加害者から被害者へ支払われる賠償金額は、双方が加入する保険会社が決定した過失割合によって算出されます。
警察が過失割合の決定を下すことはない
行政処分、刑事処分、民事処分の3つの処分のうち、警察が直接関わるのは行政処分のみです。民事処分は交通事故当事者間の問題ですから、行政の一部である警察が介入することは一切ありません。つまり、警察が民事処分に関わる過失割合の決定に際して、「こちらが悪い」「あちらが悪い」といった判断を下すことはないのです。
交通事故が起きた際に警察が行う現場検証(実況見分)では、警察は事故当事者の双方に、「道路交通法」という法律に照らし合わせて過失がなかったか、過失があった場合はその程度がどのくらいだったかを判断します。これはあくまで、行政処分を決定するために必要なことであり、当事者双方の過失の割合を決定するために行うものではありません。
保険会社が過失割合を決める方法
民事上のトラブルである賠償金支払いのために過失割合を決定するのは、事故当事者に変わって被害者へ賠償金を支払ってくれる保険会社です。では、保険会社はどのようにして過失割合を決めているのでしょうか?
基本過失は過去の裁判例をもとに算出
実は、過去の裁判例から、基本的な過失割合のパターンにはすでに定型のものがあります。
交通事故が起きると、保険会社はまず、加入者本人と示談交渉の相手方(直接交渉するのは相手方が加入する保険会社の担当員)から話を聞き、事故に至るまでの経緯や事故状況などを詳細に把握します。
このとき、加入者本人と相手方の主張に合致しない部分があれば、保険会社が改めて調査を行う場合もあります。しかし、ほとんどのケースでは、被害者・加害者双方の主張と、警察が現場検証後に作成した実況見分調書などから、事故の詳細を把握するのが一般的です。そして、事故状況を、裁判例をもとにした基本過失のパターンに照らし合わせ、適切な過失割合を決めていきます。
基本過失と修正要素
基本的な過失割合は、過去の裁判例からある程度客観的に定めることが可能です。とはいえ、「夜間に走行中だった」「雨で視界が悪かった」「見通しの悪い道路だった」「信号機の設置がない交差点だった」など、似たような事故のパターンでも、状況は個々に異なるものです。
そして、そういった個々の事情を考慮しないまま、裁判例からただ機械的に過失割合を決めていくのでは、被害者・加害者にかかわらず著しく不利益を被るケースも現れかねません。
そこで、裁判例により基本的な過失割合を出した後、道路状況(道幅や見通しなど)、事故が起きた場所(交差点、住宅街、商店街、通学路など)、歩行者の年齢(幼児・児童・老人に該当するか)、運転者の重過失(飲酒運転、無免許運転など)といった個々の事故状況を考慮して過失割合を足し引きし、最終的なそれぞれの過失割合を決定していきます。
基本過失を算出した後に考慮される上記のような修正要素は、要素ごとに5~20%の加算・減算割合が決まっています。
過失割合に納得がいかないときは、弁護士へ相談
このように、交通事故の過失割合は保険会社が勝手に決めるものではなく、ある程度客観的な基準に従って定められています。とはいえ、本来ならばそれほど過失がないにも関わらず、支払う損害賠償の額を減らしたいがために、相手方保険会社がより多く、あなたの過失を主張してくることも珍しくないのが現実です。
加えて、過失割合が10対0、つまり、被害者であるあなたが無過失の交通事故では、あなたの加入している保険会社は示談交渉を代行することができません。十分な法的知識のない状況で、プロの交渉人である相手方保険会社と示談を進めていくことは、不利な立場に立たされるのはもちろんのこと、精神的にも非常に大きな負担となります。
相手方保険会社の提示する過失割合や示談の内容に納得がいかないとき、ご自身では示談を進めていくのが難しいと悩んでいるときは、ぜひ一度、交通事故問題の解決に精通した弁護士などへご相談ください。
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