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玉突き事故~責任の所在が複雑な交通事故・過失割合、損害賠償はどうなる?
この記事で分かること
- 玉突き事故の過失割合の決定は難しい場合がある
- 損害賠償はケガの度合いで異なる
- 弁護士に依頼すると、過失割合の決定から損害賠償の請求までを代理で行ってくれる
玉突き事故は複数台での事故ですので、だいたい決まっているとはいえ過失割合の計算が難しくなります。損害賠償の金額はその過失割合によって決定されますが、損害賠償の金額も弁護士を入れるか入れないかで変わってくる恐れがあります。過失割合や損害賠償の金額の決定をスムーズに行うためには、専門の弁護士に相談することが必要になってきます。
交通事故の玉突き事故とは?
一般に玉突き事故とは、3台以上の追突事故のことをいいます。後ろの車が前の車にぶつかり、その車がさらに前の車にぶつかるといった様がビリヤードの玉突きに似ているので、このような名前が付いています。
過失割合の観点から見ると、玉突き事故には次のようなパターンがあります。過失割合の決定のポイントを押さえながら、3台で事故が起きた場合を想定して見てみましょう。
- 1台目の車にも過失があるケース
- 2台目の車にも過失があるケース
- 3台目の車に一番過失があるケース
過失割合を決定するポイント
まず先に、過失割合を決定するポイントを押さえておきましょう。基本的には、十分な車間距離を開けていれば追突しないはずだと言う考えがあるため、後続の車の割合が高くなります。しかし、その割合を決めるためには、次の2つのポイントが重要です。
- 急ブレーキなど、前の車両の過失となるようなことがあったか
- 高速道路か一般道路か
前の車両に過失があるか
後続の車の過失割合が高くなるということは上で触れましたが、追突事故を考える際に重要なポイントとなるのが、前の車が危険行為をしていないかということです。
たとえ危険行為をしていても、十分な車間距離を開けていれば追突しないと考えられているため、どうしても後続の車の過失割合の方が高くなる傾向がありますが、無意味な急ブレーキなどがあれば、30の割合で前の車にも過失があることが認められます。
ただし、突然飛び出してきたバイクがあったなど、やむを得ない急ブレーキの場合は、過失がないと判断されることもあります。前の車両に過失がなければ、後続の車が100の割合で過失があることになります。
- 前の車に過失がない場合の過失割合 0:100(前の車両:後ろの車両)
- 前の車が無意味な急ブレーキをした場合の一般的な過失割合 30:70
高速道路か一般道路か
さらに過失割合を決定するには、高速道路か一般道路かという基準が用いられます。たとえば上では前の車が無意味な急ブレーキをした場合の過失割合を、30:70(前の車両:後ろの車両)と記しましたが、高速道路では50:50となります。これは、高速道路での無意味な急ブレーキがより危険な行為だとされているためです。
また高速道路では停車や駐車が認められておらず、やむを得ない事情意外で、しかもハザードランプや停止表示機材、発煙筒を使用しないで停止していた場合には、追突された前の車両にも相応の過失が認められます。それでは次に、3台で起きた玉突き事故の場合を想定して具体的な過失割合の例を見ていきましょう。
1台目の車にも過失があるケース
基本的に1台目の車に何も問題がなかった場合、1台目の過失割合は0です。しかし、上でも触れた様に、無意味な急ブレーキなどがあれば、1台目の車の過失割合は一般道で30に、高速で50になります。さらにブレーキランプの故障や、著しい過失があった場合は、1台目の過失割合はもっと高くなる可能性があります。
2台目の車にも過失があるケース
たとえば2台目の車が不用意に急ブレーキをして、3台目の車がそれにぶつかり、その勢いで1台目の車にぶつかったという場合、過失割合はどうなるでしょうか。この場合、2代目の車に原因があるので、2台目の車には一般道で30、高速道路で50の過失割合があることになります。
1台目は0で、3台目には一般道で70、高速道路で50の過失割合があります。つまり、一般道で0:30:70、高速道路で0:50:50の過失割合になります。2代目の車の急ブレーキが原因の事故でも、車間距離を開けていれば追突しないと考えられているため、このような割合になります。
3台目の車に一番過失があるケース
3台での玉突き事故の場合、最も過失割合が高くなるのはだいたい3台目です。これは十分な車間距離を開けていれば追突しないためであり、どうしても追突した方が悪くなるためです。
もし前の2台の車に過失がなく、よそ見運転などで3台目が追突してその勢いで2台目が1台目に追突した場合などには、過失割合は0:0:100になることもあります。また一般道での玉突き事故では、だいたい3台目の過失が70と最も高くなります。
こういった事故を防ぐためには、前の車との車間距離を十分に保っておく必要があります。
交通事故の玉突き事故での損害賠償
玉突き事故で損害を被った場合は、追突してきた相手の保険会社から損害賠償を受け取るという形になります。たとえば先程の「2台目の車にも過失があるケース」ですと、1台目は2台目と3台目に、2台目は3台目の車が加入している保険会社に損害賠償を請求することになります。
車両だけが被害を被ったという物損事故の場合は、車両の修理代程度の金額になりますが、少しでも人がケガをした場合は人身事故になります。人身事故になった場合、治療費や休業損害、慰謝料などが発生し、上記の過失割合にもよりますが、損害賠償は高額になります。このことについて、詳しく見ていきましょう。
人身事故の種類
まず事故が起きたら、警察に連絡をし、その後で保険会社に連絡をします。損害賠償の金額や過失割合は保険会社同士のやり取りで決まる場合が多いですが、もしそれに納得できない場合は、弁護士に相談するという形になります。
人身事故の種類には、傷害、後遺障害、死亡の3つのケースがあり、損害賠償の金額はそれぞれのケースで変化していきます。
- 傷害
- 後遺障害
- 死亡
傷害
損害賠償の金額がもっとも低いのが傷害です。入院期間の長さに関わらず、症状が完治し、その後も身体に毀損状態が残されていない状態を指します。また一般に、損害が小さく、慰謝料は被害者のみが受け取るケースが多いです。休業が余儀なくされた場合は、休業補償もしなければならないでしょう。
後遺障害
後遺障害とは、事故によって受けた傷害が治った後も、肉体的・精神的な毀損状態が残ってしまった状態のことを言います。後遺障害と事故との因果関係が医学的に認められた場合、後遺障害があると判断されます。
後遺障害の場合には、後遺症の重さによって等級が決められていることが多く、後遺症による労働能力の減少が、将来の収入に与える影響を考慮して金額が決定されます。仕事で得られるべき収益が減額された場合は、減額された分の費用も支払う必要があります。後遺障害が残ってしまった場合、損害賠償は高額になる可能性があります。
死亡
最も損害賠償の金額が高額になるのが死亡のケースです。この場合、慰謝料を受け取る対象となる遺族は、被害者の父母や配偶者、子供たちといった多数になることが多く、1億円以上とかなり高額になるケースもあります。
交通事故での損害賠償の算定基準
損害賠償の金額を決定する上で、過失割合のほかに重要な基準があります。それは自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準(弁護士会基準)です。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判基準
自賠責保険基準
自賠責保険の損害額を算定する際に、参照されるのがこの基準です。傷害、後遺障害、死亡のそれぞれのケースで損害賠償の金額が変わってきますが、たとえば「傷害」の場合、自賠責保険の慰謝料は1日4,200円となるなど、ある程度一律の基準が定められています。
任意保険基準
加入している保険会社によって変化してくる基準です。事故の当事者双方が任意保険に加入していれば、保険会社同士の交渉で解決することも多く、その場合にはこの任意保険基準が適応されていると考えてよいでしょう。一般に、自賠責保険基準よりは高額になると言われています。
裁判基準
3つの算定基準のうちで、最も高額になるのがこの裁判基準です。弁護士に処理を依頼すると、この基準が用いられるようになります。時には前者2つの基準の倍近くになることもあります。裁判基準は、裁判の判例などをもとに定められた基準であり、多くの裁判で重要視されています。
一般に「日弁連交通事故相談センター」の出している裁判基準が用いられます。過失が0の場合でも、満足のいく損害賠償が得られるというわけではありません。もし前者2つの基準で算定された金額が不十分ではないと考えられる場合は、弁護士に相談する必要があるでしょう。
交通事故の玉突き事故を起こしたら弁護士へ相談するメリット
以上見てきたように、玉突き事故の過失割合はだいたい決まっているとはいえ、事故によって変化していきます。
また、損害賠償の金額も、弁護士を入れるか入れないかで変わってくる恐れがあります。もし複雑な事故になってしまい、心身共に損害を被ってしまった場合は、専門の弁護士に相談することをおすすめします。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない