1,501view
自賠責保険の被害者請求とは?被害者請求を選ぶべきケースと申請方法
この記事で分かること
- 自賠責保険の保険金請求方法には「加害者請求」と「被害者請求」があります。
- 後遺障害等級認定の被害者請求では、被害者自らが複数の書類を自賠責保険に提出する必要があります。
- 初期段階では示談はせず、仮渡金で治療するのが得策です。
自賠責保険の保険金請求方法には「加害者請求」と「被害者請求」があります。後遺障害等級認定の被害者請求では、被害者自らが複数の書類を自賠責保険に提出する必要があります。手間や時間はかかりますが、最終的に得られる賠償額に大きな違いが出るので後遺障害等級認定請求では被害者請求を選択すべきです。また初期段階では示談はせず、仮渡金で治療するのが得策です。
目次[非表示]
交通事故の損害賠償の基本
交通事故に遭った場合、保険会社から保険金を受け取ることができます。このこと自体は知っていても交通事故などそうそう遭遇するものではないので、詳しくない人も多いでしょう。そこでまずは、交通事故における損害保険について基本的な部分を確認しておきましょう。
損害保険の役割や種類
交通事故に遭った場合、いろいろな損害が発生します。特に人身事故、後遺障害が残った場合などはかかる費用は計り知れません。そこで事故による損害を保険金の給付で填補するのが損害保険です。自動車保険には自賠責保険と任意保険があります。
損害保険の役割とは
交通事故はいつ何時起こるか誰にも予測できません。人身事故、つまり負傷者を伴う事故起こしてしまった場合、慰謝料や治療費などの損害賠償をする必要があります。
加害者の貯金だけで賠償支払いができれば問題ありませんが事故によって後遺障害が残った場合など、賠償額は高額になります。そこで事故による損害を保険金の給付で填補しよう、というのが損害保険なのです。
自賠責保険と任意保険がある
そして自動車保険は大きく自賠責保険と任意保険に分かれます。自賠責保険はすべての車両保有者が自動車損害賠償保障法に基づいて加入を義務付けられている保険です。“強制保険”とも呼ばれ、未加入で運転しただけでも1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
自賠責保険の大きな特徴は補償範囲やその額には上限がある点です。ケガの補償は120万円まで、死亡の補償は3000万円まで、後遺障害の補償は後遺障害等級に応じて75万~4000万円となっています。このように補償範囲が限定的なのは、自賠責保険の目的が事故被害者の救済にあるためです。
自賠責保険でカバーできない部分を補填するのが任意保険です。
自賠責保険の請求方法は2種類
そして自賠責保険に関しては保険金の請求方法が複数あります。
加害者請求と被害者請求
自賠責保険の保険金の請求方法には2通りがあります。もとより保険契約は損害保険会社と保険契約者との契約です。それゆえ通常であれば被保険者、つまり加害者が被害者に損害賠償をした後に加害者が損害保険会社に保険金の請求をする流れになります。これが「加害者請求」です。
そして自賠責保険では被害者が直接自賠責保険会社に損害賠償を請求し支払いを受ける手続きがあります(自賠法第16条)。これが「被害者請求」です。この場合、請求するのは保険金ではないため、“損害賠償額の請求”と呼ばれることもあります。
どちらを選ぶべきかはケースによって異なる
このように自賠責保険には請求方法が2つあるのですが、それぞれどのような利点がありどちらを選べばよいのでしょうか。
実はいずれを選ぶべきかはケースによって異なるのです。今回は被害者請求を選ぶべきケースやその申請方法について次章から詳しく解説していきます。
交通事故の自賠責保険の被害者請求を選択すべきケースは
保険金請求の方法にはケースごとに複数あり、このことが保険金請求の理解を難しくしているといえます。しかし、事故に遭った際に損をしないためにはそれらすべてを正確に把握しておくことが肝心なのです。そこでここでは、保険金請求の形式を押さえた上で被害者請求について深く掘り下げていきます。
保険金請求の方法を理解しておこう
保険金の請求方法については「本請求」や「仮渡金請求」「事前認定」「被害者請求」と、複数あります。何やら難しく感じる人もいるかもしれません。けれどもこれらすべてをきちんと把握しておくことが大切です。
被害者請求の「本請求」と「仮渡金請求」
被害者請求の申請方法には「本請求」と「仮渡金請求」の2通りがあります。まず本請求では被害者のケガの治療が完了、または後遺障害が残った場合に症状固定の状態になり損害がほぼ確定となった時点で請求できます。
賠償の範囲はケガの補償は120万円まで、死亡の補償は3000万円まで、介護を必要とする後遺障害の場合は3000万~4000万、その他後遺障害については等級に応じて75万~3000万円となっています。
仮渡金請求は被害者に経済的余裕がない場合に、損害が確定する前の段階でも請求できます。ただしあくまでも被害者の当面の生活費や治療費に充てるために“仮に支払われる”お金であり、最終的に差額が生じれば返還しなければなりません。
後遺障害が残った場合の事前認定と被害者請求
後遺障害が残った場合の保険金請求の方法には、事前認定と被害者請求の2つがあります。
事前認定とは相手方の任意保険会社が後遺障害等級の認定手続きを行うもので、被害者請求は被害者自らが自賠責に対して後遺障害等級の認定を請求する方法です。どちらを選択するかで最終的に得られる額面に大きな開きがでることになります。
後遺障害等級認定請求では被害者請求を!
後遺障害が残った場合、等級認定は被害者請求で行うべきです。ここでは事前認定との具体的な違いを踏まえてその理由を解説していきます。
後遺障害等級認定で有利になる
まず、被害者請求の方が後遺障害等級認定で有利になります。後遺障害等級認定には様々な書類の提出が必要になるわけですが、事前認定では手続きを進めるのは加害者側の任意保険会社です。
それゆえ楽は楽ですが被害者の利益になるよう事を運ぶはずはなく、提出するのも必要最低限の資料だけです。書類の不備や検査の不足などを指摘してくれることもありません。他方被害者請求では資料の収集などをすべて被害者の側で行う必要がありますが、納得のいく審査をしてもらうことができます。
例えば症状を立証するために有効な書類を提出し、審査の際に参照してもらうことも可能です。また画像所見だけでは症状が分かりにくいケースなどでは医師による意見書など添付することで適切な審査をしてもらうことができるのです。
保険金を前倒しで受け取れる
加えて、示談を待たずに前倒しで保険金を受け取れる点も、被害者請求を選ぶべき理由に挙げられます。
事前認定の場合自賠責の保険金も任意保険会社が支払うので、賠償金を受け取れるのは示談成立後です。一方被害者請求では後遺障害認定されれば、その等級に応じた慰謝料をすぐに受け取ることが可能になります。
交通事故の被害者請求 申請方法は
加害者側の任意保険会社が被害者に自賠責分の保険金も併せて一旦支払い、その後自賠責に支払った分の償還を求める方法を「一括(任意)支払い」と呼びます。
加害者が任意保険に加入している場合、通常この方法がとられます。つまりわざわざ被害者請求で自賠責に直接請求せずとも、治療費や慰謝料は最終的に任意保険会社に支払ってもらえるので、得られる賠償金に違いは出ないことになります。
けれども後遺障害等級認定では結果に大きな差が出るのです。ここでは後遺障害等級認定における被害者請求の申請方法について見ていきましょう。
申請書類を取り寄せる
まずは保険金の申請書類を取り寄せます。複数ありますがすべてきちんと揃える必要があります。必要書類は以下の通りです
保険金請求書
保険金請求書は、自賠責保険から送付されてきます。
交通事故証明書
交通事故証明書は事故の状況(事故の日時や発生場所、当事者の氏名や住所、事故類型、車両番号など)が記載された書類です。各保険会社や警察署、交通安全協会、自動車安全運転センターに申請すれば発行してもらえますし、相手方の任意保険会社に写しをもらうこともできます。
なお交通事故証明書は加害者と示談がまとまらず訴訟を起こす際に、警察が作成した実況見分調書などの資料を取り寄せるときなどにも必要になることがあります。
事故発生状況報告書
自賠責保険から送付される書類です。事故発生状況を詳しく記載しましょう。
診断書・診療報酬明細書
月ごとの診断書と診療報酬明細書も必要です。事故の治療でかかった医療機関に作成してもらいましょう。
印鑑証明書
申請者の印鑑証明書も必要です。
後遺障害診断書
症状固定後、通院先の主治医に作成してもらう書類です。後遺障害の認定や等級はこの書類を基に判断されるので、非常に重要なものです。
治療期間中に撮影した画像
レントゲン写真やMRI、CTなどの治療期間中に撮影した画像を各医療機関で用意してもらいましょう。
その他
その他、状況に応じて陳述書や報告書などを追加で提出することも必要です。
請求先の自賠責保険会社へ提出
これらの資料を集めたら、請求先の自賠責保険会社へ送付します。
認定にかかる期間は1~2か月
結果が出るまで約1か月かかります。遅くなる場合はその旨連絡が入りますが、認定までの期間は症状などによっても変わってくるので、2か月程度を見ておくとよいでしょう。
結果が出ると支払いがされる
後遺障害等級認定結果が出ると、自賠責から通知が来ます。そして間もなく等級に応じた保険金が振り込まれます。
上記書類を集めるのは面倒に感じるかもしれませんが、事前認定で申請した場合とでは最終的に得られる額面に大きな差が出ることになります。被害者請求で申請しましょう。
交通事故の自賠責保険 被害者請求について知っておきたいポイント
ここまで、被害者請求を選択すべきケースやその方法について解説してきました。
実は被害者請求を行う上では注意点があり、それを実践するのとしないのとでは得られる賠償額に大きな差が生ずることとなるのです。最後に自賠責保険の被害者請求について知っておきたいポイントを紹介します。
被害者請求で損をしないためのポイントは
被害者請求に際しては損をしないためのポイントがいくつかあります。どんなことなのでしょうか。
初期の内は示談はせず仮渡金で治療する
まず、治療の初期段階では仮渡金の給付を受け、治療費に充てることが大切です。この段階では加害者が示談を持ちかけてきても応じないようにしましょう。と言うのも、交通事故の後遺症は受傷から発症までにタイムラグがある場合があるからです。
代表的なのがむち打ち症です。むち打ち症は事故後しばらく経ってから症状が現れます。ですから、後遺障害等級認定のことを考えても示談を急ぐのはリスキーなのです。
健康保険を利用する
健康保険を利用すれば病院に支払う額は3割負担で済みます。最終的には加害者に請求できるのだから、健康保険を使っても使わなくても問題にはならないと考えるかもしれません。けれどもそうではないのです。
前述の通り自賠責保険には補償額に120万の上限が設けられていますが、交通事故では治療費以外にも請求できる損害賠償が多くあり、治療費以外だけで保険金の枠を使ってしまえば損をすることになります。
つまり健康保険を使うと治療費負担が軽くなり、請求額に上限のある保険金を他の賠償に充てられるわけです。
弁護士に依頼するのが得策
そして、交通事故の賠償請求は弁護士に依頼するのが得策です。
後遺障害等級認定も安心
前章で解説した通り、後遺障害等級認定請求では被害者請求を行うべきですが、その手続きは非常に煩雑で必要書類も多いです。事故により心身ともに疲れ切っている被害者が独力で挑むには、少しハードルが高いと言えます。
また後遺障害等級の最も低い14級でさえ、獲得するのは困難です。仮に手続きそのものは進められたとしても、書類に不備があったりすれば等級認定はまず獲得できないでしょう。その点弁護士に依頼すればすべての手続きを抜けなく行ってくれます。
賠償額も引き上げ可能
慰謝料など損害賠償の支払い基準には一般に「自賠責保険基準」と「弁護士基準(裁判基準)」「任意保険基準」の3つがあります。
そしてその額は通常、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準となります。つまり弁護士に依頼した場合が最も多額の賠償金を得られることになるのです。
被害者請求については、弁護士に相談!
自賠責保険において被害者請求はキーとなるポイントです。慣れない内は複雑に感じる方も多いでしょうが、必ず正確に押さえておくことが必要です。いざという時に損をしないようあらかじめ理解を深めておきましょう。
交通事故を起こして、被害者請求が必要になったら、まずは交通事故に強い弁護士に相談して、スムーズな手続きをはかりましょう。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない