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座席で異なる交通事故での死亡率~一番危険な席、安全な席は?
この記事で分かること
- 交通事故における座席別死亡率だけを見れば、後部座席が一番死亡率の高い危険な席であり、助手席が一番死亡率の低い安全な席と言える
- 後部座席の死亡率が他の席と比べて高くなる背景には、後部座席のシートベルト着用率が他の席と比べて低いことが一因
- 交通事故の被害者がシートベルト非着用だった場合には、十分な賠償額を得られなくなる場合があるため、お悩みの場合は弁護士に相談を!
交通事故における座席別死亡率だけを見れば、後部座席が一番死亡率の高い危険な席だと言えます。しかし、その背景にはシートベルト着用率の低さがあります。交通事故の被害者がシートベルト非着用だった場合には、十分な賠償額を得られなくなる可能性もあるため、お悩みの場合は弁護士に相談しましょう。
目次[非表示]
自動車乗車中の交通事故では、後部座席がもっとも死亡率が高い!
自動車乗車中の交通事故では、運転席・助手席・後部座席のうち、どの座席が一番危険なのでしょうか?また、どの座席が一番安全なのでしょうか?
結論から言えば、運転席・助手席・後部座席のうちで一番危険なのは後部座席、逆に一番安全なのは助手席です。
本記事では、国土交通省の統計資料や警察庁公式サイト・JAF(一般社団法人日本自動車連盟)公式サイトなどをもとに、座席で異なる交通事故の死亡率や、その死亡率になる背景についてご説明します。
【参照先】
国土交通省作成資料「平成26年中の交通事故発生状況」
http://www.mlit.go.jp/common/001118302.pdf
警察庁公式サイト
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/seatbelt.html
JAF(一般社団法人日本自動車連盟)公式サイト
http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/rearseat/infographic/nonwear/
交通事故における座席位置別致死率(死亡率)の比較
国土交通省作成の座席位置別致死率(死亡率)の統計で、平成30年8月現在に公開されているもっとも新しいデータ(「平成26年中の交通事故発生状況」)によれば、座席位置別の致死率(死亡率)は以下のとおりです。
- 運転席の致死率(死亡率)=0.29%
- 助手席の致死率(死亡率)=0.28%
- 後部座席の致死率(死亡率)=0.31%
これは、交通事故による死傷者数を100%としたとき、死者数がそのうち何%を占めるか算出した数字です(死者数÷死傷者数×100=致死率(死亡率))。
座席位置別致死率(死亡率)は後部座席がもっとも高い
これを見ると、運転席・助手席・後部座席の致死率(死亡率)は、極端に大きな違いは見られないものの、後部座席に座っていた人の致死率(死亡率)が相対的に高くなっています。その意味では、一番危険な席は後部座席、一番安全な席は運転席と言えます。
なぜ後部座席が一番危険な席なのか?
後部座席のシートベルト着用率の低さが原因
この統計によれば、自動車乗車中死者の、シートベルト着用有無別の致死率(死亡率)は、着用者が0.16%に対して、非着用者は2.30%です。非着用者の致死率(死亡率)は、着用者の致死率(死亡率)の実に14.3倍に上ります。つまり、シートベルトを着用していなかったことが、自動車乗車中の交通事故において、被害者が死亡する一因であると言えそうです。
自動車乗車中の交通事故の死傷者のシートベルト着用の有無を、座席別に見てみると下記のとおりとなり、後部座席は運転席や助手席と比べて、シートベルトを着用している人の割合が突出して低くなっています。
- 運転席のシートベルト着用率=98.3%
- 助手席のシートベルト着用率=97.1%
- 後部座席のシートベルト着用率=60.1%
すなわち、後部座席が一番危険な席となった原因は、後部座席がほかの席と比べて、シートベルトの着用率が低いことにある、という見方ができるのです。
後部座席のシートベルト着用率が低いのはなぜ?
(1)かつて後部座席のシートベルト着用は義務ではなかった
後部座席のシートベルト着用率が低い理由の一つは、かつて後部座席のシートベルトの着用が、義務ではなかったことが挙げられるかもしれません。
平成30年8月現在の道路交通法では、運転席・助手席・後部座席の全ての座席で、シートベルトの着用が義務化されています。しかし、平成20年6月1日の道路交通法改正前は、後部座席については、シートベルト着用は「義務」ではなく、単なる「『努力』義務」に過ぎませんでした。このため、自動車乗員のあいだでも、「後部座席ではシートベルトをしなくてもいいか!」と、シートベルト着用への意識が低かったのでしょう。
そして道路交通法が改正され、後部座席のシートベルト着用が義務となってからも、以前の古い意識のままの乗員がいることにより、後部座席のシートベルト着用率が低くなっているのではないでしょうか。
(2)一般道での後部座席のシートベルト非着用には、行政罰がない
また、後部座席のシートベルト着用が義務化された平成20年6月1日以降も、一般道での後部座席のシートベルト非着用に対しては、行政上の罰則がなく、違反点数を付されるようなこともありません(高速道路での違反は、違反点数が1点、付されます)。
例え後部座席のシートベルト着用が義務化されても、罰則がないのであれば、着用率が低いままにとどまるのもうなずけますね。
後部座席でシートベルトをしなかった場合、交通事故の死亡率が高くなる理由
それでは、後部座席でシートベルトをしなかった場合に、交通事故の死亡率が高くなるのは、一体なぜなのでしょうか?
警察庁やJAF(一般社団法人日本自動車連盟)によれば、後部座席でシートベルトを着用しなかった場合に交通事故に遭うと、「本人致命傷」、「本人車外放出」が起こる可能性があります。これはどちらも、死亡につながりうる危険な状態です。
本人致命傷とは
衝突したときにシートベルトを着用していないと、前方に激しく投げ出されたり、硬いピラー(自動車の柱)部に頭をぶつけたり、自動車の中で全身を強くうちつける危険性があります。仮に、時速60kmで進んでいる自動車が壁などに激突した場合、高さ14mのビルから落ちるのと同じ衝撃を受けます。これでは、死亡してもおかしくありません。
本人車外放出とは
交通事故の衝撃で、自動車が回転した場合には、遠心力で横の窓から車外に放出されたり、後方の窓を突き破ったりする危険性があります。車外に放り出されると、堅いアスファルトに体をぶつけたり、後続車両にひかれるなど、命を落とす危険性が非常に高いと言えます。
まとめ:交通事故の座席別死亡率には、シートベルト着用率が関係している
交通事故における座席別死亡率だけを見れば、後部座席が一番死亡率の高い危険な席であり、助手席が一番死亡率の低い安全な席と言えます。
ただし、後部座席の死亡率が他の席と比べて高くなる背景には、後部座席のシートベルト着用率が他の席と比べて低いことにありそうです。
後部座席のシートベルト着用率が他の席と比べて低い理由としては「かつて後部座席のシートベルト着用は義務ではなかったこと」、「一般道での後部座席のシートベルト非着用には、行政罰がないこと」が考えられます。
後部座席でシートベルトをしなかった場合には、「本人致命傷」や「本人車外放出」など、死亡につながる事態が起こりえます。
座席別死亡率など、交通事故にお悩みの場合には弁護士に相談を!
座席別死亡率など、交通事故にお悩みの場合には、弁護士への相談をオススメします。
その理由は、本記事で主に見てきた、後部座席のシートベルト非着用での交通事故など、難解な態様の交通事故であっても、専門家として被害者の相談にのってくれるからです。
被害者であっても、シートベルト非着用では十分な賠償を受けられないことも!
本記事で見てきた、後部座席のシートベルト非着用での交通事故が、難解な理由を下記に述べます。
このケースでは、交通事故の被害者であっても、シートベルト非着用により被害が拡大した場合には、事故の相手方保険会社から「被害者に過失あり」と主張され、本来受けられるはずの賠償金から、過失ぶんの賠償金が差し引かれ、十分な賠償を受けられない場合があります。
実際、これまでの裁判例でも、
- シートベルト非着用でタクシーの後部座席に乗車していた被害者に対し、急ブレーキで頚椎捻挫を負ったにも関わらず、10%の過失ありとした
- シートベルト非着用でタクシーの後部座席に乗車していた被害者に対し、自損事故で鼻骨骨折や頚椎捻挫を負ったにも関わらず、5%の過失ありとした
などのケースがあります。
弁護士は交通事故の専門家
このような場合、素人には、もはや交渉も裁判もお手上げです。
しかし弁護士であれば、こうした事案でも、専門家としての法的知識と交渉力をもって、相手方保険会社と戦ってくれます。そして、被害者が過失割合を取られないように、あるいは過失割合を取られても、その割合が極力低くなるように努めてくれます。
座席別死亡率も含め、交通事故でお悩みの場合には、一度弁護士に相談してみましょう。今は、相談料や着手金を無料にしている弁護士も多いですし、気構えずに、弁護士事務所のドアを叩いてみましょう。一人きりで戦うよりもずっと有利な解決にたどりつけるはずです!
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない