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自首と出頭の違いとは?メリットが大きいのはどちら?

この記事で分かること

  • 自首とは、罪を犯した人が容疑者として特定される前に警察に出向いて、犯行を告白すること。
  • 出頭は、捜査機関に容疑者として特定された人が、自ら警察に出向くことである。
  • 自首のメリットは、減刑される可能性が高いこと。事前に弁護士に相談でき、勾留を回避できる可能性も上がる。
  • 出頭しても基本的に減刑はされない。ただし、逮捕や家宅捜索、勾留といった事態を避けられる可能性は上がる。
  • 弁護士に相談すると、自首・出頭に同行してもらえる、取調べの助言を受けられ、示談交渉を任せられるというメリットがある。

自首か出頭かは、その人が容疑者となっているかどうかで変わります。容疑者となっていれば、自首で受けられる減刑のメリットは享受できません。ただし出頭でも、自ら警察に出向くことで情状酌量を受け、勾留を回避できる可能性はあります。 罪を犯して自首・出頭に迷っている方には、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談することで、示談成立を早め、罰則を軽くする可能性を高めることができるでしょう。

自首と出頭の違い

「自首」と「出頭」という言葉は似ていますが、意味や内容は大きく異なります。どのような違いがあるのか、確認していきましょう。

自首とは

自首とは、警察に発覚する前に捜査機関に対し、自ら犯人であると名乗り出る行為を指します。
自首は法律上の概念であり、刑法42条1項では「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したとき」として、自首を規定しています。
具体的には、犯罪自体が発覚していない、犯人のみがわからない場合に、捜査機関に対し自身が犯人であることを自発的に申し出る行為を指します。
自首として認められるのは、警察署か検察庁に自ら出向いた場合です。家族や弁護士が同行しても、本人が自発的な行為として出向いた場合には自首として扱います。

出頭とは

出頭とは、捜査機関が犯人を特定しているものの、居処がわからない場合に、犯人が自ら名乗り出ることを指します。自首のような法律上の概念ではなく、一般で使われている用語です。
出頭は捜査機関が犯罪、犯人の両方を認知している場合にのみ利用できる言葉です。

出頭には法律的な定義はないため、出頭として認められるための要件というものは特にありません。一般的には、既に特定された犯人が警視庁・検察庁などに自ら出向いた場合に出頭という言葉が使われます。
罪を犯した人が、弁護士にただ罪を告白するだけでは出頭とは言えません。弁護士や家族の同行でもよいので、犯人と特定されている人が捜査機関に出向いた場合に、出頭という表現は使われます。

自首と出頭との違いは、容疑者となっているかどうか

自首と出頭は、犯人とされる人物が容疑者となっているかどうかで判断することができます。容疑者となっていない場合に警察に出向けば自首となりますが、捜査機関が犯人を容疑者として扱っている場合には自発的に警察署等に出向いたとしても出頭となります。

法律上の減刑事由かどうかという違いもある

これ以外にも、自首と出頭には法律上の減刑事由となるか、という点に大きな違いがあります。
自首は刑法に「その刑を減軽することができる」と定められています。出頭に関しては良い情状として考慮される可能性があるだけで、法律による減刑は規定されていません。 このように警察に犯人であることを告げた後の取り扱いが変わるという点で大きく異なるのです。

ワンポイントアドバイス
捜査機関が犯人を突き止めているのかどうかで「犯人が警察に出向く行為」の呼び方が変わります。法律で刑の減刑が規定されていることから、自首の方がその後の取り扱いは良くなるでしょう。仮に犯罪を犯した場合は、容疑者になってから出頭するよりも捜査機関が犯人を突き止める前に自首した方が罪は軽くなる可能性が高いです。

自首した場合のメリット

罪を犯してしまった犯人が自首をすると、悔い改める気持ちを評価できることから、その後の取り扱いが変わります。実際上どのようなメリットがあるのが見ていきましょう。

事前に弁護士に相談できる

自首する場合は、警察署に行く前に弁護士に相談できるというメリットがあります。自首前に弁護士に事前に相談できれば、自首した後の流れや取り調べ時に気をつけるべきことなども準備できるため、落ち着いて対応できるようになります。

自首する前は今後どうなってしまうのかという不安や取り調べでどのように対応すれば良いのかという疑問などで頭が一杯になります。心の準備ができていれば、身柄拘束中の不安も軽減できるでしょう。

勾留を避けられる可能性が高まる

自首すると、殺人や強盗などの重大犯罪でない限り、勾留を避けられる可能性が高まります。自首の場合は逃走や証拠隠滅の可能性が低いと判断できるからです。自首した後は、すぐに釈放され在宅事件として扱われる可能性も高くなります。

警察署に身柄拘束される期間が少なくなるため、取り調べ等で警察に呼び出される以外では、通常通りの社会生活を送れることができます。会社や学校に通うことができるので、在宅事件扱いになれば利点は大きいでしょう。

逮捕前に周囲に知らせることができる

犯罪を自発的に警察に申し出る場合、逮捕される前に周囲に知らせることもできます。家族に対し、どのような犯罪で、どのような罪を受ける可能性があるのかを説明し、自分がいない間に迷惑をかけることを前もって謝ることもできます。ペットを飼っている場合には、誰かに預ける準備もできるでしょう。

自首しない場合にはいつ逮捕されるかわからず、周囲にも告白できないため、このような準備をすることは難しいです。事前に家族に知らせることができれば、さまざまな準備ができるので、周囲への迷惑を最小限にできます。

罪が減刑される

自首は法律上の減刑事由であるため、罪が軽くなる可能性が高いでしょう。刑法68条では、法律上の減刑の方法について定めています。ただし、任意的減刑のため、自首することですべての犯罪が必ず減刑されるわけではありません。減刑するかどうかは裁判官の裁量で決まります。

減刑する場合、死刑が規定される罪は最大で10年以上の禁錮に減刑されます。無期懲役または無期禁錮の罪の場合は、7年以上の有期懲役または禁錮となるでしょう。その他の有期懲役または禁錮が規定されている罪では、1/2の罪になります。

減刑される場合の多くは、刑期が半分になり、罰金も半額になる

懲役や禁錮なら、期間は半分、罰金は半額になります。
例えば、犯罪の中でも多い窃盗犯の場合は235条にて「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という罪が規定されています。自首で法律上の減刑が行われると、「5年以下の懲役又は25万円以下の罰金」と軽くなります。

ワンポイントアドバイス
自首する場合は、弁護士への相談や周囲への報告など事前の準備ができる点で通常の逮捕よりメリットが大きいです。また自首後の取り扱いも、捜査機関が容疑者を特定して逮捕に至るよりは、格段に良くなります。勾留がなければ日常生活への影響も最小限にできるため、できるなら自首を選ぶべきです。

自首でなく出頭になるケース

自首と出頭の違いをうまくイメージできていない方もいらっしゃるでしょう。そこで出頭として扱われる具体的な事例をご紹介します。

逃走中に逃げきれないと考え、警察に出向いた場合

全国で指名手配されている状況で、もう逃げきれないと考え捜査機関に犯人であることを申し出た場合は、出頭となります。この場合は、指名手配されている時点で犯罪及び犯人について捜査機関が認知しているといえるため、「捜査機関に発覚する前に」自首したことにはならないからです。

これ以外でも、窃盗の犯行中に知り合いに見つかってしまい逃走したものの、逃げきれないと思い自ら警察に出向いた場合も出頭扱いとなります。この場合、犯行を目撃した人物が通報したことが前提に、警察が証言内容に基づき犯人の身元も特定しているため、出頭扱いとなります。

証拠を押さえられていた場合

盗撮事件で駅員に取り押さえられた際その場でスマホを落として逃走した場合は、その後自分から警察に出向いたとしても出頭扱いとなります。スマホ内のデータとして盗撮の証拠が残っている場合、免許証などで身元が明らかには、犯人と犯罪が明らかであるため、発覚前に罪を告白したことにならないためです。

防犯カメラによる犯人特定でも出頭扱いに

また飲食店で無銭飲食して逃走し、防犯カメラで身元が特定されていた場合に、警察に出向いた場合も出頭扱いとなります。証拠によって犯罪や犯人が特定されているケースでは自発的に警察に出向いたところで出頭になってしまうからです。

ワンポイントアドバイス
自首で減刑を目指してもシチュエーションによっては出頭扱いにされてしまいます。状況的に許せば、減刑のプランを含め、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

自首にはならない場合でも出頭はすべき?

すでに容疑者として扱われている場合でも出頭するメリットはあります。出頭することにどのような利点があるのかをお伝えします。

逮捕や家宅捜索を避けられる可能性がある

出頭した場合は、今後の捜査による逮捕や家宅捜索による強制捜査を逃れる可能性が高まります。逮捕するためには必要性と相当性が必要であり、自ら出頭する場合は逃走する可能性も低いため逮捕という強制処分を行う必要性が低いためです。出頭する際に証拠を一緒に持っていくと家宅捜索をする必要性が乏しくなるため、家宅捜索の可能性も低くなります。

仮に出頭しないで捜査機関の捜査に委ねている場合は、逃走する可能性や証拠隠滅の可能性も否定できないため身元が分かった段階で逮捕、家宅捜索の可能性は十分にあるでしょう。

逃走の危険がないことを強調できる

勾留は逃走の可能性や証拠隠滅の可能性がある場合に請求されるため、自ら出頭すればこのような危険がないと判断され勾留請求しない可能性も高くなります。仮に請求されたとしても、裁判官の判断で認められない見込みは十分にあります。

勾留を阻止したい場合にも、証拠隠滅の可能性が著しく低くなると考えられるため、手持ちの証拠を一緒に持っていくことは有効です。弁護士と一緒に出頭すれば、証拠に関する説明を行い、勾留の必要性がないことも説得できます。

ワンポイントアドバイス
自首とならない場合でも出頭はすべきです。出頭すれば、逮捕や家宅捜索などの強制処分を受けずに済む可能性、情状で考慮してもらえる可能性があるからです。法律上の減刑にならないことをデメリットと捉える必要はありません。自ら警察に出向くことにより、真摯に反省していると捜査機関、検察にも認めてもらえ、起訴・不起訴の判断に良い影響を与えます。

自首や出頭を弁護士に相談するメリット

自首や出頭をするかで悩む場合は、1人で抱え込まずに弁護士に相談しましょう。事前に弁護士に相談することには、以下のようなメリットがあります。

自首・出頭に同行してもらえる

1人で自首・出頭することに不安がある場合は、弁護士が同行してもらいましょう。弁護士が一緒に警察署へ行くことで精神的な負担が少し軽くなるはずです。自首が成立するか判断できない場合でも、専門家の視点で自首成立の是非について判断してもらえます。

また自首の成立が妨げられないように自首報告書の作成や弁護士から捜査機関に対し犯罪事実に関する説明も期待できます。

取調べに対するアドバイスがもらえる

取り調べが心配な場合は、弁護士からアドバイスをもらうと良いでしょう。事前に取り調べ時に気をつけるべき点について聞いておくことで不安を解消することができます。「自分にとって不利な点をどこまで話すべきか」など心配な点があるかと思いますが、このような疑問も事前に解決することができます。

取り調べでは、話す必要のないこともありますので、先に助言を得られることのメリットは大きいでしょう。

どれくらいの罪になりそうかについて助言がもらえる

最終的にどれくらいの刑罰になりそうなのか、について疑問がある場合は弁護士にアドバイスを求めましょう。自分が犯した罪についてどの法律で罰せられるかは分かっていても、実際の量刑がどの程度になるかはわからない方も多いはずです。このような疑問は知識だけでなくこれまでの経験などにも基づく考察が必要になるため、弁護士への相談は必要不可欠です。

事件の示談交渉を依頼できる

弁護士に依頼することで、被害者との示談交渉をお願いできるのも利点の1つです。被害者のいる犯罪の場合では、示談交渉を早期に初め示談成立を早くまとめることにより早期釈放や不起訴、減刑の可能性は大きく上がります。

不起訴や減刑を考慮する場合、被害者の処罰感情は重要です。示談成立の際に「厳罰を望まない」とする内容に合意してもらえれば、起訴・不起訴の判断に影響を与えます。また自首や出頭をする場合は、信頼できる弁護士を自分で選ぶことができるという利点があります。

刑事事件における被害者との示談交渉は、弁護士がいなければ難しいため、早めに依頼しておくべきです。

ワンポイントアドバイス
自首・出頭しようか迷っている場合は弁護士に相談してください。個別事情を理解してもらった上で自首や出頭のメリットがあるとわかれば、ご自身の決心もつくはずです。仮に自首・出頭しないという判断をしても、弁護士が守秘義務を破って捜査機関に報告することはありません。ひとりで抱え込まないことが重要です。

自首や出頭に迷ったら、弁護士に相談を

自首と出頭には法律上の減刑があるかどうかという違いはありますが、自ら警察に出向くという点では共通しています。どちらの場合でも自分の罪を認める行為には変わりありませんので、捜査機関や検察官、裁判官からの評価において良い影響を与えます。

自分1人では自首・出頭できないとお考えの場合は、弁護士に相談してください。警察に行った後にどのような流れで手続きが進んでいくのか、どれくらいの刑罰になるのか、取り調べで何に気をつけるべきか、まで説明してもらえるため不安や心配を軽減できるはずです。

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