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少年事件とは?流れや成人事件との違いを解説!
この記事で分かること
- 少年事件は少年が起こした犯罪事件
- 少年事件と成年事件ではさまざまな違いがある
- 少年事件では鑑別所や児童相談所、保護観察所、少年院などへ収容される
- 少年事件で逮捕された場合は弁護士への相談が重要
少年事件は、成人の刑事事件とは大きく異なる点も多い為、適切に対応するためには、刑事事件の経験豊富な弁護士へ相談することがとても重要になります。刑事事件では対応のスピードが結果を左右することも多いですので、「刑事事件に強い弁護士」へできる限り早く相談することをおすすめします。
少年事件とは?
少年事件とは少年が起こした犯罪事件のことで、主に少年法に則った手続で処理されることになります。
少年法では、「少年」の定義についてもここで「20歳に満たない者」と明記されています。逆に満20歳以上を「成人」と区別しています。なお、親など現に監護している者や法律上監護義務のある者は「保護者」と呼ばれます。
そして少年事件の場合、成人の場合とは違いさまざまな特別扱いが法律で定められています。たとえば、少年法の目的も刑事処罰を与えることとはしておらず、健全な育成を主な目的としています。そのためにも、少年法では非行のある少年に対し性格の矯正や環境の調整といった保護処分を行います。
また、「非行のある少年」については「犯罪少年」「触法少年」「虞犯少年」に区分することができます。どの非行少年に該当するかにより手続も変わってきますので、非常に重要なポイントです。どのような区分がなされているのか以下で説明していきます。
犯罪少年
「犯罪少年」とは、罪を犯した少年のうち14歳以上の者を言います。成人と異なり刑事罰は基本的に与えられず、保護による処遇が原則となっています。すべては家庭裁判所(以下家裁)に送致され、少年審判で必要と判断されたときには後述する少年院等の施設への送致、その他処分に付されます。
しかし、犯罪の情状により保護では充分でないと認められる場合、検察官に送致し成人同様の刑事裁判で処理するよう任せることも可能です。
14歳以上だと刑事処分がなされる可能性も
刑事処分に付する場合、刑事処分可能年齢に達していなければなりませんが、現在では犯行時に14歳以上であれば足りると定められており、犯罪少年の場合には家裁から検察へ送致した後刑罰を科すことも可能です。
2000年以前は刑法の規定により刑事処分に付することができる年齢は16歳以上となっていましたが、1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件などを受け法律が改正され、14歳以上を改めて刑事責任年齢としたという背景があります。
ただし、刑事裁判に付することはできるものの完全に成人と同じ扱いをされるわけではなく、懲役や禁錮刑、死刑などの比較的重たい刑罰には特則も設けられています。
触法少年
「触法少年」とは、罪を犯した少年のうち14歳未満の者を言います。つまり犯罪少年と行為自体に違いはなく、加害者の年齢のみで区分けされています。
14歳を境にそれ以上なら犯罪少年、それ未満なら触法少年として扱われます。そして上で説明した通り14歳未満は刑事責任を負わないため刑罰を与えられることはありません。
刑法でも第41条に「14歳に満たない者は罰しない」と明確に定めが置かれています。そこで児童福祉法による処置が原則として行われ、家裁の審判対象となるのは児童相談所長・都道府県知事から送致を受けたケースに限られます。家裁は送致されてきた者に対し保護処分の決定をします。
14歳未満の場合、刑罰はなくても、警察の調査は通常通り行われる
警察が調査を行うことなどは通常通りですが、調査の結果、行為が重大な刑罰法規に触れると判断されると児童相談所長に送致されます。成人を対象にこのような運用はされていません。
なお、触法少年の場合には逮捕による拘束や事情聴取等の捜査を受けることはないとも言われていますが、実際には調査という形で捜査同様の扱いを受けます。身体拘束に関しては、児童相談所の一時保護という形で行われる可能性があり、この期間は原則2か月以内と定められています。
調査の方法に関しては押収や捜索、鑑定嘱託、検証などが許されていますので、加害者が14歳未満であっても突然警察がやってきて家宅捜索を行うということは起こり得ます。
触法少年の場合には以上のような流れで進んでいきますが、家裁に送致されてからは、後述する一般的な少年事件とほとんど同じ流れです。
虞犯少年
「虞犯(ぐはん)少年」とは、犯罪に走るおそれのある少年のことです。つまりすでに罪を犯してしまっているのではなく、将来的な可能性を指して呼ばれるものです。
例えば保護者の監督に服さない場合や、その者の性格・環境に照らし刑罰法令に抵触する行為を今後しそうだと認められる場合です。正当な理由もないのに家庭に寄りつかない、犯罪性のある者との交際、不道徳な人との交際、いかがわしい場所への出入りをしている、といった場合には虞犯少年と呼ばれる可能性があると言えるでしょう。
家出などの不良行為で補導された未成年に適用されることが多い
虞犯事由にあたる上の行為や状況そのものは犯罪ではなく成人なら処罰の対象にもなりません。もちろん、少年でも処罰の対象となるわけではありませんが、家裁の審判に付される可能性がある点、成人とは異なります。
これは犯罪を未然に防止するという意味合いも含まれていますが、不良な行為をする者を早期に発見し適切な保護をすることで、健全な育成を図ることを目的としています。
実情としては、家出して不良交友をしている、その他問題行動により補導されることをきっかけに虞犯少年として扱われるケースが多くあるようです。
少年事件の流れ
次に、少年事件ではどのような流れで手続が進行していくのか解説していきます。
逮捕・補導される
基本的に、逮捕や補導など、捜査段階では成人同様少年事件に対しても刑事訴訟法が適用されるため、大きな違いはありません。
ただし勾留のような長期に渡る身体拘束は情操に対する影響が大きいとされており特則が設けられています。
まず、犯罪が発生した段階から見ていきましょう。これを認知した警察官は捜査を開始します。捜査を遂げたあとは事件を検察官に送致します。
ただし捜査の結果、軽微事件(罰金以下の刑に該当するもの)であると分かれば検察を通さず家裁に直接送致します。
少年事件での身体拘束は勾留ではなく鑑別書送りが原則
逮捕をされている場合、通常検察官に送致されてからは勾留として引き続き身体拘束を受けることが多いですが、少年事件では勾留請求をするハードルが非常に高く設定されています。やむを得ない事由がなければ勾留請求はできないとされており、例え逃亡や証拠隠滅のおそれがあったとしても原則少年に対し勾留は行われないとされています。
ただし、勾留に代えて鑑別所への収容を請求することは認められています。鑑別所への収容は勾留とそもそもの存在意義が異なり、観護措置を取ることが目的ですのでこれを請求後裁判官が観護令状を発付すれば鑑別所へ収容されることはあります。ちなみにやむを得ない事由とは鑑別所が定員オーバーとなっているなどの異常時に限られます。
これだけ勾留を避けているのには、成人被疑者との接触を避けるためという理由があります。捜査を行うため身体拘束が必要とみられるときでも情操に配慮しこのような運用がなされています。
また勾留をせざるを得ない場合であっても、極力成人被疑者と物理的に距離を空けるため、その収容場所は刑事施設ではなく鑑別所などの施設に拘禁することが可能となっています。
検察から家裁に送致される
少年事件で特殊なのは検察から家裁への「全件送致主義」が採られていることです。
少年事件では、示談が成立していても家裁に送致される
本来は警察から検察へ送致されるとそのまま検察が起訴・不起訴の判断をしますが、少年だと検察官が補充捜査をした後原則として家裁に送致しなければいけないと定められています。
例え被害者との間で示談が成立しており被疑者も被疑事実を認めているとしても送致は必ずなされます。
ただし非行なし(犯罪の嫌疑がない・嫌疑不十分など)と思料される場合には例外的に送致しなくてもいいことになっています。
このように、少年事件の捜査の端緒は成人の刑事事件と変わるところはほぼありませんが、全件家裁が扱うものとして送致するため、ここからは通常の刑事訴訟手続から大きく外れます。これは最初に述べたように、少年による犯罪事件では少年法が適用され、この法律では刑罰を科すことではなく矯正等を施すことを目的としているからです。
ただ、この観点から言っても、重大な事件であって年齢等を勘案した結果刑罰を科すことが相当と見られるケースには再び通常の刑事訴訟手続に組み入れられます。検察から家裁への全件送致主義が採用されなくなるわけではなく、一度検察から家裁に送られ、家裁にてその相当性が判断されます。
家裁が調査した結果、刑事罰を科すべきと評価したなら「逆送(家裁から検察への送致)」が行われます。そして検察官が公訴提起することで一般の刑事裁判にかけられることとなるのです。なお、犯罪時に少年だった者でもこの時点ですでに成人になっているのであればこの特則は適用されません。
家庭裁判所で少年審判を受ける
例外的な措置や、逆送などがなければ家裁で少年審判を受けます。これは非行少年の教育的保護を目的とした家裁での手続で、刑事事件とは呼びません。
被害者死亡の場合、逆走され刑事辞書分を受ける場合も
逆送に関しては上の通りですが、故意で被害者を死亡させた罪でかつ、犯行時16歳以上であるならば逆送決定が原則行われるという決まりもあります。
もっとも、家裁が調査した結果刑事処分以外の措置が相当と認めるのであれば逆送決定をせずに少年審判で保護処分に付することも可能となっています。その判断においては犯行の動機や態様、犯行後の情況、年齢、性格、その他の事情が考慮されます。
逆送をすると少年の保護等を目的とした審判ではなく刑事処分に付されることになるため、このように慎重な判断がなされるよう何重にもルールが設けられています。そのため家裁に送致された14歳以上(犯行時)の者が逆送決定を受けるのは5%以下とごく少数です。
さらにその内訳は大部分が略式命令請求される交通事犯で、一般事件に限っては1%に満たないというデータが出ています。少年審判と通常の刑事裁判の相違点や、審判により収容されることになる施設に関しては次項以降で詳しく解説していきます。
少年事件と成人犯罪の制度の違い
成人の起こした事件と比べて制度にどのような違いがあるのか見ていきましょう。保釈制度や裁判の公開原則、刑の減免に関することを紹介していきます。
保釈制度の有無
保釈というものを聞いたことがあるかと思います。特に有名人が逮捕された後、しばらくして保釈されたというニュースが流れることも珍しくありません。当然、有名人だから保釈されるというわけでも、お金持ちだったら保釈されるというわけでもありません。
保釈は起訴後の勾留の段階において一定の条件を満たし、保釈金を預けることで釈放してもらえるという制度です。そういう意味ではお金も一定以上必要ですが、その金額は一律ではなく、その被告人の経済状況や事の重大さなどを総合的に考慮して算定されます。
そのためお金持ちでなくても、その被告人にとって無視できない金額であれば足りると考えることができます。保釈金を捨ててまで逃亡しないだろうと想定される程度の金額が設定されるのです。
少年事件に保釈制度は存在しない
一方、少年事件ですが、こちらでは保釈制度はありません。家裁に送致された後、保釈請求をすることはできず、保釈金を納めることで釈放されるということは起こり得ません。そもそも逮捕または勾留されている事件が家裁に送致されると「観護措置」として鑑別所に収容されることが一般的です。
そのため身柄拘束を受けず自宅で生活するためには観護措置を採られないように対策をするか、観護措置取消の申し立て、観護措置決定に対する異議申し立てをするしかありません。
裁判が公開されない
原則、裁判は公開されますが、少年審判ではその様子が公開されることはありません。
そもそも、一般的な刑事裁判のように検察官と被告人、裁判官という三面的訴訟を構成しないため手続そのものの性質が大きく異なります。検察官はおらず、家裁の単独裁判官が主宰することになっています。
公開もされませんし、原則として裁判官、本人に加え書記官や付添人、保護者以外の者がその場に登場することはありません。付添人は弁護人と同様のものと考えるといいでしょう。付添人は基本的に弁護士が担当することになります。
刑の減免
少年審判では保護をすることが主な目的であるため刑罰が科されることはなく保護処分に付されることになります。
しかし、刑事裁判にかけられて有罪になることで成人同様刑罰を科される可能性が出てきます。ただし、やはり被告人が少年だと公判手続においても情報への配慮がなされ、できるだけ関連する成人事件があっても分離して審理がなされます。
さらにこの審理の結果、やっぱり保護処分に付したほうが適当だと認められるのであれば再び家裁に事件を移送することになり、刑は科されないということもあり得ます。
また、審理の結果刑を科すことが妥当であっても、以下の点で特殊であると言えます。
- 犯行時18歳未満だと死刑にはできない
- 無期刑相当でも20年以下に制限される
- 不定期刑にできる
- 法定刑より短期の刑にできる
- 懲役・禁錮刑の執行場所の特則
犯行時18歳未満だと死刑にはできない
死刑相当である場合には無期刑を科すとし、刑が軽減されるようになっています
無期刑相当でも20年以下に制限される
無期刑相当である場合には裁判所の裁量により10年以上20年以下の懲役または禁錮刑に処することができると定められています。
不定期刑にできる
例えば「懲役1年以上3年以下に処する」と明確な期間を定めずに宣告することができるとなっています。ただし短期は10年、長期は15年を超えることはできません。
法定刑より短期の刑にできる
「改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるとき」刑法にある法定刑の下限を下回る期間に処することができるとあります。ただし処断すべき刑の短期の2分の1を下回らず、かつ、長期の2分の1を下回らない範囲内に限られます。
懲役・禁錮刑の執行場所の特則
懲役刑・禁錮刑の宣告を受けたとしても刑務所の中で分界を設けた場所で刑を執行するとあり、16歳未満に限っては16歳に達するまで刑務所ではなく少年院で収容することになっています。仮釈放も早期になされることが定められているなど数々の特則がありますが、上の規定により死刑を無期刑に緩和されている者についてはこの仮釈放に関する特則は適用されません
少年事件で送られる施設
審判によりどこかの施設へ収容される処分が下される可能性があります。たとえば、鑑別所や児童相談所、保護観察所、少年院などがその代表です。なお少年刑務所などの刑事施設への収容は審判で直接判断されるのではなく、前述の通り検察官への逆送が行われた後公判手続において下される刑罰です。以下で説明するのは刑罰ではなく保護処分として収容されることになる施設です。
少年鑑別所
鑑別所は、本来保護処分として収容するための施設というより、保護手続において審判を行うために送致される施設です。観護措置として送致され、収容中鑑別が行われることで審判資料を集めていくことが目的です。しかし保護処分の執行として、または懲役・禁錮刑の執行場所としても利用されることがあるのです。
児童相談所
家裁が調査した結果、児童福祉法の規定による措置を相当と認めるとき、決定により事件を都道府県知事または児童相談所長に送致する手続が設けられています。これを「都道府県知事・児童相談所長送致処分」と言います。
実際にこの処分が出されることは珍しく、都道府県知事送致決定がされることもほぼありません。ほとんどが指導相談所長送致決定で処理されており、都道府県知事送致を受けたところでその後児童相談所送致がなされるケースが多いからです。
保護処分や保護的措置による不処分より児童福祉機関の措置に委ねるべきと評価されたときにこの決定がなされます。対象者は18歳未満の者です。
そして「保護処分や保護的措置による不処分より児童福祉機関の措置に委ねるべき」ときとは「非行性は高くないものの環境面における保護に欠けるため、継続的な指導が必要」な場合です。
そして、この送致決定された場合、状況を見て児童養護施設や児童自立支援施設に入所させるという措置がとられることもあります。なお、この判断は家裁ではなく児童福祉機関が行うため、審判の時点で入所が確定するものではありません。
保護観察所
保護観察所へ送られるのは「家裁から保護観察の処分を受けた者」「少年院仮退院者」の2パターンに限られます。ちなみに、成人の場合は仮釈放者、保護観察付執行猶予者も保護観察所へ送られるケースがあります。
保護観察所とは、犯罪や非行をきっかけに家裁の決定を受け保護観察になった者等に対し、保護観察を行う機関です。少年院から仮釈放になった者、保護観察付の執行猶予となった者も同様です。
この他医療観察法に基づいて、心神喪失の状態で重大な他害行為を行って不起訴や無罪になった者への精神保健観察も行います。
保護観察所では、釈放後に社会生活ができるよう就職先の斡旋やその受け入れ体制を整えておくための環境調整を行います。少年院を満期釈放された者等が収容される場合は、必要に応じて更生緊急保護の措置を行うこともあります。
少年院
少年院は、社会生活での更生が難しく、矯正教育が必要と評価された場合に送致される施設です。ここでは犯罪や非行に走るような社会的不適応がある者の性格を矯正し、社会復帰させるための教育が行われます。
少年への保護処分が目的のため、少年院に入ったとしてもあくまで矯正教育を受けただけでのことであって、前科とはなりません。
少年刑務所
少年刑務所は16歳以上20歳未満の受刑者を収容する刑務所です。ただし受刑後20歳に達したとしても26歳までは継続して収容することが可能です。
刑務所ですので上に挙げた少年院等とは性質が異なり、こちらは刑罰を科すことが一つの目的となっています。そのため成人が刑務所に収容されたときと同じように刑務作業を行うことになります。ただ成人とは異なる教育的な処遇も取られています。
少年審判で少年刑務所への収容が決定されるわけではなく、逆送を受け刑事裁判にかけられて実刑判決を受けた場合に限ってこの処分となります。
少年事件になる場合は早期に弁護士へ依頼
少年事件の場合でも逮捕はされますし、鑑別所に入れられることでしばらくの期間外には出られなくなり通常の生活は送れなくなります。
その間に事件について調査を受けることになり、成人に比べて配慮はなされているものの、精神的に大きな負担を負うことにもなります。また、保釈制度がないため起訴後勾留されている場合、外に出るのも難しいです。
そのため、少年事件で逮捕された場合などは、刑事事件に弁護士に依頼してできるだけ身体拘束を受けないように働きかけてもらうといいでしょう。刑事事件ではスピードが重要ですので、弁護士に相談するタイミングもできるだけ早期であるべきです。
そうすることで早期釈放を目指すことができますし、その後の処遇などについても有利に進めやすくなります。さらにその後は、少年審判では付添人として、刑事裁判を要する場合でも弁護人としてサポートしてくれます。
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
- 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
- 23日間以内の迅速な対応が必要
- 不起訴の可能性を上げることが大事
- 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
- 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実