8,180view
勾留とは?勾留請求が行われる理由と期間、手続きの流れ
この記事で分かること
- 勾留とは、被疑者を刑事施設に留置すること。
- 拘留は刑罰の1つで、1日以上30日未満の期間、刑事施設に身体拘束を受ける。
- 被疑者の勾留期間は原則10日、最大20日。被告人勾留の場合は、原則2ヶ月。
- 勾留請求は逮捕から3日以内が期限となる。
- 勾留請求には法律上の理由と必要性が必要。
- 勾留には、①勾留請求、②裁判官による勾留質問、③勾留決定という3つの手続きが必要。
「勾留」とは、被疑者を刑事施設に留置することを指します。これとよく似た「拘留」は刑罰の1つであり意味が異なります。被疑者の勾留期間は、原則10日、最大20日です。また勾留請求は逮捕から3日以内におこなわれます。勾留請求には必ず法律上の理由と必要性が必要であり、①勾留請求、②裁判官による勾留質問、③勾留決定という3つの手続きを踏むことになります。
勾留請求とは
まずは勾留請求とはどのような内容を指すのかを解説いたします。よく混同される「拘留」との違いも一緒に理解していきましょう。
勾留とは
テレビのニュースなどでよく聞く、勾留という言葉ですが、実際にきちんと意味を理解している方は少ないかもしれません。
勾留とは、被疑者を刑事施設に留置することを指します。簡単にいうと、警察の捜査の結果、容疑者を警察が捕まえて、その後一定期間家に帰れないようにする措置です。どんな事件が起きた場合でも行われるわけではなく、刑事事件でのみ行われる措置です。また、警察官が決定しているイメージがあるかもしれませんが、実際に勾留を請求するのは検察官であり、決めるのは裁判官です。
勾留が行われると、被疑者は一定の期間は家に帰れなくなってしまうわけですから、重大な人権侵害ということになりかねません。仕事や学校などに行けなくなるからです。必要性のない勾留を防ぐために裁判官による判断が最終的に行われる仕組みになっているのです。
このように、勾留は捜査の結果逮捕された被疑者を留置施設に留め置く措置ということになります。
どんな事件でも勾留が行われるわけではない
テレビドラマなどでは、警察に捕まるとそのまま留置場に入れられてしまうというシーンがあるかもしれません。しかし、実際に勾留が行われるケースは限られています。逮捕されたからといって、勾留請求が行われるとは限らないのです。
では、「どのような場合に勾留請求が行われるのか?」というと、勾留の必要性がある場合と言えます。例えば、連続殺人事件を起こしてその後警察の捜査によって逮捕が行われたとしましょう。もっとも、起訴が行われて裁判が行われるまでには時間があります。釈放すると、罪を恐れて逃走するかもしれない場合、勾留の必要性はあるといえるでしょう。
逆に、飲み屋のケンカで軽い暴行事件を起こしたケースなども考えられます。逮捕後、十分に反省しており、当事者や被疑事実も明らかという場合はわざわざ留置施設に留め置く必要はありません。
このように、どのような事件でも勾留が行われているわけではなく、必要な措置である場合に行われます。
「拘留」との違い
勾留と同じ読み方の刑事事件に関係する用語として、「拘留」というものがあります。両者の読み方は「こうりゅう」と全く同じですが、意味は大きく異なります。
勾留は有罪確定前、捜査を支障なく進めるための措置
勾留は、逮捕後に被疑者を留置施設に留め置く措置を指すとお伝えしましたが、これはあくまで捜査や裁判に支障が出ないようにするために行われる措置といえます。まだ有罪が確定する前の話です。
拘留は有罪確定後、身体の自由を奪う刑罰のひとつ
他方、拘留は有罪が確定した後の話です。拘留は刑罰の1つであり、1日以上30日未満の期間、刑事施設に身体拘束をする刑罰となります(刑法16条)。身体の自由を奪う刑罰としては、懲役、禁固などがありますが、これらの罪の中でも一番軽い刑罰といえます。
拘留は刑罰であるため、裁判による判決がない限り下されないものです。最近では、この拘留判決は少なくなっているといえるでしょう。勾留に関しては、あくまで判決が確定すつまでの措置なので、特に少なくなっているという傾向はありません。
このように、勾留と拘留は同じ身体拘束でも意味は大きく異なるので、注意しましょう。
拘留は刑罰ですが、同様に刑罰として作業を行うなどの内容はありません。ただし、拘留は懲役や禁固刑とは異なり、執行猶予がつかないという違いはあります。
勾留請求の期限と勾留期間
勾留された場合、いつになったら家に帰れるのでしょうか? 次に、勾留の期間や逮捕後の身体拘束期間についてご説明します。勾留が行われなかったケースについても詳しくみていきましょう。
被疑者勾留は最大20日間、被告人勾留は原則2ヶ月
ご家族が勾留請求を受け、勾留が決定したという場合「いつになったら釈放してもらえるの?」と不安になる方も多いでしょう。
起訴前の被疑者勾留に関しては、原則として10日と法律上定まっています。また仮に勾留延長があった場合は、そこからさらに10日間の勾留が可能です。つまり、最大で20日間の勾留ができるということになります。
勾留期間に関しては、刑事訴訟法で厳格に定めてあるため、これ以上延長されることはありません。
勾留延長が行われやすいケースとしては、
- 殺人罪などの重罪の場合
- 薬物事犯など組織的犯罪の場合
- 被疑者が容疑を否認している場合
が挙げられます。
また、勾留には起訴前の勾留である被疑者勾留だけでなく、起訴後の勾留である被告人勾留もあります。簡単にいうと、裁判が起こされる前の身体拘束か、起こされた後の身体拘束かの違いです。
被告人勾留の場合は、被疑者勾留よりも期間が長く、原則として 2ヶ月勾留することができます。起訴後の被告人勾留に関しては、その後の制限がなく1ヶ月単位で判決が下りるまで更新されます。
このように、勾留期間は起訴前か起訴後かで長さが変わります。
逮捕後3日以内に勾留請求をしなければならない
被疑者の身体拘束期間に関しては、勾留だけでなく、その前の逮捕後の期間に関しても刑事訴訟法にて厳格な定めがあります。
これは、先にご説明したように被疑者の身柄を拘束することは重大な人権侵害となりかねないため、法律で時間を制限する必要があったためです。具体的には、逮捕後24時間以内に、警察官に被疑者の身柄を送致する必要があり、検察官は48時間以内に勾留請求を行うかどうかを決定する必要があります(刑事訴訟法203条、205条)。勾留請求をしない場合は、すぐに被疑者を釈放することが決まりとなっています。
逮捕から勾留請求まで72時間(3日間)が法律上定められた逮捕後の身体拘束期間となります。つまり、逮捕から被疑者勾留の期間まで含めると、23日間家に帰れない可能性があ
るのです。被告人勾留が続けば、さらに2ヶ月伸びますが、1ヶ月毎に更新可能であることを考えると、その後いつ家に帰れるかはわかりません。
このように、逮捕から3日以内に勾留請求が行われるかどうかが決定しますが、勾留が一旦決定すると、長期間の身体拘束を受けることになります。
勾留されなかった場合のその後の処分
勾留が行われると、最大で逮捕から23日間帰れなくなることはわかりましたが、勾留されない場合は捜査も終了するのでしょうか?
まず、勾留が行われなければ釈放です。しかし、それで刑事事件が終了するわけではありません。その後も捜査が続く可能性はあります。
よくあるのが、在宅事件というものです。在宅事件は身柄を拘束することなく、捜査をを継続する手法を指します。家に帰り、仕事や学校に行くことはできますが、警察の呼び出しがあれば出頭する必要があります。また、この場合はいつ捜査が終了するかわからないという問題があります。
また微罪処分というものもあります。逮捕後、長くとも数日中の間に釈放されるケースです。初犯の万引きなどの軽微な犯罪に下されます。この場合は、裁判などが行われることもなく警察官の権限で行われる処分です。この場合、前歴はつきますが捜査は事件が解決したものとして終了します。
このように、勾留が行われなかった場合でも事件が終了しないケースもあります。
勾留請求が行われる理由
勾留請求が行われる理由としてはどのような内容があるのでしょうか? 法律上の理由と実際上の理由の両方をご説明します。
法律上の勾留理由3つ
勾留請求を行うためには、法律上の理由が必ず必要です。なぜなら、刑事訴訟法に勾留請求の際には罪を犯したことに足りる相当な理由が必要であり、かつ規定された法律上の理由に該当することが必要である(同法60条1項、207条1項)と規定されているためです。具体的には以下の理由です。
- 被疑者が定まった住居を有しないとき
- 被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
- 被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
これらのいずれかに当たる理由が必要となります。以下、詳しく内容を見ていきましょう。
被疑者が定まった住居を有しないとき
まず、「被疑者が定まった住居を有しないとき」とは住所不定を意味します。被疑者が住所不定の場合は、釈放後に事件に関して連絡を取ろうとしても郵便物が送れないなどの問題が生じる可能性があります。そのため、勾留が認められています。
住所不定の場合以外にも、被疑者が住所に関し嘘をついたり、会社の解雇により住む場所がなくなってしまったなどのケースも含みます。ネットカフェなどは住所には当たりません。
被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
次に、「被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」とは、証拠隠滅の可能性がある場合を指します。釈放した場合に、今回逮捕された事件に関する証拠を廃棄してしまう可能性がある場合、捜査に支障が出るため勾留が認められています。証拠は、人証・物証を問いません。
共犯のいる可能性が高い事件、客観的証拠に乏しい事件、罪が重く被疑者が罪を認めていない事件、薬物事犯など組織的犯罪の場合は、証拠隠滅の可能性があると判断される可能性があります。
被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
最後に、「被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」とは、逃亡する可能性がある場合を指します。被疑者が逃亡すると、罪を逃れる可能性があり、これを防ぐために勾留が認められています。
殺人罪や強盗罪など、罪が重い犯罪の場合は、刑務所行きを遅れて逃亡する可能性が高いといえます。他方で、定職があり家族と一緒に暮らしているような場合は、逃亡する可能性が低いと判断され、勾留がされないこともあります。
捜査のためにも勾留は必要
勾留を可能にする法律上の理由としては、先にあげた3つの理由が関係していますが、実際上の問題として、捜査のために勾留が必要という理由もあります。
先にお話しした通り、逮捕から勾留請求までは3日しかありません。この間に事件に必要な全て証拠を揃えるのは難しいといえます。特に被疑者を聴取しても、否認を続ける場合や、証拠がなかなか見つからないという場合は、事件解決のために取り調べを継続したいというのが捜査官や検察の考えです。
また逮捕したということは、逮捕を根拠づける相当な理由があったということです。事件の犯人であるならば、できる限り証拠を集め、起訴に持ち込みたいと考えるでしょう。他方、理由がないのであれば、早期釈放を行うべきですが、起訴・不起訴の判断を慎重に行うためにも捜査を続けなければいけないというケースもあります。
このように、実際上の理由としては集中した捜査を行うためにも勾留が必要ということも挙げられるでしょう。
勾留請求されるまでの手続きの流れ
勾留請求の手続きはどのような流れで進んでいくのでしょうか。勾留されたことによる有罪への影響や勾留を回避するための方法についてもご説明します。
勾留手続きの流れ
勾留請求は検察官に被疑者が送致されたあと、2日以内に行わなければいけません。スピーディーに決定しなければいけないため、手続きも迅速に行われます。具体的には、以下のような手続きにより勾留が決定します。
- 検察官による勾留請求
- 裁判官による勾留質問
- 勾留決定
検察官による勾留請求
まずは、逮捕理由や捜査資料などから検察官による勾留請求が行われます。勾留請求は捜査機関から被疑者が送致後、48時間以内に決定します。先にご説明したような勾留理由があるかどうかを判断し、釈放するか勾留請求を行うかを決めます。これ以外にも、起訴行う(略式起訴・公判請求)を決定することもあります。
裁判官による勾留質問
勾留請求が行われたら、裁判官による勾留質問があります。被疑者を裁判所に呼び、犯罪事実について説明が行われます。その上で、被疑者が事実について「認める・認めない・一部認める」などを答えます。これに対し、裁判官がすぐに何らかの応答をすることはありません。勾留質問での内容に関しては、調書が作成されます。
勾留決定・棄却
最終的には、検察官の主張する勾留理由や勾留質問調書をもとに、裁判官が勾留の是非を決定します。法律上の要件を満たしていると考えた場合、勾留を認める判断を下しますが、不十分な場合は勾留請求を却下します。
勾留請求で有罪の可能性は高くなる?
勾留請求を受けると「起訴の可能性が上がる」、「有罪の可能性が高くなる」というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
実際のところ、勾留を受けたからといって、必ず起訴される、有罪になるというのは間違いです。勾留はあくまで被疑者が逃亡したり、証拠隠滅を図ることを防ぐための措置その後の処分とは関係ありません。勾留されても、その後起訴が行われず釈放されるケースもあります。
ただし、勾留請求を行うということは、捜査機関や検察に罪を犯した可能性が高いと判断されたということです。検察に関しては、確実に有罪だと言える事件について起訴を行うというのが基本です。また、日本の刑事事件では起訴されたら有罪率が99%以上という統計もあります。そのため、結果として勾留請求が行われたら起訴される可能性が高いという考えが広まっているのでしょう。
このように、勾留請求が行われたからといって、直接起訴や有罪に影響するということはありません。
勾留を回避する方法
勾留請求が行われるのは、勾留理由がある場合です。そのため、勾留理由に当てはまらないとするための弁護活動が必要となります。
勾留請求が行われそうであれば、定住・定職があり家族が監視することを約束していることをなどを検察官に説明し、検察官に勾留の必要性がないことを説明します。また、勾留請求が行われたあとでも、裁判官に釈放を求めることも可能です。勾留決定後でも、準抗告により決定の取り消しを求めることもできます。
勾留が行われると、最大20日間身体拘束が続くため、会社を長期間休まざるを得なくなる、理由を公表しなければいけなくなるなど、これまで通りの社会生活に戻ることが困難となってしまいます。そのため、勾留請求を回避するための活動は必須といえるでしょう。
このように、勾留を回避するためには、早い段階での弁護活動が非常に有効です。
身近な人が勾留されたら、すぐに弁護士に相談を
刑事事件はスピード勝負といわれることがあります。逮捕から勾留まではあっとゆうまに時間がすぎていってしまうためです。勾留が行われると、社会生活を維持できなくなってしまうため、まずは早期釈放を第一に目指すことが大切です。
そのためにも、ご自身やご家族が逮捕されたらすぐに弁護士に相談しましょう。早い段階で弁護を依頼することで、釈放のためにできることは多くなります。遅くとも、勾留請求が行われた段階で弁護士に相談すべきです。
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
- 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
- 23日間以内の迅速な対応が必要
- 不起訴の可能性を上げることが大事
- 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
- 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実