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不動産の任意売却の流れ~ローンが残っていても家は売れる!?
この記事で分かること
- 任意売却は競売とは違う。売却価格は相場とあまり変わらない
- 通常、任意売却は仲介業者へ依頼するが、中には悪徳業者もいるので注意が必要
- 意売却はメリットばかりでなくデメリットもあることを理解した上で契約を結ぶこと
住宅ローンがはらえなくなったりしたときに、不動産を任意売却することは可能ですが、当然デメリットもあります。悪徳業者も多く、不動産についても知識がある程度ないといけない場面も多くあります。任意売却で失敗しないためにも、売却の流れやポイント、デメリットについても知りましょう。
不動産の任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンを払えなくなったとき、持ち主の任意で不動産を売却することです。任意売却は一般の不動産売買と何が違うのか?ローンを払えなくなったら競売にかけられちゃうんじゃないの?そんな疑問にお答えします。
一般売却・任意売却・競売の違い
任意売却は、一般的な売却と何が違うのでしょうか。競売も加えた、3つの売却方法を比較しながら、任意売却について理解しましょう。
一般売却の場合
住宅ローンの支払い困難による一般売却では、売却代金はすべてローン返済に充て、足りない差額分を一括で現金にて支払います。つまり、差額分を支払うことのできる場合しか利用することができません。
任意売却の場合
ローン残高がある状態で、債権者の同意を得て行う売却です。売却価格も相場とあまり変わりません。足りない差額分に関しては、通常、月額1~2万円程度の無理がない範囲で支払いを続けます。
競売
ローンの支払いを滞納し続けたことにより、借入先の金融機関が裁判所の申し立てを行うことで、強制的に売却されます。価格は市場価格の7割前後と、任意売却に比べ安くなります。
こんな時にも任意売却を利用できる
任意売却を利用する理由の多くは、収入の減少によってローンの支払いが困難になる場合ですが、その他にも任意売却を利用することで問題を解決することのできるケースがあります。一般売却は、売却後に残債があった場合、その額を一括で支払う必要がありますが、任意売却にはその必要がないので、以下のような場合にも利用することができるのです。
離婚することになったとき
ローンの残る不動産を任意売却して、利益が生じた場合(アンダーローン)、夫婦で利益を分配することができますし、残債があれば(オーバーローン)、どちらかがその返済を続けていくことになります。
相続で不動産の処分に困ったら
亡くなった方がローンの残る不動産を所有していた場合、不動産をいったん相続してから任意売却することも可能です。亡くなった方の相続の多寡や債務状況によって、どのような選択がよいのかはそれぞれです。
転勤で空き家になってしまうとき
転勤によって住んでいた家を賃貸に出す場合、空き家になってしまったり、家賃収入よりもローンの返済額が上回ってしまうなら、任意売却をして手放すことも一つの手と言えます。
ローンの支払いが困難になった場合以外でも、離婚や転勤で不動産が不要になった、不動産を相続したが処分に困っている等でも任意売却を利用できます。
不動産の任意売却の手続きと流れ
ここまで、任意売却の基礎知識を確認してきました。では、実際に任意売却の手続きはどのような流れで進められるのでしょうか。依頼する業者によっても多少の差がありますが、概ね下記のような流れで話が進みます。
①仲介業者の選定
任意売却をすることに決めたら、次は、上記で紹介した仲介業者を選定します。まずは、複数の業者に相談をしてみましょう。住宅ローンの借入先や当該不動産の名義、連帯保証人など、基本的な情報について整理しておくと話がスムーズです。
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②当該不動産の査定
当該不動産の基本的な情報を確認できたら、査定が始まります。任意売却に慣れた業者の方が、査定が早く済みます。
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③配分票の作成
査定結果をもとに、売却代金でどのくらい返済が可能で、債権者や利害関係者にそれぞれどう配分するのかを、予定配分表にまとめます。予定配分表は金融機関が不動産の任意売却を許可するか否かを決定する重要な書類です。
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④媒介契約の締結
債権者が売却価格に合意し、債務者が媒介契約に同意すれば、ここで専任媒介契約を結ぶことになります。この時点で、債務者に費用負担が発生することはありませんので、注意しましょう。
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⑤販売活動
不動産情報サイトや自社ホームページ、不動産業者専門のサイト「レインズ」に掲載し、広く購入希望者を募ります。もしも、購入希望者が現れない場合には、売却価格を下げる必要があるかもしれません。その場合の調整は、仲介業者が行ってくれます。
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⑥売買契約の締結
借入先の金融機関が抵当権抹消を承諾した後、仲介業者は、債務者と購入希望者との間で売買契約を締結します。
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⑦代金決済・引渡し
残代金の精算を行い、抵当権等の抹消と登記の続き、債権者等への支払い、引渡し(鍵の受け渡し)をします。
そのため仲介業者の選定は大事です。任意売却の経験が豊富な複数の業者へ相談しましょう。
不動産の任意売却で失敗しないために
ここまで任意売却の基礎知識と流れを見てきましたが、やはり、メリットばかりではありません。メリットばかりを掲げて契約に持ち込む悪徳業者がいることも事実です。ここからは、悪徳業者に騙されないための見分け方と、任意売却デメリットについて見ていきましょう。
悪徳業者の見分け方
任意売却におけるトラブルのほとんどは悪徳業者のような会社に原因があります。専門的な知識とノウハウを必要とする任意売却では、信頼のできる業者を探しましょう。次のような業者には注意が必要です。
任意売却申請費やコンサルティング料を要求
任意売却で認められている報酬は不動産取引による仲介手数料のみです。仲介手数料の上限は取引価格の3%+60,000円(税別)と法律で定められていますので、それ以上の報酬を請求されることはありません。また、コンサルティング料を請求できるのは、公認不動産コンサルティングマスターという資格を持った者が不動産仲介以外の特別な業務を行う場合ですが、任意売却はそのような特別な業務にはあたりません。これらの行為は宅地建物取引業法違反になり、免許取消や罰金の処分を受けます。
引越し費用を保証する
任意売却には、債権者から引越し費用が出ることが多いというメリットがあります。これは債権者との交渉において捻出できる費用であって、必ず渡されるものではありません。その上限は30万円前後で、100万円などの高額な金額を渡されることはまずありませんし、引越し費用が保証されるということはありませんので、甘い言葉に騙されないようにしましょう。
媒介契約を締結するだけでお金をもらえる
専任媒介契約を結ぶだけ、または当座の資金という名目などで現金を渡されることがあれば、要注意です。買い取り額が相場の半額になってしまったり、お金を騙し取られるといったトラブルが実際に起きています。売買が成立しなければ、不動産業者に一銭も払う必要はありませんし、その逆も同じです。
デメリットも理解しよう
任意売却を検討するとき情報収集をしていると、さまざまなメリットが目に飛び込んでくるかもしれません。もちろん、任意売却をすることで解決する事例は数多く存在しますが、必ずしも成功するわけではありません。もしも、任意売却に失敗すれば、競売にかけて残債を一括返済するか、返済もできなければ自己破産に追い込まれるリスクさえあります。そういったデメリットも理解したうえで、契約を結ぶようにすることが大切です。
債権者と連帯保証人の同意が必要
任意売却では、売却代金で住宅ローンの全額を返済できるとは限らないので、売却価格やその後の返済について、債権者の同意を得る必要があります。また、返済が滞った場合、連帯保証人にも請求がいきますが、そこで連帯保証人が返済をしてしまうと任意売却ができなくなってしまいますので、連帯保証人の協力も必要です。
手続きや交渉が個人には難しい
上記で述べたように、任意売却をするには債権者と交渉をして同意を得る必要があります。それにはまず、販売価格を決めるために当該の不動産価値を査定し、残りの住宅ローンと比較しなければならず、専門的な知識を要します。通常、媒介契約にこの交渉も含まれていますが、なかには自分で行わなければならない場合があるので、契約時に確認しましょう。
売却期間に限りがある
すでに競売にかけられている場合、任意売却の販売活動を行うことはもちろん可能ですが、競売を取り下げるには、開札期日の前日までに売買代金の決済を完了させることが条件です。つまり、その短い期間で売買契約を成立させることができなければ、任意売却は失敗に終わってしまいます。任意売却ができないとなれば、競売にかけて残債を一括返済するか、返済もできなければ自己破産に追い込まれるリスクさえあります。
内覧に立ち会う必要がある
競売は家の中まで見学することはできませんが、任意売却は一般売却と同じく購入希望者が内覧することができます。内覧ができない場合は、販売活動の妨げになりますので、売却するためにも協力をしましょう。
売却が成功するとは限らない
あまり多い事例ではありませんが、物件の条件等により買い手がつかない、債権者との間で販売価格の折り合いがつかないといった場合もありますので、必ずしも売却が成功するというわけではないことにも留意してください。
また任意売却はメリットもデメリットもあります。債権者との交渉がうまくいかない場合など成功する保障はなく、失敗すれば競売にかけられるリスクもあることを理解しておきましょう。
不動産の任意売却のことで困ったら、弁護士に相談!
弁護士、司法書士は不動産売買の専門家ではありませんので、販売活動についてはやはり不動産会社に任せることになります。不動産会社の中でも、売買の仲介を中心業務とする会社を探すとよいでしょう。不動産の任意売却をしたいと思ったときは、専門家への相談をお勧めします。いずれの専門家も、相談の窓口であり、実際には各専門家が集まって行うことが多いようです。弁護士は不動産の売却の代理人となることができる旨が、法律に規定されています。また、離婚に伴う任意売却の場合など、法的な問題が絡むときに弁護士を利用するのもよいでしょう。
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