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格安だけどデメリットも多い!不動産の競売物件とは?

この記事で分かること

  • 不動産競売は裁判所への申立てから始まる
  • 競売をするための資格は特になく、誰でも参加できる
  • 通常の不動産売買にはない、不動産競売の様々なデメリットがある

不動産の競売では、たしかに物件は安く買えます。しかし、売主がいないため、買主には通常の不動産売買にある引き渡しの義務や疵担保責任がないなどのデメリットが生じます。入札前の現地調査も困難なため、素人が手を出すと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。不動産の競売で困ったことがあれば、弁護士などのプロに相談することをおすすめします。

不動産競売について解説!

不動産の競売は、裁判所への申し立てによって、手続きが始まりますが、どのような場合、どのくらいの期間滞納すると競売にかけられてしまうのでしょうか?また、競売にかけられた物件はどのようにして入札すればいいのでしょうか。

まずは、不動産競売(以下、競売)の基本的な知識を押さえておきましょう。

競売に至るまで

競売にかけられた物件は売却価格が相場の7割ほどになってしまいます。もし、売却できたとしても、債務者には残債を一括返済するか返済できなければ破産という厳しい現実が待っています。では、どのような経緯で不動産の競売に至るのかを見ていきましょう。

裁判所への申し立て

競売は、弁済を受けられずに困った債権者が裁判所に申し立てをすることにより始まります。債権者が債務者の所有する、または担保として提供していた不動産を裁判所に換金するよう依頼するのです。裁判所は申し立てに間違いがなければ、その不動産を差し押さえたうえで、強制的に売却し、その代金を債権者への支払いに充てます。

競売にかけられる理由

競売にかけられる理由で最も多いのは、ローンの返済が困難になったことで、次は自宅や事務所、倉庫なども含む不動産を担保にした借金が返せなくなった場合です。事例としては多くありませんが、複数人が相続した物件を分配する時にも競売になることがあります。

滞納し始めて4カ月~6カ月程度で競売

最近の傾向では、滞納し始めてから4カ月~6カ月程度で競売に至ることが多いようです。滞納が3か月続くと、「催告書」や「督促状」が送られて来ますが、この段階では滞納分を一括返済すれば大丈夫です。しかし、そのまま滞納が続くと、「競売開始決定通知」によって、最短4カ月で競売にかけられてしまいます。

競売に参加するには

上記では、競売の基礎知識を債務者側の立場から確認しました。ここからは、競売の入札に参加する立場から、知っておくべき基礎知識を紹介します。

参加資格

基本的に競売の入札に特別な資格は必要ありません。不動産業でなくとも構いませんし、以前は制限のあった外国人も外国人登録済み証を提出できれば、入札が可能です。

情報の入手法

①配当要求終期の公告:最初に一般の人が期間入札の競売不動産を目にするのは、裁判所に掲示される、この公告になります。また、この公告では、物件の詳細や売却期間が分からない上に、当該物件が任意売却を利用した場合は競売にはなりません。競売というよりは、任意売却で取得する際の情報と言えます。

②期間入札の公告:①の配当要求終期の公告の後、現況調査報告書などの書類作成が完了すると、売却実施処分を行います。東京地裁でいうと、その処分から5カ月後に「期間入札の公告」が実施されることになっています。これは、日刊紙などへの広告掲載も同時に行われるので、誰でも入手しやすい情報です。

③事件記録の閲覧開始:②と同時に閲覧することができます。「物件明細書」などの詳細情報(三点セットという)が公開されています。2002年から実施されている、インターネットによる情報公開により、全国の物件情報が得られるようになりました。

④特別売却物件情報:期間入札で入札のなかった物件は、特別売却に付されます。この場合の入札は先着順となります。

入札の方法

期間入札では、買受希望者が指定された入札期間内に、保証金と共に入札書を裁判所に持参するか、郵送します。そして、定められた開札期日に集まった入札書を開札し、一番高い価格を付けたもの(最高価買受申出人)を決めます。

ワンポイントアドバイス
競売にかけられた物件は売却価格の相場の7割程度になります。入札に特別な資格は必要なく、不動産業ではなく一般の人でも参加できます。現在は、日刊紙などでの広告掲載や、インターネット上で全国の物件情報の詳細をみることができます。

不動産の競売の現状

競売の動向は、経済状況や政策に左右されるので、その時代を反映します。近年の東京地裁本庁のデータによると、総入札本数は減少しており、落札率は上昇しています。つまり、競売は人気があるわけです。「司法統計年報」から近年の動向について、見ていきます。

統計にみる競売

東京を中心とした地域における、競売の現状を見てみましょう。競売の申し立て件数は減少しているのに、入札数が増加していて、その人気ぶりが伺えます。素人には手の出しづらい状況であると言えます。

件数は減少傾向

裁判所の「司法統計年報」によると、競売の申立件数(担保権実行および強制競売による新受件数の合計)は、2004年ごろまで、年間7万件を超える事件数でしたが、全体としては年々減少傾向が続いています。2008年と2009年に一時増加が見られますが、これは2008年のリーマン・ショックを発端とした金融危機の影響であると考えられます。

入札状況

東京都23区とその隣接アリアでは、大部分の物件が落札されていますが、都心を離れると落札率が下落しています。落札された物件の平均入札本数は、東京、横浜ではさらに増加しましたが、その他の本庁・支部の多くでは同等もしくはやや減少しています。

落札額は上昇

関東では、競売落札価格が2013年から顕著に上昇しています。売却基準価額(裁判所が、不動産鑑定士によって評価された金額を基準に競売不動産の価値を判断したもの)も2015年の東京で大幅に上昇しました。

なぜ申立件数が減少したか

申立件数が減少したということは、それだけ債務者が減少しているのでしょうか。必ずしも、そういうわけではないようです。競売にかけられる前に対処ができる任意売却が一般に知られるようになったことや、政策の影響があるようです。

任意売却の増加

任意売却が広く知られるようになり、競売を回避できるようになりました。近年では、競売の落札価格も上昇しているので、一概には言えませんが、やはり競売よりは任意売却の方が高値で売却できることから、債権者と債務者の双方にメリットがある点で、任意売却を第一の選択肢とする場合が多いと思われます。

モラトリアム法の影響

「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(通称「モラトリアム法」)は、金融機関が企業に対しても、個人に対しても、一時的に破たんを見送る延命措置として施行されました。この法案は2013年3月で終了していますが、その後も金融機関は強制的な不良債権処理を行う方針をとっていないために、競売という方法が選択されづらくなっている背景があります。

ワンポイントアドバイス
競売の総入札本数は減少し、東京近郊での落札率は上昇している反面、関東以外の地域の落札率は同等もしくは減少しています。競売の申立件数が減少している背景には、任意売却や西部の金融政策によるものが大きいといえます。

不動産の競売の購入者にはデメリットが多い

不動産の競売での購入者にはデメリットが多くつきまといます。
通常の不動産売買であれば、売主が存在することで、引き渡し義務が発生するので、立ち退きや瑕疵(かし)(法律上のなんらかの欠点)について一定の責任があります。しかし、競売では売主がいないということに最大のデメリットがあります。

引き渡しの義務がない

通常であれば売主は不動産を買主に引き渡す義務があります。引き渡し義務には、占有者の立ち退き、鍵の引き渡し、付帯設備の点検と修理、隣家との境界線の確定、売主や第三者の残置物の撤去があります。権利関係で言えば、それまで設定されていた抵当権や賃借権があれば、引き渡しまでに抹消しておくことも売主の義務です。
しかし、競売の場合は、売主がいないため、買主への引き渡しの義務がなく、占有者の立ち退きに苦労する場面に出くわすことがあります。

占有者の立ち退きに苦労する

買主は占有者と物件の引き渡しについて話し合いをします。任意に明け渡しをしてもらう場合の多くは、明渡料を要求されます。もし話し合いで折り合いがつかなければ、裁判所に「家屋明渡訴訟」を提起し、判決を得て強制執行を行います。しかし、それには時間とお金がかかります。簡便な方法として、明渡命令という方法もあります。

残置物を勝手に処分できない

競売の売却対象は不動産のみなので、家具等の動産は含まれません。つまり買受人は,残置物を勝手に処分することができません。残置物を強制的に取り除くには建物について「引渡命令の申立て」をし、執行官に明渡執行をしてもらう必要があります。

疵担保責任がない

一般的な不動産売買では、「宅地物件取引業法」に規定される瑕疵担保責任によって消費者は保護されていますが、その適用がない競売では、安全な取引が保証されていません。

損害賠償の責任が適用されない

瑕疵担保責任とは、不動産の売買契約をした時点では分からなかった隠れた不具合が判明したような場合、売主に損害賠償する責任があるというものです。雨漏りや建物の傾き、カビやシロアリ被害などが後から発覚することがあります。このようなことがあれば、瑕疵担保責任を負う売主に、損害賠償を請求することができます。しかし、競売では瑕疵担保責任が適用されないのです。

競売の場合、修繕費用負担は買主

上記の瑕疵担保責任の適用がない競売においては、すべての修繕を買主が行わなければなりません。建物に重大な欠陥や、水道設備・電気機器などに欠陥が見つかった場合、修繕費用が高額になるので、その点も競売のデメリットと言えます。

入札前の現地調査も困難

なるべく、自己負担での修繕を少なくしたいところですが、競売では入札前に物件の内外を調査することができません。競売不動産の所有者は、多くの場合、物件の売却を望んでいないので、現地調査において協力を求めることができないという事情があります。知ることができるのは、裁判所の提供する「3点セット」という、物件明細書、現況調査報告書及び評価書等の書類から得られる情報だけです。あとは、住所を調べて現地へ赴き、外観から分かる範囲で入札の判断をするしかありません。

ワンポイントアドバイス
不動産競売には「売り主がいない」ことに関連する、通常の不動産売買にはない様々なデメリットがあることを理解しましょう。引き渡しの強制執行が素人では対応が難しい点や、高額の修繕費用が発生する可能性があること、入札前に現地調査が困難な点も大きなデメリットです。

不動産の競売でトラブルになったら、弁護士に相談

不動産競売のデメリットについてお分かりいただけたでしょうか。競売はいわくつきの物件も多く、素人には手を出しにくいものです。安さばかりに気を取られて、失敗のないように注意しなければなりません。

もし、不動産の競売でトラブルになったり、不安に思うことがあったら、不動産に強い弁護士の出番です。初回は無料の法律事務所も多いので、ぜひ相談してみるとよいでしょう。

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