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後遺障害4級の慰謝料相場~認定基準と金額の相場
この記事で分かること
- 後遺障害4級になる症状には、視力障害、口の障害、聴力障害、上肢下肢の障害、手指、足先を失った障害がある
- 後遺障害4級の後遺障害慰謝料は1670万円
- 後遺障害4級の労働能力喪失率は92%
- 後遺障害4級で正当な慰謝料を受け取るには弁護士基準で計算する必要がある
交通事故で重傷を負ったら、まずは弁護士に依頼して後遺障害等級認定の手続きを進めましょう。後遺障害4級になると、後遺障害慰謝料も逸失利益も高額になるので、弁護士基準で賠償金を計算する必要性が高いです。弁護士費用特約を利用すると、被害者の弁護士費用の負担も軽くなるので、交通事故に遭ったら、まずは自動車保険への加入状況を確認してみることをお勧めします。
後遺障害4級の認定基準
交通事故の後遺障害には、重い方から1級~14級があります。4級は、上から4番目に重い症状において認められる等級で、想定されている労働能力喪失率も92%となっており、非常に高いです。具体的にどういった症状があれば後遺障害4級となるのか、まずは、認定基準をみてみましょう。
1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
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2号 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの |
3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの |
4号 | 1上肢をひじ関節以上で失ったもの |
5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
後遺障害4級が認定される症状は、上記の7種類です。以下で、それぞれの症状がどのようなものか、順番に説明します。
1号 両眼の視力が0.06以下になったもの
4級1号は、交通事故によって視力が著しく低下してしまい、両方の視力が0.06以下になってしまったケースです。このときの視力は「矯正視力」です。メガネやコンタクトレンズを使用しても矯正不可能で0.06以下になったときに後遺障害4級となります。また、もともと弱視などで視力が低かった人の場合には後遺障害として認められず、あくまで「交通事故によって視力が低下した」という因果関係が必要です。
視力が0.02以下になった場合には、後遺障害等級は2級2号に上がり、反対に0.06より視力が残っていれば等級が下がります。
2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
咀嚼機能というのは、ものをかんで飲み込む能力のことです。言語の機能は、発音をして言葉を話す能力です。交通事故で、口や顎を損傷したり、脳や神経にダメージを受けたりすると、食べ物を自力で噛んで飲み込めなくなったり、言葉を話せなくなったりする可能性があり、後遺障害として認められます。
4級2号になるのは、咀嚼機能と言語機能の「両方」に「著しい障害」が残ったケースです。咀嚼機能か言語機能の「片方」だけであれば、後遺障害の等級が下がりますし、反対に、これらの機能が「完全に」失われたら、等級が上がります。
咀嚼機能に「著しい障害」があるという場合は、お粥や柔らかい肉などのものを自力で食べられる程度を言います。スープなどの流動食しか食べられないという状態にまではなっていません。
言語機能に「著しい障害」があるという場合は、以下の4種類の子音の発音方法のうち、2種類の発音ができなくなった場合です。
- 口唇音
- 歯舌音
- 口蓋音
- 咽頭音
発音できなくなったのが1種類だけの場合には等級が下がりますし、3種類以上発音できなくなった場合などには等級が上がります。
3号 両耳の聴力を全く失ったもの
交通事故で耳や神経を損傷すると、聴力が失われることがありますが、後遺障害4級3号になるのは、両耳の聴力が完全に失われたケースです。後遺障害に該当するかどうかを調べるためには、聴力検査を実施します。このとき行われるのは、以下の2種類の検査です。
1つは純音聴力検査です。この検査では、単純な「ピー」という音をどこまで聞き取れるかを調べます。2つ目は明瞭度検査です。この検査では、音を「意味を持った言葉」としてどこまで聴き取れるかを調べるものです。
完全に聴力が失われていると判断されるのは、検査において以下の結果が出たケースです。
- 両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上
- 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上で、かつ最高明瞭度が30%以下
4号 1上肢をひじ関節以上で失ったもの
交通事故に遭うと、腕や脚を損傷するケースも多いですが、片腕をひじ関節以上で失うと、後遺障害4級4号が認定されます。「ひじ関節以上で失った」という場合、肩からひじにかけての部分から腕を切断した場合を言い、根元から腕を失った場合も含まれます。
また、交通事故によって直接腕が切断された場合に限らず、手術などによって腕の切断を余儀なくされた場合にも4級4号となります。4級になるのは片腕を失った場合ですが、失われた腕が利き腕かどうかは問われません。また、両腕を失うと、等級が上がって1級3号となります。
5号 1下肢をひざ関節以上で失ったもの
交通事故が原因で、片脚をひざ関節以上の部分で失った場合には4級5号となります。「ひざ関節以上で失った」とは、股関節からひざ関節にかけての部分で脚を切断された場合であり、脚を根元から失った場合にも4級5号となります。
腕の場合と同様、交通事故によって直接脚を失った場合だけではなく、手術治療を行うために切断した場合にも4級5号が認定されます。両脚を根元から失った場合には1級4号となり、等級が上がります。
6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
4級6号は、両手の手指の「用を廃した」場合に認定されます。用を廃したというのは、指が切断されたわけではないけれども、神経系統が損傷を受けるなどして動かせなくなった場合を言います。4級6号となるのは、両方の手の10本がすべて硬直した場合です。具体的な認定基準は以下の通りです。
- 手指の末節骨の長さが2分の1以下になった
- 中手指節関節また近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が2分の1以下になった(指の根元に近い方の関節が動かなくなったケースです)
- 親指の橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が2分の1以下になった
- 手指の末節の指腹部や側部の感覚が完全に失われた
7号 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
交通事故では、足を損傷するケースも多いです。両足の足先の部分を失った場合において、後遺障害4級7号となります。リスフラン関節とは、足の甲の真ん中あたりにある関節ですから、両足の足の甲の中心から足首の関節までの部分を失うと、4級7号が認定されます。
両足の足首の関節より上の部分で切断したら、後遺障害の等級が2級に上がります。
ただ、後遺障害には「併合認定」という制度があります。併合認定とは、2つ以上の異なる系統の後遺障害がある場合において、より高い後遺障害の等級認定を行うことです。たとえば、後遺障害6~8級の症状が2つあると、重い方の等級が2つ繰り上がります。6級相当の後遺障害が2つあると、4級が認定される可能性があるということです。交通事故で後遺障害認定を受けるときには、併合認定によって高い等級が認定される可能性もあるので、異なる症状が2つ以上ある場合には、このことを意識しておきましょう。
後遺障害4級で請求できる慰謝料と逸失利益
後遺障害4級が認定されたときに受け取れる可能性のある交通事故の慰謝料は、以下の2種類です。
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
- 後遺障害慰謝料
それぞれについて、みてみましょう。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、交通事故で負傷したことについての慰謝料です。後遺障害が残っても残らなくても、怪我をして入通院をすれば発生します。金額の相場は、入通院治療を受けた期間によって異なります。入通院期間が長くなればなるほど高額になり、同じ治療期間であれば通院期間より入院期間の方が高額になります。
たとえば入院2か月、通院6か月の場合には181万円程度となりますし、入院3か月、通院9か月の場合には226万円程度となります。後遺障害4級となるケースでは、数百万円規模になることが多いでしょう。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ってしまったことについての精神的苦痛に対する慰謝料です。後遺障害が残ったケースでしか発生しません。また、後遺障害の内容や程度により、金額が変わってきます。4級の場合の後遺障害慰謝料額の相場は1670万円です。
実際に受け取れる慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の合計
後遺障害4級となったら、具体的にどのくらいの慰謝料を払ってもらえるのか、みておきましょう。上記の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料は、それぞれ個別に計算されるので、両方が発生するときには合計額を受け取ることができます。
そこで、交通事故で3か月通院し、その後9か月通院して後遺障害4級が認定された場合には、入通院慰謝料が226万円、後遺障害慰謝料が1670万円となり、合計で1896万円程度の慰謝料が支払われます。
後遺障害が残ったときにはどうしても後遺障害慰謝料にばかり注目してしまいがちですが、入通院慰謝料も忘れてはなりません。
後遺障害逸失利益について
交通事故で後遺障害が残ったら「逸失利益」も請求できます。逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより、失われてしまった将来の収入のことです。後遺障害4級に相当する障害が残ると、身体能力が大きく損なわれるので、仕事をすることが非常に難しくなり、失業する方も多いでしょう。そうなると、本来なら得られたはずの収入を得られなくなるので、その減収分を加害者に請求できるのです。
後遺障害逸失利益の金額は、後遺障害の等級によって異なる「労働能力喪失率」を使って計算します。4級の場合の労働能力喪失率は92%であり、ほとんど働けなくなると想定されています。
逸失利益を計算するときには、交通事故前の年収を基準にして就労可能年齢である67歳までの分を算定します。後遺障害4級の逸失利益の金額の相場としては、5000万円を超えるケースが多くなるでしょう。
被害者が自分で示談交渉に対応すると、加害者の保険会社から適正な条件提示を受けられるかどうか分からないので、示談に応じてしまう前に弁護士に相談しましょう。
後遺障害4級で適切な賠償金を支払ってもらうための注意点
後遺障害4級が認定されるケースでは、被害者の生活がそれまでとは一変してしまいますし、大きなストレスを抱える方も多いです。そのような場合、正当な金額の賠償金を受けとるべきです。
交通事故において、適切な金額の賠償金を受け取るためには、「弁護士基準」という基準で金額を計算する必要があります。交通事故の損害賠償金の計算基準には、自賠責基準と任意保険基準、弁護士基準の3種類があり、弁護士基準はこれらの中でもっとも適切な法的基準です。金額的にも弁護士基準がもっとも高額になります。
しかし、被害者が自分で加害者の保険会社と示談交渉をすると、相手の保険会社から低額な「任意保険基準」を適用されて、慰謝料や賠償金を下げられてしまう可能性が高いです。たとえば後遺障害慰謝料は、任意保険基準で計算すると弁護士基準の2分の1~3分の1程度となります。そこで、交通事故で後遺障害が残ったら、弁護士費用を払ってでも弁護士に依頼した方が被害者の手元に残る金額が大きくなります。多くの弁護士が無料相談に応じているので、弁護士費用のことを心配する前に、1度相談を受けてみましょう。
自動車保険の弁護士費用特約に加入していたら、300万円までの弁護士費用を保険会社が負担するので、被害者はそれを超える部分のみ支払えば済みます。依頼する事務所にもよりますが、賠償金額が2000万円程度までの場合であれば、弁護士費用の負担なしで弁護士に対応してもらえる可能性もありますし、費用が発生する場合にも弁護士費用特約の300万円分を引いてもらえるので、負担が非常に軽くなります。
交通事故に遭ったら、まずは弁護士費用特約をつけていないか、確認しましょう。
後遺障害4級になったら、弁護士に依頼しましょう!
交通事故で後遺障害4級相当の症状が残ってしまった場合、もはや元の健康な身体を取り戻すことは不可能です。せめて法的に認められる最大限の賠償金を受け取り、救済を受ける必要があります。
被害者に認められた適切な権利を実現するためには、弁護士に示談交渉を依頼して弁護士基準で賠償金を計算する必要があります。弁護士に依頼すると、後遺障害等級認定も受けやすくなるので、メリットが大きくなります。
交通事故に遭って重傷を負ったなら、自分で後遺障害等級認定の手続きに取り組む前に、まずは1度、弁護士に相談してみましょう。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない