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人身事故と物損事故、弁護士に相談するメリット・デメリットを解説!
この記事で分かること
- 人身事故は人身に損害を与える事故を、物損事故は物だけに損失が及ぶ事故を言います。
- 被害者側にとっては、少しでもケガをしたら、物損事故でなく人身事故として届け出るのが得策です。
- 弁護士を依頼することで、人身事故の場合、慰謝料額が増える、後遺障害等級認定を獲得しやすくなるなどのメリットがあります。
- 人身事故や物損事故いずれの場合も示談交渉を有利に進められます。
軽症の人身事故や物損事故の場合、弁護士に依頼しても増額幅は小さく費用倒れになるリスクがあります。しかし、弁護士費用特約を利用すれば、費用倒れになるその心配は要りません。
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人身事故と物損事故の違い
2018年4月の交通事故発生件数は、警視庁発表によると、34,868件。1日平均では1,162件にのぼります。数自体は前年に比べ減少傾向にあるものの、高齢者による事故や飲酒運転による事故の割合は増加、悪質な運転も問題となっています。
そうした中では私たちもいつ事故に巻き込まれるとも知れません。そこで私たちは“当事者になった場合”どうするかを考えなければならないでしょう。
人身事故と物損事故の違い
交通事故は「人身事故」と「物損事故」に分かれます。
人身事故とはけがや死亡など、人身が損害を被る事故のことです。物損事故とは車の破損やガードレール、民家の塀の損傷など物だけが損害を被る事故を言います。実は両者にはその他にも大きな違いがあるのです。
保険金が下りるのは人身事故の場合のみ
第一に、損保会社から保険金が下りるのは人身事故の場合だけで、物損事故では慰謝料や損害賠償も支払われません。そして、後遺障害が残った際に支払われる後遺障害慰謝料についても、支払われるのは人身事故の場合に限られます。
後遺障害とは、後遺症のうち、交通事故が原因であることが医学的に証明されるとともに、労働能力の低下、もしくは喪失が認められ、更にその程度が自賠責保険の等級に該当するもの”を指します。
物損事故では実況見分調書が出ない
交通事故が起こった場合、それが人身・物損にかかわらず警察を呼ぶ必要があります。人身事故の場合「実況見分調書」が作成されます。この実況見分調書は後に事故状況を明らかにするための書類です。
実況見分調書作成の主な目的は、刑事事件の場合に警察が証拠として利用することですが、被害者が損害賠償請求する際にも重要になってきます。ところが物損事故の場合、実況見分調書は作成されず、簡単な「物損事故報告書」が作成されるにとどまってしまいます。
交通事故では過失割合でもめるケースが非常に多く、こうした場合、事故状況を客観的に証明する、実況見分調書のようなものがないと困ります。そのため、被害者はたとえ小さなケガであっても物損事故としてではなく、人身事故として届け出るようにするべきでしょう。
被害者側にとっては少しでもケガをした場合、物損事故でなく、実況見分調書を作成する
人身事故として届け出るのが得策です。
人身事故を弁護士に相談するメリットは
交通事故に巻き込まれて後遺症が残ったら、生活が一変してしまうこともあります。車いす生活になるなどすれば、自宅のリフォームを余儀なくされることもあるかもしれません。いずれにしてもかなりのお金が必要なるケースが多いのです。
しかし保険金が下りる条件である後遺障害等級認定の獲得は、素人だけでは非常に困難です。弁護士に依頼すれば後遺障害等級認定を得られる可能性も高まり、さらに慰謝料も増額できる可能性が高まります。
後遺障害等級認定とは
交通事故によって後遺障害が残った場合、その症状や程度、損害は被害者ごとに異なります。それらを正確に把握するために行うのが「後遺障害等級認定」です。
認定を得られれば、等級に応じた慰謝料を請求できます。また示談が成立しないうちでも保険金を前倒しで受け取れる制度を利用できるようになります。
最も低い14級でも獲得するのは困難
後遺障害は部位や程度によって0~14級までの等級と140種類、35系列に細かく分類されます。14級が最も低い等級なのですが、実際は14級でさえ認定を獲得するのは難しいのです。
弁護士に依頼すれば認定を獲得できる可能性が高まる
その点、弁護士を利用すれば認定を獲得できる可能性が高くなります。と言うのも弁護士に依頼すれば後遺障害等級認定を得るための必要書類の作成等も一任できますし、認定を獲得するためのサポートを受けられる場合があるためです。
必要書類の作成なども一任できる
後遺障害等級認定を得るために提出しなければならない書類は複数あります。場離れしていない個人で作成した場合、完璧に仕上げるのは難しいと言えます。そして書類や手続きに不備があったがために等級認定審査に通らないケースもあります。弁護士に依頼すれば書類作成もぬかりなく行ってくれるので認定を獲得できる可能性が高くなります。
「後遺障害等級認定サポート制度」もある
また「後遺障害等級認定サポート制度」を実施している事務所もあります。この制度を利用すれば認定を獲得するために必要なことやポイントなどを教えてくれるので、認定を獲得できる可能性が高くなります。
保険会社からの慰謝料を多く請求できる
また、人身事故では損保会社から慰謝料を受け取れるケースがありますが、弁護士に依頼すると慰謝料を多く請求できることがあるのです。
後遺障害慰謝料も多く請求できる
損保会社から慰謝料などの賠償金を払ってもらうためには後遺障害等級認定されることが必要であり、額は等級に応じて決定する点は前述の通りです。しかし実は後遺障害慰謝料の額を決める基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つが存在します。しかし、保険会社の基準は会社の利益のために、基準が低く設定されており、できるだけ保険金を支払わないようになっています。一方、弁護士基準(裁判所基準)では最も少額の自賠責基準と比較しても100万円近く多くの額になる場合があります。
過失割合についても法的に対抗してくれる
交通事故では、加害者だけでなく被害者にも一部過失があるとされることがあります。きちんとした実況証拠を示したり、もともと被害者に既往症があり、それも相まってケガがひどくなったわけではない、などと主張しなければいけないケースもあります。そういった場合、弁護士が間に入ると、法的な観点から対抗してくれます。
物損事故を弁護士に依頼するメリットは
上記は人身事故の場合にのみ該当するメリットです。ここでは弁護士に相談するメリットのうち、物損・人身いずれの事故の場合にも当てはまるものを解説します。
交渉を有利に進められる
人身事故と物損事故、いずれの場合でも、損害賠償金や修理費用について相手方と示談交渉をすることになります。しかしこの交渉にも上手に進めるテクニックがあり、やり方次第で勝ち取れる額が大きく変わってくるのです。
示談交渉にもテクニックがある
事故直後は誰でも少なからず混乱しています。
事故直後の冷静さを欠いた状態でろくに検討もせずに適当な額で損害賠償金を算出し、これを相手に提示したところ、調査を進めていくうちに、あれも請求できる、これも請求しようと、どんどん額を釣り上げていくことになれば、交渉がうまくいくはずがありません。
はじめは正当な金額に少し上乗せた額を提示し、少しでも賠償額を増やすしたり、事故内容を十分に考え、正当な損害賠償金額を算出して相手に提示した後、交渉の過程で少しずつ下げていくといったやり方が上手な交渉術と言えます。
有利に交渉が進められる
場馴れしていない一般の方が交渉を有利に進めることは難しいことです。思わず感情的になってしまうことだって考えられます。また交通事故の賠償金額は過失割合など、状況によって大きく変わってくるため素人では満足のいく額を得られない可能性があります。その点、交通事故に強い弁護士は経験が豊富で、ケースごとの正当な損害賠償金額を割り出して相手に提示し、徐々に額を引き下げて落としどころを見極め、和解を成立させるなどが可能になります。
人身事故と物損事故を弁護士に相談するデメリットとその対処法
このように弁護士に依頼すれば、交渉を有利に進めることができ、賠償金も正当に多く請求できる可能性があります。しかし、すべてを弁護士に依頼すれば良いわけではなく、場合によっては弁護士に依頼することで不利益が生じる場合もあります。いったいどういう場合、デメリットになるのでしょうか。
費用倒れになる可能性も
弁護士に依頼するには、弁護士費用が必要になってきます。そしてケースによっては、賠償金の増額分がこれを上回る可能性もあるのです。
軽症の人身事故や物損事故では増額幅が小さい
人身事故にしても物損事故にしても、弁護士に示談を依頼すれば慰謝料や賠償金を増額できるかもしれません。しかし、着手金や相談料、成功報酬といった弁護士費用がかかります。そして、場合によっては、せっかくの増額分が弁護士費用を上回ってしまうこともあります。特に軽症の人身事故や物損事故では、弁護士に依頼したところで額はさほど変わらず、“費用倒れ”になるリスクがあります。
弁護士特約を利用して費用倒れを防ぐ
こうした事態を防ぐ方法があります。それが“弁護士費用特約”の利用です。
事故などの被害者になったとき、弁護士に依頼すれば、ある程度費用がかかってしまいます。そのため、弁護士への依頼を躊躇し、その結果十分な補償を受けられない事態になる可能性があります。そこで平成12年、日本弁護士連合会と損害保険会社が協力し、弁護士保険(権利保護保険)を作成し、損害保険に「弁護士費用特約」として付帯されるようになりました。
弁護士費用特約は、交通事故の損害の賠償を加害者に対して求めるために弁護士に相談・依頼したときにその費用を保険会社が代わりに支払ってくれるものです。
つまり弁護士特約を利用すれば弁護士費用の心配は要らなくなるため、たとえ、軽症の人身事故や物損事故でも弁護士に依頼することができるのです。なお現在、弁護士費用特約は、ほとんどの自動車保険に付帯しています。保険会社ごとに適用条件などが違うこともあるため、よく確認しておくようにしましょう。
交通事故の被害者になったら弁護士に依頼を
交通事故を弁護士に依頼した場合、賠償金の額や後遺障害等級の認定など多くの面でメリットがあります。デメリットとなるのは費用倒れになることくらいで、弁護士費用特約を交わしていればその心配も要りません。
弁護士に相談することで、適切な後遺障害が認められ、示談金の大幅な増額が可能になることがあります。交通事故の被害者になったら、弁護士費用を気にして自力で何とかしようとするのではなく、速やかに弁護士に依頼するのが得策です。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない