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アルバイトの休業損害の算出方法は?
この記事で分かること
- アルバイトの休業損害算出方法は、一般的な会社員のケースよりも複雑
- アルバイトの休業損害は、保険会社に基礎収入を低く計算されやすい
- アルバイトの休業損害は、保険会社に正当な休業日数を認めてもらいにくい
- 弁護士は、アルバイトの実際の稼働率を考慮して基礎収入を計算できる
- 弁護士は、アルバイトの勤務実績を反映した休業日数を計算できる
- アルバイトの休業損害は、弁護士に依頼し「弁護士基準」で算出・請求するのがベスト
- アルバイトの休業損害は、兼業主婦・学生など個別のケースによって算出・請求方法が異なる
- アルバイトは、休業損害のほかに慰謝料も請求できる
アルバイトの休業損害には、一般的な会社員のケースよりも複雑な独自の算出方法があります。保険会社は、アルバイトの休業損害算出に必要な「基礎収入」「休業日数」を被害者に不利な内容で計算することが多いので、交通事故に詳しい弁護士に相談し、被害者に有利な算出方法を用いて適正な金額の休業損害を請求しましょう。
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アルバイトでも休業損害が請求できる!
アルバイトの方が交通事故で怪我を負った場合、治療のためにアルバイトができず収入が減少してしまうことがあります。
ではアルバイトの方は、休んだ分のアルバイト収入を加害者・保険会社に請求できるのでしょうか?
実はアルバイトの方でも、治療のために働けず本来得られたはずの収入が減少した場合、この減少分を「休業損害」として加害者・保険会社に請求できます。
アルバイトには独自の休業損害算出方法がある
しかし、アルバイトの方の休業損害算出方法は、一般的な会社員のケースよりも複雑です。
例えば、一般的な会社員であれば、休業損害を計算するうえで必要な休業日数を、勤務先が作成する休業損害証明書で立証できます。
ところが、アルバイトの方の場合、休業損害証明書だけでは正しい休業日数を立証できず、結果として適正な休業損害を支払ってもらえないケースが多く見受けられます。
本記事では、アルバイトの方が適正な休業損害を請求するために、アルバイトの方独自の休業損害算出方法を解説します。
アルバイトの休業損害算出方法
アルバイトの休業損害算出方法には、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
の3種類があり、どれを使うかによって休業損害の金額が変わります。
自賠責基準
自賠責基準とは、交通事故の被害者への最低限の補償として、自賠責保険が法律に基づき保険金を支払う際の基準です。
自賠責基準での休業損害は、アルバイトの方を含むどのような職業であっても
日額6100円(※)×休業日数
で休業損害を算出します。
なお、立証資料等により休業損害が日額6100円を超えると明らかな場合には、日額1万9000円を限度としてその実額を認めてもらえることがあります。
(※)事故日が2020年4月1日以降の場合。事故日が2020年3月31日までの場合は、日額5700円・上限日額1万9000円まで。
任意保険基準
任意保険基準とは、保険会社各社が独自で設けている支払い基準です。
任意保険基準は、外部非公開のため詳しい内容はあきらかではありませんが、一般的には、
1日あたりの基礎収入(事故前3ヶ月の給与÷90日)× 休業日数
の計算式をベースに休業損害を算出すると言われています。
この任意保険基準の休業損害は、自賠責基準と同等かやや高額になるものの、弁護士基準よりも低額になることが多いです。
その理由は、アルバイトの方の場合、以下のとおりです。
基礎収入を低く計算されやすい
アルバイトの方はシフト制で働いている方が多く、毎月の稼働時間・稼働日数は月によって上下するため、月ごとの給与も上下しがちです。そのため、週に2~3日など稼働日数が少ない場合、事故前3ヶ月の給与を一律に90日で割って1日あたりの基礎収入を計算してしまうと、実際の稼働率が反映されない不当に低い金額になってしまいます。
正当な休業日数を認めてもらいにくい
また、シフト制のアルバイトの方の場合、保険会社に正当な休業日数を認めてもらいにくいという問題もあります。
アルバイトの方の休業損害請求では、勤務先から休業日数などを証明してもらう休業損害証明書を取り付ける必要がありますが、シフト制のアルバイトの方は、怪我のために仕事ができなくなると、そもそもシフトに入れてもらえず欠勤扱いにならないため、休業損害証明書では事故前にシフトが確定していた日数分しか休業日数を証明できません。
そのため、保険会社は、シフトが未確定だった日数分については休業日数として認めず、結果として被害者に適正な休業損害を支払わないことが多いです。
保険会社との交渉で基礎収入・休業日数が問題になった場合には、弁護士に相談すべき
その点、交通事故に詳しい弁護士であれば、実際の稼働率を考慮した基礎収入の計算や、シフトが未確定だった日数分も、休業日数に加えられる専門的知識があります。
保険会社との交渉で基礎収入・休業日数が問題となった場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士基準
弁護士基準とは、法律の専門家である弁護士だけが使える基準で、3つの基準の中で最も被害者に有利です。
弁護士基準でのアルバイトの休業損害は、
1日あたりの基礎収入×休業日数
で計算します。
この計算式だけを見ると任意保険基準と似ているように感じますが、弁護士基準では「1日あたりの基礎収入」と「休業日数」の割り出し方が任意保険基準と異なり、弁護士基準のほうがはるかに被害者に有利です。
実際の稼働率を考慮して基礎収入を計算できる
まず「1日あたりの基礎収入」ですが、基本となる計算式は
事故前3ヶ月の給与÷90日
です。
ただし、任意保険基準の解説でも述べたとおり、シフト制のアルバイトの方は、月によって稼働時間・稼働日数が上下するため、事故前3ヶ月の給与を一律に90日で割って「1日あたりの基礎収入」を出してしまうと、実際の稼働率が考慮されず不当に低い金額になりがちです。
弁護士は、このような場合、
事故前3ヶ月の給与÷事故前3ヶ月の実際の稼働日数
の計算式を使って「1日あたりの基礎収入」を算出する場合があります。
この計算式であれば、実際の稼働率を考慮した適正な金額で、「1日あたりの基礎収入」を計算できます。
稼働実績を反映した休業日数を計算できる
シフト制のアルバイトの方の場合、勤務先から取り付ける休業損害証明書と源泉徴徴収票で休業損害を証明するのが基本です。
しかし、休業損害証明書では、シフトが未確定だった日数分については欠勤扱いにならず休業を証明できないため、実際の休業日数を保険会社から認めてもらいにくいという問題が生じます。
そのため弁護士は、事故前3ヶ月の実際の稼働日数を参考にし、事故後も同じくらいの頻度で勤務が可能だったとして休業日数を算出することがあります。つまり、過去の稼働実績を反映した休業日数を計算できるのです。
もっとも、そのためにはきちんとした立証資料が必要です。
弁護士は、賃金台帳や事故前の給与明細書、給与振込口座の通帳など、過去の稼働実績を立証する資料を熟知していますので、もし休業日数の証明でお悩みの場合には弁護士に相談しましょう。
ケース別アルバイトの休業損害算出方法
一口にアルバイトと言っても、兼業主婦や学生など、さまざまなケースがあります。ここでは、ケース別にアルバイトの休業損害算出方法を見ていきましょう。
- アルバイト・パートをしている兼業主婦のケース
- 日雇いアルバイトのケース
- アルバイトをしている生徒・学生のケース
- シルバー人材センター登録者のケース
アルバイト・パートをしている兼業主婦のケース
アルバイト・パートをしている兼業主婦は、事故によってアルバイト・パートができなくなり減収した分の休業損害のほか、家事労働ができなくなった分の休業損害も請求できます。
家事労働ができなくなった分についても休業損害を請求できするのは、少し意外かもしれませんが、家政婦を見ればわかるとおり、家事労働には対価性があります。よって兼業主婦のケースでは、就労部分に加えて家事部分の休業損害も請求ができます。
アルバイト・パートをしている兼業主婦の休業損害は、通常のアルバイトの方と同じように、
1日あたりの基礎収入×休業日数
で計算します。ただし、1日あたりの基礎収入と休業日数の割り出し方に違いがあります。
アルバイト・パートをしている兼業主婦の基礎収入
アルバイト・パートをしている兼業主婦の1日あたりの基礎収入は、
- 現実の収入額:事故前3ヶ月の給与÷事故前3ヶ月の実際の稼働日数
- 賃金センサスによる女性労働者の全年齢平均賃金:年収388万円(※令和元年賃金センサスの場合)÷365日
のいずれか高いほうを用いて算出します。
アルバイト・パートをしている兼業主婦は、夫の扶養内で働くなど年収が少ない方も多いので、現実の収入額ではなく賃金センサスによる女性労働者の全年齢平均賃金を用いるケースが多いです。
例えば、年収100万円の兼業主婦の場合、
現実の収入額(年収100万円)<賃金センサスによる女性労働者の全年齢平均賃金(令和元年賃金センサスは年収388万円)
となりますので、賃金センサスによる女性労働者の全年齢平均賃金年収388万円を用いたほうが有利です。
しかし保険会社の多くは、1日あたりの基礎収入を、被害者への最低限の補償である自賠責基準の6100円としたり、被害者に不利であっても現実の収入額を用いて計算したりするケースが多く見受けられます。
アルバイト・パートをしている兼業主婦は、保険会社から自分に不利な計算方法で進められることがないよう、交通事故に詳しい弁護士へ相談しましょう。
アルバイト・パートをしている兼業主婦の休業日数
アルバイト・パートをしている兼業主婦は、アルバイト・パートを休んだ日数を休業日数としてカウントできます。
また、事故の怪我により家事労働ができなかった日数についても休業日数にカウントできる場合があります。
けれども保険会社の多くは、アルバイト・パートを休んだ日数しか休業日数にカウントせず、結果として被害者が適正な休業損害を受け取れなくなる場合があります。
ですから、アルバイト・パートをしている兼業主婦は、休業日数についても交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。
日雇いアルバイトのケース
日雇いアルバイトの方の休業損害は、一般的なアルバイトの方のケースと同じで、
1日あたりの基礎収入(事故前3ヶ月の給与÷(90日 or 事故前3ヶ月の実際の稼働日数))× 休業日数
の計算式で算出し、アルバイト先からもらう休業損害証明書と源泉徴収票や、給与明細書などその他の立証資料で請求します。
日雇いアルバイトの方の場合には、「単発バイトだから」「雇用期間が短いから」などの理由で、休業損害の請求に必要な休業損害証明書・源泉徴収票をアルバイト先から出してもらえないことが特に多いです。
このような場合には、給与明細書や給与振込口座の通帳などを立証資料として保険会社と交渉することとなりますが、保険会社を納得させるには専門的知識が必要ですので、交通事故に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。
アルバイトをしている生徒・学生のケース
生徒・学生は学業が本業であり、労働の対価としての収入を得ていないため、休業損害は通常発生しません。
しかし、アルバイトをして実際に収入を得ている場合には、休業損害を請求できます。
アルバイトをしている生徒・学生の休業損害は、一般のアルバイトの方と同様に
1日あたりの基礎収入×休業日数
の計算式をベースとしますが、休業日数は、学校・大学の試験日程や夏休み等の長期休みなどを考慮し、現実的に就労可能だった日数を用いて計算します。
また、それに加え、以下の内容を請求できる場合があります。
休学・留年分の授業料も請求できる
アルバイトをしている生徒・学生で、事故の怪我により休学・留年した場合には、休学・留年分の授業料を請求できる場合があります。
具体的な請求方法としては、入院記録などの医証を元に、事故の怪我により休学・留年する必要があったことを主張・立証していきます。
卒業・就職が遅れた場合には、就職していれば得られたはずの収入を請求できる
事故により卒業・就職が遅れた場合には、就職していれば得られたはずの収入を、その遅延期間に相当する金額で請求できる可能性があります。
具体的には、賃金センサスによる性別・年齢別・学歴別の平均賃金を基礎収入とし、卒業・就職の遅延期間を休業日数として休業損害を計算しますが、就職が内定していた場合には、内定先の初任給相当額を基礎収入として計算する場合もあります。
なお、卒業・就職遅延による損害は、休業損害ではなく逸失利益として主張できる場合があります。詳しく知りたい場合には交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。
シルバー人材センター登録者のケース
高齢者の中には、シルバー人材センターに登録してアルバイトをしている方もいます。
シルバー人材センター登録者の場合、実際に収入を得ているのであれば、一般のアルバイトの方と同じく休業損害を請求できます。
もっとも、被害者が高齢の場合、保険会社は無職であることを前提に休業損害ゼロで示談金・損害賠償金を提示するケースもあります。シルバー人材センター登録者で実際に収入を得ている場合には、休業損害の請求漏れがないように注意しましょう。
アルバイトは休業損害のほかに慰謝料も請求できる?
ここまでの解説で、アルバイトの方でも休業損害を請求できるというのはおわかりいただけたかと思います。
ではアルバイトの方は、休業損害のほかに慰謝料も請求できるのでしょうか?
アルバイトは休業損害のほかに慰謝料も請求が可能
結論から言えば、アルバイトの方は休業損害のほかに慰謝料も請求が可能です。
損害賠償において、休業損害と慰謝料は別の性質をもつ
というのは、損害賠償において、休業損害と慰謝料は全く別の性質をもっているからです。
すでに述べたとおり、休業損害は、怪我の治療のために働けず、本来得られるはずの収入が減少したことに対し支払われるものです。
一方、交通事故における慰謝料とは、入通院せざるをえない怪我や後遺障害を負うなど、被害者が事故によって受けた精神的苦痛に対し支払われるものを言います。
つまり休業損害と慰謝料は、損害賠償上で意味合いが全く異なるのです。
慰謝料は被害者の雇用形態に関わらず請求できる
そして慰謝料は、被害者の年齢や収入、正社員・アルバイトなどの雇用形態に関わらず請求ができます。
慰謝料には、
- 入通院慰謝料(事故の怪我により入通院したことに対する慰謝料)
- 後遺障害慰謝料(事故で後遺障害を負ったことに対する慰謝料)
- 死亡慰謝料(事故により死亡したことに対する慰謝料)
の3つがありますが、アルバイトの方でも、正社員の方と同様にこれらを受け取ることが可能です。
アルバイトの休業損害でお悩みの場合には弁護士に相談がベスト
アルバイトの休業損害の算出では、基礎収入と休業日数を正しく計算するのが難しい
アルバイトの方の休業損害は、会社員の休業損害とは算出・請求方法が異なります。
アルバイトの方の休業損害の算出では、会社員の場合よりも基礎収入と休業日数を正しく計算するのが難しく、法律に詳しくない一般の方が保険会社と交渉すると「基礎収入を低く計算されやすい」「正当な休業日数を認めてもらいにくい」という問題があります。そしてその結果として、不当に低い金額でしか休業損害を支払ってもらえなくなってしまうのです。
弁護士に相談すれば、正しい基礎収入・休業日数から適正な休業損害を請求できる
その点、弁護士に相談すれば、弁護士基準を使って
- アルバイトの実際の稼働率を考慮して基礎収入を計算できる
- アルバイトの稼働実績を反映した休業日数を計算できる
ために、適正な金額で休業損害を算出・請求できます。
また、弁護士への相談には、
- 兼業主婦・学生などアルバイトの個別のケースに合わせて休業損害を算出・請求できる
- 被害者に有利な金額で慰謝料を請求できる
といったメリットもあります。
交通事故に詳しい弁護士への相談を!
アルバイトの方の休業損害は、交通事故に詳しい弁護士への相談をお勧めします。
医師に外科・内科・眼科など様々な診療科目があるように、弁護士にも企業法務・離婚・相続など得意分野があります。アルバイトの方の休業損害であれば、交通事故に詳しい弁護士への相談が最もスムーズな解決につながります。一人で悩むより、交通事故に詳しい弁護士に相談し、納得できる解決を目指しましょう!
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない