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物損事故から人身事故に切り替えたい!切り替え方法と大きなメリット
この記事で分かること
- ①整形外科で診断書をもらい、②警察に届け出ることで人身事故への切り替えは可能。
- 人身事故に切り替えると、保障の範囲が広がり、自動車所有者の責任も追求できる。
- 後の事故を防ぐために、相手に行政・刑事処分を受けさせることは大切。
- 切り替えのメリットとしては、①損害賠償額の増加、②実況見分調書の作成、③過失相殺で揉めにくい、④後遺障害認定の等級が獲得しやすくなる、などが挙げられる。
- 切り替えの際は、①事故から10日以内に申請すること、②切り替えができない場合は、「人身事故証明書入手不能理由書」を保険会社に提出すること、に注意する。
人身事故への切り替えは、診断書をもらい警察に申請することで可能です。人身事故に切り替えると、保障の範囲が広がり、所有者の責任も追求できます。切り替えのメリットとしては、損害賠償額が増えることや、実況見分長所を作成して貰えることにより過失相殺で揉めることが少なくなること等があります。後遺障害が残った場合も、手続きが有利に進むでしょう。切り替えをするなら、事故から10日以内に申請しましょう。切り替えができない場合は、別の申請書を保険会社に申請することで解決できることがあります。
目次[非表示]
人身事故から物損事故に切りかえる方法
物損事故として申請したものの、あとで首などに痛みが発生して人身事故に切り替えたいと考える方は意外にも多くいます。そこでまずは、人身事故から物損事故に切り替える方法と、人身事故に切り替えないとどうなるのかについてご説明します。
物損事故から人身事故への切り替え方
「物損事故として一度申請したら人身事故に切り替えることはできないのでは?」と不安になる必要はありません。物損事故として申請した場合でも、人身事故に切り替えることは可能です。やり方もそれほど大変なことはありません。具体的には、以下を実行してください。
- 病院で診断書をもらう
- 警察にて人身事故への切り替えを行う
以下、詳しくご説明します。
①診断書をもらう
まず、病院に行って、怪我に対する診断書を発行してもらいましょう。病院は「整形外科」であれば、どこでも大丈夫です。最初に整骨院に行ってしまう方も多いですが、整骨院では診断書が出ないので、必ず整形外科に行くようにして下さい。
病院では、交通事故が原因であることを告げ、診断書にも必ず「交通事故が原因である」と記載してもらいましょう。これによって、事故と怪我との因果関係が証明できます。
②警察にて人身事故への切り替えを行う
次に、医師に作成してもらった診断書を持って警察に向かいます。警察の受付で、人身事故に切り替えたいこと説明しましょう。対応部署に案内してもらえますので、そこで書類の申請などの手続きを行います。この申請書を受け入れてもらうことができれば、問題なく人身事故に切り替えることができます。その後は、警察の指示に従いましょう。
以上が、人身事故の切り替え手続きです。身体に痛みや違和感が出たら、すぐに切り替えてください。
人身事故に切り替えないとどうなるの?
人身事故への切り替え手続きが面倒という方は、このままにできないのかと思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、人身事故に切り替えないと、後々被害者が損する結果になる可能性があります。
まず、人身事故であるのに物損事故のままにしていると原則として、自賠責保険などからの治療費や慰謝料が出なくなってしまいます。また、これは加害者が任意保険会社に加入している場合でも同様です。別途手続きを行えば、支払ってもらえる可能性はありますが、基本的には人身事故の切り替えが優先です。
また、当初は軽い痛みだったのに、徐々に痛みが増し、しかもなかなか完治しない結果となった場合は、後遺障害等級認定を申請すべきことになります。この手続きで等級を獲得しなければ、後遺慰謝料を受け取ることができないのですが、人身事故に切り替えていないと、後遺障害等級を受けるほど重篤な怪我ではないと判断されてしまう可能性もあるのです。
人身事故に切り替えないと、賠償金額に差がでる、後遺障害認定が認められないなど、さまざまなデメリットが発生する可能性があるため、痛みが出たら切り替えるのが鉄則です。
このように怪我がある場合は、物損事故から人身事故への切り替え手続きが必要です。
物損事故を人身事故に切り替えるべき理由
物損事故を人身事故に切り替えるべき理由は、損害賠償額だけの問題ではありません。切り替えるべき大きな理由3つをご説明します。
慰謝料請求など、損害賠償の範囲が広がる
交通事故被害にあった場合は、相手方や相手方の加入する任意保険会社に対しては、さまざまな保障を請求できます。
物損事故の場合、損害としては当該事故で破損した車両に対する保障のみ、相手方あるいは相手方の任意保険会社に対し請求できます。事故に遭ったことに対する慰謝料を請求したいと考える方もいますが、これは認められないのです。
他方、人身事故の場合は、車の修理費用だけでなく、怪我をしたことに対する慰謝料も請求することができます。怪我の治療にかかった費用はもちろんのこと、病院に通うための交通費も請求することができるのです。
また物損事故の場合は、自賠責保険による保障も受け取ることができません。そのため、事故を原因として身体に違和感や痛みが発生したら、すぐに病院に行き、人身事故に切り替えるべきなのです。
人身事故に切り替えることで適切な慰謝料などの損害賠償金を受け取ることができます。
自動車所有者の責任も追及できる
人身事故の場合、自賠責に関する規定が適用されます。これにより、被害者にとって有利な事情としては、当該事故の加害者が運転していた車両の所有者にまで責任を追及できる点です。
現在では、ほとんどの方が自賠責保険とは別に自動車保険として任意保険に加入されているでしょう。この場合、両方から保障してもらえるため、交通事故の被害者としては安心です。しかし、まれに加害者が強制加入の自賠責しか加入していないという事例があります。この場合、任意保険による保障を受けられないため、加害者に資力がない場合には低い保証しか受けられないことになります。
また物損事故のままにしている場合は、自賠責の規定が適用されず、自動車所有者の責任を追求できないため、所有者に賠償責任を追求することができなくなってしまうのです。所有者に請求すれば、所有者が任意保険会社に加入していることもあるため、被害者としては損害賠償額について妥協せずに交渉できるのです。
相手方を行政処分・刑事処分に処すことができる
もしかすると、事故の相手方に「物損事故として対応してほしい」とお願いされたケースもあるかもしれません。相手方としては、免許停止などの行政処分、刑事処罰を免れたいという気持ちがあるのでしょう。
タクシー運転手など、車の運転が生計を立てるために必須の職業の場合は、このような要望をしてくることも理解できます。被害者も同情して相手に応じてしまいます。しかし、このような対応は間違いです。
事故を起こす場合、これまでにも同様に事故を起こしているケースがあるためです。今後の事故を防ぐためにも警察に報告して適切な処罰を受けてもらう必要があります。人身事故の場合、行政処分としての点数付与や免許停止・取消しなどの処分があります。また刑事処分として、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪の適用の可能性があります。
適切な処罰を受けることで今後の事故を防ぎ、正当な処分を受けさせることができるのです。「治療費を自腹で支払う」などといっても、保障はありません。怪我がある場合は、どれだけ小さな事故でも人身事故に切り替えるべきです。
物損事故から人身事故へ切り替えるメリット
物損事故から人身事故へ切り替えるメリットはたくさんあります。そこでここでは、物損事故から人身事故へ切り替えるメリット4つをご説明します。
損害賠償額が上がる
先にご説明したように、物損事故の場合は車の修理費以外は保障の対象外となってしまいます。しかし、人身事故に切り替えれば、人身事故として保障される範囲が広がります。
具体的には、治療費、入通院慰謝料、通院交通費、休業損害などです。後遺障害が残った場合は、後遺障害慰謝料、逸失利益も請求できます。人身事故に切り替えることで、これだけ多くの項目が請求できるようになるのは、被害者にとってメリットといえます。請求する項目が増えると、その分損害賠償額も大きくなるためです。
物損事故のままにしていた場合でも、一定の手続きを踏めば治療費、慰謝料などを請求できるケースがありますが、人身事故に切り替えた場合と比べると賠償額が低くなってしまう可能性があるのです。
このように、人身事故に切り替えると、賠償額が上がるというメリットがあります。
実況見分調書を作成してもらえる
また、警察に実況見分長所を作成してもらえることもメリットといえます。
物損事故の場合、実況見分が行われることはありません。簡単な報告書が作成されるのみで交通事故の詳しい状況などは、記録されないのです。物損事故のままにしていると、仮に慰謝料が請求可能だとしても、損害賠償請求時にこちらに責任がないことを証明できず、損してしまう可能性があります。
人身事故に切り替えれば、警察は実況見分を行います。事故現場にて、当事者立ち合いのもと、自己の状況をきっちりと調査してくれます。これは実況見分調書として書類に残るため、後で当事者が事故状況を把握するのに大きく役立ちます。また当事者の供述も供述調書として記録されますので、損害賠償額算出の際の資料として利用できます。
このように、警察が実況見分調書を作成することは、損害賠償請求をする上において非常に役立ちます。
過失割合で揉めにくい
物損事故のままにしておくと、実況見分が行われません。この場合、損害賠償額の認定で揉めることがあります。
というのも、交通事故においては過失割合というものを認定する必要があるためです。過失割合とは、当該事故に対する当事者間の落ち度の度合いを指す法律用語です。当該事故に対し、7:3というように、当事者間の責任の割合を数字で表現します。
例えば、当該事故全体で、500万の損害があったとします。この場合、7割の過失割合を負う相手方は350万円を被害者に支払う必要があります。残り4割にあたる250万円は、過失相殺されるため被害者は自身に責任があるものとして相手方には請求できないのです。
この過失割合に関しては、最終的な損害賠償額に大きく影響するため当事者間で揉める原因となります。実況見分長所のような詳細な記録がないと事故を起こした相手にとって有利であるため、こちらが主張する損害賠償額が認められない場合もあります。
これに対し、実況見分調書がある場合は、ないケースよりも根拠がはっきりとするため揉めにくいというメリットがあるのです。
後遺障害の認定で有利になる
軽い交通事故でも、後遺障害が残ってしまうことがあります。特に、むち打ち症は交通事故でよくある怪我の1つですが、すぐに治ると思っていた痛みが何ヶ月も続き、完治しない結果となってしまうことがあるのです。
完治しない場合は後遺障害認定等級を受ける必要がありますが、物損事故のままだと「認定するほどの症状ではない」と判断され、非該当という結果や本来認定されるべき等級よりも下がってしまう可能性があります。
人身事故に切り替えていれば、認定が難しいといわれるむち打ち症などのケースでも適切な等級が付与される可能性が高まります。後遺障害の等級は、1つ等級が下がるだけで数十万円〜数百万円損することもあるため、できるだけデメリットとなりうる要素は排除していく必要があるのです。
以上から、後遺障害認定で有利になる可能性があります。
物損事故から人身事故への切り替えでの注意点
人身事故への切り替え方法は簡単ですが、場合によっては切り替えが難しいこともあります。そこで、物損事故から人身事故への切り替えで注意すべきポイントについてご説明します。
事故から10日以内に切り替え申請を行う
先にご説明したように物損事故から人身事故の切り替えは比較的簡単にできます。しかし、場合によっては警察が切り替え手続きを受け付けてくれないケースもあるため、注意が必要です。
特に注意すべきは、切り替えの時期です。法律上、いつまでに申請をしないと人身事故への切り替えを認めないという規則はありません。しかし、事故から時間が経過してしまうと、「別の原因で怪我を負ったのでは?」と疑われやすくなってしまいます。つまり、事故との因果関係がないと判断され、切り替えが許されなくなってしまうことがあるのです。
したがって、人身事故への切り替えをしたい場合は、事故から1週間以内に申請をするのが理想です。これを過ぎても受け付けてもらえる可能性はありますが、実況見分で当事者の記憶が曖昧になる、タイヤ痕などの証拠が雨などで判断できなくなってしまうなど、証拠の散逸が問題となってしまうこともあります。そのため、遅くとも10日以内には申請を済ませるべきといえるでしょう。
以上から、切り替えの期間については、注意するようにして下さい。
切り替えてもらえない場合は?
事故から日にちが経過し、警察が受け付けてくれない場合はどうしたら良いのでしょうか?
この場合は、任意保険会社に対し「人身事故証明書入手不能理由書」を希望してみましょう。これは、時間の経過などの理由で警察が人身事故証明書を発行しない場合でも、保険会社が人身事故として取り扱うことができるようにするための申請書です。任意保険会社の担当者にお願いすれば、申請書を送付してもらえます。内容を記入して返送すれば、慰謝料や治療費などの人身事故で受け取れる保障を支払ってもらえます。
このように、警察にて人身事故に切り替えることができない場合でも方法はあります。諦めないようにしましょう。
物損事故から人身事故への切り替えは、弁護士に相談を
身体に痛みや違和感が出たら、物損事故から人身事故に切り替えましょう。これによって、治療費や慰謝料などで損をせずに済みます。また、できる限り早めに切り替え手続きを行うことが重要です。
もし、切り替えで問題が起きたら、弁護士に相談して下さい。できるだけ早く適切な損害賠償額を受け取るためには、専門家のサポートが必要不可欠です。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない