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自賠責保険による交通事故慰謝料の相場は?適正な慰謝料を請求するポイント

この記事で分かること

  • 自賠責保険で支払われる慰謝料は最低限の対人補償のみ
  • 自賠責保険の傷害慰謝料は120万円、後遺障害慰謝料は4000万円が上限
  • 自賠責保険の入通院慰謝料は1日あたり4,200円(2020年4月1日以降は4,300円)
  • 弁護士基準は過去の判例をもとに計算するため高額な慰謝料になる
  • 弁護士に依頼することで弁護士基準での慰謝料請求ができる

交通事故において自賠責保険基準は最低限の慰謝料額となり、傷害・後遺障害に対する補償額についても上限があります。自賠責保険基準による交通事故慰謝料に納得がいかない方は弁護士に相談して弁護士基準での慰謝料請求を目指す方法もあります。

交通事故の自賠責保険について知っていますか?交通事故に遭ってしまい、自賠責保険という言葉を知ったけれども内容の詳細はよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、自賠責保険での交通事故慰謝料や適正な慰謝料を請求するためのポイントについて詳しく解説していきます。

自賠責保険の仕組みとは

自賠責保険で支払われるのは交通事故被害者への「最低限の補償」

保険といっても色々な種類がありますが、自動車損害賠償責任保険・共済は車両を運転するすべての人に対して、加入が義務付けられている保険のことです。そして、自賠責保険法およびその施行令では保険金額や支払い金額が定められています。そのため自賠責保険の基準をもとにして支払われる金額は、最低限の補償になります。任意保険基準・弁護士(裁判所)基準など他の慰謝料の基準に比べて、自賠責保険基準の支払い金額は最も低くなります。

自賠責保険に未加入の場合は罰則がある

自賠責保険は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けられるよう国が設けた保険制度です。自賠責保険は自動車だけではなく、オートバイや原動機付自転車すべて車両を所有する者に加入する義務が課せられています。そのため、自賠責保険に未加入のままで運転をしてしまうと逮捕の対象となったり、罰則を受けたりすることがあります。

自賠責保険の保証内容

自賠責保険の保証内容は、死亡や怪我などによって人に発生した損害、つまり対人賠償に限られています。交通事故によって車やその他の物品が壊れた場合は当然修理費が必要となってきます。しかし、自賠責保険の保証内容は対人賠償に限られているため物に発生した損害については対象外となります。また、自賠責保険は最低限の補償であるため慰謝料の算定基準が低く、支払額にも上限があります。

ワンポイントアドバイス
交通事故に遭ってしまった時は、自分自身や家族が任意保険に加入しているかを確認しておきましょう。

自賠責保険による交通事故慰謝料の相場

傷害(怪我)による損害:~120万円まで

交通事故で傷害(怪我)を負い、入院や通院をしたことによる精神的苦痛に対して支払われるのが傷害慰謝料です。
また、自賠責保険の傷害慰謝料は、治療費や休業損害、傷害慰謝料など全てを含めて120万円が上限となります。もし、加害者側が任意保険に加入している場合は120万円以上がしはらわれるケースもあります。

後遺障害による損害:75万円~4,000万円まで

交通事故の怪我により後遺症を負ってしまった場合、精神的苦痛に対して損害賠償金が支払われます。後遺障害に対する損害は、自賠責保険に対して申請をし、後遺障害等級の認定を受けた場合に慰謝料を受け取ることができます。

自賠責保険の後遺障害慰謝料については、後遺障害等級(一番重い第1級から第14級まで)によって以下のように金額が決まっています。

自賠法施行令別表Ⅰ・介護を要する後遺障害に適用
後遺障害等級 慰謝料額
第1級 1650万円(4000万円)
第2級 1203万円(3000万円)

()内は保険金総額

自賠法施行令別表Ⅱ・別表Ⅰ以外の後遺障害に適用
傷害等級 金額
第1級 1150万円(3000万円)
第2級 998万円(2590万円)
第3級 861万円(2219万円)
第4級 737万円(1889万円)
第5級 618万円(1574万円)
第6級 512万円(1296万円)
第7級 419万円(1051万円)
第8級 331万円(819万円)
第9級 249万円(616万円)
第10級 190万円(461万円)
第11級 136万円(331万円)
第12級 94万円(224万円)
第13級 57万円(139万円)
第14級 32万円(75万円)

()内は保険金総額

死亡による損害:~3000万円まで

死亡慰謝料とは、交通事故が原因で死亡してしまった精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。死亡慰謝料には死亡した被害者本人への慰謝料と遺族に対して支払われる慰謝料があります。自賠責保険の死亡による損害額の上限は被害者1名につき3,000万円までです。また、自賠責保険の死亡の補償内容は大きく「葬儀費」「慰謝料」「逸失利益」の3つに分けられます。

葬儀費

自賠責保険での葬儀費の上限は60万円と定められています。

慰謝料

自賠責保険において、交通事故により死亡した本人に対する慰謝料は350万円です。その他にも遺族に対しての慰謝料があります。被害者の父母(養父母含む)・配偶者および子(養子、認知した子及び胎児含む)が請求権者です。遺族への慰謝料の額は以下の通りです。

自賠責保険での遺族への慰謝料額
人数 慰謝料額
1人 550万円
2人 650万円
3人以上 750万円

被害者に扶養家族がいるときは、その人数にかかわらず上記金額に200万円が上乗せされる仕組みとなっています。

逸失利益

逸失利益(いっしつりえき)とは、本来交通事故に遭わなければ将来的に得られたであろう給与や収入等のことです。逸失利益の計算方法は以下の通りです。

(被害者の年間収入額-被害者の年間生活費)×死亡時点の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数

ワンポイントアドバイス
葬儀費用に関しては、立証資料等により60万円を超えることが認められると100万円の範囲内で保証されることがあるので確認しておきましょう。

自賠責保険による交通事故慰謝料の計算方法

自賠責保険の入通院慰謝料の計算方法

自賠責基準の入通院慰謝料は、入院・通院に関係なく1日あたり4,200円です。(2020年4月1日以降は1日あたり4,300円)入通院慰謝料がもらえる日数は、治療期間(事故発生日から完治または症状固定した日までの日数)または実際に入通院した日数の2倍のうち少ない方で計算します。

例えば、2020年3月1日に事故に遭い、3月28日までを通院期間とし、治療期間は28日(1日~28日)、実際に通院した実治療日数を12日とした場合、計算式は以下の通りです。

  1. 治療期間(28日)×4,200円=11万7,600円
  2. 実治療日数(12日)×4,200円×2=10万800円

少ない方が採用されるため、慰謝料は②の10万800円になります。

具体的な計算方法

例えば、交通事故により10日間入院して退院後の通院期間が30日間(その間の実通院日数は20日間)の場合は以下の計算となります。

  • 治療期間:10+30=40日
  • 入院・実通院日数の2倍(10+20)×2=60日

この場合、治療期間と入院・実通院日数のうち少ない方の40日が対象となります。
そのため、

  • 40×4,200円=168,000円

が自賠責基準での慰謝料額となります。

ワンポイントアドバイス
交通事故の怪我に対して、あんま・マッサージ等の施術を受けた場合は、実治療日数の2倍とはならないため注意が必要です。

自賠責保険の慰謝料の金額に納得がいかない場合

慰謝料を請求するタイミングを焦らない

交通事故慰謝料の請求をするタイミングを焦らないようにしましょう。
特に入通院慰謝料は治療期間や通院日数に応じて算定されます。また、後遺障害慰謝料に関しても後遺障害として認定される等級に応じて算定される仕組みとなっています。
そのため、治療を続けた方がよい場合に、焦って早いタイミングで慰謝料を請求してしまうと、その後の治療費や、その後の治療に基づく慰謝料が請求できなくなります。

弁護士に相談して慰謝料が倍増するケースも

前述のように、自賠責保険基準とは最低限の補償です。慰謝料の基準は他にもあり、そのなかでも弁護士基準は最も高額な慰謝料を獲得できる可能性があります。
弁護士基準では、過去の判例をもとに慰謝料を計算します。

入通院慰謝料 自賠責保険基準と弁護士基準の比較
通院期間と入院期間 自賠責保険基準 弁護士基準
通院のみ3ヶ月
(実通院日数30日)
25万2,000円 73万円(53万円)
通院のみ6ヶ月
(実通院日数60日)
50万4,000円 116万円(89万円)
入院1か月・通院3ヶ月
(入院30日・実通院30日)
50万4,000円 115万円(83万円)
後遺障害慰謝料 自賠責保険基準と弁護士基準の比較
等級 自賠責保険基準 弁護士基準
1級 1,100万円 2,800万円
2級 958万円 2,400万円
3級 829万円 2,000万円
4級 712万円 1,700万円
5級 599万円 1,440万円
6級 498万円 1,220万円
7級 409万円 1,030万円
8級 324万円 830万円
9級 255万円 670万円
10級 187万円 530万円
11級 135万円 400万円
12級 93万円 280万円
13級 57万円 180万円
14級 32万円 110万円
ワンポイントアドバイス
もし加害者が自賠責保険にも加入していなかった場合であっても、「政府保証事業」という制度を利用して自賠責保険と同額が保証されます。加害者が自賠責保険に加入していなかった場合でも泣き寝入りせずに適切な請求をしていきましょう。

適正な慰謝料を請求したければ弁護士に相談を

交通事故の慰謝料において、自賠責保険基準は最低限の補償額です。なかには「こんなに少ない慰謝料額では納得できない。」「実際の症状よりも低い等級を受けている。」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、被害者請求手続きを弁護士に依頼すると適正な慰謝料を受け取れる可能性があります。
後遺障害等級に関しては、弁護士に依頼することで再度審査を求める異議申立てもスムーズに行うことができます。異議申立てにより以前よりも高い後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料の増額が見込めるのです。
適正な交通事故慰謝料を請求したい方は弁護士に相談してみましょう。

交通事故に巻き込まれたら弁護士に相談を
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
  • 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
  • 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
  • 適正な後遺障害認定を受けたい
  • 交通事故の加害者が許せない
上記に当てはまるなら弁護士に相談