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子供のいる夫婦が離婚の財産分与で考えるべきこと
この記事で分かること
- 預貯金は子供名義であるかどうかよりも、実質的にその財産を築いたのは誰かが重要
- 児童手当や学資保険も基本は財産分与の対象となる
- 離婚した後の養育費についてもしっかり考える
離婚自体の同意は得られても、財産分与などの条件に納得がいかず離婚に進めないというケースは多いものです。中でも、子供がいる夫婦では子供名義で貯めたお金や学資保険などの取り扱いについて問題になる場合があります。感覚的には、子供のためにと貯めたお金ですから、今後子供を養育していく義務のある親権者がもらうべきお金のような気がしますが、法的な解釈は一体どうなるのでしょうか。
財産分与で子供名義の預貯金の取り扱い
将来の教育費などを貯蓄するために、普段の生活口座とは別に子供名義の銀行口座を開設して夫婦で共同管理しているという家庭は多いものです。
子供のために使えるお金がいくらあるのか一目で確認できて管理がしやすい一方で、離婚の際にはそのお金がどうなるのかについては、夫婦がうまくいっている間にはなかなか意識しないことでしょう。
気持ち的には、子供のために貯めたお金で子供固有の財産なので財産分与の対象とはならないような気がしますが、実際には「誰のために」貯めたかではなく「誰のお金を」貯めたかが重要になります。
結婚後、夫婦で貯めた場合
夫婦二人の子供のための貯金ですから、多くの場合は子供名義の口座には夫や妻の給料などを二人で協力して貯めていくことが一般的でしょう。そういった場合は、いくら貯蓄の目的が将来の子供の教育費などであったとしても、婚姻期間中に築いた共有財産と判断されますので、財産分与の対象となります。
子供自身のお小遣いやバイト代などの場合
子供がある程度以上成長していて、自分でお小遣いやバイト代などを貯めていた場合には、当然その口座のお金は子供自身が得た財産であるため、財産分与の対象とはなりません。
祖父母からなど第三者からの援助で積み立てていた場合
子供がまだ幼く子供自身が稼いで自分で口座を管理している場合でなくても、親族から子供へのお年玉やお祝いなどを貯めたものであれば、夫婦が婚姻生活の中で形成した財産ではないので、財産分与の対象とはならず、口座の預貯金は子供特有の財産ということになります。
また、子供の口座の預貯金の原資が父母どちらかのお金であっても、その中身が婚姻前から持っていた財産や相続財産であった場合にも、夫婦の共有財産ではなくてどちらかの特有財産ということになりますので、財産分与の対象とはなりません。
結婚前にどちらかが一人で積み立てていた場合
子供が夫婦の実子ではなく、どちらかの連れ子であった場合などでは、結婚する前にその子供のためにどちらか一人が子供名義で貯蓄しているようなケースもあり得ます。
その場合は結婚時点での残高は、夫婦二人で形成した財産ではないので財産分与の対象となりません。ただし、同じ口座に結婚後も積み立てをしていた場合には、婚姻生活中に増えた額については財産分与の対象となります。
子供の学資保険などの財産分与
子供がいる場合、将来のことを考えて貯金だけでなく学資保険に加入しているという場合も多いでしょう。離婚の際、学資保険についての取り扱いどうなるのかをみていきましょう。
誰が保険料を支払っていたのか
学資保険は通常夫婦が同意の上加入し、二人で管理していくことが一般的ですので、夫婦の共有財産として財産分与の対象になります。夫や妻どちらかの給料のみから支払っていた場合でも、もちろん例外はありません。
例外的に学資保険が財産分与の対象とならないケースとしては、夫婦どちらかの親(つまり子供の祖父母)などが保険料を支払っていたケースです。この場合は共有財産とはならず、分与を要求されても拒否することができます。ただし、夫婦ではなくその親族が保険料を支払っていたということを示す客観的な証拠は必要となります。
学資保険の財産分与方法
返戻率の高さなどから、離婚後も学資保険を継続したいという方も多いでしょう。多くの場合は財産分与の対象となる学資保険ですが、実際の分与の方法は、学資保険を継続するかどうかによって違ってきます。
学資保険を解約する場合には、解約返戻金を単純に折半することになりますが、継続する場合には少し手続きが厄介になります。学資保険を継続する場合は、保険会社に問い合わせて離婚時点での解約返戻金額を教えてもらい、その額を折半するという計算で財産分与の金額に含まれます。
また、学資保険を継続する場合、学資保険の契約者は父親で、子供を引き取るのは母親などのケースでは、契約者の変更が必要となります。のちのちのトラブルを避けるためにも、契約者の変更が必要になる場合は離婚する前に必ず行うようにしましょう。
児童手当も財産分与対象
児童手当は中学卒業までの子供の父母に対して支給される手当です。「子供のために」という理念で支給される手当ではあるものの、児童手当子供本人ではなくて親に支給されるという性質上、婚姻期間中に受け取った児童手当も、夫婦の共有財産ということになり、財産分与の対象となります。
財産分与で重要なのは、子供と離婚後の生活
子供のためにと形成してきた財産の離婚時の取り扱いについては、これまでにご紹介してきた通り、感情的には子供本人の財産と思えるようなものでも多くの場合は法的には夫婦二人の財産とみなされて分割対象になるのが現実です。
納得はいかないかもしれませんが、これは動かしがたい事実ですので、財産分与の対象となることが明らかな財産に対して話し合いの時間やエネルギーをさくことは得策ではありません。しかし、今後の子供との生活のためにも、もらえるお金は少しでも多い方がいいことは事実です。
特に、専業主婦や収入の大部分を相手に頼っていた方の場合には、子供の親権を取れたとしても経済的な不安が大きいでしょう。離婚後の生活を少しでも楽にするために、離婚の際に具体的に何をしておくべきかをしっかり知っておくことは大切です。
養育費の交渉
離婚する際に決めておく必要があるのが、月々の養育費の額です。養育費は、経済的・社会的に自立していない子供(未成熟子)が自立するまでに必要な費用で、生活費や医療費、教育費などが含まれます。
養育費の支払いは親に課せられた義務ですので、生活に余裕がないなどの理由で断ることができません。たとえ自己破産した場合でさえ、養育費の支払い義務は免除されません。そのため、離婚後に養育費を請求する相手の生活が苦しくなるからといって、養育費をもらえないという訳ではないので、離婚する際にしっかりと交渉しましょう。
養育費の金額について話し合う際には、自分が希望する金額が客観的にみて妥当な数字であることを納得してもらえるように、具体的な用途などを示しながら交渉するとスムーズに進みやすいでしょう。
別居後ももらえるお金がある
夫婦関係は既に破綻していて、もう離婚そのものについては双方が同意しているけれど、条件が折り合わずまだ離婚には至っていない場合には、もしかしたら離婚の前であっても別居を始めた方が得をする可能性があります。
というのも、財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦で築いた財産です。そのため、基本的に別居している場合には夫婦として共同生活を送っていないことが客観的に明白なので、別居中に築いた財産は分与対象にならず、個人のものになるからです。
例えば、先ほど児童手当は財産分与の対象になると説明しましたが、別居している場合には子供を育てている方の固有の財産として認められ、財産分与の対象にはなりません。
さらに、別居していても法的には夫婦はお互いの生活を保持する義務がありますので、収入の多い方は収入の少ない方に対して、婚姻費用と呼ばれるお金を支払わねばなりません。
婚姻費用とは、衣食住や医療費などの、日常生活に必要な費用のことを指し、別居中にも認められている権利です。
財産分与・養育費以外にもらえる可能性のあるお金
婚姻費用のほかにも、状況によっては財産分与や養育費以外に請求できるお金がある場合もあります。それは慰謝料です。慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われるもので、離婚に至る原因を作った相手に対して、精神的な苦痛を受けた方が請求できるものです。
代表的なケースとしては、不倫や家庭内暴力などがあった場合があげられます。慰謝料の請求は、証拠があればスムーズに進みますので、離婚を考えている場合にはボイスレコーダーなどを活用して有力な証拠を残しておくことをお勧めします。
子供がいる夫婦の離婚で財産分与で困ったら弁護士に相談
子供がいる場合、離婚の際に少しでも多くの額を確保したいと思うのは自然なことです。
しかし、子供ができた時点で離婚を想定している夫婦はほとんどいないので、いざ財産分与となった時に単純に判断できないような問題が浮かび上がってくることも多いでしょう。そういった場合には、一度弁護士に相談してみることをお勧めいたします。
離婚事件の取り扱い経験が豊富な弁護士が、状況を客観的にみてアドバイスしてくれるでしょう。
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